【完結】男の美醜が逆転した世界で私は貴方に恋をした

梅干しおにぎり

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恋人編(後編)

第45話

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 私の両親公認の仲になった後も、私達は相変わらずラブラブ生活を満喫していた。
 幸せすぎて辛いくらいに。

「フェル、あーん。」
「セ、セレーナ···」

 デザートがのった小さなスプーンをモジモジとしているフェルの口にブスリと突っ込む。
 グエッと詰まったような声を漏らす彼。けれど噛んで飲み込むとすぐにまたデレーっと顔を緩めた。
 これもまたすごく可愛い。

「おいしい?」
「···ああ。」

 手作りのプリーン(この世界の卵を使ったデザート)を仕事が終わった後にフェルの為に作った私。
 只今、フェルにあーんをすることで彼のその可愛さと格好良さをじっくりと堪能していた。
 いつもとは違うフェルを見ることができて、すごく良い。
 いや、いつもと同じかもしれないけれどずっと見ていられる。
 それに極上のイケメンが目の前でキラキラ···デレデレテレテレしてるのは目の保養だ。私のキュンメーターをびっくりするぐらいに爆上がりさせる。
 ご飯何杯でもいけそう。

 ああ、ママとパパからも許しがでたし早く結婚がしたい。

 私はニコニコとしながら緩んだ頬を抑え、いくら一緒にいても飽きない彼を見つめた。

 傍から見たら気持ち悪いくらいに幸せオーラを放出している事だろう。
 大丈夫だ。今いるところは私達の家。

「フェルすき。」

 何度目かの愛の言葉をフェルに向かって紡ぐ。
 フェルのことを信じているけど、言わないと自分の気が収まらない。
 それに、私の中のフェルのことが好きという気持ちが突如溢れ出してしまうからというのもある。
 そんな時は最終的に二人でベッドインだけれども。

「俺も好きだよ。」

 彼もまた、私の言葉に続けてそう言ってくる。 
 相変わらず面白いくらいに顔はデレンデレンなんだけれども。
 可愛いし嬉しい。

 彼の言葉とその態度に私の幸せメータが頂点にまで達する。
 本当に幸せ。
 フェルと毎日おはようからおやすみまで過ごせることが。
 こんな穏やかな日々を共に過ごせることが。
 こんなにも幸せだから逆に怖い。
 ふと嫌な予感が私の背中を撫でる。
 けれどそれに気づかないフリをして、その後もひたすらラブラブしまくった。


 *****


「―――――?!!!」
「―――――??!」

 時刻は真夜中。
 まだ日も登っていないくらい夜遅く。

「ん」

 家でフェルと共に大きなベッドの上で眠っていた私はパチリと目が覚めた。

 いつもは静かなはずの家の外が、ガヤガヤと何やら騒がしい。 
 フェルもこの騒動にムクリと起き上がる。

「なにか···あったのかな。」

 あまりにも騒がしいので、少し不安になってきた私は彼にそう問う。
 けれど彼は眉をひそめたまま私の言葉を返さずに、カーテンに隠れた窓の外を眺めていた。
 私よりも先に起きていたのだろうか。フェルの横顔が寝起きの顔ではなかった。
 彼の美しい顔が険しく歪められている。

 ああ嫌な予感がしてならない。
 ブルりと身体に寒気が走った。

「フェ、フェル···。」

 フェルがどこかに行ってしまいそうな気がして、フェルの袖を引っ張る。
 もう離れないで。
 そばにいて欲しい。
 この幸せな日常を崩さないで。
 お願い。

 なのに───

「セレーナ、魔物の襲撃だ。」

 彼は残酷な言葉をその美しい唇から放った。

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