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第5章 聖女の価値は 魔女の役目は
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「ああ、お嬢様……いつお戻りに……?」
主のいない部屋で、ネリーは一人呟いた。
昨夜、レティシアを密かに送り出してから今まで、ずっと主人の帰りを待っていた。睡眠をたっぷり取らないと働けないと豪語しているネリーが、一睡もしていなかった。
「だ、だってセルジュ様にまで付き添いはいらないと言われてしまったら、見送るしかないし……でも朝食の時間にも戻られないなんて……それにセルジュ様まで戻られてないし……教会で何かあったんでしょうか……でもまさか、教会でおかしなことなんて起こるはず……いや、でも……」
主がまたこっそり帰って来た時のために、ずっと、部屋の中で待機していた。だが主が現れることはない。ただただ不安ばかりが募っていく。
いつも昼間は一人でこの部屋の留守を守っているが、比べものにならない焦燥感に襲われていた。
どうしてか、今は、レティシアがこのまま帰ってこないのではないかという考えに至ってしまうのだ。
思わず胸元をぎゅっと握りしめた。出発の直前に、レティシアから渡された魔石のペンダントが首から提げられている。
「まさかこれが、形見になるなんてことは……」
最悪の想像までして、背筋がヒヤリとした、その時だった。
部屋の中が、急に真っ白な光に包まれた。
「これは……いつもの転移魔法の光? まさかお嬢様が……!」
光の中心にいるであろう人物を求めて、ネリーは近づいた。徐々に光が止む中、いつものあの美しい金の髪が波打つのではないかと――だが、現れた者は違った。
「え」
光が止んで露わになったのは、見たことのない男三人。それも三人とも、畑にいる農夫がちょっと身ぎれいにした程度の格好。
どう見ても、庶民がいきなり公爵の邸宅に忍び込んできたようにしか、見えない。
「ここはいったい……?」
「なんか信じられないくらい優雅な場所ですね」
男達は、不躾にもレティシアの部屋をキョロキョロ見回している。女性の……それも公爵家のご令嬢の私室にいきなり入ってきてなんて無礼な……という憤りにも駆られたが、なによりもどうやって現れたのか、わからなくて怖すぎた。
転移魔法は行き先がランダムなこともあるが、それも魔力で阻まれてしまうことだってある。レティシアのように、できるだけ他者を近づけないように部屋の周りに魔力を張り巡らせていれば、このようにいきなり入り込まれるようなことなんてないはずだ。
「い、い、いやあああああぁぁ! だ、誰ですかあなたたち!」
叫ぶなり、黒髪の男がネリーを宥めようと一歩進み出た。黒髪の男は、困った風ではあったが、必死に何かを考えて、慎重に言葉を選んでいた。
「あ~……突然すまない。俺たちは怪しい者じゃない」
「はぁ?」
主のいない部屋で、ネリーは一人呟いた。
昨夜、レティシアを密かに送り出してから今まで、ずっと主人の帰りを待っていた。睡眠をたっぷり取らないと働けないと豪語しているネリーが、一睡もしていなかった。
「だ、だってセルジュ様にまで付き添いはいらないと言われてしまったら、見送るしかないし……でも朝食の時間にも戻られないなんて……それにセルジュ様まで戻られてないし……教会で何かあったんでしょうか……でもまさか、教会でおかしなことなんて起こるはず……いや、でも……」
主がまたこっそり帰って来た時のために、ずっと、部屋の中で待機していた。だが主が現れることはない。ただただ不安ばかりが募っていく。
いつも昼間は一人でこの部屋の留守を守っているが、比べものにならない焦燥感に襲われていた。
どうしてか、今は、レティシアがこのまま帰ってこないのではないかという考えに至ってしまうのだ。
思わず胸元をぎゅっと握りしめた。出発の直前に、レティシアから渡された魔石のペンダントが首から提げられている。
「まさかこれが、形見になるなんてことは……」
最悪の想像までして、背筋がヒヤリとした、その時だった。
部屋の中が、急に真っ白な光に包まれた。
「これは……いつもの転移魔法の光? まさかお嬢様が……!」
光の中心にいるであろう人物を求めて、ネリーは近づいた。徐々に光が止む中、いつものあの美しい金の髪が波打つのではないかと――だが、現れた者は違った。
「え」
光が止んで露わになったのは、見たことのない男三人。それも三人とも、畑にいる農夫がちょっと身ぎれいにした程度の格好。
どう見ても、庶民がいきなり公爵の邸宅に忍び込んできたようにしか、見えない。
「ここはいったい……?」
「なんか信じられないくらい優雅な場所ですね」
男達は、不躾にもレティシアの部屋をキョロキョロ見回している。女性の……それも公爵家のご令嬢の私室にいきなり入ってきてなんて無礼な……という憤りにも駆られたが、なによりもどうやって現れたのか、わからなくて怖すぎた。
転移魔法は行き先がランダムなこともあるが、それも魔力で阻まれてしまうことだってある。レティシアのように、できるだけ他者を近づけないように部屋の周りに魔力を張り巡らせていれば、このようにいきなり入り込まれるようなことなんてないはずだ。
「い、い、いやあああああぁぁ! だ、誰ですかあなたたち!」
叫ぶなり、黒髪の男がネリーを宥めようと一歩進み出た。黒髪の男は、困った風ではあったが、必死に何かを考えて、慎重に言葉を選んでいた。
「あ~……突然すまない。俺たちは怪しい者じゃない」
「はぁ?」
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