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1章-1節.薬師の名門ブレルスクに入学した私は…
7.公演開始まで雑談します。
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「……帰りてぇなぁ。」
入学して3週間が経ち、モチベーションは下降の一途だった。
別にホームシックに陥ったわけでは無い。それも多少はあるが、故郷を懐かしく思うくらいなものだ。
モチベーションの降下の原因はもっと別なところにあった。
現状を整理するとこんな感じだ。
授業内容は、完全な詰め込み式で、非効率この上ない。教員達は、大した理解もしていない状態で教えているのだろう。あちこちの説明が曖昧模糊で杜撰だ。そんな理解度で何故あんなにも偉ぶれるのかが不思議でならない。自主的な勉強を促す為に敢えて行なっている可能性も考えられるが、あの態度からはそこまで考えてる様にはとても思えない。
そもそも、そこまでして学院に通って授業を受ける必要性を感じない。
ならば、薬慈院で実務を通して教わろうと考えてアルバイトを初めた。
だが、任せられる仕事は掃除・洗濯・荷物運び等、薬学とは関係ない雑用ばかりだ。
下積みが重要なのかと思ったら、高位貴族の令息は初日から実務を任せられているらしい。
それ以外の者についてはすり鉢すら持たせて貰えない。
明らかな贔屓である。
それでも、日銭稼ぎがやっとな平民の生まれやコネクションの無い下級貴族の子息にとっては貴重な収入源となる。
まさに、貴族社会の腐敗を体現した仕組みと言える。
全く以って反吐が出る。
何にせよ、ここで学べる事は何もない。
そもそも、これでは学院に通ってまで授業を受ける必要を感じない。
こんな事なら、故郷で薬草の世話をしながら勉強してた方がよっぽど効率が良いな。
正直、今すぐにでもこの学園を立ち去りたい気持ちでいっぱいだ。
「アレクさん、おはようございます。」
「?あぁ…はい。おはようございます。カンナさん。」
そんな毎日だが、悪い事ばかりでもない。
「今日も良い天気ですね。」
「えぇ、日差しが強くて眩しい限りですよ。」
彼女はカンナ。仔猫を助けた事をきっかけにこうして話す様になった。
"「(ヒョコッ)ミゥ!」"
「……カンナさん、また連れて来たんですか?」
鞄から件の仔猫が顔を出す。
「えっ!?あれ…いつの間に……」
惚けてる様子は無い。本当に気付かなかったんだろうか。
「もうっ!勝手に鞄に入っちゃ、めっ!って言ってるでしょ?」
"「ミャ~」"
仔猫と顔を近付けて話を始めた。実は、この仔猫が潜り込むのはこれが初めてじゃない。最初に鞄から顔を出した時は、度肝を抜かれたな。
「まだ怪我だって完全に治りきってないし、ここで見つかったりしたら……」
"「(ペロッ)」"
「ひゃわっ!?」
"「ミィ?」"
「……別に怒ってないよ?家で大人しくしててって言ってるの。」
"「ミャウミャウミャ~」"
というか、以前から気になってたけど……この子、この仔猫と会話してないか?……いや、普通に考えてそれはないか。たまたまそう聞こえるだけか。普通、そんな人間がいる訳ないか。
《ご主人がそれを言っちゃいますか?》
昼間は引っ込んでなさい。
《了解致しました。》
「いい?ちゃんと授業中は、静かにしてね。わかった?」
"「ミャウ!」"
どうやら、話は着いたようだ。これで授業中は大人しくしてくれてるのだから、カンナさんの人徳が垣間見えるな。
「すみません。お騒がしてしまいました。」
「いえいえ、気にしないでください。」
こうして彼女と過ごす学園生活は、案外悪くない。
だから、もう少しだけ通ってみようかとも思ってる。
「そういえば、前回のテストの結果はどうでしたか?」
「えぇ、相変わらず50点を超える事ができません。自分の不出来を実感するばかりです。」
「そんな……わたしは20点でしたよ?充分出来ていますって。」
「ははっ、ありがとうございます。」
テストは1週間毎に実施され、上限は100点だ。せめて70点は取りたいが、どうしても50点を頭打ちにして点数が上がらない。
こんな有様だから、他の生徒からは目の敵にされているのだろう。
特に貴族家出身の連中にはやたら睨まれるし、すれ違いざまに舌打ちも聞こえる。
やはり、彼らには見苦しく写ってしまうのだろうか。
せめてテスト用紙が返却されればどこを間違えたか確認出来るが、返却されないから確認のしようがない。
前世で受けた大学のテストみたいなものかもしれない。
私に出来る事は、文献や関連図書を元に自己採点をして間違いを無くす他にない。
しかし……自己採点の結果はいつも満点になる。あの教員達の事だし、採点を間違えてるとか……?いやいや、流石にそれはないだろう。
前世の記憶があるというアドバンテージが慢心を産んでしまい、勉学において悪影響を与えているのかもしれない。
いけないな。初心で挑まなきゃだ。
「あの、どうされましたか?」
「……いえ、大した事ではありませんよ。」
「そうですか?顔色があまり宜しくありませんよ?」
参ったな。連日のアルバイトで少し疲れが出て来たか?
「体調が優れない様でしたら、いつでも相談してください。」
ほんと、良い子だよな。
〈〈キーンコーンカーンコーンッ〉〉
予鈴が鳴る。そろそろ公演の時間か。
そんな訳で、私は今日も時間を無為にする事を覚悟した。
入学して3週間が経ち、モチベーションは下降の一途だった。
別にホームシックに陥ったわけでは無い。それも多少はあるが、故郷を懐かしく思うくらいなものだ。
モチベーションの降下の原因はもっと別なところにあった。
現状を整理するとこんな感じだ。
授業内容は、完全な詰め込み式で、非効率この上ない。教員達は、大した理解もしていない状態で教えているのだろう。あちこちの説明が曖昧模糊で杜撰だ。そんな理解度で何故あんなにも偉ぶれるのかが不思議でならない。自主的な勉強を促す為に敢えて行なっている可能性も考えられるが、あの態度からはそこまで考えてる様にはとても思えない。
そもそも、そこまでして学院に通って授業を受ける必要性を感じない。
ならば、薬慈院で実務を通して教わろうと考えてアルバイトを初めた。
だが、任せられる仕事は掃除・洗濯・荷物運び等、薬学とは関係ない雑用ばかりだ。
下積みが重要なのかと思ったら、高位貴族の令息は初日から実務を任せられているらしい。
それ以外の者についてはすり鉢すら持たせて貰えない。
明らかな贔屓である。
それでも、日銭稼ぎがやっとな平民の生まれやコネクションの無い下級貴族の子息にとっては貴重な収入源となる。
まさに、貴族社会の腐敗を体現した仕組みと言える。
全く以って反吐が出る。
何にせよ、ここで学べる事は何もない。
そもそも、これでは学院に通ってまで授業を受ける必要を感じない。
こんな事なら、故郷で薬草の世話をしながら勉強してた方がよっぽど効率が良いな。
正直、今すぐにでもこの学園を立ち去りたい気持ちでいっぱいだ。
「アレクさん、おはようございます。」
「?あぁ…はい。おはようございます。カンナさん。」
そんな毎日だが、悪い事ばかりでもない。
「今日も良い天気ですね。」
「えぇ、日差しが強くて眩しい限りですよ。」
彼女はカンナ。仔猫を助けた事をきっかけにこうして話す様になった。
"「(ヒョコッ)ミゥ!」"
「……カンナさん、また連れて来たんですか?」
鞄から件の仔猫が顔を出す。
「えっ!?あれ…いつの間に……」
惚けてる様子は無い。本当に気付かなかったんだろうか。
「もうっ!勝手に鞄に入っちゃ、めっ!って言ってるでしょ?」
"「ミャ~」"
仔猫と顔を近付けて話を始めた。実は、この仔猫が潜り込むのはこれが初めてじゃない。最初に鞄から顔を出した時は、度肝を抜かれたな。
「まだ怪我だって完全に治りきってないし、ここで見つかったりしたら……」
"「(ペロッ)」"
「ひゃわっ!?」
"「ミィ?」"
「……別に怒ってないよ?家で大人しくしててって言ってるの。」
"「ミャウミャウミャ~」"
というか、以前から気になってたけど……この子、この仔猫と会話してないか?……いや、普通に考えてそれはないか。たまたまそう聞こえるだけか。普通、そんな人間がいる訳ないか。
《ご主人がそれを言っちゃいますか?》
昼間は引っ込んでなさい。
《了解致しました。》
「いい?ちゃんと授業中は、静かにしてね。わかった?」
"「ミャウ!」"
どうやら、話は着いたようだ。これで授業中は大人しくしてくれてるのだから、カンナさんの人徳が垣間見えるな。
「すみません。お騒がしてしまいました。」
「いえいえ、気にしないでください。」
こうして彼女と過ごす学園生活は、案外悪くない。
だから、もう少しだけ通ってみようかとも思ってる。
「そういえば、前回のテストの結果はどうでしたか?」
「えぇ、相変わらず50点を超える事ができません。自分の不出来を実感するばかりです。」
「そんな……わたしは20点でしたよ?充分出来ていますって。」
「ははっ、ありがとうございます。」
テストは1週間毎に実施され、上限は100点だ。せめて70点は取りたいが、どうしても50点を頭打ちにして点数が上がらない。
こんな有様だから、他の生徒からは目の敵にされているのだろう。
特に貴族家出身の連中にはやたら睨まれるし、すれ違いざまに舌打ちも聞こえる。
やはり、彼らには見苦しく写ってしまうのだろうか。
せめてテスト用紙が返却されればどこを間違えたか確認出来るが、返却されないから確認のしようがない。
前世で受けた大学のテストみたいなものかもしれない。
私に出来る事は、文献や関連図書を元に自己採点をして間違いを無くす他にない。
しかし……自己採点の結果はいつも満点になる。あの教員達の事だし、採点を間違えてるとか……?いやいや、流石にそれはないだろう。
前世の記憶があるというアドバンテージが慢心を産んでしまい、勉学において悪影響を与えているのかもしれない。
いけないな。初心で挑まなきゃだ。
「あの、どうされましたか?」
「……いえ、大した事ではありませんよ。」
「そうですか?顔色があまり宜しくありませんよ?」
参ったな。連日のアルバイトで少し疲れが出て来たか?
「体調が優れない様でしたら、いつでも相談してください。」
ほんと、良い子だよな。
〈〈キーンコーンカーンコーンッ〉〉
予鈴が鳴る。そろそろ公演の時間か。
そんな訳で、私は今日も時間を無為にする事を覚悟した。
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