結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

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第四部第四章 模擬戦

三話

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 一日で二人と戦う。しかも優しい市民だ。

 胸が躍らない。戦う気が失せてしまう。
 だけど、彼の修行でもあるから逃げるのはダメだろうな。

「魔王・・・・・。本当に戦うのですか?」

 体格とは裏腹に怯えている。だけど、力は結構ある。
 さっき戦った英雄? よりも少し弱いくらいだろう?
 でも俺に勝てるわけがない。ましてやシルバーにも勝てず、ルドラにも勝てないだろう。つまり、俺に勝つのは不可能だ。
 怪我をしてしまう前に帰って欲しいのだがそうはいかないよな? だからほどほどに叩きのめす。

「いいよ来い!」

 体格はでかいのに早い。まあ、俺にかかれば余裕で見切れる。
 避けることなんて、簡単すぎてあくびが出る。

 それに避けなくても大丈夫だ。大きな剣だからといって、俺に勝てるとは限らない。

「ごめんなさい・・・・・『ファイヤーソード』」

 敵ルイチャードの剣に炎が足された。これが奴の魔力なのだろうか? それなら俺に勝てる要素は確実にゼロ。でも何かが感じる。

 これは避けた方がいいと感じてしまうのだ。これは勘に従うべき。

 俺は右に飛ぶ。すると、さっきまで俺がいたところが焼き消された。

 なんだかんだで、俺の国民は強えんだな。と安心する。
 いつもはひ弱のようにしやがって、実は強いんじゃねえか? もはや護衛部隊にしてもいいんだろうな?

 ってこの模擬戦大会に出場してない者も実はすんげえ強い奴だったりして? そう考えるととても胸が高鳴って、自分がもしも死んでも大丈夫なんじゃねえかって言いそうだった。

「じゃあ俺も手加減はしないぜ!」

 なぜかルイチャードは両目から涙を流している。なんとも言えない姿であった。
 私はこんな時どんな反応をするべきなのだろうか? やっぱり国民が泣いているから、うとうとするのが普通か?
 いや、刻刻の剣をこちらに向けながら泣いている者にそんなことはしなくていい。

「『ファイヤーナイト』」

 死を覚悟するかのように、歴代の英雄の構えをし俺の懐に剣を振った。

 これは避けれるけれど、一度受けてみたい・・・! また、ミアに怒られそうな挑戦だけど死ぬはずもないし、ダメージも負うはずがない。

 腹に剣が突き刺さる衝撃がしたけど、同時に俺の魔力がルイチャードの剣を吸い込んでいく。そしてあっという間に剣が俺に溶かされてしまい、俺の力となった。
 これにはルイチャードも驚いたのか、後ろに飛ぶ。

 まあこれが魔王の力と思ってもらっていいだろう。

「魔王よ・・・。私に勝ち目はないと分かりました。無駄な戦いは模擬戦であろうとも無意味でございます。ではまたどこかで」

 ルイチャードは影に隠れてどこかに姿を消した。

 ルイチャードが姿を消した後、俺はその場に立ち尽くしていた。彼の言葉が耳に残る。模擬戦とはいえ、相手にとっては真剣な戦いだったのだ。俺にとってはただの訓練でしかなかったが、彼にとっては自分の力を試す場であり、もしかしたら自分自身を証明したかったのかもしれない。

「……ふぅ、これで二戦目も終わりか。」

 周囲を見渡すと、戦闘を見守っていた観客たちのざわめきが徐々に収まっていくのが感じられる。皆、魔王としての俺が無傷で勝利を収めたことに対して驚きと安堵を感じているのだろう。だが、俺の胸の中には何か空虚さが残っていた。勝利しても、何か大事なものを失ったような気がする。

「結局、俺は何を求めて戦っているんだろうか……。」

 戦闘が終わるたびに、この問いが頭をよぎる。魔王として、国を守り、力を示すことは必要だが、それだけで満足できるのだろうか。かつては力を求め、勝利を追い求めた。だが今は、それが全てではないと感じ始めている。

 その時、ミアの声が後ろから聞こえた。

「プランス、また考え込んでるの?」

 俺は振り返り、彼女の姿を見つめた。金色のドレスを纏った彼女は、相変わらず優雅で美しいが、その眼差しには俺を心配する気持ちが宿っている。彼女は俺の変化に気づいているのだろう。

「いや、大したことじゃないさ。ただ……これで良いのかって、少し考えてただけだ。」

「またそんなこと言ってるの? あなたは強いし、みんながあなたに頼ってる。だから、そんなに悩む必要なんてないわ。」

 ミアは微笑みながらそう言ったが、俺はその言葉を聞いても気持ちが軽くならなかった。確かに、俺は強い。だからこそ、こうして国民の前で模擬戦をこなし、魔王としての責務を果たしている。だが、その強さがいつしか俺自身を縛りつけている気がする。

「……強いだけじゃダメなんだ。力があるからって、それで全てが解決するわけじゃない。」

「プランス……。」

 ミアの表情が少し曇ったのが見えた。彼女もまた、俺の悩みを理解しているのかもしれない。俺たちは長い時間を共に過ごしてきた。戦いも、苦難も、そして喜びも分かち合ってきた。だからこそ、彼女には隠せないのだろう。

「でもさ、ミア。俺がこんなことを考えるようになったのは、きっとお前のおかげだ。」

「えっ?」

「お前がずっとそばにいてくれて、俺のことを支えてくれたから、俺はただ力を求めるだけじゃなくなった。守るべきものがあるって気づいたんだ。」

 ミアは驚いたような顔をして俺を見つめた。そして、少し照れくさそうに視線を逸らしながら、ポーチを握りしめた。

「そ、そんなこと……当たり前じゃない。私はずっとプランスのそばにいるって決めてたんだから。」

「そうだな。それに、俺もお前がいなければ今の俺はいなかったと思う。だから、これからも俺を支えてくれ。」

「……うん、もちろんよ。」

 ミアの言葉に、俺は少しだけ肩の力が抜けた。彼女がそばにいてくれる限り、俺はどんな戦いも乗り越えられる気がする。戦いの意味を見失いかけていたが、彼女がいることで再びその意味を見出すことができた。

「さて、次の戦いに備えるか。」

 俺は深呼吸をし、再び戦場へと向かう準備を整えた。次の相手が誰であろうと、ミアがそばにいてくれる限り、俺は負けないだろう。戦いの先に何が待っているのか、それはまだわからない。だが、今はただ、目の前の戦いに全力を尽くすしかない。

「行くぞ、ミア。」

「うん、プランス。」

 二人で歩き出すその背後に、再び観客たちの歓声が沸き起こる。俺たちは共に、次の戦いへと向かっていった。
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