R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

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第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編

第3話 辺境の村マカロ

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 全身から血を流し、目を見開いたまま無残に倒れている俺の身体から光の粒子が舞う
 シュウシュウと身体から蒸気が上がり、俺はムクリと起き上がった。

 手を握ったり開いたりして体の動きを確かめる。
「やっぱ死なないんだな……」
 俺は冷静だった。当たり前だ、この世で二度も死んだやつはいないだろう。ある種、俺は達観してきていた。
 森の瘴気も、多少気分は悪いものの慌てるほどのものじゃなくなっていた。

 俺は石の玉をひょいと拾い上げ、林道を奥へ奥へと進んでいった。

 漂う瘴気の向こうから何かがやってくる。

「な、なんだ。あれ……」
空気がビリビリとする。あれは絶対に見つかってはいけないものだと脳が警告をする。
 俺は林道から逸れ、木の後ろに身を隠した。

 歩くたびに地響きを起こしながら、は近づいてくる。

 異形の化け物……

 博物館で見る恐竜の骨格よりもはるかに大きいその怪物は、俺に気付かず通り過ぎて行った。
 動悸と冷や汗が止まらなかった。さっきの狼なんてものじゃない。あれは「死」そのものだ。

 俺は林道を歩くのをやめ、木々の間を隠れるように移動していった。


 ――数時間は歩いただろうか、もう朝になっていた。俺は自分の身体の変化に気付く。

「心はぐったりだけど、そういえば身体は全く疲れないな。これがストレイアが言っていた地球のマナとこっちのマナがどうこうってやつの恩恵か?いや違うな。確かにこっちに来てから身体が軽い気はしていたけど、最初にあの荒野を歩いていた時は確かに疲れたし、暑さにも苦しんだ。まあ、死んじゃったし……何か別の……」

 思考を巡らせながら歩いていると、遠くにうっすらと光が漏れている。

「で、出口だ!?」

 俺はもう構うもんかという気持ちで、林道へ戻り光の方へ駆け出した。



 ――――地獄の森は終わった。俺の目の前には青空と見渡す限りの草原が広がっていた。

 そしてなにより空気のうまいことうまいこと!!
 俺はめいっぱい深呼吸をした。そして草原に駆け込み倒れ込んだ。
「あーー、しんどかった……体は大丈夫でも精神がもう限界だよ」

 俺は休んでいる暇はないと起き上がり、遠くを見渡した。
「ん?あれは……」
 かなり遠方だが、煙のようなものが上がっているのが見えた。そして建物が密集しているようなシルエットが見える。

「むむ、村だ!!!!」

 この世界には様々な種族が存在しているらしい。ストレイアは人種ではなく種族と言っていたので、おそらく人間ではない者たちもいるんだろう。
 あの村が人の村かはわからないし、言葉が通じるのかもわからない。でも、もう孤独は嫌だし行けば何かしらの進展はあるだろうと、俺は駆け足で向かった。



 ――遠くの丘の上から望遠鏡でこちらを見ていた兵士らしき男に、俺は気づきもしなかった。
 馬上の兵士は小さな水晶のようなもので短い時間誰かと会話した後、走り去っていった。



 草原を小一時間ほど歩くと、俺は何かを発見した。

 「ん?あれは」

 小さな岩陰に靴を履いた足のようなものが見えた。
「誰かいる!おーい!」
 俺は興奮して駆け寄った。
 
「すみません!あの、俺は……!」
「うあっ!!!」

 岩陰にいたのは少年だった。10歳くらいだろうか、何にせよ人間だ。

 「く、来るなっ!!!」
 「うわぁっ!!!」

 少年は刃がボロボロの小型の剣を俺に向けてきた。

「ちょ、ちょっと待って!俺は人間だよ、怪しいものじゃないから!」
 少年は訝し気に俺の顔を睨みつけていた。剣先が震えていたので怯えているようだった。

「だって、あの森から出てきたじゃないか!オレ見てたんだぞ!あの森は瘴気にやられてる死の森だ!人間が出てくるわけない!」

 死の森?あぁ……そう呼ばれてるのね。確かにそんなところから出てきたらこんな反応にもなるか。
 それに、確かにあそこは人間が生存できるものじゃなかった。(俺も2分くらいで死んじゃったし……)
 
 よく見ると、少年は足に怪我を負っていた。
「そ、それより君、怪我してるじゃないか、どうしたの?」
「ストーンモールに噛まれただけだ、この剣で追っ払ってやったけどな!」

 ストーンモール?なんだろうそれは。なんにせよ危険な生き物がいることはわかった。
「ちょっと見せてみて」
「ち、近づくな!!アンデット!!」

 少年は警戒を解いてくれない。まあ仕方ないか。にしてもアンデットって……
 失礼過ぎる。こんな虫も殺さないような真面目なおじさんに向かって。

 その時である。そこかしこの土がボコボコと盛り上がり始めた。

「うあっ!ストーンモールの群れだ!!」

 少年は叫んだ。盛り上がった土からそいつらは顔を出した。

 こ、これはモグラ!?目は退化して見当たらないが、鼻をひくひくとさせて辺りをうかがっている。
 そしてモグラにしては大きい、例えるとタヌキより少し大きい感じだ。
 土は盛り上がり続け、5、6、7、8とその数を増やしていった。そして血の匂いを嗅ぎつけた一匹が少年へと襲い掛かった。

「うおおおおおおおおおお!!!!」

 俺は咄嗟に、持っていた石の玉をその大きなモグラに向かって叩きつけた。
 ズドン!という衝撃音と共に地面は爆発したように1メートル四方が抉られ、モグラは潰れて死んでいた。

「うわぁ!なんだこれ!!」
「うわぁぁ!やっぱ化け物だ!!」

 二人でパニックになりかけたが、俺は「いくぞ!背中に乗れ!」と声をかけた、少年は躊躇していたので、俺は「死にたいのかっ!!」と怒声を飛ばした。

 「う、うん、わかった!」

 その声にハッとした少年は、素直に俺の背に乗った。
 少年を背に乗せると俺は全力で走り出した。もちろん奴らも土中を追ってくる。


「う、うわあああああ!!お、お前一体何なんだよ!!落ちるーーーー!!!!」

「ふおおおおおおおお!!!!俺なんでこんなに速いのぉぉぉ!!!!」

「し、知らねーってそんなことぉぉぉ!!!!」


俺は脱兎のごとく駆けた。ストーンモールの群れはぐんぐんと引き離されていく。
あっという間に村のゲートが見えてきた。175㎝の俺の背丈くらいの木の壁が村を囲んでいる。

「早く村に入って!!」

 村のゲート前には、村人が10人ほど集まっていた。

「どいてっ!!どいてくれぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 俺は滑り込むように村へと飛び込んだ。
 ズザザザザっと顔でスライディングするようにして俺は止まった。

「リーヤ!!!!」
 驚きで村人が唖然としている中、軽装のアーマーを着込んだ男が叫んだ。背中には立派な斧を背負っている。
「と、父ちゃん……帰ってきてたんだ」
リーヤという名らしき少年が呟いた。

「だ、大丈夫か?兄ちゃん……」
兄ちゃんというのはさておきリーヤが俺の心配をしているので、半分顔が埋まったまま、お父さんのところに行きなさいと指でジェスチャーした。

「父ちゃん……ごめん……俺、その」
「バカヤロ――――ッ!!!!」
そう言うと男はリーヤにキツイ拳骨を食らわせた。

「いってぇぇ――――ッッ!!!!」
リーヤは頭を抑えて転げまわっている。

「あれほど村の外には出るなと言ったのに!なんでお前はいつもいつも!! それに足を怪我してるじゃないか!何にやられた!?」
「ストーンモールに少し噛まれただけだよ。それにしても怪我してる息子を殴るなんてさぁ」

なにぃ!?とまたヒートアップすると、リーヤは村人の男性の後ろに隠れた。

「まあ、なんにせよストーンモールなら消毒しておけば大丈夫だろう。無事でよかった、リーヤ」
「父ちゃん……ごめんなさい」

 リーヤの父はこちらに目線を向けた。
「で、あの人は?」
「ああ!俺を助けてくれた兄ちゃんだよ!すっごく足が速いんだぜ!落ちたら死ぬって思った!」

 村人たちはリーヤに無事でよかったな、などと声をかけ、わやわやと家や畑などに戻って行った。多分リーヤを探すために集まってくれていたのだろう。
 男は、お騒がせして申し訳ないとみんなに頭を下げていた。

 次に、男はこちらに近づいてきて深々と頭を下げた。
「リーヤを、息子を救ってくれて本当にありがとうございます。」
「い、いえいえ。たまたま通りかかっただけで」
 俺は頭の土を払いながら言った。

「私はエンデルと言います。見たところお若いようですが、こんな辺鄙な場所にどちらから?」
「あ、私は瀬川凛人と言います。旅をしていたんですがちょっと仲間とはぐれてしまいまして~……ハハハ」
 苦しい!苦しすぎる言い訳だ!だが素直に話すわけにはいかない。あの時のリーヤの怯えようからすると、非常にまずい事態になりそうだ。
「セガワリントさんですか。この国では聞かない名前ですね。お顔立ちも見かけたことがない。異国からの旅ですか?」

 あんまり詮索しないでくれよぉぉ!……と思いつつ、南方の国からですと誤魔化した。
 この国が最南端とかだったら終わりなのだが。

「ああ、ですとアベリーゼ共和国とかですか?あそこは多民族が集まる都市国家が複数あると聞くので」
「そ、そうです!アベリーゼ?共和国です~ハハ、ハ」
「そうですか。私は冒険者をやっていまして、リントさんも旅をしてきたとのことですが、商売でもやっておられるんですか?最初は冒険者かと思ったんですが、武器なども持っておられなかったので」
「は、はい。行商であちこち回っていたんですが、怪物に襲われてはぐれてしまいまして」
 嘘をつくスキルが上がってきた。

「そうだったんですか……お仲間が無事だと良いのですが。あ、わたしはちょっと村長の所に報告に行きますので、リーヤと家で待っていてください。お礼と言っては何ですが、食事くらいはごちそうさせてください」

 エンデルは村の奥へと歩いて行った。それよりも……

 食事だ!!!!一日以上ぶりの食事ができると、俺は興奮した。

 「兄ちゃん、家に行こう!妹の料理うまいんだぜ!」
 あれ?いつのまにかリーヤが俺を怖がっていないような。
「なあリーヤ」
「なんだよ兄ちゃん」
「お前俺のこと怖がってなかったか?アンデット~~って」
「ああそれか、この村は神父様の結界が張ってあるからな。アンデットや魔物は入れないんだ」

 なるほど、それで態度がガラッとかわったのね。あ、それともう一つ。

「リーヤ、俺が森から出てきたのは内緒だぞ」
「わかってるって、兄ちゃん命の恩人だもんな!男は口が堅くなくちゃいけねーんだ!」
「ありがとうな」
「それに、兄ちゃんはきっと名のある冒険者だとオレは思ってるんだ!」
「……え?」

 目をキラキラさせて俺を見つめてくる。純粋なまなざしに気圧される40歳。

「何か事情があって隠してるんだろ?あの石での一撃もすごかったもんなぁ!足も騎士様の馬ぐらい速いし!」
 な、何か盛大な勘違いをしているようだが、なんかうれしそうだしまあいいかと俺は愛想笑いをしていた。

「ここが俺の家、入ってよ!」
「お、お邪魔しまーす」

 中に入ると、女の子がせっせと料理をしていた。
「あ、お兄ちゃんお帰りなさい」
「あぁ、ただいま。こいつが妹のコレット。コレット、オレの命の恩人のリントさんだ。くれぐれも丁重にもてなしてくれよ!すげー人なんだから!」
「わかったわよ」

 コレットはやれやれという感じの態度だ。

「それよりお兄ちゃん?また村の外に出たんだってね」
「うっ……もう父ちゃんに殴られたから終わったんだよその話は」

 コレットは腰に手を当てて怒っている様子。

「ほら反省してないじゃん!死んだりしたらどうするの!?お兄ちゃん弱いのに」
「これから強くなるんだよ!メイ様やアルメデウス王みたいな称号持ちの冒険者になってみせるさ!そのためには今のうちから修行が必要なんだよ」
「はぁ、お兄ちゃんには無理よ、ムリムリ。そのボロボロの剣を直す修行でもして大人しく鍛冶屋にでもなったら?」
「お前はまたそうやって!!」

 こらこら喧嘩はよしなさいって……親戚付き合いもなかった40歳独身の俺は、この年頃の子供たちへの接し方がいまいち苦手だ。
 
 「ただいま」

 兄妹喧嘩を聞いているうちに、エンデルさんが戻ってきた。

 「お父さんお帰りなさい」
 「ああコレット、ただいま」
 「リントさん気を遣わずくつろいでください、まあお世辞にも立派な家ではないですが」

 そういうとエンデルさんは優しい目でリーヤとコレットの言い合いを眺めていた。

 「いえ、いい家ですよ。やっぱり家族って良いなって思います。俺には家族はいませんから」
 「そうなんですか……まだお若いのにご苦労をなさってるんですね」
 「若いって、エンデルさんと大して変わらないじゃないですか」

 俺が笑っていると、家族3人できょとんと俺を見ている。
 「はっはっは、リントさんは冗談が下手ですね。私よりリーヤの方が年が近いでしょう」
 「え?……あの~ちょっと鏡とかあります?」
 そういうと、コレットがはいっと手鏡を持ってきてくれた。恐る恐る鏡をのぞきこんでみると……


 「えええええええええええええぇぇぇぇ!!!!!!!!!」


 突然の俺の奇声にみんなが驚いている。
 
 「ど、どうしたんですか!?リントさん!」
 「急になんだよ兄ちゃん」
 「ビックリしたぁ」
 「あ……いや、すみません突然。長旅のせいかだいぶ痩せたなって……ははは」

 どういうことか、どう見ても二十歳くらいの自分が鏡に映っていた。
 この星のマナとやらの影響なのか、それとも“死に戻り”の副作用か……?
 どうせならもっとイケメンにしてほしかったが。

 
 「ま、まあ食事もできたようですし、冷めないうちに食べましょう」
 エンデルさんが場を取り繕ってくれた。さすが年長者!といってもまだ40過ぎくらいだと思うが。

 久々に楽しい食卓だった。料理もおいしいし、何より家族団らんってものを少し感じることが出来た。
 食事も終わり、エンデルさんが何か言いたそうにしている。

「リントさん、明日私はエブンズダールに戻るのですが、一緒に行きませんか」
「エブンズダール?」
「ええ、ここから半日ほど歩きますが、国境の近くにある大きな街です。この辺りでお仲間とはぐれたとすると、もしかしたらそこにいるのではないかと思いまして。この辺りで大きな街と言うとそこしかありませんから」

 なるほど、大きな街か。これからの生活を考えると、人の多い街の方が仕事もあるだろうしいいかもしれない。この世界の情報も集めやすい。

 「わかりました。すみませんがお願いします。」
 「決まりですね。では、明日の朝に私のチームメンバーがこの村にくるので、一緒に行きましょう」
 「メンバー?」
 「ええ。私が所属している冒険者チーム「荒野の風」のメンバーです。良い奴らですよ」
 「はい、よろしくお願いします!」

 こうして俺は、冒険者チームというものに護衛されながら国境の街エブンズダールに旅立つことになった。
 きっといろんな出会いがあるに違いない。ワクワクして今日は眠れそうにないな。


 それにしてもコレットの料理美味しかったな。次の食事も楽しみだ。

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