この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ

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第2章 芋聖女と呼ばないで

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「だから……食べられると申したでしょう! 私自身が何度も食べているんですから!」
「お前の体が特別に丈夫なだけかも知れないだろう」
「小さい子供も食べました! それも何人も! 美味しいって喜んで、おかわりまでしたんですから」
「信じられるか」
「信じられます! 死ぬわけじゃないんですから、試してみればいいのでは?」
「ならまずはお前が調理して食べろ」
「ええ、いいですとも! やりましょう! でも私の体が特別に丈夫なだけかもしれませんから、あなたも食べてみて頂かないと!」

 それには、アベルはぐっと踏みとどまった。
 悔しそうではあるが、この挑発に乗ることを嫌がると言うより、恐れているように見えた。

「ほ……ホラホラどうするんです? 食べてみたらとーっても美味しいですよ」
「ぐ……」

 押すなら今だと思ったレティシアは、芋を手に取ってぐいぐいアベルの方に押しつける。レティシアの言葉を否定したいが、そのためにはまず口にしなければいけないというジレンマに陥っているアベルは唇を噛みしめている。

 そんな二人の前に、静かに一人の青年が歩み出た。
 
「あの……良ければ僕が、毒味を……」

 恥ずかしそうに視線を彷徨わせ、精一杯の勇気を奮って名乗り出たのだとわかる。アベルよりほんの少し年若いその青年は、か細い声でそう言いながらもニッコリ笑って見せていた。

 その言葉に、レティシア以外の全員が驚いて詰め寄った。

「アラン! 気は確かか!?」
「考え直した方が良いよ」
「悪魔の実だぞ! 食べたらどんなことになるか……!」
「だから何もないんですってば……」

 レティシアの反論の声など、届くはずもない。
 だがアランと呼ばれた青年は、そんな彼らを宥めようとしていた。

「皆さん、落ち着いて下さい。皆さんは食べたことがないでしょう。でもこの人は美味しいと言っているんです。料理人として、美味しいものは試してみたいんです」
「でも、もしものことがあったら……茎や葉は毒だって、その人も言ってたじゃないか」
「兄から聞いたことがあります。この芋、外国では日常的に食べられているって」
「えぇ……これを!?」
「麦の代わりに食べている地域もあるって聞きました。もしも食べられるってわかれば、食料にできるじゃないですか。なにせ、こーんなにあるんですから」

 アランは縮こまりながらもそう告げた。
 細々とした声なのにはっきりとした主張だったからか、村人たちも否定しきれずに困惑している。

 アランは、アベルに向けて頭を下げた。

「アベル様、どうか毒味役をお任せ下さい」

 神妙に頼み込むアランに対して、アベルは眉根を寄せたまま考え込んだ。

「…………一口だ」
「え?」
「アラン、お前が食べるのは一口だけ。そこの女は一皿。明日になっても二人とも何事もなければ、俺たちも食べる……これでどうだ?」
「あ……ありがとうございます!」

 アベルはやれやれといった様子で、アランと芋の山を見比べていた。その表情は、心底理解できないと言いたげだった。
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