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第2章 芋聖女と呼ばないで
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大量に穫れた大量の芋で、大量に料理して振る舞う……ということができれば良かったのに、そうはいかなかった。
膨大な芋の山を前にして、レティシアはため息をついた。
「はぁ~こんなにあるのに、使えるのはほんの少しだなんて……」
「今食べるのはあなたと僕だけですから。それより、他の食材は何か入り用ですか? 必要なら使って下さい」
「本当にいいの?」
アランは照れながらも笑って、入り口付近に置いていたランタンを手にした。持ち上げた途端、ガラスの中にぼんやりと明かりが灯った。
「今のは何!?」
「え、ランタンですけど?」
アランは、きょとんとしていた。さして珍しくもない光景だと言うように。
だがレティシアにとっては、青天の霹靂だった。
「そうじゃなくて……今、勝手に明るくなったわ。どうなってるの?」
「ああ……これです」
アランはランタンの明かりを指した。ろうそくはなく、炎もなく、小さな石が煌々と光を放っている。
「それはもしかして……魔石?」
「そうです。魔力を込めた石が明るくなる仕組みになってるんです。アベル様が作られたんですよ」
「アベル様が?」
「ええ。アベル様は凄い人で、魔石を使って色々な道具を作って下さったんです。この食料庫もそうですよ。少し寒いと思いませんか?」
「言われてみれば、少しひんやりしているような……」
「そうでしょう。これのおかげです」
アランはそう言うと、壁にかかっている魔石をランタンで照らした。よく見ると、室内の数カ所に同じように取り付けられている。
「これは空気を冷やす魔法をかけてあるんです。これのおかげで、食料庫内は夏でも涼しい状態を保てて、食料の保存がきくようになりました」
「そ、そうなの……それじゃあ逆に温かくすることも?」
「はい。昨年はひどく冷え込んだ冬でしたが、アベル様のおかげで家を温かく保てて、凍死する者もなく、冬を越せました」
「凄い……すごいすごい! 王都でもそこまで整った環境を見たことがないわ! 皆、薪を燃やして、保冷庫は冬の氷を利用していて……」
「そうなんです! アベル様は本当に凄いんです! でも、そんなアベル様でも作物が育ちにくいことだけはどうにもできないことらしくて……」
「そうね。作物の生長は生命力の問題だもの。魔力だけじゃどうにもならないわね」
「だから、あなたには感謝してます」
「……私?」
「これらが全部食べらるなら、最大の問題が解決できるかもしれない……そうでしょう?」
アランの力強い笑みを見て、レティシアは複雑な思いに駆られた。
自分はこの芋が不当な理由で嫌がられていることが不満で、ムキになっていた。
だがアランは、この不作が続く土地の深刻な問題を解決に近づけるために体を張っていた。
「浅はかだったわ……」
「どうかされましたか?」
ひょこっとレティシアの顔を覗き込むアランを見て、、レティシアは突然アランの両肩をがっしりと掴んだ。
「アラン!」
「は、はい!」
アランの両肩を掴んだまま、レティシアはにじり寄った。その瞳は、先ほどアベルに詰め寄った時以上に爛々と輝いていた。
「頑張りましょう! 彼らのためにも、美味しくて安全だって証明してみせるのよ!」
「は、はい……」
圧倒されておずおずと頷くアランを見て、レティシアは満足そうに頷き返した。
アランからランタンを受け取り、食料庫内をひとしきり見て回った後、芋と他数種類の野菜を少しずつ手に取ると、意気揚々と厨房へと向かったのだった。
膨大な芋の山を前にして、レティシアはため息をついた。
「はぁ~こんなにあるのに、使えるのはほんの少しだなんて……」
「今食べるのはあなたと僕だけですから。それより、他の食材は何か入り用ですか? 必要なら使って下さい」
「本当にいいの?」
アランは照れながらも笑って、入り口付近に置いていたランタンを手にした。持ち上げた途端、ガラスの中にぼんやりと明かりが灯った。
「今のは何!?」
「え、ランタンですけど?」
アランは、きょとんとしていた。さして珍しくもない光景だと言うように。
だがレティシアにとっては、青天の霹靂だった。
「そうじゃなくて……今、勝手に明るくなったわ。どうなってるの?」
「ああ……これです」
アランはランタンの明かりを指した。ろうそくはなく、炎もなく、小さな石が煌々と光を放っている。
「それはもしかして……魔石?」
「そうです。魔力を込めた石が明るくなる仕組みになってるんです。アベル様が作られたんですよ」
「アベル様が?」
「ええ。アベル様は凄い人で、魔石を使って色々な道具を作って下さったんです。この食料庫もそうですよ。少し寒いと思いませんか?」
「言われてみれば、少しひんやりしているような……」
「そうでしょう。これのおかげです」
アランはそう言うと、壁にかかっている魔石をランタンで照らした。よく見ると、室内の数カ所に同じように取り付けられている。
「これは空気を冷やす魔法をかけてあるんです。これのおかげで、食料庫内は夏でも涼しい状態を保てて、食料の保存がきくようになりました」
「そ、そうなの……それじゃあ逆に温かくすることも?」
「はい。昨年はひどく冷え込んだ冬でしたが、アベル様のおかげで家を温かく保てて、凍死する者もなく、冬を越せました」
「凄い……すごいすごい! 王都でもそこまで整った環境を見たことがないわ! 皆、薪を燃やして、保冷庫は冬の氷を利用していて……」
「そうなんです! アベル様は本当に凄いんです! でも、そんなアベル様でも作物が育ちにくいことだけはどうにもできないことらしくて……」
「そうね。作物の生長は生命力の問題だもの。魔力だけじゃどうにもならないわね」
「だから、あなたには感謝してます」
「……私?」
「これらが全部食べらるなら、最大の問題が解決できるかもしれない……そうでしょう?」
アランの力強い笑みを見て、レティシアは複雑な思いに駆られた。
自分はこの芋が不当な理由で嫌がられていることが不満で、ムキになっていた。
だがアランは、この不作が続く土地の深刻な問題を解決に近づけるために体を張っていた。
「浅はかだったわ……」
「どうかされましたか?」
ひょこっとレティシアの顔を覗き込むアランを見て、、レティシアは突然アランの両肩をがっしりと掴んだ。
「アラン!」
「は、はい!」
アランの両肩を掴んだまま、レティシアはにじり寄った。その瞳は、先ほどアベルに詰め寄った時以上に爛々と輝いていた。
「頑張りましょう! 彼らのためにも、美味しくて安全だって証明してみせるのよ!」
「は、はい……」
圧倒されておずおずと頷くアランを見て、レティシアは満足そうに頷き返した。
アランからランタンを受け取り、食料庫内をひとしきり見て回った後、芋と他数種類の野菜を少しずつ手に取ると、意気揚々と厨房へと向かったのだった。
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