結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

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第四部第四章 模擬戦

一話

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 模擬戦が始まって、俺と最初戦った者は確実に負けるにで可哀想である。クリスタルとかなら良い戦いができるだろうけど。一般魔族には俺は絶対倒せない。
 魔力を使わない縛りでやっても確実に負けるのは敵の方である。
 そして、最初に戦う相手が決まった。その相手とは見たことがあるかないかというくらいの人物である。
 もしかしたら歴代の英雄なのかもしれない。

 魔力量からすると、シルバーといい勝負といったところだろう。なかなか手強そうだ。

 なら少し魔力を使ってもいいだろう。

 スタートの合図が鳴り響き、敵クリスチャが剣をゆっくりト抜刀し構える。どう攻撃してくるか分からないため、無防備な攻めはやめた方が良いと見た。
 しかもこの感じ相当な剣術を身構えているようだ。なら一旦魔力で試してみるか?

 製造魔力で魔力を帯びたナイフをクリスチャに向けてはなった。相当な速さで一般人ならば見切ることは不可能だろう。

 だけど一般魔族じゃないクリスチャは紙を切るかのようにしてナイフを弾いた。だけど、俺の魔力が埋め込めれているため、俺の思った通りにナイフを遠隔操作できる。

 例えばクリスチャの脇にナイフを動かすこともできる。でもやっぱり、クリスチャは余裕ある顔でナイフを弾く。
 これで分かった。ちょっとだけ魔力を解放して良いのだと。

 周りに集まるギャラリーの歓声がうるさくて、クリスチャの動きの音がうまく聞き取れない。
 これは戦闘中に勝敗を左右する可能性がある。
 五感が優れない時ほど休むのが良いだろう。

「これはこれは、プランス様とお手合わせできて嬉しです」

 クリスチャが言った。そこまで貴重な戦闘ではないから喜ぶことはしなくていい。
 むしろ模擬戦なんて毎日やってあげてもいい。まあ、忙しい時以外であるが。

「じゃあ、本気でこい」

 そう言ったら、何十メートルも離れているのに、ニヤリとしたことが分かった。何かが変わる。
 魔力が変わったのか? 感じられるのは迫力だけだ。魔力は感じられない。

「では」

 クリスチャは気づくと懐に潜り込んでいた。しかも片手には剣、避けるしかないようだ。

「さすがです・・・。今の一刀に対して掠ることなく避けれるとは」

 まあ、ルカに比べればまだまだの剣術だ。それに剣術では負けたことがない。

「ふむふむ、まだ余裕があるというのですか? ならば真剣に剣を振るというわけだ」

 クリスチャは背を低くして剣を振ってくるから避けることがほぼ無理だが、それは俺じゃなかった場合に限り、俺に当てたとしてそれが俺に傷を与えれるかどうかだ。

 俺は指で剣を止めた。毒は効かない。

 それに血も出なかった。ただクリスチャの剣がバラバラに砕け散っただけだ。

「なんと・・・! もう我に勝てる要素が存在しないので負けました」

 俺はクリスチャの驚きの表情を見ながら、指で砕けた剣の破片を静かに払い落とした。これで模擬戦は終わりだ。少なくとも、クリスチャにとってはそうだろう。しかし、俺にとってはこの程度の戦いで終わるはずもない。

「もう少し楽しめると思ったが、そうでもなかったか・・・」

 俺はそう呟き、観客席の方へ視線を向けた。彼らの反応は予想通りだった。大歓声が巻き起こり、俺の名を叫ぶ声が次々に響く。だが、その歓声にはどこか物足りなさを感じた。これではただの勝利に過ぎない。模擬戦とはいえ、俺はもっと心を揺さぶられるような戦いを求めていた。

「プランス様・・・」

 クリスチャは地面に跪き、敗北を認めた。顔を上げ、冷静な表情を保っているが、その目には明らかに敗北の悔しさが滲んでいる。彼はまだ立ち上がれないようだった。

「お前の剣術はなかなかだった。だが、俺に勝つにはまだ足りないな」

 俺はそう言って、クリスチャに向けて手を差し伸べた。彼は驚いた表情を見せたが、俺の手を取って立ち上がった。

「ありがとうございます、プランス様。私はまだまだ修行が足りません。ですが、いつか必ず・・・」

「いつか必ず、か。悪くない決意だ。だが、そう簡単には行かないぞ」

 俺は軽く笑みを浮かべながら、クリスチャの肩を軽く叩いた。彼の決意を無下にするつもりはない。むしろ、その強い意志は評価していた。だが、それでも俺の前に立ちふさがるにはまだまだだ。

「さぁ、次は誰だ?」

 俺はそう問いかけ、次なる対戦相手を探した。だが、観客席にいた魔族たちは誰も動かなかった。皆、俺との戦いに恐れを抱いているのだろうか。それとも、ただの興味本位で見ているだけか。どちらにせよ、俺にはこの場で満足できる相手がいないのは明白だった。

「まぁいい、今日はここまでにしておこう」

 俺は腕を組み、模擬戦の終了を宣言した。観客たちからは軽いざわめきが起こったが、それ以上の反応はなかった。俺が本気を出すことなく終わることに対して、彼らも物足りなさを感じているのだろう。

「プランス様、本日はありがとうございました」

 クリスチャが深々と頭を下げる。彼の礼儀正しさは立派だが、それでも俺は何かが足りないと感じていた。彼の剣技や魔力は悪くない。しかし、俺が求めているのはただの技量や力ではない。それを超える何か、そう…純粋な闘志、執念、そして絶望すらも超えた感情。

 俺は空を見上げた。夕暮れの空が赤く染まり、薄く輝く星が見え始めていた。この場所にいても、俺の胸には満たされないものが残っている。

「強くなるには、ただの技量や魔力だけでは足りないんだ・・・」

 俺は誰にともなく呟き、その場を後にした。魔族たちは俺の背中を見送るだけで、誰も声をかけてこなかった。

 そのまま歩きながら、俺はかつての戦いを思い出していた。かつて、俺の前に立ちふさがった本物の戦士たち。彼らはただの力ではなく、己の全てを賭けて俺に挑んできた。あの時の感覚、命を懸けた本当の戦いを、今の俺は求めているのかもしれない。

「やれやれ・・・いつになったらまた、そんな戦いができるんだろうな」

 俺はため息をつきながら、夕暮れの中を一人歩き続けた。模擬戦が終わったにもかかわらず、俺の胸にはまだ終わらない戦闘の熱がくすぶっていた。次に現れる者は、果たして俺を満足させる相手なのか。それとも、ただの退屈な戦いの一部なのか。それはまだ分からない。

 夕暮れの空がますます暗くなる中、俺は歩みを止めることなく、次なる戦いを夢見ていた。
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