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第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編
第24話 いざ、海沿いの街ポートイリスへ
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まずはこの国にいるという星骸、フェリドゥーンの確認をしなければならない。
すでに復活しているとはどういうことなのか、俺はそれを早く知りたかった。
多分、彼には主がいるはずだ。メイさんの話ではリンスデール伯爵の執事をしているとのことなので、十中八九その伯爵で間違いないだろう。
既に主がいるフェリドゥーンが仲間になってくれるのかはわからないが、とりあえずはコンタクトを取ってみたい。
そのあとオルディア王国へと向かい、ベルセフォネを探しユリア様を助けてもらう。
善は急げだ。俺はその主をエディアノイさんとメイさんに伝えた。
少し回り道にはなってしまうけど、彼らは快く承諾してくれた。
――挨拶もそこそこに俺たちが部屋を出ようとした時、エディアノイさんの通信魔導具が鳴った。
また何か不測の事態じゃないかと思い、俺たちは足を止めたが、なにやら親しそうにエディアノイさんは会話している。
なんだ知り合いかと部屋を出ようとした俺を、エディアノイさんは引き止めてきた。
「リント君、ルーガスにギルドへ来るように言われてたそうだが」
すっかり忘れていた……
そういえば、ルーガスさんに必ず来いよと釘を刺されていたことを今思い出した。
でも、色々と立て込んでいたのでそれは仕方がない。――言われきゃ忘れていたのは事実だが……
次は何やら言い争っている。会話を聞くに、二人は親しい間柄のようだ。
「リント君は今忙しいんだ、彼に代わるから、要件なら今ここで伝えればいいだろう」
話がまとまったらしく、エディアノイさんは俺に通信具を渡してきた。
「もしも……」
「おいリント!おめぇ忘れてただろ!? あん?」
「い、いえいえそんなことはない……ある……です」
「まあいい。要件なんだがな? アルメデウス王がお前たちに会いたいそうだ」
「え……えええ!? 王様がですか!?」
「ああ、俺が承諾しておいたからな。四日後にギルドに来い、伝えたからな?じゃあな」
「え、ちょちょ、ちょっと!ルーガスさん!」
ルーガスさんの通信は切れてしまった。
勝手に承諾するなよ…… とは思ったけど、王様からの呼び出しに応えないわけにはいかなかっただろうし、これは腹を括るしかないなと俺は諦めた。
四日後か。ポートイリスまではどれくらいかかるんだろうか、まずはそっちの件を早く確かめたいんだが。
「エディアノイさん、ポートイリスまでどれくらいかかりますか?」
「馬でも休憩しつつ一週間はかかる。君も少し体を休ませて、王との謁見のあとでも良いのではないかな」
「でしたら」
セレイナが口を開いた。
「また私と飛んで向かえば、一日ほどで着くのではないでしょうか」
それは名案だ。走って行こうと思ってたけど、それなら食糧の買い出しとかも最小限ですぐに向かうことができるし、四日後の謁見にも間に合いそうだ。
――張りつめていた部屋の空気は、いつの間にか和やかな雰囲気に変わってきていた。
彼たちにとっては謎だった俺の正体と、決して人類の敵ではないと知ったこと。
そして、ユリア様の回復に進展と光明を得たこと。
二人の顔を見て思った。やっぱり希望を持った人間の顔っていいなって。
俺も、立場的にストレイアからの使命を無視はできない。でも、希望をもって進めば、何かが開けるような気がしてならなかった。
なにより、セレイナをただの粛清兵器として扱うなんて、俺には到底無理な話である。
彼女にも笑っていてほしい。そう思うのは、甘い理想論でしかないのだろうか。
そこはまだ、世界を見聞し、蓋を開けてみないとわからない。
でも、希望を持つ資格は誰にでもあるんだし、今はまだ、甘い蜜のような理想論でもいいじゃないか。
みんなの顔を見て、俺はそう思っていた。
「じゃあ、旅の支度をしてすぐにポートイリスに向かいたいと思います」
「ああ。街は東の海の湾に面している、大きな街ではないが見つけやすいはずだ」
「リント、あなた死なないのよね?今度、新技の実験体になって頂戴ね」
メイさんは俺の胸に拳を当て、いたずらな笑顔とウインクを放り投げてくる。
俺たちは「あはは、考えておきます」と、逃げるように部屋を出た。
――街は活気を取り戻していた。
街の建物や人々を見渡す。
俺も、少しだけどこの街のために役に立てたことを、誇らしく思った。
殴り合いの喧嘩もしたことがなかった俺が、何かを守るために魔族なんかと戦うことが出来たことが、いまだに信じられない。
この世界に来て、俺は男として一皮も二皮も剥けることが出来たようだ。
隣を歩くセレイナに、バレない程度の視線を送る。
彼女はいつも優しい笑みを絶やさない。いや、俺と二人の時は普段よりにこやかなような?
いや、多分気のせいかな、それは……
「パン屋だ、入ろうセレイナ」
「はい」
店内には様々なパンが並んでいる。
なんとも香ばしい、食欲を掻き立てる芳醇な香りだろう。
「ん~、いい香り」
「とてもいい香りですね、リントさん」
使命を終えたら、どこかで修行してパン屋を開くのいいかもしれない。向うに帰れない前提の話だけど。
――終えたらか……
もしそうなった時、セレイナ達、星骸はどうなるんだろうか。
また封印されてしまうのだろうか……そうしたら俺たちは……
いや、俺が今のままでいられるなら、何度でも復活させられる?でも、もし俺の力も取り上げられてしまったら。
はい! やめよう!やめやめ!
これ以上陰鬱な気持ちになる前に、俺は深呼吸して気持ちを切り替えた。
とりあえず、使命達成後の俺のスローライフは、パン屋に決まった。
不老不死でいられたら、百年でも二百年でもかけてパン道を極めてやるぜ!
適当なパンを見繕った俺たちは店を後にした。
ここで飛ぶのは少し目立つので、街の外れまで移動することにした。
「よし、この辺りでいいかな。セレイナ、頼むよ」
「はい。では、私に掴まってください」
俺はセレイナの肩に掴まり、身体を密着させる。
セレイナの体温が俺の五感を刺激し、やわらかな香りが鼻腔をくすぐる。
この前は、切羽詰まっていたので余裕がなかったが、今は全てを感じ取れてしまう。
健康な男子にとって、これは刺激が強すぎる。
いや、ご褒美すぎる。
役得だ。
飛ぶ練習をしようかとも考えていたが、これはこれで良いのかもしれないと自分を納得させた。
そんな煩悩を巡らせているバカな俺を他所に、セレイナは浮かび上がると、大空を優雅に舞う鳥のように飛翔した。
向かうはポートイリス!
すでに復活しているとはどういうことなのか、俺はそれを早く知りたかった。
多分、彼には主がいるはずだ。メイさんの話ではリンスデール伯爵の執事をしているとのことなので、十中八九その伯爵で間違いないだろう。
既に主がいるフェリドゥーンが仲間になってくれるのかはわからないが、とりあえずはコンタクトを取ってみたい。
そのあとオルディア王国へと向かい、ベルセフォネを探しユリア様を助けてもらう。
善は急げだ。俺はその主をエディアノイさんとメイさんに伝えた。
少し回り道にはなってしまうけど、彼らは快く承諾してくれた。
――挨拶もそこそこに俺たちが部屋を出ようとした時、エディアノイさんの通信魔導具が鳴った。
また何か不測の事態じゃないかと思い、俺たちは足を止めたが、なにやら親しそうにエディアノイさんは会話している。
なんだ知り合いかと部屋を出ようとした俺を、エディアノイさんは引き止めてきた。
「リント君、ルーガスにギルドへ来るように言われてたそうだが」
すっかり忘れていた……
そういえば、ルーガスさんに必ず来いよと釘を刺されていたことを今思い出した。
でも、色々と立て込んでいたのでそれは仕方がない。――言われきゃ忘れていたのは事実だが……
次は何やら言い争っている。会話を聞くに、二人は親しい間柄のようだ。
「リント君は今忙しいんだ、彼に代わるから、要件なら今ここで伝えればいいだろう」
話がまとまったらしく、エディアノイさんは俺に通信具を渡してきた。
「もしも……」
「おいリント!おめぇ忘れてただろ!? あん?」
「い、いえいえそんなことはない……ある……です」
「まあいい。要件なんだがな? アルメデウス王がお前たちに会いたいそうだ」
「え……えええ!? 王様がですか!?」
「ああ、俺が承諾しておいたからな。四日後にギルドに来い、伝えたからな?じゃあな」
「え、ちょちょ、ちょっと!ルーガスさん!」
ルーガスさんの通信は切れてしまった。
勝手に承諾するなよ…… とは思ったけど、王様からの呼び出しに応えないわけにはいかなかっただろうし、これは腹を括るしかないなと俺は諦めた。
四日後か。ポートイリスまではどれくらいかかるんだろうか、まずはそっちの件を早く確かめたいんだが。
「エディアノイさん、ポートイリスまでどれくらいかかりますか?」
「馬でも休憩しつつ一週間はかかる。君も少し体を休ませて、王との謁見のあとでも良いのではないかな」
「でしたら」
セレイナが口を開いた。
「また私と飛んで向かえば、一日ほどで着くのではないでしょうか」
それは名案だ。走って行こうと思ってたけど、それなら食糧の買い出しとかも最小限ですぐに向かうことができるし、四日後の謁見にも間に合いそうだ。
――張りつめていた部屋の空気は、いつの間にか和やかな雰囲気に変わってきていた。
彼たちにとっては謎だった俺の正体と、決して人類の敵ではないと知ったこと。
そして、ユリア様の回復に進展と光明を得たこと。
二人の顔を見て思った。やっぱり希望を持った人間の顔っていいなって。
俺も、立場的にストレイアからの使命を無視はできない。でも、希望をもって進めば、何かが開けるような気がしてならなかった。
なにより、セレイナをただの粛清兵器として扱うなんて、俺には到底無理な話である。
彼女にも笑っていてほしい。そう思うのは、甘い理想論でしかないのだろうか。
そこはまだ、世界を見聞し、蓋を開けてみないとわからない。
でも、希望を持つ資格は誰にでもあるんだし、今はまだ、甘い蜜のような理想論でもいいじゃないか。
みんなの顔を見て、俺はそう思っていた。
「じゃあ、旅の支度をしてすぐにポートイリスに向かいたいと思います」
「ああ。街は東の海の湾に面している、大きな街ではないが見つけやすいはずだ」
「リント、あなた死なないのよね?今度、新技の実験体になって頂戴ね」
メイさんは俺の胸に拳を当て、いたずらな笑顔とウインクを放り投げてくる。
俺たちは「あはは、考えておきます」と、逃げるように部屋を出た。
――街は活気を取り戻していた。
街の建物や人々を見渡す。
俺も、少しだけどこの街のために役に立てたことを、誇らしく思った。
殴り合いの喧嘩もしたことがなかった俺が、何かを守るために魔族なんかと戦うことが出来たことが、いまだに信じられない。
この世界に来て、俺は男として一皮も二皮も剥けることが出来たようだ。
隣を歩くセレイナに、バレない程度の視線を送る。
彼女はいつも優しい笑みを絶やさない。いや、俺と二人の時は普段よりにこやかなような?
いや、多分気のせいかな、それは……
「パン屋だ、入ろうセレイナ」
「はい」
店内には様々なパンが並んでいる。
なんとも香ばしい、食欲を掻き立てる芳醇な香りだろう。
「ん~、いい香り」
「とてもいい香りですね、リントさん」
使命を終えたら、どこかで修行してパン屋を開くのいいかもしれない。向うに帰れない前提の話だけど。
――終えたらか……
もしそうなった時、セレイナ達、星骸はどうなるんだろうか。
また封印されてしまうのだろうか……そうしたら俺たちは……
いや、俺が今のままでいられるなら、何度でも復活させられる?でも、もし俺の力も取り上げられてしまったら。
はい! やめよう!やめやめ!
これ以上陰鬱な気持ちになる前に、俺は深呼吸して気持ちを切り替えた。
とりあえず、使命達成後の俺のスローライフは、パン屋に決まった。
不老不死でいられたら、百年でも二百年でもかけてパン道を極めてやるぜ!
適当なパンを見繕った俺たちは店を後にした。
ここで飛ぶのは少し目立つので、街の外れまで移動することにした。
「よし、この辺りでいいかな。セレイナ、頼むよ」
「はい。では、私に掴まってください」
俺はセレイナの肩に掴まり、身体を密着させる。
セレイナの体温が俺の五感を刺激し、やわらかな香りが鼻腔をくすぐる。
この前は、切羽詰まっていたので余裕がなかったが、今は全てを感じ取れてしまう。
健康な男子にとって、これは刺激が強すぎる。
いや、ご褒美すぎる。
役得だ。
飛ぶ練習をしようかとも考えていたが、これはこれで良いのかもしれないと自分を納得させた。
そんな煩悩を巡らせているバカな俺を他所に、セレイナは浮かび上がると、大空を優雅に舞う鳥のように飛翔した。
向かうはポートイリス!
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