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第3章 泥まみれの宝
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謹慎になる前は、週に一度、必ず教会に行っていた。大聖堂ではなく、人目の少ない部屋で教会の長たる大司教が直々に説法をして聞かせ、レティシアは感謝の礼を捧げるのだった。
幼い頃から欠かしたことがなかったが、最近はひと月以上、行っていない。ずっと『謹慎』状態だったのだから。
「大司教様にはお詫びのお手紙をお送りしていたのですけど、やはりそれだけでは失礼でしたね」
「いや、そうではないよ。ただ大司教様は君を可愛がっておられたからね。そろそろ顔を見せておあげ」
「た、確かに孫のように可愛がってくださったけれども……そんな理由で?」
もっともな疑問ではあるが、セルジュはクスクス笑いながら頷いた。
「たまにはいいだろう。大司教様だって、人間なんだから。ご自身は伴侶もお子もおられない。だから我が子我が孫のように国民を慈しんでおられる。その中に、『特別可愛い孫』がいても、おかしくはないさ」
「はぁ……」
「それに君の今の境遇にも心を痛めておられるようだしね。人目につくと辛い思いをするかもしれないから、人の少ない早朝か深夜にとのお申し出だ。できるだけ早く……できれば明日にでもお会いしに行こう」
もしも本当に大司教が色々と気配りをしてくれているというのなら、確かに明日にも向かうのが礼儀というものだ。
だが、気がかりもあった。
バルニエ領の、畑泥棒騒ぎが今日で解決するとは限らない。これから毎日、深夜は見張りに行くかもしれない。
それを考えれば、比較的適していると言えるのは……
「では……早朝に」
「わかった、明日の早朝に。私も一緒に伺おう……準備が出来たら、私の部屋に来てくれるかい?」
「わかりました」
レティシアがそっとお辞儀をすると、セルジュが頷き立ち上がった。
そして、入ったときと同様、静かにドアを開けて退出した。一応、『謹慎中で誰とも会おうとしないレティシアお嬢様』という設定なので、他の使用人たちに出入りしているところを見られないよう配慮したのだろう。
相変わらず配慮の行き届いた兄に感謝しながらも、レティシアはソファにどっかり座り込んで、ようやく息をつくことができた。
「はぁ……早朝かぁ。これは大変ね」
「そうですねぇ……起こして下さいね、お嬢様」
「自分で起きるという発想はないの? 明日の朝は私も起きられる自信がないわよ」
「え!? どうしてですか?」
ネリーにだけは、一日の予定をすべて話しておかなければならない。仕方なく、夕食後の予定を語った。
すると予想通り、ネリーは仰天して慌てふためいた。
「よ、よ、夜通し見張り!? 殿方とですか? それはさすがに……は、は、は、破廉恥ですよ!」
「破廉恥なことなんか起こるもんですか。畑泥棒を捕まえるのよ。気を張っていてそれどころじゃないわよ」
「お嬢様がそうでも、お相手が同じとは……」
「大丈夫よ。一緒にいるのは領主様なのよ。私の素性も知っているし、おかしなことなんか起きません。心配なし! ほら、早くお湯の用意をしてちょうだい。着替えもね」
「はい、ただいま……ってお嬢様、話はまだ……!」
「終わり終わり! そんな心配するだけ無駄なんだから」
「……もう……ちゃんと朝までに戻って来てくださいよ!」
強制的に話を切り上げられて不服そうなネリーだったが、夕食の時間が迫っている。今は、湯浴みや着替えが優先だ。
軽くいなそうとするレティシアにぷんぷん怒りながら、部屋の中をバタバタと走り回った。
一方のレティシアも、それとは別の理由で胸の内に熱い思いをメラメラと燃えたぎらせていた。
(今晩中に決着をつければいいだけの話よ。今晩、何が何でも捕まえてやるわ……!)
幼い頃から欠かしたことがなかったが、最近はひと月以上、行っていない。ずっと『謹慎』状態だったのだから。
「大司教様にはお詫びのお手紙をお送りしていたのですけど、やはりそれだけでは失礼でしたね」
「いや、そうではないよ。ただ大司教様は君を可愛がっておられたからね。そろそろ顔を見せておあげ」
「た、確かに孫のように可愛がってくださったけれども……そんな理由で?」
もっともな疑問ではあるが、セルジュはクスクス笑いながら頷いた。
「たまにはいいだろう。大司教様だって、人間なんだから。ご自身は伴侶もお子もおられない。だから我が子我が孫のように国民を慈しんでおられる。その中に、『特別可愛い孫』がいても、おかしくはないさ」
「はぁ……」
「それに君の今の境遇にも心を痛めておられるようだしね。人目につくと辛い思いをするかもしれないから、人の少ない早朝か深夜にとのお申し出だ。できるだけ早く……できれば明日にでもお会いしに行こう」
もしも本当に大司教が色々と気配りをしてくれているというのなら、確かに明日にも向かうのが礼儀というものだ。
だが、気がかりもあった。
バルニエ領の、畑泥棒騒ぎが今日で解決するとは限らない。これから毎日、深夜は見張りに行くかもしれない。
それを考えれば、比較的適していると言えるのは……
「では……早朝に」
「わかった、明日の早朝に。私も一緒に伺おう……準備が出来たら、私の部屋に来てくれるかい?」
「わかりました」
レティシアがそっとお辞儀をすると、セルジュが頷き立ち上がった。
そして、入ったときと同様、静かにドアを開けて退出した。一応、『謹慎中で誰とも会おうとしないレティシアお嬢様』という設定なので、他の使用人たちに出入りしているところを見られないよう配慮したのだろう。
相変わらず配慮の行き届いた兄に感謝しながらも、レティシアはソファにどっかり座り込んで、ようやく息をつくことができた。
「はぁ……早朝かぁ。これは大変ね」
「そうですねぇ……起こして下さいね、お嬢様」
「自分で起きるという発想はないの? 明日の朝は私も起きられる自信がないわよ」
「え!? どうしてですか?」
ネリーにだけは、一日の予定をすべて話しておかなければならない。仕方なく、夕食後の予定を語った。
すると予想通り、ネリーは仰天して慌てふためいた。
「よ、よ、夜通し見張り!? 殿方とですか? それはさすがに……は、は、は、破廉恥ですよ!」
「破廉恥なことなんか起こるもんですか。畑泥棒を捕まえるのよ。気を張っていてそれどころじゃないわよ」
「お嬢様がそうでも、お相手が同じとは……」
「大丈夫よ。一緒にいるのは領主様なのよ。私の素性も知っているし、おかしなことなんか起きません。心配なし! ほら、早くお湯の用意をしてちょうだい。着替えもね」
「はい、ただいま……ってお嬢様、話はまだ……!」
「終わり終わり! そんな心配するだけ無駄なんだから」
「……もう……ちゃんと朝までに戻って来てくださいよ!」
強制的に話を切り上げられて不服そうなネリーだったが、夕食の時間が迫っている。今は、湯浴みや着替えが優先だ。
軽くいなそうとするレティシアにぷんぷん怒りながら、部屋の中をバタバタと走り回った。
一方のレティシアも、それとは別の理由で胸の内に熱い思いをメラメラと燃えたぎらせていた。
(今晩中に決着をつければいいだけの話よ。今晩、何が何でも捕まえてやるわ……!)
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