結婚してるのに、屋敷を出たら幸せでした。

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第四部第五章 久しぶりの人間界

悪魔

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 剣を連続で振い続けても、全然当たらない。でも、魔力が掠るから服がちぎれていく。何か仮面をつけているから女か男かわからない。でも多分、男だろう。
 喋り方がそうだからだ。魔力の連打でわかることだけど、当たるかどう、そう賭け事になって行く。

「やるじゃないか、この俺に剣を振り続けるとはね」

 余裕のように避ける、リセは恐ろしいほどの実力者である。それでも剣を振り続けて隙を見せない。でも、ちょくちょく、反撃してくる。
 例えば、蹴ってきたり。鞘がついたままの剣で殴ってきたりして、身動きができないようになって行く。
 とても痛いでも、それで引くような器じゃない。真剣に戦っているから、引くわけがない。

「死ねーーーー」

 唐突に剣を降り、魔力を同時に発砲した。私との距離は大体十メートル。この攻撃を避けることは可能かもしれないけど、仮面くらいは切れるかもしれない。
 
 そう考えてはなった魔力は見事、リセの仮面を貫いた。リセは片手で仮面を押さえるが、真っ二つに割れているから片割れが地面に落ちた。片目が見えるが、砂で隠される。片目からして女性に見えた。
 でも話し方が男だ。だから、男? 女? 性別がわからなくなってきた。でも雰囲気が女のように和らいでいる。だから女なのか?
 
「俺に剣を貫通させるとはな。いや魔力か・・・・・。この仮面は硬く作られているのだが・・・ウヒヒヒヒ」

 奇妙な笑い方をしたと思ったら、腹部にナイフを向けてきた。これは刺さるかもしれない。それだと私は死んでしまう。それは私にとって一番駄目なことだ。
 
 その時だった、どこかで見覚えのある。いやほんの少しだけ見たことはがある、女性・・・・・。
 そしてその女性は、向けられていたナイフを宙に吹き飛ばした。その時の少しの苦笑で思い出した。

 ベリズリーにつく前に泊まった村・・・・・。プランスがドアをノックして出てきた女性。
 どんな力かは分からないけど魔法使いに似ていた魔力だったと思う。確か名前がナラだった?



 あの女性、たぶんプランスのことを忌み嫌っていたような気がして魔法使いだったのに、どうして今ここにきてくれたんだ?

「プランスに言っておいて、ミアを救ったのは、大悪魔ナラ・フィージャーだとね」

 大悪魔? どういうこと? 大悪魔なんて、いるはずない。それに魔力が膨大じゃなくて、魔力が全く感じられない。まるで貧弱な魔力を感じているようだ。
 なのに、すごい迫力・・・・。

 リセは驚いたように一瞬だけ動きを止め、ナラ・フィージャーを睨みつけた。割れた仮面の下から覗く片目が不信感に満ちている。しかし、その瞬間的な隙を逃さず、私は距離を取ることができた。

 ナラは微笑を浮かべ、ゆっくりとリセの前に歩み寄る。彼女の姿はどこか不思議で、まるで全てを見透かしているかのような冷静さが漂っていた。その魔力の欠如が、逆に彼女の異様さを際立たせている。

「どうしてここに?」私は声を震わせながら問いかけた。先ほどまで死の危機を感じていた状況が、一瞬にして逆転するとは思いもよらなかった。

 ナラは私に目を向けず、ただ淡々とリセに話しかける。「リセ、もう終わりだ。あなたの役目はここまでよ。」

 リセはその言葉に反応し、鋭い声で返した。「終わりだと? 俺の計画はまだ始まったばかりだ! 貴様には関係ない!」

 リセの怒りが爆発し、再び強烈な魔力が彼女を包み込む。まるで嵐のように荒々しい魔力の波動が周囲に広がり、私の体がその圧力に押しつぶされそうになる。しかし、ナラは微動だにしなかった。

「あなたがここで何をしようとしているか、もうわかっているわ。それに、あなたがどれほどの力を持っていようと、私には届かない。」ナラは冷静にそう言い放つ。

 リセは苛立ちを隠せず、怒りの表情を浮かべたまま一歩前に出る。手には再び黒いエネルギーが集まり、その手からは凄まじい魔力が漏れ出していた。

「ナラ・フィージャー……貴様は、俺を侮るのか?」

 しかし、ナラはゆっくりと首を振った。「侮っているわけではないわ。ただ、あなたが間違った道を進もうとしているだけ。」

 その言葉に、リセは一瞬動きを止めた。しかし、次の瞬間には彼女の手から巨大な魔力の塊が放たれ、ナラに向かって飛んできた。私もその威力に驚愕し、反射的に身を守ろうとしたが――

 ナラは動くことなく、その攻撃を受け止めた。魔力の塊は彼女に触れた瞬間、まるで霧が晴れるかのように消え去り、何もなかったかのように静寂が戻った。

「なっ……!?」

 リセは明らかに動揺している。その目に、初めて恐怖が浮かんでいた。

「あなたがいくら強力な魔力を持っていても、私の前では無意味なのよ。」ナラの声は静かでありながらも、その言葉には圧倒的な力が込められていた。

 リセは後退し、再び剣を構えるが、その目には明らかな迷いが見える。彼女は何度も攻撃を繰り出そうとするが、そのたびにナラの前では無力に終わる。

 そして、リセはついに剣を下ろし、悔しそうに歯を食いしばった。「……ナラ・フィージャー、お前がここにいる理由がまだ分からないが、覚えておけ……俺は諦めない。」

 そう言い残し、リセは消えるようにその場を去った。彼女の存在が消えると同時に、重苦しい空気もまた消え去り、私の体はようやく軽さを取り戻した。

「助けてくれて、ありがとう……でも、一体どうしてここに?」

 ナラはようやく私の方を向き、微笑んだ。「理由は単純よ。あなたを見過ごすわけにはいかなかったから。それだけ。」

 その言葉に、私は何か得体の知れない安心感を覚えたが、同時にナラの正体についてますます疑念が深まった。

「大悪魔とは、一体……?」

 ナラは静かに微笑を浮かべたまま、「その答えは、いずれわかるわ」とだけ言って、再び霧の中へと姿を消していった。

 彼女の背中が見えなくなった後、私は一人静かにその場に立ち尽くしていた。
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