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第4章 祭りの前のひと仕事、ふた仕事
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「さっき孤児院の中をこそこそ覗いてる怪しい人がいたんだよ。だから何やってるんだって声かけたら、聖女様だった!」
「えーと……本当に怪しくて怖くて強い人の可能性もあるから、迂闊なことはしてはダメよ?」
「わかってるって」
自慢げにそう言う男の子は、やはりわかっていないのだろう。皆に向かってぐっと胸を張っている。
『聖女様』を連れてきたことが、よほど誇らしいようだ。
対してその『聖女様』……アネットは、恥ずかしそうにもじもじして誰とも目を合わせられないでいる。
「あ、あー……重いでしょう。私が持つわ」
アネットの腕は、ペンより重いものなど持ったことがないんじゃないかと思うほど細い。水の入ったバケツなんて持たせたらポッキリ折れてしまいそうだ。レティシアはさらりとアネットからバケツを奪い取った。
「そ、そんな! そんなことさせられません! レティシ……」
「あー! あー! あーーっ!! やめてやめて、私こう見えてとっても力持ちだからまったく心配ないわ! そんなことより私はレティよ『レティ』!」
「レティ様……?」
「レティ……『さん』で」
「レティさん……ですか?」
「そう。『レティさん』で、お願い」
アネットは困惑していたようだが、ひとまず、どう呼ばなければいけないか、何を話してはいけないのか、理解したようだった。
「あ、あの……レティ……さんに全部持たせるのはさすがに……私も持ちます」
「……そう?」
アネットは、バケツの柄の片側を持った。二人で並んでバケツを下げて歩いている形だ。
(奇妙な光景ね)
まさか卒業セレモニーで図らずも対決してしまった二人が、こうして一緒にバケツをもつことになるなど、誰が考えただろうか。
少なくとも、あの場にいた面々には想像も付かないだろう。
(よくわからない子……)
子供達を見ている顔、一緒に水を撒く顔、蕾を愛でている顔……どれをとっても、自分から聖女の座を奪っていった女という名では、とても呼べないものだった。
聖女の座に婚約者……本来ならばレティシアが手にするはずだった幸福も役目も、全部、このアネットが奪っていった。そのはずなのに、レティシアはどうしてか顔を合わせたその時から、そんな風に恨む気持ちになれないでいる。
(もっと、あからさまな嫌な子なら……何の気兼ねもなく恨めたんだけど……)
どうやら自分は、アネットが嫌いではないらしい。なんだかため息が出たが、悪い感じはしない。
何より子供達が心から懐いているのだから、きっといいのだろう。
そう思ったその時、アネットの顔が何故か強ばった。
「ねえ、畑を元気にしてよ、聖女様!」
「……え」
「えーと……本当に怪しくて怖くて強い人の可能性もあるから、迂闊なことはしてはダメよ?」
「わかってるって」
自慢げにそう言う男の子は、やはりわかっていないのだろう。皆に向かってぐっと胸を張っている。
『聖女様』を連れてきたことが、よほど誇らしいようだ。
対してその『聖女様』……アネットは、恥ずかしそうにもじもじして誰とも目を合わせられないでいる。
「あ、あー……重いでしょう。私が持つわ」
アネットの腕は、ペンより重いものなど持ったことがないんじゃないかと思うほど細い。水の入ったバケツなんて持たせたらポッキリ折れてしまいそうだ。レティシアはさらりとアネットからバケツを奪い取った。
「そ、そんな! そんなことさせられません! レティシ……」
「あー! あー! あーーっ!! やめてやめて、私こう見えてとっても力持ちだからまったく心配ないわ! そんなことより私はレティよ『レティ』!」
「レティ様……?」
「レティ……『さん』で」
「レティさん……ですか?」
「そう。『レティさん』で、お願い」
アネットは困惑していたようだが、ひとまず、どう呼ばなければいけないか、何を話してはいけないのか、理解したようだった。
「あ、あの……レティ……さんに全部持たせるのはさすがに……私も持ちます」
「……そう?」
アネットは、バケツの柄の片側を持った。二人で並んでバケツを下げて歩いている形だ。
(奇妙な光景ね)
まさか卒業セレモニーで図らずも対決してしまった二人が、こうして一緒にバケツをもつことになるなど、誰が考えただろうか。
少なくとも、あの場にいた面々には想像も付かないだろう。
(よくわからない子……)
子供達を見ている顔、一緒に水を撒く顔、蕾を愛でている顔……どれをとっても、自分から聖女の座を奪っていった女という名では、とても呼べないものだった。
聖女の座に婚約者……本来ならばレティシアが手にするはずだった幸福も役目も、全部、このアネットが奪っていった。そのはずなのに、レティシアはどうしてか顔を合わせたその時から、そんな風に恨む気持ちになれないでいる。
(もっと、あからさまな嫌な子なら……何の気兼ねもなく恨めたんだけど……)
どうやら自分は、アネットが嫌いではないらしい。なんだかため息が出たが、悪い感じはしない。
何より子供達が心から懐いているのだから、きっといいのだろう。
そう思ったその時、アネットの顔が何故か強ばった。
「ねえ、畑を元気にしてよ、聖女様!」
「……え」
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