悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ

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カーティア、領地に戻る。

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学園に1週間ほどの休暇期間があったので、カーティアは一度ゆっくりと領地に戻ることにした。領地には両親がいる。学園近くの家で気心の知れた使用人たちと共に寛ぐのもいいけれど、両親に会いたかった。下手をすればこのまま会うこともなく何も言えずに修道院に直行することもあり得るのだ。悪役令嬢であった自覚のあるカーティアは、一度両親への親孝行をしておきたかった。

「おかえり、我らが愛娘よ!」
「おかえりなさい、カーティア。ちょっと疲れた顔をしているわよ。大丈夫?」
一人娘を溺愛する両親は温かくカーティアを出迎えてくれた。数ヶ月ぶりに会う両親に涙を堪えながらハグを返す。大好きな両親。修道院に行っても手紙ぐらいはくれないだろうか。
「ただいま、お母様、お父様。体調は大丈夫よ。ちょっと馬車で疲れただけ。だって半日もかかるんですもの」
笑うカーティアはと両親はその日、夜遅くまでお互いの近況を話し込んだ。
「…ところで、アルド君とは一緒に帰らなかったの?こっちに戻ってきているわよね?まだあんまりお話しできていないのかしら」
憂い顔になった母にカーティアは顔を引き攣らせる。
「…いいえ?大丈夫。とっても仲良しよ?定期的に会うもの」
一月に一度、5分ほどだが。
カーティアは前世の記憶を思い出す前から、両親にアルドとの関係は誤魔化していた。婚約者と対して仲も深めず、相手が近寄ってこないのを良いことに本を読んでばかりいると知られたら流石に少しは苦言を呈されると思ったからだ。どうせ政略で結婚はしなくてはいけないのだから、このままの距離感でも別に問題ないだろうと思っていたのもある。母親にはばれていたようだが。
「…そうね。…カーティア、明日は街にでも行ってきたらどうかしら。あなたが建てさせた本屋さん、かなり盛況なのよ?」
何か企んでいそうな母親の微笑みに背筋をヒヤリとさせながらカーティアはそっと視線を逸らした。
「えぇ。そうするわ」

玄関に止まった馬車の前に、すんとした仏頂面のアルドを見て、カーティアは頭を抱えたくなった。
「いくら領地とは言え1人で行くのは危ないでしょう?アルド君と一緒に行きなさいな」
笑う母親に嫌ですとも言えない。2人が自主的に関係を深めないから無理やりに場を持たせることにしたらしい。切実にやめて欲しかった。母親には言えないがなかなかに気まずい関係なのだから。
馬車に乗り込もうとしたアルドがすっとこちらに手を貸してくる。観念してカーティアはその手を取った。
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