R・P・G ~転生して不死にされた俺は、最強の英雄たちと滅ぼすはずだった異世界を統治する~

イット

文字の大きさ
41 / 42
第二章 オルディア王国編

第38話 奴隷契約の儀

しおりを挟む
「俺が、馬車の奴隷を全員買います」

「……はぁ??」

 ラジャンベリは手を止め、目を丸くして口を開けている。
 しばしの沈黙がおとずれ、ラジャンベリは深くため息をついた。

「リントさん、商売人に対してそういう冗談はあまり好ましくありませんぞ?」

「いえ、本気で言ってるんですけど」

「――あのですね、確かにあなた方の冒険者としての実力は素晴らしかったし、私も命を救われました。いわば、命の恩人ですな。それが例え契約上の関係だとしてもです。他の冒険者に依頼していたら、ひょっとしたら私は死んでいたかもしれません。ですがね、商品を見たでしょう、人間種ならいざしらず、あのエルフの少女は一介の冒険者が手を出せる金額じゃありません」

 そういうと、ラジャンベリはまたきんちゃく袋を漁り出した。

「命の恩人ですから、今の商人への非礼は聞かなかったことにして差し上げますよ」

 まあ相手にされないだろうなとは思っていた。
 古代ローマ時代でも奴隷は年齢、性別、技能、健康状態によって価格が異なり、特に技能がなくても、健康な若い奴隷1人の価格は一家4人(一般家庭)の1年間の生活費ほどしたという。

 馬車の奴隷は若いし値もそれなりだろう。
 そう考えると、貴重なエルフの少女はおよそ法外な価格に違いない。とても一般人では手が出せない金額だとすると金貨100枚以上。数億といったところか。

 今の手持ちは金貨20枚ほどだけど、フェリドゥーンに頼めばすぐに持ってきてくれるはず。

「これは失礼しました。参考までに、そのエルフをいくらで売るつもりだったんですか?」

 俺はまず値を聞き出すことにした。彼の言葉にムキになって、『金貨100枚でも200枚でも出してやるよ!』なんて言ってしまったら足元を見られるかもしれない。

「エルフは金持ち連中が入荷の順番待ちをするほど人気ですからなぁ。この娘はオルディア王家と親交のある貴族に売るつもりだったんですが、ヴォルフ・ガーナインの監視の目がことのほか厳しくて断念せざるを得なかったわけです。まあ、金額としては金貨400枚といったところですな」

 日本円にするとざっと10億以上か。少女一人にとんでもない金額だ……

 でも一度決めたことは曲げたくない。俺はフェリドゥーンにそれとなく合図を送った。

「本当によろしいのですか?」フェリドゥーンは耳元で囁いてきた。
 そんな彼に俺は、うん、と返事を返した。

「えー、報酬はこちらでいかがですかな? 」

 ラジャンベリは数枚の硬貨を出してきた。

「リントさんは命の恩人だ。 金貨1枚と銀貨5枚、15万ディーツお支払いさせて頂きます。護衛としては破格の金額ですよ」

 俺は差し出された手を両手でそっと押し返した。

「それは受け取れません」
「この金額でも不満があると? 見た目に反して強欲なお方のようだ、まあ、あれだけの働きをしてくれましたからなぁ。でしたら――」
「いえ、やっぱり奴隷たちを売っていただきたいと思いまして」
「――はぁ…… あなたはよほど冗談がお好きなんですね。それもたちの悪い冗談が」

 ラジャンベリが目を釣り上げさせていると、フェリドゥーンがきんちゃく袋を携えて戻ってきた。

 俺はそれを受け取り、「お確かめください」とラジャンベリへ差し出した。

「ん? これはなんですかな?」
「400枚あると思います。確認して頂けますか?」

「こ、これは……」

 ラジャンベリは袋を広げ、中身が金貨であることに驚くと、商人の性か、すぐさま中身を数えだした。

「よ、400枚…… 確かにありますが、リントさん、あなたどこからこれを」
「詳しくは言えませんが、少しばかりお金には余裕がありまして。これと、残りの奴隷分の金額もお支払いしますので、売っていただけますか?」
「あの戦いぶりといい ――あ、あなた方はいったい何者なんです……?」

「運よく少しお金を得ただけの、ただの冒険者パーティですよ」そういって俺は愛想笑いをした。

「――先ほどは失礼いたしました。事情はどうあれ、商売人として相応の金額を頂けるならあなたは列記とした私の客だ。お売りいたしましょう」
「ありがとうございます!」

「して、リントさんはあのエルフの娘をいかようにお使いで? 大変貴重~な品ですよぉ?」
「ふっふっふ。それはもうですよ……ラジャンベリさん」
「グフフ、やはりあれですか?」
「そう、あれです……」
「――お好きですなぁ、グフフフフフ」
「――ええ。くっくっくっく」

(リント様……)
(凛人さん……?)

 彼女は何としても親元へ送り届けよう。
 あんな顔が似合う子じゃない。それに、笑っている顔を見てみたい。

 きっと、朝露を宿した花もかすむほど美しいに違いない。

「それでは、奴隷契約を行い、刻印の儀を済ませたら契約完了です」
「刻印の儀?」
「はい、あなたの奴隷だという印が首に刻まれます」

 え…… それはちょっと困るな。みんなを家に帰そうと思ってたんだけど。
 そんな刻印があったら何かと不便だろう。

「その儀式は絶対やらないとダメなんですか?……あとで個人的にやるとか」

 ラジャンベリは目を細め、顔つきを鋭くさせた。

「もし、奴隷が主人を裏切ったり傷つけたりなんかしたら、私の商人としての信用に傷がつきますからな。それを断るのならばお売りすることはできません」

 仕方ないか。まずは彼らが変な主人に買われるのを阻止するのが先決だ。
 刻印のことは後から考えよう。

 ラジャンベリは紋様が描かれた紙を取り出し、紋様の部分に俺の血を1滴たらすように指示してきた。

 奴隷たちに馬車の外に並ぶように指示をし、その紙を奴隷たちの額へ当てていく。

 すると、奴隷たちの首の左に、紋様が浮かび上がった。

「これで完了です。――いいですか?よく聞きなさい!」

 ラジャンベリは奴隷たちに大きな声を発した。

「もし、主人を裏切ったり害するようなことがあれば、その体は壊死をしはじめ、地獄の苦しみの中、数日かけて悶え死ぬことになります。嘘もついてはいけません。嘘をつけば、気が狂うほどの痛みが体を襲うでしょう」

 奴隷たちは皆息を飲み、凍り付いた表情で話を聞いている。

「命に背くことも禁止です。主人の命令は絶対、逆らえば耐えがたい苦痛が襲いかかります。自死しようとしても無駄。自傷行為やその類の行動には抑制がかかります。主人があなた方の死を望むまで仕えなさい ――よろしいですね?」

「はい」と、奴隷たちは力なく返事をした。

 ペット以下の扱いだな……
 これを刻印のあとに伝えたのは、それを事前に知ってしまうと自ら命を絶つ者もいるからだろう。

 俺は、うつむいて立っている奴隷たちに近づいた。そして、右端に立っている男性に手を差し出した。

「これからよろしくお願いします。瀬川凛人です」
「え…… は、はあ」

 男性は驚いた顔をして、若干の間を置いて手を差し出してきた。

 右から順に挨拶を済ませていく。

 そして、エルフの少女の前に俺は来た。視線の高さを彼女に合わせる。
 こうして間近で見ると、見た目は10歳くらいだ。

「大丈夫。君を家に帰してあげるよ、安心して」俺は小さく声をかけた。

 その言葉に少女は顔を上げ、俺を見つめてくる。

 あまりに見つめてくるので「どうかしたの?」と、俺は声をかけた。


「――――すごく、大きくて綺麗なマナ」

 少女は俺の目を見ながらつぶやいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

転生先は上位貴族で土属性のスキルを手に入れ雑魚扱いだったものの職業は最強だった英雄異世界転生譚

熊虎屋
ファンタジー
現世で一度死んでしまったバスケットボール最強中学生の主人公「神崎 凪」は異世界転生をして上位貴族となったが魔法が土属性というハズレ属性に。 しかし職業は最強!? 自分なりの生活を楽しもうとするがいつの間にか世界の英雄に!? ハズレ属性と最強の職業で英雄となった異世界転生譚。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

前世で薬漬けだったおっさん、エルフに転生して自由を得る

がい
ファンタジー
ある日突然世界的に流行した病気。 その治療薬『メシア』の副作用により薬漬けになってしまった森野宏人(35)は、療養として母方の祖父の家で暮らしいた。 爺ちゃんと山に狩りの手伝いに行く事が楽しみになった宏人だったが、田舎のコミュニティは狭く、宏人の良くない噂が広まってしまった。 爺ちゃんとの狩りに行けなくなった宏人は、勢いでピルケースに入っているメシアを全て口に放り込み、そのまま意識を失ってしまう。 『私の名前は女神メシア。貴方には二つ選択肢がございます。』 人として輪廻の輪に戻るか、別の世界に行くか悩む宏人だったが、女神様にエルフになれると言われ、新たな人生、いや、エルフ生を楽しむ事を決める宏人。 『せっかくエルフになれたんだ!自由に冒険や旅を楽しむぞ!』 諸事情により不定期更新になります。 完結まで頑張る!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...