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第6章 聖大樹の下で
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王宮内は騒然としていた。
その日は重臣会議が開かれる日ではなかったが、急遽、招集がかけられた。
集まった重臣達は、皆、目を丸くして、そして居心地が悪そうに席に着いていた。
限られた者しか列席できないその部屋には、長い卓が置かれている。
最奥の上座に座すは国王。その隣にはリュシアン王太子と側近のセルジュ。そして驚くべき事に、その他にもう一人……数年前から病に伏せって公の場から遠のいていた王妃の姿が国王の隣にあった。
青白く痩せこけたように見えるが、王の側に控えて臣下を見据える姿は、凜として、同時に威厳に満ちていた。
「王妃殿下……ご機嫌麗しゅう」
重臣たちの一人から、そんなおそるおそるといった声が上がった。王妃は、その声の主をきつく睨んだ。
「私の機嫌など、どうでもいいでしょう。私は、私自身が言葉を交わさなければいけない相手が来たと言うから、ここにいるのです。墓から甦ったというそのお相手を、歓待して差し上げねば、ね」
王妃の目は、長い長い卓の向かいに座る者を射貫こうとしているかのようだった。
その視線の先にいるアベルは、その言葉ごと、受け止めている。やがて全員の視線がアベルから、その側に座るリール公爵に向かった。
「宰相、まずは貴公から説明して貰おうか」
「はっ」
リール公爵は立ち上がり、一同を見回した。
重臣会議の席は、爵位の順。本来なら王妃や王太子に次いで国王に近い席次のはずだが、今回リール公爵は末席に座った。
それは、決して軽んじられたからではない。今、この席に着く新たな参加者を後見するためだった。
「ご一同、ここに参席するは我が国の北の領地・バルニエより来られたランドロー伯爵。我が国の窮状に対する重要な提案があるとのこと。今回はまず彼の参加を認めて頂きたい」
リール公爵の言葉は、ざわめきに飲まれかかっていた。彼らの戸惑いが、声に視線に表情にと溢れている。
彼らの中で、アベルは『アベル・ド・ランドロー伯爵』ではなく、別の名で呼ばれていたからだ。
浮き足だった空気を引き締めるように、国王の声が響いた。
「回りくどい紹介は抜きにしてもらおう。あれほど堂々と名乗ったのだから。明確にするところから始めようではないか」
そう、告げると渦中のアベルは立ち上がった。
その炎のような双眸でその場にいる全員を、一人一人見つめると、静かに語り出した。
「私は先代ランドロー伯爵に養子として受け入れて頂きその爵位と領地を継いだ『アベル・ド・ランドロー伯爵』。そして、皆が察する通りの人物だ。すなわち……八年前に病没したとされている、第一王子『エルネスト=ディオン・ド・ルクレール』である」
「やはり」という声がそこかしこで上がった。ある者は驚き、ある者は怯え、ある者は歯がみしている。
そんな悲喜こもごもといった様子の顔をまたも一つ一つ見つめて、アベルは胸の内がずんと重くなるのを感じたのだった。
わかってはいたが、自分が受け入れられない存在なのだと知らしめられるのは、堪える。
だが今は、それほどに重臣達に衝撃を与えられたことを利用するしかない。
その日は重臣会議が開かれる日ではなかったが、急遽、招集がかけられた。
集まった重臣達は、皆、目を丸くして、そして居心地が悪そうに席に着いていた。
限られた者しか列席できないその部屋には、長い卓が置かれている。
最奥の上座に座すは国王。その隣にはリュシアン王太子と側近のセルジュ。そして驚くべき事に、その他にもう一人……数年前から病に伏せって公の場から遠のいていた王妃の姿が国王の隣にあった。
青白く痩せこけたように見えるが、王の側に控えて臣下を見据える姿は、凜として、同時に威厳に満ちていた。
「王妃殿下……ご機嫌麗しゅう」
重臣たちの一人から、そんなおそるおそるといった声が上がった。王妃は、その声の主をきつく睨んだ。
「私の機嫌など、どうでもいいでしょう。私は、私自身が言葉を交わさなければいけない相手が来たと言うから、ここにいるのです。墓から甦ったというそのお相手を、歓待して差し上げねば、ね」
王妃の目は、長い長い卓の向かいに座る者を射貫こうとしているかのようだった。
その視線の先にいるアベルは、その言葉ごと、受け止めている。やがて全員の視線がアベルから、その側に座るリール公爵に向かった。
「宰相、まずは貴公から説明して貰おうか」
「はっ」
リール公爵は立ち上がり、一同を見回した。
重臣会議の席は、爵位の順。本来なら王妃や王太子に次いで国王に近い席次のはずだが、今回リール公爵は末席に座った。
それは、決して軽んじられたからではない。今、この席に着く新たな参加者を後見するためだった。
「ご一同、ここに参席するは我が国の北の領地・バルニエより来られたランドロー伯爵。我が国の窮状に対する重要な提案があるとのこと。今回はまず彼の参加を認めて頂きたい」
リール公爵の言葉は、ざわめきに飲まれかかっていた。彼らの戸惑いが、声に視線に表情にと溢れている。
彼らの中で、アベルは『アベル・ド・ランドロー伯爵』ではなく、別の名で呼ばれていたからだ。
浮き足だった空気を引き締めるように、国王の声が響いた。
「回りくどい紹介は抜きにしてもらおう。あれほど堂々と名乗ったのだから。明確にするところから始めようではないか」
そう、告げると渦中のアベルは立ち上がった。
その炎のような双眸でその場にいる全員を、一人一人見つめると、静かに語り出した。
「私は先代ランドロー伯爵に養子として受け入れて頂きその爵位と領地を継いだ『アベル・ド・ランドロー伯爵』。そして、皆が察する通りの人物だ。すなわち……八年前に病没したとされている、第一王子『エルネスト=ディオン・ド・ルクレール』である」
「やはり」という声がそこかしこで上がった。ある者は驚き、ある者は怯え、ある者は歯がみしている。
そんな悲喜こもごもといった様子の顔をまたも一つ一つ見つめて、アベルは胸の内がずんと重くなるのを感じたのだった。
わかってはいたが、自分が受け入れられない存在なのだと知らしめられるのは、堪える。
だが今は、それほどに重臣達に衝撃を与えられたことを利用するしかない。
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