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第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編
第7話 冒険者たち
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扉の先は異様な活気に満ちていた。
見るからに精悍な顔立ちをした者たちがたくさんいる。中にはガラの悪そうなのもちらほらいるけど。
「ようこそ、エブンズダールの冒険者ギルドへ。リント」
メイが中へとエスコートしてくれた。さすがは令嬢様だ、動きが洗練されている。
「あ、ありがとうございます」
見渡すと、杖を持った女性が歩いている。あれがウィザードだろうか。俺は早く魔法というものを見てみたいと心が弾んだ。
「メイ様だ!」と一人の男が叫ぶと、大勢が一斉にこちらを見た。注目されたくない俺は、まずい!と後ろを向いたがそれはただの取り越し苦労だった。皆の目線はメイにしか向いてない。俺に関心のある人なんか誰もいなかった。
ここでもメイの人気は凄いものだった。そりゃそうだ、上を目指す冒険者たちにとっては雲の上の存在なのだろう。
「メイ様!おれもうすぐAランクに昇格できそうなんです!ダンジョンの話とか聞かせてください!」
「あらそう、おめでとうカイセル。良い目をするようになったわね、Aになったらグッド・ルッキング・ガイの特別枠に入らない?」
ま、また勧誘してる……
人混みの中にエンデルさんたちの姿を見つけた。俺は駆け寄って話しかけた。
「エンデルさん、やっぱりみなさんも来ていたんですね」
エンデルたちは「誰かな?」という表情だ。兜をかぶっているのを俺は忘れていた。
「俺です、凛人ですよ」
「おお、リントさんでしたか!なぜそんな恰好を?」
「俺の見た目は目立つみたいなので」
三人はなるほど、と納得している様子。
「ところでリントさん、辺境伯様の屋敷ではどんな話を?」
とエンデルが言うと「心配してたんだぞ」とオーリスが肩を叩いてきた。
「どこから来たのかとかそんな感じの話です」
「そうですか、何より無事でよかった。それより、メイ様と一緒にいたように見えたのですが」
「ええ、話のあと、メイさんからギルドに行かないかって誘われてきたんです。このアーマーもいただきました」
オルボイは驚き、オーリスは「マジかよ!」と悔しそうにしている。
「お仲間は見つかったのですか?」
「いえ、ここにはいなかったようです」
「そうですか……残念です」
エンデルはパンと手を叩くと、ある提案をしてきた。
「リントさん、来たついでですし冒険者登録をするというのはどうでしょう」
「お、俺がですか!?」
「はい、登録なら15歳以上はだれでもできますし、もしお仲間が見つからなかった場合……もしもの話ですが。その場合、登録をしてここでランク上げをするのが良いと思いまして」
冒険者としてランク上げか。魔物退治とかは怖いけど、死なない俺にとって悪い話ではないかもしれない。お金も稼げるし。
「まずはEランクとして薬草などの素材集めからですが、三食パンとスープを食べられるくらいの報酬にはなりますよ」
「はい!やってみます!」
俺は二つ返事でその案を呑んだ。
「ではカウンターへ行きましょう」
俺はエンデルさんに付いてカウンターへと向かう。そこには二人の受付嬢が立っていた。
「お疲れ様です!あれ?見かけないお姿ですね。ご依頼をお探しの場合は、あちらの掲示板に貼ってありますのでご自由に閲覧してください!」
元気な女性だ。可愛いしきっとここの看板娘なんだろう。
「いや、この人はまだ登録をしてないんだ、ネイル」
「あ、エンデルさんお疲れ様です!未登録の方だったんですね。ご立派なアーマーを着てらっしゃるのでてっきり登録済みかと」
ネイルは上から下まで舐めるように俺を見てくる。
「ごめんなさい!では登録する前に、少し長くなりますが説明をしてもよろしいでしょうか?」
「は、はいお願いします」
そういうとネイルは資料を手渡してきて説明を始めた。
「まずはみんなEランクでの登録となります。薬草集めとかが主な依頼ですね。そして3ヶ月経つと自動的にDへ昇格となります。下級と判断された魔物退治などを請け負ってもらいます。ですが……」
ネイルは少しうつむいた。
「ここで命を落としてしまったり、けがが理由で引退する新人の方も多いので気を付けてください!」
Dが冒険者にとって一つ目の壁か。
「続いて、ギルド長の許可が出るとCランクへの昇格が認められます。下級の魔物退治に加えて、村の警護などの依頼も受けられるようになります。この辺りから生活が安定してくると思いますので頑張ってください!」
「そして、またまたギルド長が許可した人たちはBランクへと昇格します。街や王都の外での、商人や貴族の護衛なんかもここからなので生活が一気に潤います!貴族や商人は羽振りのいい人たちも沢山いるので、依頼料の他にチップをはずんでくれる場合もあります」
ああ、これはエンデルさんが説明してくれたな。俺は、BとAの説明はエンデルさんたちにもう聞きました、と、ネイルに伝えた。
「かしこまりました!そしてここからがすごいんです。Aランクとしてダンジョンでの功績が認められると、晴れてSランクへの昇格が認められます!王や王宮からの依頼も任されるようになります!」
ネイルはフンッと鼻息を荒くして説明し出した。それだけSというのは凄いんだろう。ってことはオリハルコンのメイさんはどれだけすごいんだよ……もはやアルファベットでもないし。
「次のS+は選ばれし精鋭たちしかなれません。王国や帝国の騎士団長に迫る実力者です。そして、ここからが本当にやばいんです……」
俺はごくりと唾を飲んだ。
「ここからは「称号持ち」として国から称えられる超人たちのゾーンです」
「ゴールド、プラチナ、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトの称号の順で富と名声を得る、まさに国家の守護神。スーパーヒーローたちです!!その辺の貴族より国での立場も上です!!」
メイさんは上から二番目なのかよ!どうりで羨望の眼差しを集めるわけだ。
「なれる人は一握り、身体を循環しているマナをオーラに変換できる資質を持った超エリートだけに与えられる称号です!」
ネイルが興奮していると、もう一人の受付嬢が近づいてきた。
「こらネイル、説明は大まかで良いって言ってるでしょ。資料に書いてあるんだから」
「ご、ごめんなさいエレオナさん。いつも興奮しちゃって。エヘヘ」
「何をしている、邪魔だから早く立ち去ってくれないか?」
後ろから冷静で冷たい声が飛んできた。
「あ、スナッシュさん。ご、ごめんなさい!早く済ませます!」
ネイルが慌てたように書類等を準備している。
「ん? 誰かと思えば、初老のBランク冒険者チームか」
エンデルさんたちがその男を睨みつけている。
「すまなかった。もう少しかかるから待っててくれないか?」
「フン、ギルド長も何を思ってお前をBに昇格させたのか」
「なにっ!!」
男の挑発にエンデルさんは歯を食いしばっている。
俺はネイルさんに「この人は誰なの?」と聞いた。
「Sランクチーム「稲妻の騎士」のスナッシュ・イーガライルさんです。前は王国の騎士様だったって噂です」
え、Sランクの元騎士!?とんでもなく関わりたくない相手だ。
「俺は昇格を認めていなかった。罪人の血を引くものが貴族の護衛が出来る立場にいるのは、冒険者そのものの品位を下げる行為だ。お前の存在は我々にも不利益でしかない」
この男の喋り方は冷静で抑揚も少なく、淡々としているため茶化すというより芯をついてきているように感じる。言われている方はきついだろう。
エンデルさんたちは拳をギュッと握りしめている。でも言い返せないようだ。
「てめぇ!」とオーリスが一歩踏み出すが、エンデルがそれを制止した。
「やめろオーリス。やつには、三人がかりでも勝てない」
エンデルさんの歯を食いしばる音がギリギリと俺にも聞こえてくる。
「そ、それじゃあこちらに記入をお願いします!」
「あ、は、はい」
ネイルさんが顔を引きつらせながら俺に紙を渡してきた。俺は紙に記入をしてネイルへと渡した。
なぜかこの国の言葉を俺は理解し、書くことが出来た。
「えっと、セガワリントさんですね。Eランクからのスタートになりますのであちらの……」
「ちょっと待って」
メイが突然割って入ってきた。
「め、メイ様どうかなさいましたか?」
「ネイルちゃん、彼をBランクで登録していただけるかしら?」
ええええええええぇぇ!!!!ちょ、ちょっとメイさん何言ってるんだよ!!
「め、メイ様それは、ギルド長に聞いてみないとちょっと」
「いいぞ!」
二階の方から声がしてきた。手すりに肘を乗せた50過ぎくらいの男性がこちらを見ていた。
「ぎ、ギルド長!よろしいんですか!?」
「ああいいぞ、メイがそう言ってるんだ。間違いはねえだろ」
メイはにこりと笑った。
「ほんとはAでもSでもいいと思ったんだけど。まだ未経験だからBってところで我慢してちょうだい、リント」
「め、メイさん!いきなりBはちょっと色々と!」
場内が騒然としている。英雄メイと一緒に現れた謎の鎧の男が、いきなりSでもいいなんて言われたら誰でも驚くだろう。
さっきの男がメイに近づいてくる。
「キャンディ・メイ。それは一体どういう了見だ?いくらあなたでも身勝手な暴挙は許容できない」
「暴挙? 私はそんなことしたつもりはないわよ?試してみる?」
メイがにやりと笑うと、男は顔を俺の方に向けた。無表情でじっと見つめてくる。
た、試してみるって、それはどういうことなんだ?
それにキャンディ・メイって……俺は挙動不審になった。
ガタンッと椅子から立ち上がった男がこちらへ向かってくる。銀髪の男前だ。
「おいスナッシュ!!元騎士階級だか知らねーけど、俺が相手してやろうか!お高くとまりやがって、お前は前から気に食わねぇ」
受付嬢のエレオナさんが「ナイル!」と心配そうに声を張った。知り合いなのだろうか?
「Aランクはダンジョンにでも潜っていればいい。あなぐらがお似合いだ。私はこの男に興味がある」
スナッシュが冷静にそう言うと「なにぃ!」とナイルが歩を進め、仲間らしき人たちに止められている。
「離せ!!モントン!!一発あいつをぶん殴ってやる!!」
ナイルは荒ぶっているが、2メートルくらいの大男に羽交い締めにされていて
魔女のような帽子をかぶった小さい女の子に「ナイルうるさい、ヒゲ燃やすよ」と杖を向けられている。
スナッシュは腰に携えていた剣をするりと抜いた。
俺は「助けて」と言わんばかりの顔でメイを見た。
「やってやりなさいリント。 あ、手加減しないとダメよ」
メイは余裕の笑みを浮かべて言い放った。楽しんでいる様子でもある。
場内は異様な盛り上がりを見せていた。
この騒ぎをさかなに、楽しそうに酒を飲んでる奴らもいる。
「ちょ、ちょっとみなさん落ち着いてぇ!メイ様どうにかしてください~!」
「ネイルちゃんあなた、ここはどこ?」
「冒険者……ギルドですけど」
「ならいいじゃない。彼らは聖人じゃないのよ、これくらいの気概がないと冒険者は務まらないわ」
もう逃げ場はない、俺は覚悟を決めた。思い出せ!ストーンモールを倒した時の事を。
足だって馬のように速かったし、俺は戦えるはずだ。そしてなにより俺は死なない!勇気を出せ!!
……ちょっと痛いのを我慢すればいいだけだ。
「勝負は一対一。殺すのは禁止よ。それ以外は何をしても良いわ」
メイがそう言うと、スナッシュはこちらへ歩き出した。
この世界で生きていくしかないのなら、殺し合いだって避けては通れない道だ。
俺はありったけの力でこぶしを握り締めた。
見るからに精悍な顔立ちをした者たちがたくさんいる。中にはガラの悪そうなのもちらほらいるけど。
「ようこそ、エブンズダールの冒険者ギルドへ。リント」
メイが中へとエスコートしてくれた。さすがは令嬢様だ、動きが洗練されている。
「あ、ありがとうございます」
見渡すと、杖を持った女性が歩いている。あれがウィザードだろうか。俺は早く魔法というものを見てみたいと心が弾んだ。
「メイ様だ!」と一人の男が叫ぶと、大勢が一斉にこちらを見た。注目されたくない俺は、まずい!と後ろを向いたがそれはただの取り越し苦労だった。皆の目線はメイにしか向いてない。俺に関心のある人なんか誰もいなかった。
ここでもメイの人気は凄いものだった。そりゃそうだ、上を目指す冒険者たちにとっては雲の上の存在なのだろう。
「メイ様!おれもうすぐAランクに昇格できそうなんです!ダンジョンの話とか聞かせてください!」
「あらそう、おめでとうカイセル。良い目をするようになったわね、Aになったらグッド・ルッキング・ガイの特別枠に入らない?」
ま、また勧誘してる……
人混みの中にエンデルさんたちの姿を見つけた。俺は駆け寄って話しかけた。
「エンデルさん、やっぱりみなさんも来ていたんですね」
エンデルたちは「誰かな?」という表情だ。兜をかぶっているのを俺は忘れていた。
「俺です、凛人ですよ」
「おお、リントさんでしたか!なぜそんな恰好を?」
「俺の見た目は目立つみたいなので」
三人はなるほど、と納得している様子。
「ところでリントさん、辺境伯様の屋敷ではどんな話を?」
とエンデルが言うと「心配してたんだぞ」とオーリスが肩を叩いてきた。
「どこから来たのかとかそんな感じの話です」
「そうですか、何より無事でよかった。それより、メイ様と一緒にいたように見えたのですが」
「ええ、話のあと、メイさんからギルドに行かないかって誘われてきたんです。このアーマーもいただきました」
オルボイは驚き、オーリスは「マジかよ!」と悔しそうにしている。
「お仲間は見つかったのですか?」
「いえ、ここにはいなかったようです」
「そうですか……残念です」
エンデルはパンと手を叩くと、ある提案をしてきた。
「リントさん、来たついでですし冒険者登録をするというのはどうでしょう」
「お、俺がですか!?」
「はい、登録なら15歳以上はだれでもできますし、もしお仲間が見つからなかった場合……もしもの話ですが。その場合、登録をしてここでランク上げをするのが良いと思いまして」
冒険者としてランク上げか。魔物退治とかは怖いけど、死なない俺にとって悪い話ではないかもしれない。お金も稼げるし。
「まずはEランクとして薬草などの素材集めからですが、三食パンとスープを食べられるくらいの報酬にはなりますよ」
「はい!やってみます!」
俺は二つ返事でその案を呑んだ。
「ではカウンターへ行きましょう」
俺はエンデルさんに付いてカウンターへと向かう。そこには二人の受付嬢が立っていた。
「お疲れ様です!あれ?見かけないお姿ですね。ご依頼をお探しの場合は、あちらの掲示板に貼ってありますのでご自由に閲覧してください!」
元気な女性だ。可愛いしきっとここの看板娘なんだろう。
「いや、この人はまだ登録をしてないんだ、ネイル」
「あ、エンデルさんお疲れ様です!未登録の方だったんですね。ご立派なアーマーを着てらっしゃるのでてっきり登録済みかと」
ネイルは上から下まで舐めるように俺を見てくる。
「ごめんなさい!では登録する前に、少し長くなりますが説明をしてもよろしいでしょうか?」
「は、はいお願いします」
そういうとネイルは資料を手渡してきて説明を始めた。
「まずはみんなEランクでの登録となります。薬草集めとかが主な依頼ですね。そして3ヶ月経つと自動的にDへ昇格となります。下級と判断された魔物退治などを請け負ってもらいます。ですが……」
ネイルは少しうつむいた。
「ここで命を落としてしまったり、けがが理由で引退する新人の方も多いので気を付けてください!」
Dが冒険者にとって一つ目の壁か。
「続いて、ギルド長の許可が出るとCランクへの昇格が認められます。下級の魔物退治に加えて、村の警護などの依頼も受けられるようになります。この辺りから生活が安定してくると思いますので頑張ってください!」
「そして、またまたギルド長が許可した人たちはBランクへと昇格します。街や王都の外での、商人や貴族の護衛なんかもここからなので生活が一気に潤います!貴族や商人は羽振りのいい人たちも沢山いるので、依頼料の他にチップをはずんでくれる場合もあります」
ああ、これはエンデルさんが説明してくれたな。俺は、BとAの説明はエンデルさんたちにもう聞きました、と、ネイルに伝えた。
「かしこまりました!そしてここからがすごいんです。Aランクとしてダンジョンでの功績が認められると、晴れてSランクへの昇格が認められます!王や王宮からの依頼も任されるようになります!」
ネイルはフンッと鼻息を荒くして説明し出した。それだけSというのは凄いんだろう。ってことはオリハルコンのメイさんはどれだけすごいんだよ……もはやアルファベットでもないし。
「次のS+は選ばれし精鋭たちしかなれません。王国や帝国の騎士団長に迫る実力者です。そして、ここからが本当にやばいんです……」
俺はごくりと唾を飲んだ。
「ここからは「称号持ち」として国から称えられる超人たちのゾーンです」
「ゴールド、プラチナ、ミスリル、オリハルコン、アダマンタイトの称号の順で富と名声を得る、まさに国家の守護神。スーパーヒーローたちです!!その辺の貴族より国での立場も上です!!」
メイさんは上から二番目なのかよ!どうりで羨望の眼差しを集めるわけだ。
「なれる人は一握り、身体を循環しているマナをオーラに変換できる資質を持った超エリートだけに与えられる称号です!」
ネイルが興奮していると、もう一人の受付嬢が近づいてきた。
「こらネイル、説明は大まかで良いって言ってるでしょ。資料に書いてあるんだから」
「ご、ごめんなさいエレオナさん。いつも興奮しちゃって。エヘヘ」
「何をしている、邪魔だから早く立ち去ってくれないか?」
後ろから冷静で冷たい声が飛んできた。
「あ、スナッシュさん。ご、ごめんなさい!早く済ませます!」
ネイルが慌てたように書類等を準備している。
「ん? 誰かと思えば、初老のBランク冒険者チームか」
エンデルさんたちがその男を睨みつけている。
「すまなかった。もう少しかかるから待っててくれないか?」
「フン、ギルド長も何を思ってお前をBに昇格させたのか」
「なにっ!!」
男の挑発にエンデルさんは歯を食いしばっている。
俺はネイルさんに「この人は誰なの?」と聞いた。
「Sランクチーム「稲妻の騎士」のスナッシュ・イーガライルさんです。前は王国の騎士様だったって噂です」
え、Sランクの元騎士!?とんでもなく関わりたくない相手だ。
「俺は昇格を認めていなかった。罪人の血を引くものが貴族の護衛が出来る立場にいるのは、冒険者そのものの品位を下げる行為だ。お前の存在は我々にも不利益でしかない」
この男の喋り方は冷静で抑揚も少なく、淡々としているため茶化すというより芯をついてきているように感じる。言われている方はきついだろう。
エンデルさんたちは拳をギュッと握りしめている。でも言い返せないようだ。
「てめぇ!」とオーリスが一歩踏み出すが、エンデルがそれを制止した。
「やめろオーリス。やつには、三人がかりでも勝てない」
エンデルさんの歯を食いしばる音がギリギリと俺にも聞こえてくる。
「そ、それじゃあこちらに記入をお願いします!」
「あ、は、はい」
ネイルさんが顔を引きつらせながら俺に紙を渡してきた。俺は紙に記入をしてネイルへと渡した。
なぜかこの国の言葉を俺は理解し、書くことが出来た。
「えっと、セガワリントさんですね。Eランクからのスタートになりますのであちらの……」
「ちょっと待って」
メイが突然割って入ってきた。
「め、メイ様どうかなさいましたか?」
「ネイルちゃん、彼をBランクで登録していただけるかしら?」
ええええええええぇぇ!!!!ちょ、ちょっとメイさん何言ってるんだよ!!
「め、メイ様それは、ギルド長に聞いてみないとちょっと」
「いいぞ!」
二階の方から声がしてきた。手すりに肘を乗せた50過ぎくらいの男性がこちらを見ていた。
「ぎ、ギルド長!よろしいんですか!?」
「ああいいぞ、メイがそう言ってるんだ。間違いはねえだろ」
メイはにこりと笑った。
「ほんとはAでもSでもいいと思ったんだけど。まだ未経験だからBってところで我慢してちょうだい、リント」
「め、メイさん!いきなりBはちょっと色々と!」
場内が騒然としている。英雄メイと一緒に現れた謎の鎧の男が、いきなりSでもいいなんて言われたら誰でも驚くだろう。
さっきの男がメイに近づいてくる。
「キャンディ・メイ。それは一体どういう了見だ?いくらあなたでも身勝手な暴挙は許容できない」
「暴挙? 私はそんなことしたつもりはないわよ?試してみる?」
メイがにやりと笑うと、男は顔を俺の方に向けた。無表情でじっと見つめてくる。
た、試してみるって、それはどういうことなんだ?
それにキャンディ・メイって……俺は挙動不審になった。
ガタンッと椅子から立ち上がった男がこちらへ向かってくる。銀髪の男前だ。
「おいスナッシュ!!元騎士階級だか知らねーけど、俺が相手してやろうか!お高くとまりやがって、お前は前から気に食わねぇ」
受付嬢のエレオナさんが「ナイル!」と心配そうに声を張った。知り合いなのだろうか?
「Aランクはダンジョンにでも潜っていればいい。あなぐらがお似合いだ。私はこの男に興味がある」
スナッシュが冷静にそう言うと「なにぃ!」とナイルが歩を進め、仲間らしき人たちに止められている。
「離せ!!モントン!!一発あいつをぶん殴ってやる!!」
ナイルは荒ぶっているが、2メートルくらいの大男に羽交い締めにされていて
魔女のような帽子をかぶった小さい女の子に「ナイルうるさい、ヒゲ燃やすよ」と杖を向けられている。
スナッシュは腰に携えていた剣をするりと抜いた。
俺は「助けて」と言わんばかりの顔でメイを見た。
「やってやりなさいリント。 あ、手加減しないとダメよ」
メイは余裕の笑みを浮かべて言い放った。楽しんでいる様子でもある。
場内は異様な盛り上がりを見せていた。
この騒ぎをさかなに、楽しそうに酒を飲んでる奴らもいる。
「ちょ、ちょっとみなさん落ち着いてぇ!メイ様どうにかしてください~!」
「ネイルちゃんあなた、ここはどこ?」
「冒険者……ギルドですけど」
「ならいいじゃない。彼らは聖人じゃないのよ、これくらいの気概がないと冒険者は務まらないわ」
もう逃げ場はない、俺は覚悟を決めた。思い出せ!ストーンモールを倒した時の事を。
足だって馬のように速かったし、俺は戦えるはずだ。そしてなにより俺は死なない!勇気を出せ!!
……ちょっと痛いのを我慢すればいいだけだ。
「勝負は一対一。殺すのは禁止よ。それ以外は何をしても良いわ」
メイがそう言うと、スナッシュはこちらへ歩き出した。
この世界で生きていくしかないのなら、殺し合いだって避けては通れない道だ。
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