101 / 170
第四部第四章 模擬戦
一話
しおりを挟む
模擬戦が始まって、俺と最初戦った者は確実に負けるにで可哀想である。クリスタルとかなら良い戦いができるだろうけど。一般魔族には俺は絶対倒せない。
魔力を使わない縛りでやっても確実に負けるのは敵の方である。
そして、最初に戦う相手が決まった。その相手とは見たことがあるかないかというくらいの人物である。
もしかしたら歴代の英雄なのかもしれない。
魔力量からすると、シルバーといい勝負といったところだろう。なかなか手強そうだ。
なら少し魔力を使ってもいいだろう。
スタートの合図が鳴り響き、敵クリスチャが剣をゆっくりト抜刀し構える。どう攻撃してくるか分からないため、無防備な攻めはやめた方が良いと見た。
しかもこの感じ相当な剣術を身構えているようだ。なら一旦魔力で試してみるか?
製造魔力で魔力を帯びたナイフをクリスチャに向けてはなった。相当な速さで一般人ならば見切ることは不可能だろう。
だけど一般魔族じゃないクリスチャは紙を切るかのようにしてナイフを弾いた。だけど、俺の魔力が埋め込めれているため、俺の思った通りにナイフを遠隔操作できる。
例えばクリスチャの脇にナイフを動かすこともできる。でもやっぱり、クリスチャは余裕ある顔でナイフを弾く。
これで分かった。ちょっとだけ魔力を解放して良いのだと。
周りに集まるギャラリーの歓声がうるさくて、クリスチャの動きの音がうまく聞き取れない。
これは戦闘中に勝敗を左右する可能性がある。
五感が優れない時ほど休むのが良いだろう。
「これはこれは、プランス様とお手合わせできて嬉しです」
クリスチャが言った。そこまで貴重な戦闘ではないから喜ぶことはしなくていい。
むしろ模擬戦なんて毎日やってあげてもいい。まあ、忙しい時以外であるが。
「じゃあ、本気でこい」
そう言ったら、何十メートルも離れているのに、ニヤリとしたことが分かった。何かが変わる。
魔力が変わったのか? 感じられるのは迫力だけだ。魔力は感じられない。
「では」
クリスチャは気づくと懐に潜り込んでいた。しかも片手には剣、避けるしかないようだ。
「さすがです・・・。今の一刀に対して掠ることなく避けれるとは」
まあ、ルカに比べればまだまだの剣術だ。それに剣術では負けたことがない。
「ふむふむ、まだ余裕があるというのですか? ならば真剣に剣を振るというわけだ」
クリスチャは背を低くして剣を振ってくるから避けることがほぼ無理だが、それは俺じゃなかった場合に限り、俺に当てたとしてそれが俺に傷を与えれるかどうかだ。
俺は指で剣を止めた。毒は効かない。
それに血も出なかった。ただクリスチャの剣がバラバラに砕け散っただけだ。
「なんと・・・! もう我に勝てる要素が存在しないので負けました」
俺はクリスチャの驚きの表情を見ながら、指で砕けた剣の破片を静かに払い落とした。これで模擬戦は終わりだ。少なくとも、クリスチャにとってはそうだろう。しかし、俺にとってはこの程度の戦いで終わるはずもない。
「もう少し楽しめると思ったが、そうでもなかったか・・・」
俺はそう呟き、観客席の方へ視線を向けた。彼らの反応は予想通りだった。大歓声が巻き起こり、俺の名を叫ぶ声が次々に響く。だが、その歓声にはどこか物足りなさを感じた。これではただの勝利に過ぎない。模擬戦とはいえ、俺はもっと心を揺さぶられるような戦いを求めていた。
「プランス様・・・」
クリスチャは地面に跪き、敗北を認めた。顔を上げ、冷静な表情を保っているが、その目には明らかに敗北の悔しさが滲んでいる。彼はまだ立ち上がれないようだった。
「お前の剣術はなかなかだった。だが、俺に勝つにはまだ足りないな」
俺はそう言って、クリスチャに向けて手を差し伸べた。彼は驚いた表情を見せたが、俺の手を取って立ち上がった。
「ありがとうございます、プランス様。私はまだまだ修行が足りません。ですが、いつか必ず・・・」
「いつか必ず、か。悪くない決意だ。だが、そう簡単には行かないぞ」
俺は軽く笑みを浮かべながら、クリスチャの肩を軽く叩いた。彼の決意を無下にするつもりはない。むしろ、その強い意志は評価していた。だが、それでも俺の前に立ちふさがるにはまだまだだ。
「さぁ、次は誰だ?」
俺はそう問いかけ、次なる対戦相手を探した。だが、観客席にいた魔族たちは誰も動かなかった。皆、俺との戦いに恐れを抱いているのだろうか。それとも、ただの興味本位で見ているだけか。どちらにせよ、俺にはこの場で満足できる相手がいないのは明白だった。
「まぁいい、今日はここまでにしておこう」
俺は腕を組み、模擬戦の終了を宣言した。観客たちからは軽いざわめきが起こったが、それ以上の反応はなかった。俺が本気を出すことなく終わることに対して、彼らも物足りなさを感じているのだろう。
「プランス様、本日はありがとうございました」
クリスチャが深々と頭を下げる。彼の礼儀正しさは立派だが、それでも俺は何かが足りないと感じていた。彼の剣技や魔力は悪くない。しかし、俺が求めているのはただの技量や力ではない。それを超える何か、そう…純粋な闘志、執念、そして絶望すらも超えた感情。
俺は空を見上げた。夕暮れの空が赤く染まり、薄く輝く星が見え始めていた。この場所にいても、俺の胸には満たされないものが残っている。
「強くなるには、ただの技量や魔力だけでは足りないんだ・・・」
俺は誰にともなく呟き、その場を後にした。魔族たちは俺の背中を見送るだけで、誰も声をかけてこなかった。
そのまま歩きながら、俺はかつての戦いを思い出していた。かつて、俺の前に立ちふさがった本物の戦士たち。彼らはただの力ではなく、己の全てを賭けて俺に挑んできた。あの時の感覚、命を懸けた本当の戦いを、今の俺は求めているのかもしれない。
「やれやれ・・・いつになったらまた、そんな戦いができるんだろうな」
俺はため息をつきながら、夕暮れの中を一人歩き続けた。模擬戦が終わったにもかかわらず、俺の胸にはまだ終わらない戦闘の熱がくすぶっていた。次に現れる者は、果たして俺を満足させる相手なのか。それとも、ただの退屈な戦いの一部なのか。それはまだ分からない。
夕暮れの空がますます暗くなる中、俺は歩みを止めることなく、次なる戦いを夢見ていた。
魔力を使わない縛りでやっても確実に負けるのは敵の方である。
そして、最初に戦う相手が決まった。その相手とは見たことがあるかないかというくらいの人物である。
もしかしたら歴代の英雄なのかもしれない。
魔力量からすると、シルバーといい勝負といったところだろう。なかなか手強そうだ。
なら少し魔力を使ってもいいだろう。
スタートの合図が鳴り響き、敵クリスチャが剣をゆっくりト抜刀し構える。どう攻撃してくるか分からないため、無防備な攻めはやめた方が良いと見た。
しかもこの感じ相当な剣術を身構えているようだ。なら一旦魔力で試してみるか?
製造魔力で魔力を帯びたナイフをクリスチャに向けてはなった。相当な速さで一般人ならば見切ることは不可能だろう。
だけど一般魔族じゃないクリスチャは紙を切るかのようにしてナイフを弾いた。だけど、俺の魔力が埋め込めれているため、俺の思った通りにナイフを遠隔操作できる。
例えばクリスチャの脇にナイフを動かすこともできる。でもやっぱり、クリスチャは余裕ある顔でナイフを弾く。
これで分かった。ちょっとだけ魔力を解放して良いのだと。
周りに集まるギャラリーの歓声がうるさくて、クリスチャの動きの音がうまく聞き取れない。
これは戦闘中に勝敗を左右する可能性がある。
五感が優れない時ほど休むのが良いだろう。
「これはこれは、プランス様とお手合わせできて嬉しです」
クリスチャが言った。そこまで貴重な戦闘ではないから喜ぶことはしなくていい。
むしろ模擬戦なんて毎日やってあげてもいい。まあ、忙しい時以外であるが。
「じゃあ、本気でこい」
そう言ったら、何十メートルも離れているのに、ニヤリとしたことが分かった。何かが変わる。
魔力が変わったのか? 感じられるのは迫力だけだ。魔力は感じられない。
「では」
クリスチャは気づくと懐に潜り込んでいた。しかも片手には剣、避けるしかないようだ。
「さすがです・・・。今の一刀に対して掠ることなく避けれるとは」
まあ、ルカに比べればまだまだの剣術だ。それに剣術では負けたことがない。
「ふむふむ、まだ余裕があるというのですか? ならば真剣に剣を振るというわけだ」
クリスチャは背を低くして剣を振ってくるから避けることがほぼ無理だが、それは俺じゃなかった場合に限り、俺に当てたとしてそれが俺に傷を与えれるかどうかだ。
俺は指で剣を止めた。毒は効かない。
それに血も出なかった。ただクリスチャの剣がバラバラに砕け散っただけだ。
「なんと・・・! もう我に勝てる要素が存在しないので負けました」
俺はクリスチャの驚きの表情を見ながら、指で砕けた剣の破片を静かに払い落とした。これで模擬戦は終わりだ。少なくとも、クリスチャにとってはそうだろう。しかし、俺にとってはこの程度の戦いで終わるはずもない。
「もう少し楽しめると思ったが、そうでもなかったか・・・」
俺はそう呟き、観客席の方へ視線を向けた。彼らの反応は予想通りだった。大歓声が巻き起こり、俺の名を叫ぶ声が次々に響く。だが、その歓声にはどこか物足りなさを感じた。これではただの勝利に過ぎない。模擬戦とはいえ、俺はもっと心を揺さぶられるような戦いを求めていた。
「プランス様・・・」
クリスチャは地面に跪き、敗北を認めた。顔を上げ、冷静な表情を保っているが、その目には明らかに敗北の悔しさが滲んでいる。彼はまだ立ち上がれないようだった。
「お前の剣術はなかなかだった。だが、俺に勝つにはまだ足りないな」
俺はそう言って、クリスチャに向けて手を差し伸べた。彼は驚いた表情を見せたが、俺の手を取って立ち上がった。
「ありがとうございます、プランス様。私はまだまだ修行が足りません。ですが、いつか必ず・・・」
「いつか必ず、か。悪くない決意だ。だが、そう簡単には行かないぞ」
俺は軽く笑みを浮かべながら、クリスチャの肩を軽く叩いた。彼の決意を無下にするつもりはない。むしろ、その強い意志は評価していた。だが、それでも俺の前に立ちふさがるにはまだまだだ。
「さぁ、次は誰だ?」
俺はそう問いかけ、次なる対戦相手を探した。だが、観客席にいた魔族たちは誰も動かなかった。皆、俺との戦いに恐れを抱いているのだろうか。それとも、ただの興味本位で見ているだけか。どちらにせよ、俺にはこの場で満足できる相手がいないのは明白だった。
「まぁいい、今日はここまでにしておこう」
俺は腕を組み、模擬戦の終了を宣言した。観客たちからは軽いざわめきが起こったが、それ以上の反応はなかった。俺が本気を出すことなく終わることに対して、彼らも物足りなさを感じているのだろう。
「プランス様、本日はありがとうございました」
クリスチャが深々と頭を下げる。彼の礼儀正しさは立派だが、それでも俺は何かが足りないと感じていた。彼の剣技や魔力は悪くない。しかし、俺が求めているのはただの技量や力ではない。それを超える何か、そう…純粋な闘志、執念、そして絶望すらも超えた感情。
俺は空を見上げた。夕暮れの空が赤く染まり、薄く輝く星が見え始めていた。この場所にいても、俺の胸には満たされないものが残っている。
「強くなるには、ただの技量や魔力だけでは足りないんだ・・・」
俺は誰にともなく呟き、その場を後にした。魔族たちは俺の背中を見送るだけで、誰も声をかけてこなかった。
そのまま歩きながら、俺はかつての戦いを思い出していた。かつて、俺の前に立ちふさがった本物の戦士たち。彼らはただの力ではなく、己の全てを賭けて俺に挑んできた。あの時の感覚、命を懸けた本当の戦いを、今の俺は求めているのかもしれない。
「やれやれ・・・いつになったらまた、そんな戦いができるんだろうな」
俺はため息をつきながら、夕暮れの中を一人歩き続けた。模擬戦が終わったにもかかわらず、俺の胸にはまだ終わらない戦闘の熱がくすぶっていた。次に現れる者は、果たして俺を満足させる相手なのか。それとも、ただの退屈な戦いの一部なのか。それはまだ分からない。
夕暮れの空がますます暗くなる中、俺は歩みを止めることなく、次なる戦いを夢見ていた。
11
あなたにおすすめの小説
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。
石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。
実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。
そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。
血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。
この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。
扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる