どん・だー ~私立海老津学園太鼓部活動録~

とらまる

文字の大きさ
52 / 142
第一章 春 ~事の発端、すべての元凶~

その52 写真

しおりを挟む

「みんなー、見て見てー!」
「なんですか先輩……って、なんですか、それ」

望子先輩がこちらへ見せてくるのは、大きな眼を持った一眼レフカメラだった。
一体それをどこから持ち出したのか、それとも自宅から持ってきたのかは知らないが、望子先輩の手に収まっているものはまさしく、一眼レフカメラだった。
先輩はそれを誇らしげに両手で大事そうに持っている。

「いいでしょー」
「いいでしょー、じゃなくて! それ、高いんでしょ? どうしてそんなの持ってるんですか」
「へへー。お父さんのを借りてきたんだー。勝手に」
「……先輩、それは借りてきたというより持ち出したって言うんですよ」

それも勝手にだが、と思いつつ、僕はその一眼レフカメラをまじまじと凝視する。
その黒い姿は勇ましく、見る人を魅了させるほどの勢いがあった。
まるでその瞬間だけを切り取ると言わんばかりに。

「それで、そんなの持ってきてなにするんですか?」

僕は素朴な疑問を先輩に投げかける。
まさか、それを自慢するためだけにわざわざ勝手に持ち出し、こうして見せびらかしている訳ではないだろう。
そうでなければ、わざわざ勝手に持ち出した意味がない。
しかし、先輩はきょとんとした顔でこう言ったのだ。

「え? 別にこれと言って理由はないけど……?」
「……じゃあ、なんでわざわざ持ってきたんですか」

つくづく、この先輩は意味が分からないな、と思いながら、僕は深いため息を吐いた。
まぁそれが、望子先輩という人物だから仕方ないが。
と、さっきまでパソコンをいじっていた路世先輩が椅子をくるり、と回転させる。

「じゃあよ、ここいら部室で記念撮影ってのはどうだ? 新チームになってまだ日も浅いが、それでも思い出とかにはなんだろ?」
「あ、それ良いですね、路世先輩」
「それいいね、路世ちゃん! じゃ、私カメラの設定するからみんなそこに並んでてー」

と、望子先輩は部室にあったテーブルの上に路世先輩の座っていたイスを乗せ、その上にカメラを乗せる。
三脚がないため、こうして撮影するしか方法はないようだった。

「ちぃ、ほら早く」
「はい、少し待ってください……」

ちぃは本にしおりを挟み、こちらへと向かってくる。
と、そこで望子先輩が衝撃的な発言をする。

「……これ、どうやって操作するの?」
「知らないで持ってきたんですか!?」

だってぇー……と、困り果てる望子先輩に、ささっ、と路世先輩がサポートに入る。
その慣れた手つきでカメラを操作していく姿は、まるで電気屋の店員のようだ。

「よし、セット出来たぞ」

と、路世先輩のその言葉でカメラのタイマーが始まったようだ。
カメラの周りに行った路世先輩と望子先輩が急いで来るか。

「それじゃ、ハイ、チーズ!」
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

失恋中なのに隣の幼馴染が僕をかまってきてウザいんですけど?

さいとう みさき
青春
雄太(ゆうた)は勇気を振り絞ってその思いを彼女に告げる。 しかしあっさりと玉砕。 クールビューティーで知られる彼女は皆が憧れる存在だった。 しかしそんな雄太が落ち込んでいる所を、幼馴染たちが寄ってたかってからかってくる。 そんな幼馴染の三大女神と呼ばれる彼女たちに今日も翻弄される雄太だったのだが…… 病み上がりなんで、こんなのです。 プロット無し、山なし、谷なし、落ちもなしです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...