無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流

文字の大きさ
49 / 129
2章 魔術対抗試験編

別れの宴

しおりを挟む
 アーカシス様の領域にお呼ばれした日の夜、本当に突然だが、俺の優勝と旅立ちをかねたパーティが開かれた。
 まさか今日の今日とは思いもしなかったが、あの神様ならそうするような気もしていたよ。

 会場は魔術学院の大講堂を使って良いとのことだった。
 まるでホテルの立食パーティ会場のような場所で、煌びやかな飾りなんかもところどころについてある。

 肝心のアーカシス様は、もちろん人前に出れないため、「領域からしっかり見ているよ~ 」だと。
 ついでにセレスティアもアーカシス様に捕まってるらしい。
 あの2人仲が良いのか悪いのか分からないな。

「転校生! お前もう転校するらしいなっ!! 」
「おお、魔王……じゃなくてライラ、そうなんだよ。 身体はもう大丈夫か? 」

 1番最初に声をかけてきた人物としては意外だった。
 しかし話を合わせておいたが、ライラの中では俺が魔術学院に転入してきて、早々に転校することになってるらしいな。

「ワシの身体は心配ない! またアルカナに訪れた時には手合わせ頼んだぞ! 」
 ライラのまっすぐとした瞳、本気なんだろうな。
「ああ、こっちこそ頼むよ 」
 そう言うと、ライラは満足そうに俺から去り、バイキング形式の料理を食べに行った。

 こう見ると、めちゃくちゃ美味しそうな料理があるな。
 肉料理に魚料理にデザートにと、あまり日本と変わりないようにも見える。

 よし、俺も料理食べるか、と思った時、
「……あの、春陽さんですか? 」
 突然聞き覚えのない声に呼ばれる。

 振り向いてみると、
「うおおっ! めちゃ行列できてるんですが…… 」

「春陽さん……いや春陽様、試合拝見しましたっ! 」
「私はギルド認定試験からファンに! 」
「私もです! 」

 知らぬうちに女体盛りができるほどの人数が並んでいる。
 いや、そんな如何わしいこと思ってはいけないっ……。

 サインでも欲しいのかと思ったがそんなものは持ち合わせていない。
 いや違う、皆握手やハグなどを求めてくる。
 なんだか会えるアイドルになった気分だ。
 しかしここにできた春陽ファンクラブ?の会員は、皆教育が行き届いているのか1列に並び、順番抜かしもなし、1人につき数秒と決まっているかのような回転スピードで交代している。

 だがさすがにこの量を相手していくのは疲れてきた。
 これ一体何人目なんだ。
 次はフードを被った金髪の女性だ。

「えっと……じゃあ握手……かな? 」
 俺は彼女に手を差し出すと、
「……こっち   」
「うわぁぁっ ! 」

 彼女は俺の手を引き、会場を走り去っていった。
 ファンクラブ会員達は初めものすごい形相で追いかけてきたが、この子の走る速度が速すぎて、もう1人もついてこれていない。
「あの……どこまで走るんでしょうか? 」
「そうね、この辺かしら」
 パーティ会場を出て、学院の外まで来てしまった。
 人通りがないことを確認して彼女はフードを下ろした。

「セリア!?  なんでこんな真似を? 」
 なんとなく髪の色や体格、声色でそんな気もしていた。

「いや、こうでもしないとあなたと話ができないなと思ってね…… 」

 セリアがこんな大胆なことをするとは思わなかった。
 俺のイメージではもっとクールビューティで余裕のある女性という感じだ。

「……あなたにはお礼を言いたくて 」
「お礼? 」
 第3試験のことだろうか。

「第3試験では助けてくれてありがとう! それと見苦しいところを見せたわね 」
 お礼を言い慣れてないのか、少し恥ずかしそうだ。
 そしてツンデレのデレたような表情をしている。
 初めて会った時は孤高のプライドを持っていたイメージだったが、だいぶ性格も素直に変わったような気がする。

「本当に助かった。 あなたは私の……いや、ウィスパー家の恩人です 」
「そんな大層なことしてないよ 」
「昔、親にね、怖い話を聞かされていたの。 ウィスパー家を恨んでる魔族が200年アルカナに潜んでるって。きっとそれがあのヴォルガンって男。 だから私あいつが第3試験に現れた時恐ろしくて手も足も出なかった。震えも止まらなかった。 だからあの場で助けてくれたあなたにはとても感謝してます。 謙遜なんてしないで  」

 そう言われると素直に感謝の気持ちを受け取るしかないな。
「ああ、どういたしまして。 また困ったらなんでも言ってくれ。 俺らもう友達だし 」
「……友達? 」
「え、ああ 」
「ううっ……うっ……」

 セリアは嗚咽を堪えるようにし、涙を流している。
 やばい、友達なんていらんことを言ってしまったか。

「……え、えっとセリア……? 」
「……ごめん、今まで誰にも頼らず生きてきたし、親にもそう育てられたからハルの言葉が嬉しくて。 それに友達……っていい響きね  」

 その時セリアが目を腫らしながらも、子供のような無邪気な笑顔を俺に向けてくれた。
 普段は強がっているたくましく見える彼女だが、もしかしたら素は無邪気で可愛い女の子なのかもしれないな。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

異世界に転生したけど、頭打って記憶が・・・え?これってチート?

よっしぃ
ファンタジー
よう!俺の名はルドメロ・ララインサルって言うんだぜ! こう見えて高名な冒険者・・・・・になりたいんだが、何故か何やっても俺様の思うようにはいかないんだ! これもみんな小さい時に頭打って、記憶を無くしちまったからだぜ、きっと・・・・ どうやら俺は、転生?って言うので、神によって異世界に送られてきたらしいんだが、俺様にはその記憶がねえんだ。 周りの奴に聞くと、俺と一緒にやってきた連中もいるって話だし、スキルやらステータスたら、アイテムやら、色んなものをポイントと交換して、15の時にその、特別なポイントを取得し、冒険者として成功してるらしい。ポイントって何だ? 俺もあるのか?取得の仕方がわかんねえから、何にもないぜ?あ、そう言えば、消えないナイフとか持ってるが、あれがそうなのか?おい、記憶をなくす前の俺、何取得してたんだ? それに、俺様いつの間にかペット(フェンリルとドラゴン)2匹がいるんだぜ! よく分からんが何時の間にやら婚約者ができたんだよな・・・・ え?俺様チート持ちだって?チートって何だ? @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 話を進めるうちに、少し内容を変えさせて頂きました。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

追放された最強賢者は悠々自適に暮らしたい

桐山じゃろ
ファンタジー
魔王討伐を成し遂げた魔法使いのエレルは、勇者たちに裏切られて暗殺されかけるも、さくっと逃げおおせる。魔法レベル1のエレルだが、その魔法と魔力は単独で魔王を倒せるほど強力なものだったのだ。幼い頃には親に売られ、どこへ行っても「貧民出身」「魔法レベル1」と虐げられてきたエレルは、人間という生き物に嫌気が差した。「もう人間と関わるのは面倒だ」。森で一人でひっそり暮らそうとしたエレルだったが、成り行きで狐に絆され姫を助け、更には快適な生活のために行ったことが切っ掛けで、その他色々が勝手に集まってくる。その上、国がエレルのことを探し出そうとしている。果たしてエレルは思い描いた悠々自適な生活を手に入れることができるのか。※小説家になろう、カクヨムでも掲載しています

処理中です...