悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ

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カーティア、うんざりする。

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「カ、カーティアさん!アルドを、解放してあげてください!」
背を向けたままひっそりとカーティアは顔を顰めた。
カーティアが前世を思い出してから一月、シャルロットに声を掛けられたのはこれで3度目だった。言うことはいつも同じ、「アルドを解放しろ」と。カーティアがいくら好きにしろと、自由にしてもいいと伝えても、何度でもシャルロットは直談判に来るのだった。
小さな拳をぎゅっと握りしめて、それでも必死にカーティアに立ち向かおうとするシャルロットの姿は可憐の一言に尽きない。
取り巻きのように側に立つ男3人もその姿に思わず目尻を緩める姿はさすが主人公と言えるかもしれない。
カーティアは言葉を返さずに彼らを見つめ返す。
真ん中に立つシャルロット。彼女はまっすぐにカーティアを見つめ返す。可愛らしい容姿も苛立ちからなのかぴくぴく震える瞼で台無しだ。白銀の髪に薄ピンクの瞳はウサギのように愛らしいが、今のカーティアにとっては面倒ごとの塊でしかなかった。
シャルロットを支えるように右に立つダレン・バークレイ。
彼はシャルロットの言う事を信じきってはいないのか、どこか憂う様な、こちらを伺う目を向けてくる。黒髪に黒い瞳の彼は原作に近く聡明な男性のようだった。恋人の話を鵜呑みにせず、自分よりも身分の高いカーティアに配慮をする気もある。
対照的にカーティアに向け敵意を隠さないのはヴィクター・ハンクだった。生徒副会長の彼は元々は優秀な人間だったはずなのだがすっかりシャルロットの話を信じ込み敵意を込めた瞳でカーティアを睨みつけている。
最後に、セスト・スタンリー。若干の半笑いで僅かにカーティアに向け頭を下げて見せる。友人の婚約者だから許すがそうでなければ多少の苦言は呈したくなる姿だった。テオフィラを通じてシャルロットに対する潜入捜査であるとカーティアが知っていると分かった上だとしても、カーティアは僅かに睨んで見せた。
そしてカーティアは、視線を巡らせる。アルドがいなかった。数日前、馬車までの僅かな道のりを隣り合って歩いたきり、カーティアはアルドと顔を合わせていない。シャルロットがカーティアに直談判をする時にも一緒にはいないようだった。アルドがあの日言った言葉の意味がカーティアには分かっていない。だからこそ、再びカーティアに言い募ろうとするシャルロットにうんざりとした視線を向け、
「…だから、私はお好きにどうぞと、言いました。家になら私から話を通してあげますから話はアルドにどうぞ」
とだけ言った。
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