【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり

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出会い編

第17話

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彼女の目が湿り気を帯びる。

 泣きそうな瞳。
 潤んだ瞳。

 今まで気が付かなかった。

 彼女は金色の瞳をしていた。

 美しい
 綺麗だ
 そう思った。

 心が、打ち震える。

 だが、彼女のその湿り気を帯びた瞳は自身の所為だということにやっと気づく。

 「すまない。こんなにも醜い男に言われるの嫌だった「嫌なわけないです。」

 彼女がすぐさま俺の言葉を遮った。
 続け様に言った彼女の言葉にも俺は戸惑った。

 彼女が俺に可愛いと言われて嬉しい、と言う。
 俺に嫌われていなくてよかった、と言う。
 どうして彼女はこうも俺を惑わすのが得意なのか。
 これ程までに俺を歓喜させて地の底まで落とすつもりなのだろうか。

 もしそうならば、俺はもう二度と闇の中からは這い上がることはできないだろう。

 わからない

 だけど
 嬉しい

 「フェルさんの言葉で一喜一憂してしまうんです。」

 だけど

 怖い

 だめだ
 やめてくれ。

 俺を、狂わせないでくれ。

 何故、君はいつもいつも─────

 そんなこと、今まで一度も言われたことがない。

 『お前といると呪われる。』
 『気持ち悪い』
 『死んでしまえ』

 そんなことばかり言われてきたのに
 諦めて、いたのに

 「フェルさんすきです。」

 ああ、
 俺は、君を

 愛してるみたいだ。

 すまない

 こんな醜い男で
 心も顔も容姿も全てが醜くて、

 すまない

 でも俺は

 君に魅了されている。

 *****

 二度目のフェルさんへの告白の後、私達は無言で別れた。
 フェルさんからの答えも何もなく、ただ流れるように彼は帰って行った。

 そしてまた数回、彼とは何事も無かったように食事をした。
 ギルドに来た彼に私が声を掛け、一緒に食べる。

 それだけでも幸せ。

 幸せ、なのに

 やっぱり、もっと一緒にいたいと思う
 もっと一緒に話していたいと思う
 欲張ってはダメ···なのかな。

 *****

 彼が、ギルドに来なくなった。

 理由はわからない。

 いや、
 理由はありすぎる。

 彼の容姿のことかもしれない。
 仕事が疲れたのかもしれない。
 私の相手に、もう付き合っていられなくなったのかもしれない。

 でも確かに、フェルさんは私のことが嫌いではないと言った。
 あの言葉が嘘ではないと信じている。
 だけど不安になる。

 フェルさん

 フェルさん

 想いはどんどん募っていって、自分でも抑えが効かなくなりそうだった。

 大人っぽく化粧した私。
 フェルさんの為に変わった私。

 不細工な冒険者が私に「可愛いねえ」と言ってくる。
 ニタニタとした顔で私のことを舐め回すように見るこいつらに吐き気すら感じる。
 お前達に振り向いて欲しい訳じゃないのに。

 フェルさん

 フェルさん

 フェルさんがいない。
 フェルさんに会えない。

 もくもくと出る負の感情。

 大丈夫。
 まだ、大丈夫。

 それらを沈めようと、自分にそう言い聞かせる。

 フェルさんと食事をしていない。
 元気が出ない。

 だけど仕事に支障は出ないようにしなければならない。

 おばちゃんに呼ばれた私は、おばちゃんの元へと早足で向かう。

 振り切りたい。

 この想いを、
 この感情を、

 だけど、もう。

 私は

 貴方に魅了されている。

 *****

 人通りが少ない場所。

 草は綺麗に刈られ、花はゆらゆらと可憐に揺れている。
 そこに建つ、一人暮らしにしては大きな家。

 フェルさんが来ないギルド
 そこでイメチェンをしても意味が無いと思った私は、イメチェンによる振り向かせ作戦を放棄した。
 彼が来ないのなら私が彼の元へ行ってやる。
 彼を肉体カラダで繋ぎ止めてやる。

 その覚悟で、今、私はここにいる。

 ほら、

 爽やかな風が通り過ぎた。

━━━━━━━━━━━━━━━
今日は21話まで出します!よろしくお願いします!
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