無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流

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1章 エメラルドヴェール編

魔法発動

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    叫び声がする方を見ると背中には斧が刺さっており、傷口から鮮血が噴き出している。


 ───うっ痛い……痛い痛い痛いぃぃぃ

 
 (これ本物? 人が死んで……というか、この壁の赤い染みってもしかして……)

 
 そう確信すると、突如生臭い鉄の匂いが立ち込め、同時に猛烈な吐き気が襲いかかってきた。
「うっ……おえぇぇっ……」


 夢……じゃないのか。
 人が死ぬ様、血の匂い、すべてあまりにもリアルすぎる。

 
 そのゴブリンは斧を刺した相手をじっくりと観察している。
 対象が静止し生命という花が散ったであろう瞬間、やつはこちらを向き、狂気に満ちた笑みを浮かべた。

 
 あれは明確な殺意だ。
 凍るような感覚が、背筋を駆け抜け、身体中に広がっていった。
 そして先程の人の死、強い鉄の匂い、そうか……これは夢じゃない、リアルなんだ。

 
「グァァァァァ───。」
 やつは叫び声を上げながら斧を振り回している。


 ヤバい。
 ここがどこかは分からないが、このままだと俺も殺される。
 それだけは分かる。
 

 逃げないと、しかしどこに。
 そうだ、元の道に戻れば、
 ……!?
 通ってきた道が塞がっている。
 つまり、今ここに逃げ場所がなくなってしまったということになる。


 このままだと、間違いなく死……


  (……魔力を使って!)


 また幻聴なるものが聞こえてくる。
 しかし魔力が見えることも身体に流れている感覚があるのも事実であり、先程ここがリアルであることがわかったところでもある。
 だからこそもう今はもう魔力とやらに縋るすがるしかないんだ。


「わかった。やってみる! 」

 
 そう、俺は天の声に返事をした。


「よっしゃ、イメージしたぞ! 」

 
 その掛け声と同時にゴブリンに身体の正面を向け、手をかざした。


「グァァァァァ───。」
 再び雄叫びをあげたゴブリンはこちらに向かってくる。
 俺、ゴブリン間の距離は約15mほどといったところだ。
 斧も持っているため、これで魔力が発動しなければ、これブッスリと殺られるな。


 一か八か。
「うぉぉおおおおお!! 」
 イメージしたものをぶつけてみる。


 すると
「グギャァァァァ───!!」


 そのゴブリンは、容赦なく地に叩きつけられ、土埃が舞いあがるのではないかと思わせる勢いで地面にへばりついた。
 さらに俺がイメージするほどに強く。
 イメージしたのは重力魔法。
 なぜかふと思い浮かんだのがそれだった。


 ゴブリンは俺の念じる圧力に屈し、そのまま抵抗虚しく潰れ去っていった。


「これが魔力……魔法ってやつか。」


「あのー、先程はありがとうございました! 」

 
 助けてくれた女性の声に感謝の言葉を投げかけたが、その返事が返ってくることはなかった。


 これからどうしようかと思った矢先、
 どういうわけか目の前に通路が現れた。
 なんにせよ、出口を探さなければ帰れないため、俺は先に進むことにした。

 
 ◇


 あれから、少し魔法を試してみて、分かったことがある。


 ひとつは魔法ではよくある火の魔法、水の魔法など自分が知ってるようなものをイメージしてみると、
 たしかに手の平から放つことができる。
 しかしながら、規模はそんなに大きくない。
 

 ふたつ、アニメなどでは魔力量というものがあり、使える上限、下限ってのがあるようだが、
 今のところいくら使っても疲れや使えない感覚もない。
 これは空気中の魔力を取り込んでいるためか。
 もしそうならずっと使えちゃうことになる。


 みっつ、色々試したけど、今のところは重力魔法で叩き潰すのが手っ取り早い気がする。


 実際あれからゴブリンが10体ほどでてきたが、全て一撃だ。
 ほかの魔法も当ててみたが、少し時間がかかった。

 
    魔法について考えていると、またまた光が差し込んできた。
 さて、そろそろ出口でもいいんじゃないか……?
 もういい加減疲れてきたよほんとに。
 はいはい、また見慣れた空間とゴブリン……!?
 あれ、ちょっとゴブリンおっきくないか? 
 


 今まで見たゴブリンは大体、小学生くらいの身長だったが、今回のはこれ3mくらいあるぞ。
 もうこれゴブリンじゃなくてオークってやつじゃ?


「グァァァァァァ───」
 今までとは比べものにならない叫び声。


 不安になる気持ちはあるが、俺だってここにくるまで戦闘経験も多少積んできた。
    大きさが違うだけでやることは一緒だ。


 先程までと同様にイメージして、手をかざす。


「──────ッッ」
 声を上げる暇もなくボスゴブリンは重力に押し潰された。


 何度も使っているからか魔法の威力が上がっている気がする。
 身体に魔力が馴染んできているということなのだろうか。


 奥にいつも通り通路があるが、光の強さが今までと違う。
 あれは太陽の光を感じさせる明るさだ。
 それを見て、外への出口だと確信した。

 
 そして俺はこのダンジョンを突破した高揚感と、外に出られる嬉しさを噛みしめて出口へと踏み出した。
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