無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~

甲賀流

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5章 シャドウバレー編

戦闘開始

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 ギィィィィィ――

 開いた扉の先には魔族が2人。
 おそらくダークオーダーなんだろうと思わせる魔力量。
 そして2人とも顔立ちも良く、綺麗な銀髪がそれをより引き立たせている。
 見た目だけで判断するとしたら同じくらいの歳にも見えるが、魔族だし何百歳とかなんだろうな。
 

「なんだ~お前~? ここはマルコス様のご自宅だ! 間違って入ったのなら見逃してやらんこともない 」

「お兄ちゃん……この人、人間だよ 」

「なにィィィ!? それなら見逃すことはできんな! お前は何しにここへ来た? 」

 なにやら見逃してくれない方向で話が進んでいるようだ。
 元々逃げるなんて考えてもいないが。

「えっと友達のエレナを連れ戻しにきたんだ 」

「友達か! 見つかるといいな。よし、僕は検討を祈ることにするよ! 」

「お兄ちゃん……エレナ様はダメだよ、マルコス様の大事なひとだってさっき聞いたじゃない 」

「お――! そうだった、そうだった。 なら尚更通せんな! 」

 くそ、あのお兄ちゃんチョロそうなのに、妹が淡々とした口調で兄をコントロールしている。
 戦闘になりそうな雰囲気だな。

「ティア、さっき言った通り領域に隠れていてくれ! 今ここでティアがやられたらマルコスには勝てない。 そうだろ? 」

 彼女は何度か自分を納得させるように頷き、そして
「わかった。わかったよ、春陽。 ボク領域に隠れてる! 危なくなったら呼んでね? 」
 そう答えを出した。

 そう言ってすぐにティアは転移した。
 神様は詠唱も魔法陣もなくすぐさま転移できる。
 今考えるとすごいことだよな。

 というか俺ノクティス様の力を引き継いだんだし、できるんじゃないか?
 いや、今考えてもやり方が分からないし、無事にここから帰ったらティアに教えてもらおう。

「あれ? そこのちっちゃいのどっか行っちゃった? まぁいいか! 」

「お兄ちゃん……だめ、多分あれがマルコス様の言ってたセレスティア。 神様。 捕獲対象 」

「なら逃がしちゃったらマズかったな! そこの人間、神様を呼んでこい! 」

 どうやら俺にティアをここに呼び戻して欲しいらしい。
 やはり彼女はマルコスに狙われているようだ。

「ごめんな、俺も呼び方分かんないんだ  」

 あのアホっぽい兄ならこれで乗りきれるかもしれない。

「そうか! 仕方ないなっ! 」

 あ、本当にいけた。

「お兄ちゃん……ならあいつを殺そうとしたら嫌でも出てくるんじゃない?  」

 さすがしっかり者の妹。
 その可能性は充分にある。

「ナコ、さすが僕の妹! 頭がいいな! なら僕があいつを殺すからナコはここでゆっくりティータイムでもしておいてくれ  」

「お兄ちゃん……私、人間が死ぬところ見ながらお茶飲む趣味ないんだけど  」

 おそらくあの2人、ダークオーダーでも中堅くらいか。
 転移前に現れた双子より少しだけ魔力量が多い気がする。
 何にせよゾルガンほどではないなら問題ない。

「そこの人間よぉ、ナコがティータイムを窘めないんだ。 速攻で始末してやるぜ  」

 そう言って兄の方が戦闘態勢に入った。
 しかし他の魔族のように、魔人化などせず余裕綽々といった様子で準備運動をしている。

 やっぱり俺、魔力器官がないからいつも相手に舐められるんだよなぁ。
 油断してくれるし、それはそれでありだけど。
 でもなぁ、やっぱり腹は立つ。

「ちょうどいい! 俺も急いでるんだ  」

「ハハッ! 魔力も感じないほどの人間が何をできるんだ! 」

 相変わらず舐められてるのも癪に障るし、一度重力魔法を使ってみようか。

「重力魔法【 ハイグラビティ・ザ・ラスト 】」

 俺は兄に手をかざし、魔法を唱える。

「……!? ぐぬぬ――! な、なんだ……! グア――ッ! 」 

 ドスンッ――

 彼は地に伏せるような形となった。

 もう上位魔族レベルにも効果が出るようになったな。
 今更だが、使えば使うほど魔法の熟練度的なものが上がっているような気がする。

 さすがに今の今まで冷静だった妹さんも兄が不利になっている姿を見て驚きと焦りの表情を表した。
 そしてその感情はすぐ怒りへと変わる。

 それは闇のエネルギーにより具現化し、ナコの身体を覆っていく。

「お兄ちゃん……私本気でいくね  」

 冷静に淡々と発しているその言葉からは、内なる怒りのような感情が伝わってくる。

 そして魔人化した彼女が宙を最速で駆けてきた。
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