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本編
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「やあっ!」
私はいつものように、騎士団の訓練場で剣の稽古をしていた。
キン、キン、と幾度となく打ち合う剣の音が響いた後、向かい合った相手は剣を下ろした。
「やめだ、ステラ」
そう告げたのは、騎士団の第一部隊を任される、マシュー・シェーベリン。
焦げ茶色の短髪と同じ色の瞳で、彼は私を見据えた。
「どうして? マシュー!」
突然の稽古中止に、私はマシューに頬を膨らませて抗議した。
「お前、今日心ここにあらずだろ。どうせアシュリー殿下のことだろうがな」
ポン、と優しく私の頭に手をのせるマシュー。
第一部隊を任させるだけあって、逞しい体躯の彼は、見た目にそぐわず、仲間想いで優しい。
父に剣を習っていた私は、次第に騎士団に合流して稽古をするようになり、よく面倒を見て可愛いがってくれたのが、マシュー。
私のお兄様的存在。
二年前、隊長になった彼の第一部隊と、私はよく魔物討伐に出掛けていた。
「そんなんじゃ、魔物討伐で殺られるぞ」
厳しくも優しいマシューに、思わず弱音が出てしまう。
「マシューぅぅぅぅ!!」
「どうした、どうした」
私の情けない声にも、マシューは優しく話を聞いてくれた。
「はー、聖女様が殿下に一目惚れされたって噂、本当だったんだな?」
「もうそんな噂になっているの?!」
マシューに先日の話をした私は、王宮内ですでにそんな噂が流れていることに驚いた。
「まあ、聖女様って言っても、まだ力の使い方を知らない小娘だろ? 力だけあるやつが暴走すると大変だからな」
訓練場の隅のベンチで、私たちは横並びに腰掛けて話していた。
「だからって毎日アシュリー様が付き添う必要なんて……」
私は思わず不満を吐露する。
そう。あれから、アシュリー様はお忙しいにも関わらず、アオイ様の訓練に付き添っている。
「仕方ないだろ。聖女様が、殿下がいないと訓練しないって言うんだから」
「でもお………」
マシューに頭を撫でられながら、私は愚痴をポロポロと溢す。
いつも努力、努力!根性!な私も、マシューの前でだけは愚痴を言ったり、甘えてしまう。
こんな情けない姿、アシュリー様には見せられないな。
アシュリー様のことを想うと、つい顔がニヤニヤしてしまう。
はあ、あのお茶会以来、お会いしていない。
「でも、アシュリー殿下もお前のために頑張ってるんだから、我慢しろよ」
ニヤニヤしている私に、マシューが諭すように言った。
「え……? それって、どういう……」
マシューの言葉に、どういうことだろう?と聞き返そうとしたけど、それは意外な人に遮られてしまった。
「ステラ!!」
訓練場の入口から聞こえてきたのは、愛しい人の声。
「アシュリー様?!」
驚いて、その方向を見れば、アシュリー様は慌てたようにこちらに走って来ていた。
「ど、どうされたんですか? 今日は確か、アオイ様の訓練では……」
私の目の前にたどり着き、肩を上下に揺らしながら、アシュリー様は息を整えていた。
「ステラこそっ……ここで何を……」
息を整えたアシュリー様は、私の方に顔を向ける。
何だか余裕の無いような?どうしたのかしら?
「私はここでマシューと剣の稽古をしておりました」
「いや、それはわかっている……その、ベンチで……」
「?」
歯切れの悪いアシュリー様に首を傾げていると、隣で吹き出す音が聞こえた。
「マシュー?」
「いやっ、すま、ないっ……。ははははは!」
「?」
急にお腹を抱えて吹き出すマシューに、意味がわからない。
「ステラ、お前はやっぱり愛されてるよ!」
「え?! 何、突然……」
突然意味のわからないことを言われ、額に皺を寄せる私に、マシューは私の頭に手をやり、アシュリー様の方を見た。
「殿下、俺にとってステラは妹みたいなもんです」
そう言うと、深々と頭を下げ、「あとはお二人で~」と言いながら、訓練場を去ってしまった。
……何だったんだろう。
彼の去った方角を呆然としながら見ていると、アシュリー様が口を開いた。
「……本当なのか?」
「え?」
「彼が、君を女としては何とも思っていないというのは、本当なのか?!」
「ええええええ?!」
ポツリと呟いたアシュリー様に聞き直すと、思ってもみない言葉を投げかけられ、私は思わず驚愕した。
「君が俺だけを思ってくれているのはわかっている。しかし、その……君は魅力的だから……」
………今、何て????
私は目を見開き、アシュリー様をしっかりと見る。
彼は、顔を真っ赤にしながら、視線を逸らしてしまった。……これは……?
「あの、アシュリー様?」
「何だ?!」
「ひょっとしなくても、嫉妬……だったりしますか?」
「!!」
嫉妬だった!!
先程よりも一層赤く染めた顔は、林檎のよう。
耳まで赤い彼に、愛しさが込み上げる。
「アシュリー様、私の愛は、あなただけの物です。それは、どんなことがあっても揺るぎない物です」
「……君はいつも直球すぎる……」
顔を赤くしたまま、アシュリー様は私を抱き寄せた。
「アシュリー様?!」
「でも、その直球が心地良い。君が俺の物なのだと思い知れる」
初めて抱き締められ、私の鼓動は早くなる。
私、アシュリー様に抱き締められているわ!!
嬉しさと恥ずかしさでどうにかなりそう。
「……いつも積極的なのに、こういうときは大人しいんだな? 可愛い……」
「!?」
耳元で甘く囁くアシュリー様に、思わず硬直してしまう。
どどど、どうしたんですか?!?!?!
「ステラ、君は俺の物だ……」
頬に手を添えられ、私はアシュリー様の方を向かされる。
彼の顔が段々と近付いて………
キ、キスされる?!?!?!
こ、こんな所で?!訓練場だよ??
で、でも嬉しい……!キスしたい……!!
甘い空気のアシュリー様に、私の脳内は大パニックだ。
大好きな彼の菫色の瞳が閉じられ、私の心臓もぶっ壊れそうなくらい早鐘を打っている。
覚悟した私も、目を閉じた。
アシュリー様………!!
ぎゅっ、と固く閉じた瞬間。
「殿下!!」
突然かけられた声に、私とアシュリー様は目を開いてお互いを見合う。
ええええええええ!!
このタイミング?!このタイミングなの?!
一体、誰よ!!
アシュリー様も私から身体を離すと、何だか不機嫌そうに溜め息をついた。
「……テーラー、何の用だ」
私たちの甘い時間を壊したのは、神官のテーラーだった。
私はいつものように、騎士団の訓練場で剣の稽古をしていた。
キン、キン、と幾度となく打ち合う剣の音が響いた後、向かい合った相手は剣を下ろした。
「やめだ、ステラ」
そう告げたのは、騎士団の第一部隊を任される、マシュー・シェーベリン。
焦げ茶色の短髪と同じ色の瞳で、彼は私を見据えた。
「どうして? マシュー!」
突然の稽古中止に、私はマシューに頬を膨らませて抗議した。
「お前、今日心ここにあらずだろ。どうせアシュリー殿下のことだろうがな」
ポン、と優しく私の頭に手をのせるマシュー。
第一部隊を任させるだけあって、逞しい体躯の彼は、見た目にそぐわず、仲間想いで優しい。
父に剣を習っていた私は、次第に騎士団に合流して稽古をするようになり、よく面倒を見て可愛いがってくれたのが、マシュー。
私のお兄様的存在。
二年前、隊長になった彼の第一部隊と、私はよく魔物討伐に出掛けていた。
「そんなんじゃ、魔物討伐で殺られるぞ」
厳しくも優しいマシューに、思わず弱音が出てしまう。
「マシューぅぅぅぅ!!」
「どうした、どうした」
私の情けない声にも、マシューは優しく話を聞いてくれた。
「はー、聖女様が殿下に一目惚れされたって噂、本当だったんだな?」
「もうそんな噂になっているの?!」
マシューに先日の話をした私は、王宮内ですでにそんな噂が流れていることに驚いた。
「まあ、聖女様って言っても、まだ力の使い方を知らない小娘だろ? 力だけあるやつが暴走すると大変だからな」
訓練場の隅のベンチで、私たちは横並びに腰掛けて話していた。
「だからって毎日アシュリー様が付き添う必要なんて……」
私は思わず不満を吐露する。
そう。あれから、アシュリー様はお忙しいにも関わらず、アオイ様の訓練に付き添っている。
「仕方ないだろ。聖女様が、殿下がいないと訓練しないって言うんだから」
「でもお………」
マシューに頭を撫でられながら、私は愚痴をポロポロと溢す。
いつも努力、努力!根性!な私も、マシューの前でだけは愚痴を言ったり、甘えてしまう。
こんな情けない姿、アシュリー様には見せられないな。
アシュリー様のことを想うと、つい顔がニヤニヤしてしまう。
はあ、あのお茶会以来、お会いしていない。
「でも、アシュリー殿下もお前のために頑張ってるんだから、我慢しろよ」
ニヤニヤしている私に、マシューが諭すように言った。
「え……? それって、どういう……」
マシューの言葉に、どういうことだろう?と聞き返そうとしたけど、それは意外な人に遮られてしまった。
「ステラ!!」
訓練場の入口から聞こえてきたのは、愛しい人の声。
「アシュリー様?!」
驚いて、その方向を見れば、アシュリー様は慌てたようにこちらに走って来ていた。
「ど、どうされたんですか? 今日は確か、アオイ様の訓練では……」
私の目の前にたどり着き、肩を上下に揺らしながら、アシュリー様は息を整えていた。
「ステラこそっ……ここで何を……」
息を整えたアシュリー様は、私の方に顔を向ける。
何だか余裕の無いような?どうしたのかしら?
「私はここでマシューと剣の稽古をしておりました」
「いや、それはわかっている……その、ベンチで……」
「?」
歯切れの悪いアシュリー様に首を傾げていると、隣で吹き出す音が聞こえた。
「マシュー?」
「いやっ、すま、ないっ……。ははははは!」
「?」
急にお腹を抱えて吹き出すマシューに、意味がわからない。
「ステラ、お前はやっぱり愛されてるよ!」
「え?! 何、突然……」
突然意味のわからないことを言われ、額に皺を寄せる私に、マシューは私の頭に手をやり、アシュリー様の方を見た。
「殿下、俺にとってステラは妹みたいなもんです」
そう言うと、深々と頭を下げ、「あとはお二人で~」と言いながら、訓練場を去ってしまった。
……何だったんだろう。
彼の去った方角を呆然としながら見ていると、アシュリー様が口を開いた。
「……本当なのか?」
「え?」
「彼が、君を女としては何とも思っていないというのは、本当なのか?!」
「ええええええ?!」
ポツリと呟いたアシュリー様に聞き直すと、思ってもみない言葉を投げかけられ、私は思わず驚愕した。
「君が俺だけを思ってくれているのはわかっている。しかし、その……君は魅力的だから……」
………今、何て????
私は目を見開き、アシュリー様をしっかりと見る。
彼は、顔を真っ赤にしながら、視線を逸らしてしまった。……これは……?
「あの、アシュリー様?」
「何だ?!」
「ひょっとしなくても、嫉妬……だったりしますか?」
「!!」
嫉妬だった!!
先程よりも一層赤く染めた顔は、林檎のよう。
耳まで赤い彼に、愛しさが込み上げる。
「アシュリー様、私の愛は、あなただけの物です。それは、どんなことがあっても揺るぎない物です」
「……君はいつも直球すぎる……」
顔を赤くしたまま、アシュリー様は私を抱き寄せた。
「アシュリー様?!」
「でも、その直球が心地良い。君が俺の物なのだと思い知れる」
初めて抱き締められ、私の鼓動は早くなる。
私、アシュリー様に抱き締められているわ!!
嬉しさと恥ずかしさでどうにかなりそう。
「……いつも積極的なのに、こういうときは大人しいんだな? 可愛い……」
「!?」
耳元で甘く囁くアシュリー様に、思わず硬直してしまう。
どどど、どうしたんですか?!?!?!
「ステラ、君は俺の物だ……」
頬に手を添えられ、私はアシュリー様の方を向かされる。
彼の顔が段々と近付いて………
キ、キスされる?!?!?!
こ、こんな所で?!訓練場だよ??
で、でも嬉しい……!キスしたい……!!
甘い空気のアシュリー様に、私の脳内は大パニックだ。
大好きな彼の菫色の瞳が閉じられ、私の心臓もぶっ壊れそうなくらい早鐘を打っている。
覚悟した私も、目を閉じた。
アシュリー様………!!
ぎゅっ、と固く閉じた瞬間。
「殿下!!」
突然かけられた声に、私とアシュリー様は目を開いてお互いを見合う。
ええええええええ!!
このタイミング?!このタイミングなの?!
一体、誰よ!!
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