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第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編
第10話 アストレイア
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「――――やっとお目にかかれましたね。凛人様」
俺は開いた口がふさがらなかった。兜をしていなければさぞマヌケな顔を晒していただろう。
あの石が美女に化けたのだ。仕方がない。
薄い栗色の綺麗な髪が光を纏いフワフワとなびいている。額に浮かび上がる紋様がキラキラと輝き
彼女の神秘さをより際立たせていた。
「あ、あの……どちらさまでしょうか?」
なんとも今の顔に似合ったマヌケな質問だ。だが考えてみてほしい。この状況になったら、みんなも大抵は同じような質問をしてしまうはずだ。
「申し遅れました……」
女性はふわりと床に降りると、片膝をつき頭を垂れた。
「高い所からの無礼、謹んでお詫び申し上げます。私はセレスティアルヴェレイナ・ウル・アストレイアでございます」
セレス……ティア……ヴェ……長いな。余計に頭がややこしくなる。
「血の契約者である凛人様の星骸の従者として、この身尽きるまでお傍であなた様の望みを叶え続ける者でございます。例えそれが不可能な事であろうとも、この命を賭して尽力してまいります。何なりとお申し付けください。」
血の契約者?よくわからないが……
「ま、まあ顔を上げてよ。そんなにかしこまられても、俺そんな柄じゃないし」
「もったいないお言葉でございます」と、顔を上げた彼女に思わず俺の目は釘付けになった。
間近で見たその浮世離れした美しい顔立ちに、思わず立ち上がった俺は無意識に手を差し伸べていた。
「どうかなさいましたか?」
「……え!? あ、ああ。ここトイレだし、立ったほうが良いかなって!ハハハ……」
彼女は俺の手を取って立ち上がった。こ、こんな子が俺の従者?
どんな望みも何なりと、か……どんな望みも……幸いにもここは個室で……
俺は悶々といけないことを考えてしまった。
お、おっさんが何考えてんだ俺はっ!!と顔をブンブンと振って煩悩を落ち着かせる。
「と、とりあえずここを出ようか」と俺が伝えると「はい」と笑顔で彼女は答えた。
トイレのドアを開けると、エンデルさんが目の前に立っていた。
「おわぁっ!!エンデルさん!!」
「あ、ああ。何やらすごい音がしたので何事かと来てみたんですが……」
エンデルさんは彼女をチラッと見た。
おお……という驚きの感情が表情からすぐにわかる。彼女を見たらそれは仕方がない。
「あ、あの。お二人は、トイレでなにを?」
「え!? べ、べべべべ別に! 何もしてないですよ!!はい!!」
「ま、まあお若いお二人だ、これはオジサンがお邪魔しちゃいましたかな!ハハハハ」
と、気まずそうに去って行った。絶対に変な誤解されてる……
「お!どこ行ってたんだよ!探してたんだぜ!」
ナイルがブンブンと手を振りながら俺を呼んでいる。彼女のこともあるし早くここから出たいんだけど……
「俺のチームに入る件、考えてくれたか?」
「あ~……その件なんですけど。今回はお断りしようかと考えてまして」
「絶対に後悔はさせねーって!それに……」
ナイルの口が止まった。ナイルは彼女を見て固まってしまっている。
「こ、この人はだれだ?」
「え、えーと。俺の仲間です」
「ま、マジかよ……」
「綺麗な人……」
レイピアの女性剣士は呟いた。
「ウン。ウン。 すごく美しい。おとぎ話の女神みたい」
魔女っ子も驚いている。
「うむぅ……」
巨躯の男も顔を赤くしている。
ナイルはテーブルをバンッと叩いた。
「ってことはお前が仲間に入ればこの人も仲間ってことじゃねーか!!それならなおさら!!」
ナイルが言いかけた所で、エレオナさんが「ナ・イ・ルゥ~~!」とものすごく怖い顔をしている。
「げぇっ!! 違うって!誤解だエレオナ!!」とナイルが焦っている。
「新婚なのに最低な男ね」
「ウン。ウン。 ナイルは本当にカス、ゴミ、ミジンコ」
仲間の女性軍も参戦してきてナイルは涙目になっていた。ナイルさんとエレオナさんって結婚してたのか。
一階がガヤガヤしているその頃、二階ではメイとギルド長が話をしていた。
「ルーガスさん、さっきのマナの覇動。感じた?」
「ああ、もちろんよ。とんでもねーエネルギーの本流だ。ちびりそうだったぜ」
ギルド長のルーガスがタバコの煙をフーっと吐いた。
「メイ、お前さんが相手してきた魔族の将らとどっちが上だ?」
「……さっき感じたマナと魔力。例え称号持ちでも、人の域でどうにかできるレベルじゃないわ」
「オーラを熟知し覇人と言われる、一騎当千のお前でもか?」
「ええ、無理ね。 というか、戦うなら国家級の戦力を動かす覚悟をしないといけないかも。一人にね」
「へへ……まるでカタストロフィじゃねーか。だったら都合がいい、丁度この建物の中にいるみたいだ。敵対しないようにご機嫌を取っとかねえとなぁ」
ルーガスが笑うと、メイは「鬼が出るか蛇が出るか。ワクワクしちゃうわね」と握った拳を震わせた。
ルーガスは、あとは俺の年の功に任せておけとメイに伝えると、メイはうなずいて一階へ通りて行った。
「取り込み中ごめんなさいね」
「め、メイ様」
ナイルたちがメイさんの姿を見て騒ぐのをやめた。メイさんはけして高圧な態度を取る人ではないのだが、冒険者からすれば憧れの存在、身が引き締まるのだろう。
「メイさん、色々と計らって頂いてありがとうございました。高価な鎧までいただいて」
「いいのよ、それよりあなたはどなたかしら?ここでは見ない顔ね」
メイさんは彼女を見て声をかけた。心なしかピリピリする空気を感じた。
彼女がスッと前に出てにこやかに答える。
「セレスティアルヴェレイナ・ウル・アストレイアと申します。ここにおられる凛人様の望みを叶え、守護する従者として私はここにおります」
メイがきょとんとした顔をしている。すると、アッハッハッハッハと豪快に笑いだした。
「あー、久しぶりにこんなに笑ったわ!リントあなたなんなの?本当におもしろい子ね」
「め、メイさん?」
「まあいいわ、それよりあなた泊るところはあるの?私の家でもいいけど、その子もいるし気を使っちゃうでしょ?」
そういえば宿のことをすっかりと忘れていた。そして何を隠そう無一文なのだ……
俺一人なら野宿でもと思ったが、今は彼女もいることだし、さすがにこんな子に野宿をさせるわけにはいかない。
「あなた今持ち合わせは?」
「お恥ずかしながらあまり、ハハハ……」
「宿代くらい私が出しても良いんだけれど、あまり貸しは作りたくないでしょ?男の子だものね。その鎧を売ってみたら?まあまあの値段にはなるはずよ。代わりの鎧はそれで安いのでも買えばいいわ」
なるほど!と思ったが、売ってしまっていいのだろうか。スナッシュの口ぶりだとなんか貴重そうな感じだったし。でもくれた本人がそう言ってるのならいいのではないか?俺は葛藤していた。
「気にしなくていいわよ、ハイ決まりね! じゃあ私は帰るわね。明日正午ごろうちに来て」
「はい、ありがとうございます!遅れずに行かせて頂きます」
メイは扉を出て行った。じゃあ俺たちも行こうかとみんなに挨拶を済ませた所で、二階のギルド長から部屋に来いと呼び止められた。俺はBランクに飛び級した件かなと思い、彼女と一緒にギルド長の部屋へと向かった。
部屋に入ると、ギルド長は「まあ気を楽にして座れや」とお茶を出してくれた。
年は50代くらいだろうか。腕や顔に歴戦の傷が刻まれている。ギルド長にまでなるくらいだから多くの武勇などがあるのだろう。
ギルド長はニヤリとして口を開いた。
「さっきのバトル最高だったぞ~。まさか剣の戦いで殴り倒すとはなぁ!」
ギルド長は膝を叩いて笑っている。
「いやぁ恐縮です」
「そこでなんだがな、お前Sランクになる気はないか?」
「はい、そうですねぇ。 ……え?」
「えええええええぇぇぇぇぇぇ!!!!」
俺は開いた口がふさがらなかった。兜をしていなければさぞマヌケな顔を晒していただろう。
あの石が美女に化けたのだ。仕方がない。
薄い栗色の綺麗な髪が光を纏いフワフワとなびいている。額に浮かび上がる紋様がキラキラと輝き
彼女の神秘さをより際立たせていた。
「あ、あの……どちらさまでしょうか?」
なんとも今の顔に似合ったマヌケな質問だ。だが考えてみてほしい。この状況になったら、みんなも大抵は同じような質問をしてしまうはずだ。
「申し遅れました……」
女性はふわりと床に降りると、片膝をつき頭を垂れた。
「高い所からの無礼、謹んでお詫び申し上げます。私はセレスティアルヴェレイナ・ウル・アストレイアでございます」
セレス……ティア……ヴェ……長いな。余計に頭がややこしくなる。
「血の契約者である凛人様の星骸の従者として、この身尽きるまでお傍であなた様の望みを叶え続ける者でございます。例えそれが不可能な事であろうとも、この命を賭して尽力してまいります。何なりとお申し付けください。」
血の契約者?よくわからないが……
「ま、まあ顔を上げてよ。そんなにかしこまられても、俺そんな柄じゃないし」
「もったいないお言葉でございます」と、顔を上げた彼女に思わず俺の目は釘付けになった。
間近で見たその浮世離れした美しい顔立ちに、思わず立ち上がった俺は無意識に手を差し伸べていた。
「どうかなさいましたか?」
「……え!? あ、ああ。ここトイレだし、立ったほうが良いかなって!ハハハ……」
彼女は俺の手を取って立ち上がった。こ、こんな子が俺の従者?
どんな望みも何なりと、か……どんな望みも……幸いにもここは個室で……
俺は悶々といけないことを考えてしまった。
お、おっさんが何考えてんだ俺はっ!!と顔をブンブンと振って煩悩を落ち着かせる。
「と、とりあえずここを出ようか」と俺が伝えると「はい」と笑顔で彼女は答えた。
トイレのドアを開けると、エンデルさんが目の前に立っていた。
「おわぁっ!!エンデルさん!!」
「あ、ああ。何やらすごい音がしたので何事かと来てみたんですが……」
エンデルさんは彼女をチラッと見た。
おお……という驚きの感情が表情からすぐにわかる。彼女を見たらそれは仕方がない。
「あ、あの。お二人は、トイレでなにを?」
「え!? べ、べべべべ別に! 何もしてないですよ!!はい!!」
「ま、まあお若いお二人だ、これはオジサンがお邪魔しちゃいましたかな!ハハハハ」
と、気まずそうに去って行った。絶対に変な誤解されてる……
「お!どこ行ってたんだよ!探してたんだぜ!」
ナイルがブンブンと手を振りながら俺を呼んでいる。彼女のこともあるし早くここから出たいんだけど……
「俺のチームに入る件、考えてくれたか?」
「あ~……その件なんですけど。今回はお断りしようかと考えてまして」
「絶対に後悔はさせねーって!それに……」
ナイルの口が止まった。ナイルは彼女を見て固まってしまっている。
「こ、この人はだれだ?」
「え、えーと。俺の仲間です」
「ま、マジかよ……」
「綺麗な人……」
レイピアの女性剣士は呟いた。
「ウン。ウン。 すごく美しい。おとぎ話の女神みたい」
魔女っ子も驚いている。
「うむぅ……」
巨躯の男も顔を赤くしている。
ナイルはテーブルをバンッと叩いた。
「ってことはお前が仲間に入ればこの人も仲間ってことじゃねーか!!それならなおさら!!」
ナイルが言いかけた所で、エレオナさんが「ナ・イ・ルゥ~~!」とものすごく怖い顔をしている。
「げぇっ!! 違うって!誤解だエレオナ!!」とナイルが焦っている。
「新婚なのに最低な男ね」
「ウン。ウン。 ナイルは本当にカス、ゴミ、ミジンコ」
仲間の女性軍も参戦してきてナイルは涙目になっていた。ナイルさんとエレオナさんって結婚してたのか。
一階がガヤガヤしているその頃、二階ではメイとギルド長が話をしていた。
「ルーガスさん、さっきのマナの覇動。感じた?」
「ああ、もちろんよ。とんでもねーエネルギーの本流だ。ちびりそうだったぜ」
ギルド長のルーガスがタバコの煙をフーっと吐いた。
「メイ、お前さんが相手してきた魔族の将らとどっちが上だ?」
「……さっき感じたマナと魔力。例え称号持ちでも、人の域でどうにかできるレベルじゃないわ」
「オーラを熟知し覇人と言われる、一騎当千のお前でもか?」
「ええ、無理ね。 というか、戦うなら国家級の戦力を動かす覚悟をしないといけないかも。一人にね」
「へへ……まるでカタストロフィじゃねーか。だったら都合がいい、丁度この建物の中にいるみたいだ。敵対しないようにご機嫌を取っとかねえとなぁ」
ルーガスが笑うと、メイは「鬼が出るか蛇が出るか。ワクワクしちゃうわね」と握った拳を震わせた。
ルーガスは、あとは俺の年の功に任せておけとメイに伝えると、メイはうなずいて一階へ通りて行った。
「取り込み中ごめんなさいね」
「め、メイ様」
ナイルたちがメイさんの姿を見て騒ぐのをやめた。メイさんはけして高圧な態度を取る人ではないのだが、冒険者からすれば憧れの存在、身が引き締まるのだろう。
「メイさん、色々と計らって頂いてありがとうございました。高価な鎧までいただいて」
「いいのよ、それよりあなたはどなたかしら?ここでは見ない顔ね」
メイさんは彼女を見て声をかけた。心なしかピリピリする空気を感じた。
彼女がスッと前に出てにこやかに答える。
「セレスティアルヴェレイナ・ウル・アストレイアと申します。ここにおられる凛人様の望みを叶え、守護する従者として私はここにおります」
メイがきょとんとした顔をしている。すると、アッハッハッハッハと豪快に笑いだした。
「あー、久しぶりにこんなに笑ったわ!リントあなたなんなの?本当におもしろい子ね」
「め、メイさん?」
「まあいいわ、それよりあなた泊るところはあるの?私の家でもいいけど、その子もいるし気を使っちゃうでしょ?」
そういえば宿のことをすっかりと忘れていた。そして何を隠そう無一文なのだ……
俺一人なら野宿でもと思ったが、今は彼女もいることだし、さすがにこんな子に野宿をさせるわけにはいかない。
「あなた今持ち合わせは?」
「お恥ずかしながらあまり、ハハハ……」
「宿代くらい私が出しても良いんだけれど、あまり貸しは作りたくないでしょ?男の子だものね。その鎧を売ってみたら?まあまあの値段にはなるはずよ。代わりの鎧はそれで安いのでも買えばいいわ」
なるほど!と思ったが、売ってしまっていいのだろうか。スナッシュの口ぶりだとなんか貴重そうな感じだったし。でもくれた本人がそう言ってるのならいいのではないか?俺は葛藤していた。
「気にしなくていいわよ、ハイ決まりね! じゃあ私は帰るわね。明日正午ごろうちに来て」
「はい、ありがとうございます!遅れずに行かせて頂きます」
メイは扉を出て行った。じゃあ俺たちも行こうかとみんなに挨拶を済ませた所で、二階のギルド長から部屋に来いと呼び止められた。俺はBランクに飛び級した件かなと思い、彼女と一緒にギルド長の部屋へと向かった。
部屋に入ると、ギルド長は「まあ気を楽にして座れや」とお茶を出してくれた。
年は50代くらいだろうか。腕や顔に歴戦の傷が刻まれている。ギルド長にまでなるくらいだから多くの武勇などがあるのだろう。
ギルド長はニヤリとして口を開いた。
「さっきのバトル最高だったぞ~。まさか剣の戦いで殴り倒すとはなぁ!」
ギルド長は膝を叩いて笑っている。
「いやぁ恐縮です」
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