薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ

文字の大きさ
39 / 191
2章-1節.授業を荒らして停学処分を受けた私は……

5.薬慈院でのスキルを活かします。

しおりを挟む
 点滴……身体に不足している水分や栄養を血管から直接体内に送る方法だ。

 だが、ここにはそんな都合の良いものはない。だから……

「…体内の貯蓄グリコーゲンをグルカゴンで分解。全身に巡らせて、輸血と同時に点滴代わりに送り込む……と。」

 よし、我ながら良い調子だ。昔と比べて血糖値の調整精度は格段に上がったな。

 実際、森番をしていた頃は、せいぜい食糧の節約をするぐらいにしか使わない技能だった。

 薬慈院でのハードワークの賜物だ。

 多忙過ぎて予め食い溜めでもしておかないと引き継ぎの時間に間に合わないし、血糖値がバラつくと眠気で業務効率が下がる。

 当然、ドカ食いすればインスリンの大量分泌でホルモンバランスが崩れて体調を崩すからホルモンの分泌についてはある程度自分の意志で調整出来るようになった。

 まぁ……メカニズムを説明しろとか言われても無理だけどね。

 これも輸血と同じで、感覚で操作している感じだ。

 まぁ、麻酔もどうして効くのか分からずに150年間(以下略)

 何にせよ、これは嬉しい誤算だな。

 後は……

《無菌室の展開が終わりました。》

「ご苦労様。これから透析の準備に取り掛かる。」
《透析?では、私に任せてください。》
「……出来るのか?」
《はい。出来ます。》

 考えてみれば、汚物の浄化はこいつらスライムの十八番おはこだったな。出来ても何ら不思議ではないか。

「それじゃあ頼む。」
《了解しました。(ニュウッ)》

 プヨから伸びた触腕が、彼女の腹部へ至る。透析まですると、輸液管理に支障をきたしそうだったから正直助かった。

「問題は、ここからだ。」

 急激に変化させれば彼女の身が持たない。しばらくは、様子を見つつ泊まりがけで治療を行うしかない。

 これは、長期戦になりそうだな。


***


“「チチッ…チッチッ……」"
"「キキキッ…キキッ……」"
"「チュンッ…チュチュンッ……チュン…」"

 もうすっかり朝だ。治療を開始したのが昨日の朝だから、もう丸一日が経った事になる。

「……スゥ…スゥ…スゥ……」

 心なしか、昨日より顔色が良くなった様に見える。大分安定してきたな。

「……そろそろ、(ピッ)抜いておくか。」

 必要以上に輸血すると危ない。そう考えて、輸血するためのチューブを外す。

「……スゥ……スゥ…スゥ……」

 過呼吸はすっかり腹式呼吸に変わり、汗もかいているから代謝も機能している様だ。今の所、副作用も見られない。

 我ながら、凄い効き目だな。薬草要らずだ。

 ただ……王都の連中に知られたら、吊し上げられるか、一生監禁されそうで怖い。

「………」

 あいつらならやりかねないな。

"「(スリスリスリスリ)」"
「……ん?」
“「……ミィ?」"

 顰めた顔に気付いたからか、例の仔猫が寄って来て不安そうに見つめて来る。

「安心して。(ナデナデ)取り敢えず、一命を取り留めたよ。」
“「ミゥ?」"
「あと少しで、目を覚ますと思う。」
“「ミャウッ!ミャウミャウミャァァァ~ッ!!」"

 とても嬉しそうだ。治療中も、ずっと見守っていたし、本当にこの子が大好きなんだな。

《ご主人も大概では?》
「しかし、ただのカビかと思ったら……ここまで手こずるとはな。なぁ、プヨ。」
《……………………全くです。》

 珍しく、不服そうな様子だな。どうした?

《いえ、別に。それより、カビの解析が出来ました。》
「おぉ、どうだった?」
《はい。アスペルギルス属に酷似していますが、どの種類とも一致しませんでした。どうやら、王都固有の新種の様です。》

 アスペルギルス属……フミガーツス辺りからの派生か?

「駆除出来そうか?」
《可能です。しかし、今はお勧め出来ません。》
「……実行したらどうなる。」
《その場合、屋内構造の60%が損失される為、自己倒壊を起こしかねません。》
「やはりそうか。」
《現在この家屋は、強固なカビの菌糸によって辛うじて原型を留めています。正直、奇跡としか言えません。》

 本来カビは、苗床を分解して朽ちさせる。

 これだけ根付いていて倒壊していないのが不思議だったが、恐らくこいつにとっての樹木は苗床ではなく宿主なのだろう。

 樹木宿主の内部にその菌糸を張り巡らせて補強し、樹木宿主に体を擦り付ける(例えば、ボアなどがするマーキング行為やダニ取り)などの衝撃を菌糸が感知すると枝先などの高いところから自らの胞子をばら撒いて浴びせたり、時に吸引させる。

 そして、この胞子を常習的に浴びたり吸引した動物は、やがて衰弱して樹木宿主の根元で息絶える。そうして、樹木宿主に堆肥を提供する事で、カビは樹木宿主から栄養を貰う。


 そうして、樹木宿主と共生関係を築いているのだろう。

 樹木宿主を強固にするのは、過度の衝撃を加えられても幹や枝が折れない様にするためと考えられる。幹が折れたりすれば、樹上から胞子を浴びせられなくなるからな。

 例え、常習的に吸引しなくても、他の樹木に身体を擦り付ける行為そのものが、体表に付着した胞子を付着させて生息域を拡大する事に繋がる。

 そもそも、風の衝撃で胞子が出れば、その風に乗って他の木に移る事も可能ではないだろうか。

 考えれば考えるほど合理的な進化だな。

 まぁ、要するに……

「カビを放置すれば、病状は悪化する。だが、カビを取り除けば家屋が崩壊するって訳か。」
《どちらにせよ、健常者の生活に適していません。》

 ……となると、やはり我が家に運び出すしかないか。

 それも、出来るだけ急がなくてはならない。もし、私の予想が正しいのならじきにこの小屋は……

〈キシッ…〉
「っ……!」

 どうやら、時間はそう長くない様だ。

「直ぐに運び出す。準備してくれ。」
《わかりました。》

 ベットごと運び出すのは難しい。取り敢えず、肺を圧迫しない程度にテーピングするか。

「(ピシュルルルルルル…チッ)…よし、こんなもんか。」
《主、こちらは準備出来ました。》
「バイタルは?」
《安定しています。今なら運び出せます。》
「(ガバッ)じゃ、なるべく(スクッ)小屋を刺激しない様に……」

〈カラカラカラカラ……〉
〈ゴゴゴゴゴゴゴゴッ……〉

「………」

 小屋の外から、崩れる音が響いて来る。どうやら、周囲では既に崩壊が始まっている様だ。

 一刻を争う状況だ。しかも、運んでいる最中も彼女にはあまり衝撃を加えてはならない。もしかしたら、その衝撃でコト切れてしまうかもしれない。まぁ、両手で支え続ければギリギリ何とか……

“「ミャウ」"
「………」

 まずいな。仔猫こいつはどうする?走ってる間は両手が塞がってるし、肩に捕まらせるのも心配だ。途中で逸れるかもしれないし、自分で走らせる訳にも……

「仕方ない。(ヒョイッ)」
“「……ミャッ?!」"
「猫ちゃん、悪いがしばらく我慢してくれ!(ハグッ)」
“「ミャウッ!?」“

 首根っこを咥える。母猫が仔猫を運ぶ時によくやる方法だ。かなり荒っぽいが、今はこれしかない。

 ほんと、なんで私の人生ってこうも難易度跳ね上がるんだろうか。

 やっぱ呪われてる?いや、今更か。

 よし!駆け抜けるぞ!プヨ!!

《イエス、マスター!》

 そうして、私は崩落するゴーストタウンを駆け抜けた。


***


〈ドンッガラガラガラガラガラッドッシャァァァァァンッ〉

 その日、南西区SWにて、建物の崩落が発生した。

 被害は広範囲に及び、小屋はおろか街一つが崩壊する大事故となった。

 後日聞いた話によると、国は家屋等の老朽化が原因で起こった大事故であり、ゴーストタウンであったため死傷者無しと結論付け、復旧は先に見送られる事となったという。

 そう。は居ないと結論付けたのだ。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

転生したみたいなので異世界生活を楽しみます

さっちさん
ファンタジー
又々、題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… 沢山のコメントありがとうございます。対応出来なくてすいません。 誤字脱字申し訳ございません。気がついたら直していきます。 感傷的表現は無しでお願いしたいと思います😢 ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

国外追放だ!と言われたので従ってみた

れぷ
ファンタジー
 良いの?君達死ぬよ?

婚約破棄して廃嫡された馬鹿王子、冒険者になって自由に生きようとするも、何故か元婚約者に追いかけて来られて修羅場です。

平井敦史
ファンタジー
公爵令嬢ヘンリエッタとの婚約破棄を宣言した王太子マルグリスは、父王から廃嫡されてしまう。 マルグリスは王族の身分も捨て去り、相棒のレニーと共に冒険者として生きていこうと決意するが、そんな彼をヘンリエッタが追いかけて来て……!? 素直になれない三人の、ドタバタ冒険ファンタジー。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」にも掲載しています。

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる

十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

50歳元艦長、スキル【酒保】と指揮能力で異世界を生き抜く。残り物の狂犬と天然エルフを拾ったら、現代物資と戦術で最強部隊ができあがりました

月神世一
ファンタジー
​「命を捨てて勝つな。生きて勝て」 50歳の元イージス艦長が、ブラックコーヒーと海軍カレー、そして『指揮能力』で異世界を席巻する! ​海上自衛隊の艦長だった坂上真一(50歳)は、ある日突然、剣と魔法の異世界へ転移してしまう。 再就職先を求めて人材ギルドへ向かうも、受付嬢に言われた言葉は―― 「50歳ですか? シルバー求人はやってないんですよね」 ​途方に暮れる坂上の前にいたのは、誰からも見放された二人の問題児。 子供の泣き声を聞くと殺戮マシーンと化す「狂犬」龍魔呂。 規格外の魔力を持つが、方向音痴で市場を破壊する「天然」エルフのルナ。 ​「やれやれ。手のかかる部下を持ったもんだ」 ​坂上は彼らを拾い、ユニークスキル【酒保(PX)】を発動する。 呼び出すのは、自衛隊の補給物資。 高品質な食料、衛生用品、そして戦場の士気を高めるコーヒーと甘味。 ​魔法は使えない。だが、現代の戦術と無限の補給があれば負けはない。 これは、熟練の指揮官が「残り物」たちを最強の部隊へと育て上げ、美味しいご飯を食べるだけの、大人の冒険譚。

処理中です...