この野菜は悪役令嬢がつくりました!

真鳥カノ

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第6章 聖大樹の下で

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 気付けば、王宮の方が妙に騒がしい。教会の一室にいるレティシアにも、そんな空気が感じ取れた。

 王宮と教会は隣接している。どちらも王都で最も大きな建物の部類に入るので、決して数歩歩けばたどり着くような距離ではないが……どことなく、漂ってくるのだ。

「何があったのかしら?」

 民にも開かれた教会と違って、王宮は高い塀に囲まれている。さすがに中の様子をのぞき見ることはできない。

「まぁ、仕方ないわね。今は祭りだの何だので慌ただしいんだもの」

 どうせ覗き見たところで自分が関われるわけでなし。ただの直感なのだから。

「……あ」

 ふと思い立って、もう一度窓の外を覗いてみた。

 窓は内開き。外には格子が嵌められている。その隙間からちらりと下を見る。中庭が見える。庭を挟んだ向かいには修道士達が暮らす修道院が見える。

「ということは、ここは大聖堂と同じ建物ということね」

 視界にかろうじて入る高い天井の建物が大聖堂だろう。枯れかかっているとはいえ、聖大樹がそこにあるのだ。

 大聖堂の奥に大司教達の執務室や賓客をもてなす客間があることは知っていたが、こんな部屋があるとは知らなかった。もしかしたら用意させたのかも知れない。

 今後、レティシアを大司教の監視下に置くためだけに。

 だからだろうか。部屋の居心地そのものは、非常に良かった。

「そりゃあそうよね。ここにずっと閉じ込められるんだものね」

 次いで、レティシアは窓辺に置いておいた花かごをちらりと見た。先ほどセルジュが持ってきてくれた花かごだ。真っ白な、可憐な花がレティシアをじっと見つめている。

「私みたいなお転婆、気をつけないとさっさと抜け出してしまうものね」

 少しいたずらっぽく笑って、誰にともなくそう言う。

(それができたら、どうするのかしら)

 ふとそう考えると、一瞬にして頭の中がある光景が埋められた。

 まばらだが緑がそこかしこに芽吹き始めた土地で、泥だらけになった男性が、こちらを振り返る。真っ黒な髪に炎のような真っ赤な瞳で、「来たか」と穏やかな声で迎えてくれる。

 レティシアは、迷わずにその人の元へ駆け出すのだ。

「アベル……様」

 我知らず、その名を呟いていた。呼んだって会えるはずがないのに。

 自分自身に呆れてため息がこぼれた、その時だった。

 なにやら騒がしい。王宮ではなく、すぐ近くだ。教会内の廊下……いや、レティシアがいる部屋のすぐ近く。

「レティシア!」

 かと思うと、乱暴な大きな音が響いて、ドアが破られた。声は、ドアを破った人のものだ。

 まさか、と思った。会いたいと思ったその瞬間に現れるなんて都合のいいことがあるわけない。

 でも、もしかして――レティシアは、声の主の方へ視線を向けた。そこにいたのは――
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