R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

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第一章 ヴォルフ・ガーナイン王国編

第25話 星骸フェリドゥーン

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 小高い丘の上にある、草原に囲まれた由緒正しい外観の屋敷。
 その寝室には、窓際のベッドに横たわる高齢の男性と、側に付き添っている、テールコートに身を包んだ長身の男の姿があった。

 その部屋はオーシャンビューとなっていて、窓からは美しいポートイリスの港と海が一望できる。
 ベッドの老人は、窓からその景色を眺め、遠い目をしていた。

 老人の側に佇む男は、顔を上げ部屋の中空を見つめる。

「どうかしたのか?」

 老人が優しく男に尋ねる。

「はい。懐かしい気配がこちらへと向かっているようですので」
「君が懐かしむとは、いつの知り合いなんだろうね」

 老人はフフッと笑うと、窓から目を離し、顔を俯いた。

「すまない。この200年、君は献身的にこの家に仕えてくれた。だが、後継者を作れなかった私の代で、レイリアス家は終わるだろう。そして君も…… 不甲斐ない主で申し訳なく思っている」

「いえ、そんな事はおっしゃらないでください、アルムレット様。私は、元の場所に還るだけのことです」
「――ありがとう。知り合いが来るのだろう? 私は大丈夫だから出迎えてあげなさい、フェリドゥーン」
「はい。 少しの間、お屋敷を空けさせてもらいます」

 男が部屋から出ると、老人は息を静かに吐き、目を閉じた。




 ――――海が見えてきた。
 エディアノイさんは、湾に面しているところに街があると言っていた。
 セレイナはさらに高度を上げ、飛行を続けた。

 上空からだと地形がわかりやすく、俺たちはすぐに湾になっている部分を見つけた。
 手前側と対岸にも街が見えるが、セレイナが手前側に街だと言うので、その街へ飛行しつつ高度を下げていく。

 やはり、セレイナの飛行速度はすごい。一日どころか、半日ほどで着いてしまった。

 景色のいい草原を見つけたら、パンを広げてセレイナとピクニックー!なんて考えていたら、彼女は休憩も挟まず飛び続け、到着してしまった……


 空から街の入り口に近づく。
 なんて景観の良い街なんだろう。街を守る城塞の中の家々は青い屋根で統一されていて、奥にはビーチも見える。
 ビーチの方には、屋根が高く立派な住宅が並んでいるので、貴族や豪商たちの別荘地になっているんだろうと思った。

 海もとても綺麗だ。マリンブルーの水面が、太陽の光に照らされてキラキラと輝いている。

 空からの登場では少し目立ってしまうので、俺たちは少し離れた位置に降りた。

「どう? セレイナ」
「はい。間違いなくこの街にフェリドゥーンはいます」

 俺たちは街の門へと向かうも、これは……

 おそらく百人は超える行列が出来ている。

 冒険者らしき護衛を付けた貴族の馬車や商人たち。そして風貌から冒険者パーティだろうか、とにかく色々な人たちが列を作っている。

 仕方なく俺たちも列に並ぶことにした。すると、前の冒険者たちの会話が聞こえてきた。

「ここの領主のリンスデール伯爵、そろそろヤバいらしいな」
「あー、もう高齢だもんな。随分前から身体の調子が良くないとか」
「跡取りもいないみたいだし、どうすんだろうな」
「五代続いた伯爵家も終わりか。金にどぎつい領主なんかに代わったら、ここも変わっちまうんだろうな。いい街なのに」

 リンスデール伯爵といえば、多分フェリドゥーンの主だ。
 身体を悪くしてるのか、俺の力で治せればいいんだけど。怪我ならいざ知らず、病気はどうなんだろうか……

 意外と流れはスムーズで、俺たちの番が回ってきた。

 俺はリングを守衛に見せ、中へと通してもらった。
 Sランクの冒険者リングは本当に便利だ。街への通行税もかからないし、面倒な手続きもない。実質、顔パスのようなものだ。


 門をくぐると、街の景色より先に、真正面に立っている黒いスーツに身を包んだ男の姿が目に飛び込んできた。

 気のせいではない。明らかに俺たちに向けられた視線。内包しているマナも、メイさんに匹敵するものを感じる。

 俺は警戒して、セレイナの前に出た。すると、男が口を開く。

「――久しぶりだな、光の。 君も復活していたのか」
「久しぶりですね、フェリドゥーン。今の私にはセレイナという名前があります。そう呼んでください」

 この人がフェリドゥーン……

 グレーの髪をした長身の男。凛々しさを纏う整った顔立ちに、金色の瞳がアクセントとなってよく映えている。
 中性的なイケメンというよりは、ハリウッドスターのような男前な感じだ。

 見た目的には20代後半くらいだろうか。彼が醸し出す雰囲気からは大人の男の落ち着きを感じる。

「セレイナ。 ――名を得たのか」
「はい。ここにいる凛人さんに名付けて頂きました」

 フェリドゥーンは、俺を一瞥すると再びセレイナへ視線を向けた。

「……彼から、あの方のマナを強く感じる」
「凛人さんは、ストレイアがその意思を託した方です」
「そうか、あの方の。 ――彼が、今の君の主なのだな」

 フェリドゥーンの視線が、今度は俺に注がれる。

 その表情からは、俺の言葉を待っているように感じた。フェリドゥーンからすれば、突然現れた得体のしれない奴が、共に戦ったかつての同志の主づらをしてるわけだし……

 彼の力を借りるためにも、きちんと俺の意思を伝えなければならない。

 俺は人を見る目はそこそこあるつもりだ。彼は多分、まっすぐな男だ。

 ここは、掛け値なしの素直な気持ちをぶつけてみようと思った。


「瀬川凛人です。フェリドゥーンさんはこの星の状況をご存じですか?」
「――星のマナが弱りつつあるのは常に感じている」
「ストレイアは、人々の絶え間ない争いが原因だと言っていました。俺がストレイアに言われたのは、この星の知性ある者たちを滅ぼすこと……俺はそれを、滅亡以外の方法でなんとかしたい、そう思ってます」

 フェリドゥーンは、俺の言葉を眉一つ動かさず黙って聞いている。
 やはり、俺の言っていることはただの綺麗ごと。幼稚な理想論に過ぎないのだろうか……
 少し自信が揺らいできた時、フェリドゥーンが口を開いた。

「なぜ君はそんな回りくどいことをする?我々の力を行使すれば、滅ぼすことは容易い。その方が簡単ではないのか?」

 簡単…… 確かにそうなんだろう。星骸の力はセレイナでわかっている。彼らの力があれば、この世界の文明を滅亡させるのはそう難しくはない。

 でも、この星の為だからみんな死んでください。そんなことがまかり通っていいはずがない。
 回り道だとしても、なんとか……

「俺はまだこの世界のことをほんの少ししか知りません。でも、そのほんの少しの中にさえ、良い人たちは沢山いました。俺はその人たちに死んでほしくない。それだけです」

「それだけなのか?」
「それだけです」

 しばしの沈黙が訪れ、フェリドゥーンは街の方へと歩き出した。

「せっかくの再会に立ち話もなんだ。屋敷で話そう」
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