薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ

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2章-1節.授業を荒らして停学処分を受けた私は……

26.弟子と共に追手を巻きます。

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「お、おい!いきなりどうした!?」
「いいから!今はこの場を離れるぞ!!」

 すると、後方から声がする。

「おい!居たぞ!!」
「待ちやがれ!」
「逃さんぞ!!」

 さっきの連中が追って来た。なんだ?テルマは追われてるのか?

「おい!テルマ!どういうことだ!?」
「話してる暇は……ない!」
「「「大人しくアレクの居場所を吐けぇ!」」」

 ……なるほど。向こうは私を探している様だな。

「唐突で悪いが、今はこの場かっ(ガツッ)…らっ!?」

 テルマは石に躓いて転けかける。

「しめた!」
「よっしゃあっ!!」
「観念しやがれ!」
「(グィッガシッ)よっ(グィッ)と(ダダダダダダッ)」
「「「なっ!?」」」

 転けかけたテルマを背負って走る。

「背負いやがった!?」
「そんなのありかよ!!」
「どんな身体能力してやがる!!?」
「えっ?あっ!?」

 だが、テルマ自身が1番驚いていた。

「(ダダダダダダッ)事情はよくわからないが、あいつらを巻けば良いんだよな?」
「あっ…ああ、そうだ!」

 やれやれ、見事に面倒ごとに巻き込まれたな。

「出来れば誰に追われているか知りたい。教えてくれ。あいつらは何者だ?何があった?」
「……いいか、よく聞け。あいつらはヘルデス家からの刺客……お前を血眼で探してる連中だ。」
「へ?」

 ヘルデスって確か………マスルーツに並ぶ大貴族だよな?

「ヘルデス家が……私を?何故だ?」
「説明は後だ!ここで聞かれると面倒な事になる。一刻も早く巻いてくれ!!」
「あ…あぁ、わかった。」

 しかし、追っ手達が早くて中々巻けない。このままだと埒が明かないな。なら………

「歯ぁ食い縛れ!」
「えっ!?」
「舌噛むから歯ぁ食い縛れ!早く!」
「わ、わかった!(がちっ)」
「(ギュゥンッ)一気に飛ばすぞ!!(ブォンッ)」
「い゛っ!?」
「(ズッドォォォォッ!!)」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!?」

 そうして遥か彼方へと走り抜けた。

「「「…………」」」

 追手は呆然と立ち尽くすばかりだった。

「………なんて報告する?これ。」
「普通に逃げられたって伝えよう。」
「あぁ……誰も信じやしないだろうからな。」


***


「(バタン)……ふぅ。尾行はされてないな?」
「………出来ると……思うか?」

 適当な空き小屋に入った。

「それで?どういう事だ?」
「……待って、もう少しだけ。」

 さっきの急加速で腰が抜けたらしい。失神しなかっただけマシだと思うがな。

「……ふぅ、もう大丈夫だ。」

 結構タフな奴だった。中々に侮れないな。

「それで?何故あいつらは私を探してるんだ?」
「それが……ちょっとややこしいし長くなる。時系列で話して良いか?」
「頼む。」
「まず、雨の日にお前と会うまでの経緯からだ。……マサール・ヘルデスって知ってるか?」
「マサールさん?それなら……ヘルデス?」
「やっぱり知らなかったか。お前が薬慈院で世話をしていたマサール爺さんは、ヘルデス家の前当主だよ。」
「…………」

 マジかよ。どこかの貴族みたいだとは思ってたけど、そんな大物だったとは。

「…て、あれ?何故お前が知ってるんだ?」
「あぁ、屋敷で看護してたのは俺だからな。」
「お前が?何故?」
「爺さんのリクエストだ。爺さんとは結構長い付き合いでな。実家を追い出された俺を屋敷に匿ってくれたんだ。何もせずに世話になるのも悪いし、親族もあまり関わりたがらなかったみたいだから俺が爺さんの身の回りの世話をしてたんだ。」
「そうだったのか。」

 何というか……今まで何故気づかなかったんだろうな。

「……ん?ちょっと待て。お前確か世話になってた爺さんが死んだって……」
「そうだ。俺の言ってた爺さんってのは、マサール爺さんの事だ。」
「………そうか。」

 そう長くはないとわかっていた。覚悟も出来ていた。だが、非常に残念でならない。

「まさか、お前と面識があるとは思わなかったんだ。黙ってて、本当にすまなかった。」
「……いいや、仕方ないよ。私も秘密にしてたからな。それで、葬式はいつだ?」
「葬式はつい昨日終わった。」
「………それは、きついな。」

 せめて葬式ぐらいは立ち会いたかった。

「お前は立ち会えたのか?」
「もちろん。なんなら、今際の際からずっと見届けたよ。」

 テルマは淡々と語りだす。

「で、葬式の後に俺は屋敷を追い出された。住処を失って途方に暮れていた所を、お前に拾われたってわけだ。」
「なるほど。」

 あの日、そんな事があったのか。だが、どうしても気がかりな事がある。

「マサールさんは最後、どうだった?苦しんだりしてなかったか?」
「………ふふっ」
「どうした?」
「苦しむどころか、遊び疲れた子供みたいに安らかなもんだったよ。思い残す事は何もないって感じでな。」
「そうか……よかった。」

 あの薬のメモが役に立ったなら本望だ。

「それでだな。」
「ちょっと待った。」

 小屋の外に数人。追手だろうか?耳を済ませてみる。

「おい、テルマが逃げたんだってよ。」
「マジか。て事は、俺たちで捕まえるチャンスじゃねぇか。」
「あぁ、いるかどうかわかんねぇエディ探しよりよっぽど楽そうだな。」
「バカ。テルマを見つけても捕まえずに尾行すれば、聞き出すまでもなくアレクを捕まえられるだろうが。」
「「なるほど。」」

 小屋の外からそんな会話が聞こえて来た。

「………続きは屋敷で良いか?」
「……………わかった。」

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