悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ

文字の大きさ
21 / 23

カーティア、物語の結末を思い出す。

しおりを挟む
卒業パーティは、学園所有の大きな会場で行われる。

ダレンのパートナーとして参加するシャルロットは初めて見るような豪華なパーティ会場に圧倒され、ダレンに微笑ましげな顔で見られ、頬を膨らませた。美味しい食事にシャンパン、友人達との会話、夢のようなダンス。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、夢見心地で風に当たるためにバルコニーに出たシャルロットは、後ろから声を掛けられた。
悪役令嬢、カーティア。
彼女はシャルロットに怒鳴り付ける。アルドが自分に反抗するようになったのも、父親に叱られたのも全部シャルロットが悪いのだ、と。憎々しげに顔を歪めたカーティアに詰め寄られ、シャルロットは後退りする。事態に気づいたのかダレンが近づいてくるのにほっとして表情を緩めたシャルロットに激昂したのか、肩をドンと突かれてバルコニーの手すりに背を預けた瞬間、シャルロットは浮遊感を感じた。突然バルコニーの手すりが折れてしまったのだ。シャルロットは思い出す。この会場は3階の高さにあることを。恐怖に目を瞑ったシャルロットを突然温かいものが包み込んだ。どすんと響いた大きな音にシャルロットは目を見開く。シャルロットはダレンに抱きしめられ庇われていた。3階の高さから落ちたのに怪我をしていないのはダレンが下になって守ってくれたからだ。その代わりにダレンは受け身を取ることもできずにそのまま地面に体を打ちつけたようだった。ダラダラと頭から流れ落ちる血に、どんどん弱くなっていく呼吸。それなのにダレンはシャルロットが無事なのを見てほっとしたように微笑んだ。
「・・・いや。嫌!いかないで!」
地面に横たわるダレンの胸に縋り付く。心の底からダレンを助けたいと思った瞬間、シャルロットの体に力が満ちた。何も考えないままダレンに口づける。ダレンが最後の息を吐く前に。唇から注ぎ込まれた癒しの力がダレンの怪我を癒していく。閉じかけていた目を見開いたダレンに、大粒の涙を流しながらシャルロットはしがみついた。

というのが、卒業パーティ、カーティアが最後に関わってくるイベントの内容だ。
その後、シャルロットは騎士を助けたことで王太子との面会をし、こっそりと兄妹として仲良くすることになり、シャルロットの卒業を待ってダレンと結婚をし、大勢の人に囲まれ祝福の中で物語を終える。
カーティアはシャルロットを突き飛ばしたが意図的に地面に突き落とそうとしたわけではないので、大きなおとがめはなかったが、この一件で完全にアルドとの関係が破綻し、公にはされていないとはいえ王族の血筋の人間を傷つけかけた事の責任を取るということで修道院に行くことになる。

今のカーティアは修道院に行くつもりはもうない。このイベントを起こさないために準備が必要だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は間違えない

スノウ
恋愛
 王太子の婚約者候補として横暴に振る舞ってきた公爵令嬢のジゼット。  その行動はだんだんエスカレートしていき、ついには癒しの聖女であるリリーという少女を害したことで王太子から断罪され、公開処刑を言い渡される。  処刑までの牢獄での暮らしは劣悪なもので、ジゼットのプライドはズタズタにされ、彼女は生きる希望を失ってしまう。  処刑当日、ジゼットの従者だったダリルが助けに来てくれたものの、看守に見つかり、脱獄は叶わなかった。  しかし、ジゼットは唯一自分を助けようとしてくれたダリルの行動に涙を流し、彼への感謝を胸に断頭台に上がった。  そして、ジゼットの処刑は執行された……はずだった。  ジゼットが気がつくと、彼女が9歳だった時まで時間が巻き戻っていた。  ジゼットは決意する。  次は絶対に間違えない。  処刑なんかされずに、寿命をまっとうしてみせる。  そして、唯一自分を助けようとしてくれたダリルを大切にする、と。   ────────────    毎日20時頃に投稿します。  お気に入り登録をしてくださった方、いいねをくださった方、エールをくださった方、どうもありがとうございます。  とても励みになります。  

運命に勝てない当て馬令嬢の幕引き。

ぽんぽこ狸
恋愛
 気高き公爵家令嬢オリヴィアの護衛騎士であるテオは、ある日、主に天啓を受けたと打ち明けられた。  その内容は運命の女神の聖女として召喚されたマイという少女と、オリヴィアの婚約者であるカルステンをめぐって死闘を繰り広げ命を失うというものだったらしい。  だからこそ、オリヴィアはもう何も望まない。テオは立場を失うオリヴィアの事は忘れて、自らの道を歩むようにと言われてしまう。  しかし、そんなことは出来るはずもなく、テオも将来の王妃をめぐる運命の争いの中に巻き込まれていくのだった。  五万文字いかない程度のお話です。さくっと終わりますので読者様の暇つぶしになればと思います。

王太子殿下が好きすぎてつきまとっていたら嫌われてしまったようなので、聖女もいることだし悪役令嬢の私は退散することにしました。

みゅー
恋愛
 王太子殿下が好きすぎるキャロライン。好きだけど嫌われたくはない。そんな彼女の日課は、王太子殿下を見つめること。  いつも王太子殿下の行く先々に出没して王太子殿下を見つめていたが、ついにそんな生活が終わるときが来る。  聖女が現れたのだ。そして、さらにショックなことに、自分が乙女ゲームの世界に転生していてそこで悪役令嬢だったことを思い出す。  王太子殿下に嫌われたくはないキャロラインは、王太子殿下の前から姿を消すことにした。そんなお話です。  ちょっと切ないお話です。

悪役令嬢の大きな勘違い

神々廻
恋愛
この手紙を読んでらっしゃるという事は私は処刑されたと言う事でしょう。 もし......処刑されて居ないのなら、今はまだ見ないで下さいまし 封筒にそう書かれていた手紙は先日、処刑された悪女が書いたものだった。 お気に入り、感想お願いします!

10日後に婚約破棄される公爵令嬢

雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。 「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」 これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。

婚約破棄してくださって結構です

二位関りをん
恋愛
伯爵家の令嬢イヴには同じく伯爵家令息のバトラーという婚約者がいる。しかしバトラーにはユミアという子爵令嬢がいつもべったりくっついており、イヴよりもユミアを優先している。そんなイヴを公爵家次期当主のコーディが優しく包み込む……。 ※表紙にはAIピクターズで生成した画像を使用しています

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

処理中です...