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三十二夜目続々『検索情報』
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検索をかけて情報を入手して、女に会う話を検索してを繰り返す。ところが《リエナ》は会うたびに会話の発端が変わる女だった。何度も何度も課金を重ねてやっとの事であの女の会話の糸口を掴んだと思ったのに、遂に課金のための資金が底をついてしまう。こうなったら母親に泣き落としをかけるしかないと、電話をかける前から泣き出す準備を完全にしてダイヤルを押す。母親だと思った瞬間に泣き真似から入り謝罪の言葉を放ちながら、このままでは生きていけない、死ぬしかないと続ける。母親は死ぬと言う言葉に慌てふためき、何があったのと宥めにかかったらこっちのものだ。仕事場が火事で死人まで出たので辞めさせられたが、新しい職場を探そうにも同じ塾からも大量に塾講師が流れたから仕事が見つからない。何度も失業手当てももらうようにお願いしたけど、すぐには貰えないから家賃も払えないし飯も食えない。こんな生活するはずじゃなかった、今は心を入れ換えて部屋も綺麗にしているし、大家とも関係を構築したばかりなのにとクドクドと言い訳をいい続ける。涙ながらに話を終えると、母親は仕方がないという口振りで仕送りするからと折れた。
勝った!
矢根尾は電話の向こうに見えないからとガッツポーズをとる。これで安心して再びネット検索に浸れるとほくそ笑みながら、再びパソコンの前に座ると単語を打ち込み始める。検索に頼り女の好きそうな情報を一通り網羅してから、矢根尾は課金が出来るまで会話のできないあの女の寝そべりチャットルームに待機している姿を眺める。
長い黒髪に白い肌、黒目勝ちな瞳にポッテリとした唇、赤い細縁の眼鏡をかけたまま。寝そべり胸の谷間をハッキリと見せつけながら、寝そべりノートパソコンらしいカメラを覗きこみ誰かが来るのを待っている。時折誰かがチャットルームに入るのか画面がみれなくなるが、やがて元の画面に戻ってまた暫く待つ。一体何故彼女は今更ネットで男漁りに戻ってきたのか、男が欲しいなら自分に連絡すればいいだけの話だ。それとも本当に男を漁るのに難しい環境で、ネットで再び出会いを求めようとしているのだろうか。画面を眺めていると向こうはただカメラに向かっているだけなのに、何処か自分を見つめているような気分にさせられる。やがて矢根尾は母親が生活費にと送ってきた金銭を、課金に当ててあの女と会話を深めようと足掻き始めた。
《こんばんは、リエナちゃん》
《こんばんわぁ。》
最近は矢根尾もハンドルネームを固定しているから、矢根尾が同一人物だとは彼女も分かっているだろう。それでも彼を拒否する気配がないのはいい傾向だった。少しずつ距離を詰めて、またあの時みたいに引き摺り込んでやればいい。そう考えていた矢先に、突然彼女がサイトから姿を消してしまった。課金した金額は戻らないし、まだ課金した金銭が万単位で残っているのにだ。サイトの管理者に連絡をしたが返答は一向に帰ってこないし、男が屯しているチャットルームで何か知らないかと声をかけても誰も詳しいことは知らない。矢根尾は呆然としながら、無造作に検索ボタンを押した。リエナと打ちこんで検索をかけると化粧品のサイトばかりが開く。どうして消えたのか分からずに、何度もリエナと打ち込み検索を繰り返す。何度となくそれを繰り返した時、不意に今まで観たことのない画像が紛れ込んでいるのに気がついた。最初から検索にあったのかは、実際は定かではない。それを目にした時、一瞬自分が何をみたのか分からなかった。しかも、直ぐエンターを押してしまって矢根尾は、その画像がなんだったのか見逃したのだ。気になる画像を逃して戻っても、その画像が戻ってこないのはネットでは皿だ。お陰で気になった画像が何だったかまでは、矢根尾は見られずそのままになってしまった。その後も何度となく検索して検索してを繰り返すが、《リエナ》は幻のように消え去ってしまったのだ。
《リエナって女の子最近みなくなったけど、知らない?》
《あー、あの胸のおっきい可愛い子だろ?》
久々に彼女の子とを知っている人間を見付けて、情報を検索するとばかりに話を聞いた。相手は何度となくこのサイトで出会っているから、ここのサイトの事には矢根尾よりも詳しいはずだ。彼は面白可笑しく彼女の話を教えてくれた。矢根尾が考えているよりも、ずっと彼はサイトに詳しかったようだ。
《あの子、なんかチャットする度に同じやつが絡んできて困ってたらしいよ。》
《あー、なんか、困った人がいるっては話してましたね。》
《相手さ、ここのチャットの仕組み知らないらしくてさあ、ハンドルネームを何回も変えてくるんだってさ、バカだね。》
え?と画面を覗きながら矢根尾は目を丸くする。相手が言うにはこのサイトでチャットルームにいる女の子は、会話で課金の一部が報酬として貰える所謂チャットレディーなのだ。だから、初回は無料だが2度目からは課金に変わる。一瞬矢根尾は嫌な予感がした、つまり最初の頃名前を変えてチャットルームに入っていたのがバレているということなのだ。
《それはバカですね。》
相手に話を合わせておかないと、自分がそのバカの可能性もあるのだから手に終えない。相手はそれに気かつかずに更に可笑しそうに話を続ける。
《しかもさ、ここのサイトの下に女の子の好きな話題サイトなんてあるじゃん?》
相手の言葉に更に不安感が強く沸き上がるのを感じた。それではまるで自分が辿ってきたことそのままではないだろうか。
《あれってここのサイトの女の子達には適当な答え方が教えてあるわけ。やつがこれまたご丁寧にそこのマニュアル通りな質問して来るらしくてさぁ。呆れちゃうよね。》
苦虫を噛み潰したような気分になって、矢根尾はその言葉を見つめた。話に乗るわけがないのだ、だってマニュアル通りな接客を彼女がしていたと言うことなのだから。そう考えると苛立ちが更に増して、奥歯を強く強く噛み締め画面を睨む。
《でも、直接メアドとかしつこく聞いてくるし、気持ち悪いからお金は惜しいけど暫く止めるって言ってたなぁ、可愛い子だったのにな。》
《本当ですね。》
矢根尾はそう答えるのがやっとで、怒りと羞恥心で腸が煮えくり返る気分だった。あの女が元妻だったか違うかは兎も角、自分がやっていたことを見透かされてバカにされていたのだ。しかも、あの女にいいカモにされて、あの女に金を貢いだも同然だった。腹立たしくて忌々しさにパソコンを投げてやりたくなる。思わずキーボードを拳で殴り付けた瞬間、その画像が拡大されて表示されたのに目を丸くした。
何だ?こりゃ?
それは自分がモニター画面を覗きこんだ顔だった。一瞬矢根尾は何でそんな写真がネット上で表示されたのかがわからない。確かにパソコンにはWebカメラがついているが、それを起動した記憶はないし画像は少し下を見ている様子でカメラに視線は向いていない。つまりは知らない間に撮影して、しかもネット上で流されていることになる。矢根尾は怯えが心に這い寄るのを感じながら、自分の名前を恐る恐る打ち込んだ。エンターの後にズラッと流れた自分の名前の項目に背筋が冷えていく。
何だよこれ。
何故か自分の行動をまとめているサイトがある。クリックしてもページが存在しませんと表示されるが、それでも表題は自分の名前が全面に押し出されているのだ。つまり、誰かが矢根尾の行動を監視して、ネットに暴露している。しかも、同姓同名ではなく、矢根尾自身だと本人でも分かる表件の仕方でだ。記事の内容が既に読めないよう削除されているから、尚且つ何を書かれたのか分からなくて余計に恐ろしい。しかも、記事のアドレスや文面を見ても、どう見ても一人がやっているのではないのが分かる。検索し直すと更にそれは画面一杯に、ヒットした記事を溢れさせた。
矢根尾俊一の非人間的行動
矢根尾君の適当日記更新
矢根尾俊一出没マップ
何でそんなことをネットで公表されているのか、矢根尾は冷や汗をかきながらスクロールしていく。すると、一番古そうな記事をやっとの事で見付けて、矢根尾はその文章をマジマジと見つめる。
矢根ちゃんの奇行を語るスレッド
矢根ちゃんと自分を呼んでいたのは過去の友人たちだった。震える手でそれをクリックするとスレッドが一杯になりましたと表示されているのに、信じられずに目を丸くする。この手のスレッドは基本的にコメントが千を越えると一杯になるもので、つまりはここには矢根尾がおかしいことをしたと千ものコメントが書き込まれているということになるのだ。そんな馬鹿なと考えたが、事実スレッドは一杯で簡単に見ることも出来た。矢根尾は信じられない思いで、目を皿のようにしてそれを読み続けていく。そして、次第にその内容に赤くなりながら怒り、次に青ざめて震え始めた。恐らく最初は友達と思っていた筈の人間が誰かがこれを書いて、そこに自分の知らない人間が次第に参加してきている。そして最後はほぼ自分の監視と言っても過言ではなくなっていっているのが分かった。しかも、自分の知られたくない事ばかりが、こと細やかに書き込まれていく。まるで感染したように大勢が矢根尾俊一の情報をやり取りしあって、矢根尾を監視して情報を検索しあっている。
ど、どうしたらいいんだ?
籠っていればいいのかとも考えるが、過去のスレッドには籠っている時の書き込みすらある。遊びに来た友人が書き込んだのかその話を聞いて書き込んだのかは分からないが、家に籠って女に囲われて遊び呆けているとこと細やかに情報を書き込まれていた。しかも、元妻が知らず矢根尾しか知らない筈の金銭の話まで、元妻のキャッシュカードで金を引き出してゲームセンターに行った等とみていたように書き込まれている。しかも、その中には《妻が実家で療養中、妻の高額医療費の補助金申請を勝手に出して断られた間抜け。高額医療費を払ったのお前じゃない(笑)妻の両親だろ!》と書き込まれているのに矢根尾は完全に凍りついた。この話は元妻とその両親しか知らないし、自分は誰にも話していない。しかも書き込まれた日付が問題だった。書き込まれた日付は、元妻と離婚する三ヶ月前。つまり、元妻達が高額医療費の補助金についてはまだ知らずに、矢根尾だけが申請に行って断られたのを知っている時期なのだ。
全て誰かが知らぬ間にこれを打ち込み続けたのだと、考えると恐ろしくて仕方がない。検索したばかりに、自分が最悪のパンドラの箱を開けてしまったと気がついた時にはもう遅かった。
※※※
何度か同一人物の話を聞かされているのだと思うが、やはり何処か浮世離れしているというか、まともな人間の思考回路ではないと感じてしまった。それが顔に出ていたのだろう久保田が可笑しそうに笑っている。
おかしな話ですか?
思わず頷いた自分に久保田が目を細めて、どこら辺がおかしいですかねと問いかけた。可笑しいのはまず第一に失業してからの考え方と、自分を助けるのが当たり前だと考えているところだ。ついでに言えば奥さんが何故逃げたのかは知らないが、同じように生活していたのなら逃げ出したくても当然だと自分は思う。ヒモになって当然みたいな考え方の男となんて暮らしたくもない。しかも、金銭感覚が可笑しいのは、致命的だ。親に金を無心してやることが課金では親だってたまったもんじゃないでしょうと、一気に捲し立てた自分に久保田がおやおやと笑う。しかも、一番納得できないのは本人が一番痛い目にあわないことなのだ。そう自分が言うと久保田は意味深に笑う。
本当に痛い目にあわないと思いますか?
何気ないその言葉に自分は目を丸くしていた。
勝った!
矢根尾は電話の向こうに見えないからとガッツポーズをとる。これで安心して再びネット検索に浸れるとほくそ笑みながら、再びパソコンの前に座ると単語を打ち込み始める。検索に頼り女の好きそうな情報を一通り網羅してから、矢根尾は課金が出来るまで会話のできないあの女の寝そべりチャットルームに待機している姿を眺める。
長い黒髪に白い肌、黒目勝ちな瞳にポッテリとした唇、赤い細縁の眼鏡をかけたまま。寝そべり胸の谷間をハッキリと見せつけながら、寝そべりノートパソコンらしいカメラを覗きこみ誰かが来るのを待っている。時折誰かがチャットルームに入るのか画面がみれなくなるが、やがて元の画面に戻ってまた暫く待つ。一体何故彼女は今更ネットで男漁りに戻ってきたのか、男が欲しいなら自分に連絡すればいいだけの話だ。それとも本当に男を漁るのに難しい環境で、ネットで再び出会いを求めようとしているのだろうか。画面を眺めていると向こうはただカメラに向かっているだけなのに、何処か自分を見つめているような気分にさせられる。やがて矢根尾は母親が生活費にと送ってきた金銭を、課金に当ててあの女と会話を深めようと足掻き始めた。
《こんばんは、リエナちゃん》
《こんばんわぁ。》
最近は矢根尾もハンドルネームを固定しているから、矢根尾が同一人物だとは彼女も分かっているだろう。それでも彼を拒否する気配がないのはいい傾向だった。少しずつ距離を詰めて、またあの時みたいに引き摺り込んでやればいい。そう考えていた矢先に、突然彼女がサイトから姿を消してしまった。課金した金額は戻らないし、まだ課金した金銭が万単位で残っているのにだ。サイトの管理者に連絡をしたが返答は一向に帰ってこないし、男が屯しているチャットルームで何か知らないかと声をかけても誰も詳しいことは知らない。矢根尾は呆然としながら、無造作に検索ボタンを押した。リエナと打ちこんで検索をかけると化粧品のサイトばかりが開く。どうして消えたのか分からずに、何度もリエナと打ち込み検索を繰り返す。何度となくそれを繰り返した時、不意に今まで観たことのない画像が紛れ込んでいるのに気がついた。最初から検索にあったのかは、実際は定かではない。それを目にした時、一瞬自分が何をみたのか分からなかった。しかも、直ぐエンターを押してしまって矢根尾は、その画像がなんだったのか見逃したのだ。気になる画像を逃して戻っても、その画像が戻ってこないのはネットでは皿だ。お陰で気になった画像が何だったかまでは、矢根尾は見られずそのままになってしまった。その後も何度となく検索して検索してを繰り返すが、《リエナ》は幻のように消え去ってしまったのだ。
《リエナって女の子最近みなくなったけど、知らない?》
《あー、あの胸のおっきい可愛い子だろ?》
久々に彼女の子とを知っている人間を見付けて、情報を検索するとばかりに話を聞いた。相手は何度となくこのサイトで出会っているから、ここのサイトの事には矢根尾よりも詳しいはずだ。彼は面白可笑しく彼女の話を教えてくれた。矢根尾が考えているよりも、ずっと彼はサイトに詳しかったようだ。
《あの子、なんかチャットする度に同じやつが絡んできて困ってたらしいよ。》
《あー、なんか、困った人がいるっては話してましたね。》
《相手さ、ここのチャットの仕組み知らないらしくてさあ、ハンドルネームを何回も変えてくるんだってさ、バカだね。》
え?と画面を覗きながら矢根尾は目を丸くする。相手が言うにはこのサイトでチャットルームにいる女の子は、会話で課金の一部が報酬として貰える所謂チャットレディーなのだ。だから、初回は無料だが2度目からは課金に変わる。一瞬矢根尾は嫌な予感がした、つまり最初の頃名前を変えてチャットルームに入っていたのがバレているということなのだ。
《それはバカですね。》
相手に話を合わせておかないと、自分がそのバカの可能性もあるのだから手に終えない。相手はそれに気かつかずに更に可笑しそうに話を続ける。
《しかもさ、ここのサイトの下に女の子の好きな話題サイトなんてあるじゃん?》
相手の言葉に更に不安感が強く沸き上がるのを感じた。それではまるで自分が辿ってきたことそのままではないだろうか。
《あれってここのサイトの女の子達には適当な答え方が教えてあるわけ。やつがこれまたご丁寧にそこのマニュアル通りな質問して来るらしくてさぁ。呆れちゃうよね。》
苦虫を噛み潰したような気分になって、矢根尾はその言葉を見つめた。話に乗るわけがないのだ、だってマニュアル通りな接客を彼女がしていたと言うことなのだから。そう考えると苛立ちが更に増して、奥歯を強く強く噛み締め画面を睨む。
《でも、直接メアドとかしつこく聞いてくるし、気持ち悪いからお金は惜しいけど暫く止めるって言ってたなぁ、可愛い子だったのにな。》
《本当ですね。》
矢根尾はそう答えるのがやっとで、怒りと羞恥心で腸が煮えくり返る気分だった。あの女が元妻だったか違うかは兎も角、自分がやっていたことを見透かされてバカにされていたのだ。しかも、あの女にいいカモにされて、あの女に金を貢いだも同然だった。腹立たしくて忌々しさにパソコンを投げてやりたくなる。思わずキーボードを拳で殴り付けた瞬間、その画像が拡大されて表示されたのに目を丸くした。
何だ?こりゃ?
それは自分がモニター画面を覗きこんだ顔だった。一瞬矢根尾は何でそんな写真がネット上で表示されたのかがわからない。確かにパソコンにはWebカメラがついているが、それを起動した記憶はないし画像は少し下を見ている様子でカメラに視線は向いていない。つまりは知らない間に撮影して、しかもネット上で流されていることになる。矢根尾は怯えが心に這い寄るのを感じながら、自分の名前を恐る恐る打ち込んだ。エンターの後にズラッと流れた自分の名前の項目に背筋が冷えていく。
何だよこれ。
何故か自分の行動をまとめているサイトがある。クリックしてもページが存在しませんと表示されるが、それでも表題は自分の名前が全面に押し出されているのだ。つまり、誰かが矢根尾の行動を監視して、ネットに暴露している。しかも、同姓同名ではなく、矢根尾自身だと本人でも分かる表件の仕方でだ。記事の内容が既に読めないよう削除されているから、尚且つ何を書かれたのか分からなくて余計に恐ろしい。しかも、記事のアドレスや文面を見ても、どう見ても一人がやっているのではないのが分かる。検索し直すと更にそれは画面一杯に、ヒットした記事を溢れさせた。
矢根尾俊一の非人間的行動
矢根尾君の適当日記更新
矢根尾俊一出没マップ
何でそんなことをネットで公表されているのか、矢根尾は冷や汗をかきながらスクロールしていく。すると、一番古そうな記事をやっとの事で見付けて、矢根尾はその文章をマジマジと見つめる。
矢根ちゃんの奇行を語るスレッド
矢根ちゃんと自分を呼んでいたのは過去の友人たちだった。震える手でそれをクリックするとスレッドが一杯になりましたと表示されているのに、信じられずに目を丸くする。この手のスレッドは基本的にコメントが千を越えると一杯になるもので、つまりはここには矢根尾がおかしいことをしたと千ものコメントが書き込まれているということになるのだ。そんな馬鹿なと考えたが、事実スレッドは一杯で簡単に見ることも出来た。矢根尾は信じられない思いで、目を皿のようにしてそれを読み続けていく。そして、次第にその内容に赤くなりながら怒り、次に青ざめて震え始めた。恐らく最初は友達と思っていた筈の人間が誰かがこれを書いて、そこに自分の知らない人間が次第に参加してきている。そして最後はほぼ自分の監視と言っても過言ではなくなっていっているのが分かった。しかも、自分の知られたくない事ばかりが、こと細やかに書き込まれていく。まるで感染したように大勢が矢根尾俊一の情報をやり取りしあって、矢根尾を監視して情報を検索しあっている。
ど、どうしたらいいんだ?
籠っていればいいのかとも考えるが、過去のスレッドには籠っている時の書き込みすらある。遊びに来た友人が書き込んだのかその話を聞いて書き込んだのかは分からないが、家に籠って女に囲われて遊び呆けているとこと細やかに情報を書き込まれていた。しかも、元妻が知らず矢根尾しか知らない筈の金銭の話まで、元妻のキャッシュカードで金を引き出してゲームセンターに行った等とみていたように書き込まれている。しかも、その中には《妻が実家で療養中、妻の高額医療費の補助金申請を勝手に出して断られた間抜け。高額医療費を払ったのお前じゃない(笑)妻の両親だろ!》と書き込まれているのに矢根尾は完全に凍りついた。この話は元妻とその両親しか知らないし、自分は誰にも話していない。しかも書き込まれた日付が問題だった。書き込まれた日付は、元妻と離婚する三ヶ月前。つまり、元妻達が高額医療費の補助金についてはまだ知らずに、矢根尾だけが申請に行って断られたのを知っている時期なのだ。
全て誰かが知らぬ間にこれを打ち込み続けたのだと、考えると恐ろしくて仕方がない。検索したばかりに、自分が最悪のパンドラの箱を開けてしまったと気がついた時にはもう遅かった。
※※※
何度か同一人物の話を聞かされているのだと思うが、やはり何処か浮世離れしているというか、まともな人間の思考回路ではないと感じてしまった。それが顔に出ていたのだろう久保田が可笑しそうに笑っている。
おかしな話ですか?
思わず頷いた自分に久保田が目を細めて、どこら辺がおかしいですかねと問いかけた。可笑しいのはまず第一に失業してからの考え方と、自分を助けるのが当たり前だと考えているところだ。ついでに言えば奥さんが何故逃げたのかは知らないが、同じように生活していたのなら逃げ出したくても当然だと自分は思う。ヒモになって当然みたいな考え方の男となんて暮らしたくもない。しかも、金銭感覚が可笑しいのは、致命的だ。親に金を無心してやることが課金では親だってたまったもんじゃないでしょうと、一気に捲し立てた自分に久保田がおやおやと笑う。しかも、一番納得できないのは本人が一番痛い目にあわないことなのだ。そう自分が言うと久保田は意味深に笑う。
本当に痛い目にあわないと思いますか?
何気ないその言葉に自分は目を丸くしていた。
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