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2章-4節. 停学期間を折り返した私は…
41.友人に意趣を返されます。
しおりを挟む街中で追われているオルブを見つけた私とテルマは、商会まで送っていく途中で迷宮に迷い込み、たった今帰還した。
そこでオルブの知り合いの少年冒険者達と遭遇し、隷属契約なるものを掛けられている事を知る。
そんな時、オルブが言い出した事は…
「お…おいオルブ?今、なんて?」
「聞こえなかった?この悪趣味なアクセサリーを外すって言ったんだよ。」
「……聞き間違えじゃなかったか。」
「じゃ、早速始めるね。」
「待てオルブ。」
「ん?なにかな?」
「いや、別にお前を疑うつもりはないんだけどよぉ?」
「コイツは手錠みたいに簡単に外せるもんなのか?見たところ鍵穴はないみたいだが……」
「もしかして、鍵穴が隠れてるタイプか?それとも、以前にも外した事があったり……?」
「いいや、コイツに鍵穴は無いと思う。もちろん、外すのは初めてだね。」
「「「………」」」
オルブの思わぬ発言に3人は言葉を失った。
かく言う私も、言葉が出なかった。
「質問は終わりかな。じゃあ早速……」
「「「待て。」」」
「んぇ?」
「オルブ、確かにお前の鍵師としての実力はえげつないくらい高い。それはわかってる。」
「それこそ、この王都内どころか王国中を探してもお前以上の鍵師は見つからないだろう。」
「ましてや、鍵開けに関しちゃド素人の俺らが口出しすんのも本来憚られるもんだ。」
尚も、3人は説得するかの様に言葉を続ける。どうやら彼らも私と同じ事を思っている様だ。
「おまけに俺たちを助けようとしてくれてる奴に唾を吐く様な行いだってこともわかってる。」
「けど、いくら何でも鍵穴の無い錠前を開けるなんて芸当は聞いた事がねぇ。」
「当然、この首輪を外したなんて前例もな。そもそもお前はそういう事をする奴じゃ…」
「わかってるよ。」
「「「……えっ?」」」
「わかってるよ。前例が無い事も、らしくないって事も、無謀だって事も。場合によっては、僕も無事では済まないだろうね。」
「オルブ……」
「けどそれは、友人を見捨てる理由にはならない。それも、僕を庇って死のうとしているなら尚更だよ。首輪も、このまま迷宮へ捨てに行くつもりなんでしょ?」
「「「っ……」」」
反応から見るに、図星か。やっぱりそういう事だよな。
彼らは恐らく、これ以上馬鹿共に自分達が利用されない様に迷宮で死ぬつもりだ。それも、首輪を再利用されて他の冒険者が同じ目に合わない様に、回収する事が出来ないくらいうんと深層で。
大切な友人や仲間のために。
そして、己の信念のために。
これが冒険者………やはり美しい生き物だな。
「それに、君らは勘違いしてるよ。前例が無いなんて文言は、この世の事象全てに言われてきた事…決して不可能の烙印なんかじゃない。前例が無い事に誰かが切り込んで、他の人々もそれに続くことで定石は作られていく。その誰かがまだ居ないなら、自分がなれば良い。」
あれ?この文言って……
「だから、そこで見ててよ。鍵穴の無い錠前を開けるっていう前例が生まれる瞬間を。」
………なるほど。意趣返しって訳か。悪い気はしないが…何というか……むず痒い。
「……わかった。んじゃぁ…まぁ…頼むわ。」
「しかと、この目で見届けるぜ。」
「例えどんな結果でも………な。」
そう言った彼らの目つきは、さっきと変わっていた。さっきも良かったのだが……私はこっちの方が好きだな。
さて……私は私の勤めを果たしに行くかな。
「じゃ、この場はオルブに任せて私らは馬鹿共を片付けに行くか。テルマ、着いて来てくれ。」
「お…おう、わかった。」
「待ってくださいアレクさん。」
「……何だ?」
「もし行くなら生捕りでお願いします。」
「………善処する。」
「確約してください。考えがありますので。」
「………わかった。」
そうして、私達は階段へと向かった。
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