R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

イット

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プロローグ

第1話 女神と役目

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「はぁ……はぁ……マジ最悪だ。祝日だってのに……」
 俺は今、とある山の斜面を登っている。
 鬱蒼とした森の中をかき分けながら、口から漏れるのは愚痴ばかりだ。

 俺の名前は瀬川凛人せがわりんと。世界屈指のオカルト雑誌「ヌー」の編集部に勤めるごく普通の40歳になるおっさんだ。

 日々締め切りに追われ精魂共に疲れ果てたおっさんが、貴重な祝日になぜこんな所にいるかと言うと……
5日ほど前にこの山で目撃された白い光の柱が原因だ。

2日ほど前にはアメリカのシアトルにも出現したらしい。シアトルは黄色の光だったと聞いたが。

30分ほどで消えたその光の柱は大勢の人々に目撃され、スマホ等で撮影された画像がネットを騒がせていた。
さらにオカルト系のYouTuberたちが、やれ終末だ宇宙からのメッセージだとこぞって取り上げたため、瞬く間にSNS上で火が付いてしまったのだ。

 そして遡ること3時間前、同じ場所でまたその光の柱が目撃されたことで、自宅が現場まで一番近いという理由で俺に白羽の矢が立ったわけだ……

 それにしても山に勝手に入って大丈夫なのか?持ち主もいるだろうに。
何かあったら自分が責任を持つと編集長が言っていたものの、見つかれば真っ先に地主に怒られるのは俺である。

それになんで一人なんだよ……

俺は方位磁石を握りしめ、愚痴と共にそんな心配もしていた。


――――どれほど歩いただろうか。
俺はリュックの中のスポーツドリンクを取り出し、一気に半分ほど喉に流し込んだ。

運動不足の40歳にこの山はかなりきつい。唯一の救いは、この山は熊の目撃情報はないらしい。
あったら俺は絶対に来ていない。たとえクビになっても断っていただろう。

俺はタナトフォビア死恐怖症であると自覚している。こうなったきっかけはわからない。

いつしか、死というものを考えだすと呼吸がうまくできないし夜も眠れなくなっていた。

誰にでもいつかは平等に訪れる死。考えたくもない……憂鬱になる。

海外の取材も飛行機が苦手で断っている。一度も事故が起きたことがないと謳う航空便でも「初の事故」がその時起こらないとは言い切れないからだ。

臆病?いやいや、自己防衛意識が高いと言ってもらいたい。

 俺は例の画像を見て現在の位置を確かめた。
「えーと、画像だと多分この辺りのはずなんだけど……もう少し登ってみるか」
草をかき分けながら、マダニとかいないだろうなと心配しつつ斜面を登る。

5分ほど歩くと、一気に視界が開けた。


「な、なんだこれ」


そこは不自然なほど草木が生えておらず、半径10メートルくらいの円形状の空間になっていた。

とりあえずサークルの中央まで足を運ぶ。どう見ても自然にできたものでないことは一目でわかった。
場所的にあの光の柱が関係しているのは一目瞭然だ。

「信じられねぇ……おっと、気味悪いしさっさと終わらせて帰るかぁ」

俺はスマホを取り出し様々な角度からサークルを撮影していった。
「よし、後はこれを編集長に送ってチェックしてもら……」

その時である、ゾクッと背中に悪寒が走った。

何かがヤバい。直感と防衛本能がそう告げた次の瞬間、俺は目が眩むほどの光に包まれた。



――なんだろう、凄く心地いい……



「はぁぁ……なんだろうこれ……気持ちいい、まるでフワフワと浮いてるような……」
ほのかに暖かく、俺の身体はまるで聖母にでも抱かれているような絶対的な安心感に包まれていた。
徐々に光にも目が慣れてきたころ、俺はようやく自分の現状に気が付いた。

「え!?本当にう、浮いてる!?」

光の柱の中、俺の身体は地上20メートルはあろうかという高さに浮かび上がっていた。

「ぎゃあああああああ!!!!キャトルミューティレーションじゃねぇかああああ!!!!」

キャトルミューティレーションと言えば、UFOからの光線で船内に連れて行かれ、ありとあらゆる解剖をされると言うのがオカルト界での常識である。

「か、神様!!あ、いや宇宙人様!?キャトルミューティレーションと言えば牛じゃないですか!!ねぇ!?山のふもとに牧場がありました!!そっちの牛でお願いします!!俺は勘弁してくださいぃぃ!!!」

パニックになり泣きじゃくる俺に、穏やかで美しい声の女性がささやきかける。

「死を拒絶し生をなにより重んじる方よ、どうか安心してください、あなたを解剖なんて致しません」

「ほう、本当ですか!!?」
「はい、しません」
「痛いのとかも無しですよ!?」
「……はい、ご安心ください」
「え……今ちょっと間があきましたよね……?」
「フフ、気のせいですよ」
「は、はぁ」

美しく穏やかな声の影響なのか、冷静さを取り戻した俺はその場で思い浮かんだ問いを投げかけた。

「あ、あの……これはいったいどういう状況なんでしょうか、あなたは宇宙人なんですか?俺はこれからどうなるんでしょうか……」

すると、声の主は語り始めた。

「そうですね、まずは私のことを知って頂きたいと思います。私の名はストレイア、このガイア……地球とは違う世界線にある惑星の大地の女神と呼ばれている者でございます。」
「違う世界線って、パラレルワールド!?」
「はい、あなた方には異世界と言った方がわかりやすいでしょうか」

 異世界って……そして女神?何が何やら……

 俺は恐る恐る聞いてみた。
「あ、あの、その異世界の女神さまが私なんかに何の用なのでしょうか」
「私は何より死を忌み嫌い、恐れ、生に執着する者を探していました。あなたがここに来たのもきっとガイアの導きなのでしょう」

ガイア?ガイアって確か地球の大地の女神……

「あなたには一度、今ある肉体、魂を消滅させた後、生まれ変わって頂きます。」


 消滅!?俺は我が耳を疑った。いきなり消滅なんて言われても……


「消滅って、どういうことですか!?おお、俺は死ぬって事ですか!?」
「死ではありません、転生です。あなたには私たちの世界に転生してもらいます」

 そんな、いきなり転生なんて言われても……大した人生ではないけど、俺は今の生活を多少なり気に入っている。いきなりそんなことを言われても納得できるはずがない。
 思考を巡らせ黙り込んでいると、ストレイアがまた語り掛けてきた。

「転生することで、あなたの忌み嫌う死から最も遠い存在になることができます。それは、あなたにとって大いなる恩恵になると思います」

死から最も遠い存在、その言葉に俺は即座に反応してしまった。

「それはどういうことでしょうか!」
「はい、肉体と魂の消滅後、あなたは転生時に星と同化した存在となります。星の持つ無限にも等しい大いなる力があなたを不老不死の存在へと変えるでしょう」

 どうしよう……とんでもなく唐突で突拍子もない話にもかかわらず、俺はひどく興奮していた。

 信じる信じない以前に今起きていること自体が奇跡であり現実で、その渦中に今俺はいるのだ。
 夢だったら夢でもいい。俺に実害はないしな。
 でも一つ気になることが……

「あの、消滅とおっしゃられましたけど、それはいったいどういう……」
「はい、物質のままの状態では転移できないため、肉体は分解され光の粒子となり異世界へと運ばれます。肉体の消滅時にを感じますが、大したことはありません。ご心配なさらずとも大丈夫ですよ」
「ほ、ほんの少しとは……?」

「まずは体中の血液が沸騰を始めます。アチチっと感じた瞬間ボキボキと全身の骨という骨が音を出してきしみだし、ちょっと横になろうかなと寝そべったところをダンプカーにひかれる程度です。体感時間として3分程度でしょうか。問題はないかと思います」

「問題大ありじゃああああああああああ!!!!!!!!!!!ムリムリムリムリ!!!!」

 俺の叫びも空しく、身体から光の粒子が舞い始める。
「すみません。もう後戻りはできないのです。では、転生を始めます」



「いやだああああああああああああ!!!!!!!!!!!」





♢ ♢ ♢ ♢





――――気が付くと俺は、見慣れない荒野に寝そべっていた。
勢いよく上体を起こした俺は、両手で自分を強く抱きしめた。
「あんな苦しみ死ぬより辛いんじゃないか……一生もんのトラウマ決定だよ」

しくしくと泣いている俺にまたあの声が囁いてきた。

「転生は無事に済みました。お疲れ様です、瀬川凛人さん」

その声に反応して俺は反射的に空を見上げた。すると何かが落ちてくる。
落下してきたその物体はズシンと鈍い音を立てて地面にめり込んだ。

 何やら紋様が刻まれたボウリングの玉サイズの丸い石だ。
「それをあなたに託します。従者としてきっとあなたの助けになるでしょう」

 従者?この石の玉が?何が何やら……
「ストレイア様、俺はこれからどうすればいいのでしょうか。こんな辺鄙な所に放置されても少し困るんですが……」
「機械文明の発達で、マナが枯渇しかけているガイアから来たあなたならきっと大丈夫です」
「だ、大丈夫ですって……」

 いや違う、俺は核心的な部分を聞かないといけない気がする。いきなり星の女神とやらが現れて不老不死の身体をもらって、異世界に転生しましたおめでとうなわけがない。

それに本当に俺は不老不死になってるのか?いまいち実感がわかない……
どうすればいいではない。を聞かないといけない。

俺だって40の大人だ、それくらいはわかる。死という不可避なものから逃れるほどの代償とはどれほどのものか……




「ストレイア様。俺はこの世界で何をすればいいんですか?」




「――――あなたには、この星の知性ある者たちを滅ぼしてもらいます」




そう言い放った彼女の声は、ひどく冷静で冷たく、
そして愁いを帯びているように俺には聞こえたんだ。

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