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三十五夜目『ふったち2』
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これは俺の話なんですがね、鈴徳良二が自分に向けて口を開く。たまに暇になるとフラリと厨房から顔を出す彼は、東北出身の海外の調理師コンクールに入賞したこともある男だ。横では久保田は横でグラスを磨きながら、客足は奇妙なほど途絶えてその言葉を耳にしたのは自分ただ一人だった。
※※※
二ヶ月間の記憶喪失の間、自分がどのように生活してどのように暮らしていたかはどうやっても分からなかった。マンションの手続きも転居の手続きも完璧で、誰がやったかと問いかければ良二がしていた事だけは確かなのだ。自分でも呆れ果てる記憶喪失だが、悪い事はしていないのは内心安堵する。一応病院にもかかってみたが、別段体には異常もなく無くなった臓器もなければ異常もなく健康体だと診断された。二ヶ月暮らしていたアパートメントも職場の人間も、こちらから連絡をとろうとしても無駄で連絡が取れない。やっとのことで連絡が取れたアパートメントの大家は、良二が自分から日本に帰るのでと話したのだと言う。
こりゃ、どうにもならない。
二ヶ月も綺麗サッパリ抜け落ちた記憶に加えて、誰もが良二自身が手続きをしたと言う。そうなると何をどうしてこうなったかに関しては答えにならない。もう一度アメリカに渡る事も一度は考えたが、何故かそれを実行に移す気持ちになれない自分がいて良二は溜め息をついた。そんな自分自身が奇妙な状況の中にいる最中、ふと二ヶ月も音沙汰無しにしていて両親がどうしているのか、妹の捜索がどうなっているのかと気がついた。自分が記憶喪失だったとしても、二ヶ月と言う期間が過ぎてしまったのは事実だ。その間事態がどう変わったのか慌てて電話を掛けたが、両親は何時まで経っても留守番電話のままで良二は首を傾げた。携帯電話にかけても一向に通じないのに、良二は戸惑いながら親戚に電話をかける。
『良ちゃん?良ちゃんだが?』
所謂本家筋と呼ばれる祖母のいた家に嫁としている叔母が、戸惑いながら電話口で良二に話しかけてきた。懐かしい方言の口調に良二は、祖母の葬儀に出られなかったことを謝る。
『ほっただごど、なんもたいすたごどでねぇがよ!あんた、どごさ行ってらの?!なんぼ電話したって繋がんねぇがら。』
叔母の声が泣き声に変わるのに、良二は目を丸くした。相手が良二に連絡をとろうとしていたことが、妹の早苗に関わる事の可能性にかわって頭を掠める。最悪の事を想像したが泣き声が告げたのは、予想外の言葉だった。
『にいさんもねえさんも、ゆんだぢのちょっとぎまにプラッとではったままもどらねぇのよ。』
両親の事は叔母はにいさんとねえさんと呼んでいた。つまり、良二の両親が夕立の一寸した間にフラッと出ていって戻らないと叔母は言うのだ。恐らく妹の早苗を探すために、両親は実家に戻っていたに違いない。
「何処に行くって言わなかったの?親父達。」
『何もせぇねぇでではったのす。雨で道どぁうるがさってだがら、山さ入ったのばわがっでらどもやぁ。山んながばぁあどっごつかねぇがら。』
何処にいくとも言わずに準備もせずに山に入っていく両親の姿を想像して、良二は背筋が冷えていくのを感じた。行方不明になった両親の事を連絡しようと電話をしたが、何度かけても良二と連絡がとれなかったのだと言う。
『はぁ二月も山ばり探してらど、にいさんもねえさんもふったちさ山させでかれで、良ちゃんもせでがれだんだべって。』
またもやふったちだ。土地の古来からの妖怪の一つが、佐々野冬子を連れ去り鈴徳早苗を連れ去り、今度は両親まで連れ去ってしまった。
※※※
ふったちとは経立と書く。ふったちは、東北の一部地方に存在すると言われる妖怪の一種だ。生物学的な常識の範囲をはるかに越える年齢を重ねた猿や鶏といった動物が変化したものとされる。
民俗学者・柳田國男の著書『遠野物語』の中にも、岩手県上閉伊郡栗橋村(現在の釜石市)での猿のふったちについての記述がみられる。猿のふったちは体毛を松脂と砂で鎧のように固めているために銃弾も通じず、人間の女性を好んで人里から盗み去るとされた。この伝承のある地方では『猿のふったちが来る』という言い回しが子供を脅すために用いられたという。
また國學院大學説話研究会の調査による岩手県の説話では、下閉伊郡安家村(現在の岩泉町)で昔、雌の鶏がふったちとなったとされている。自分の卵を人間たちに食べられることを怨んで、鶏のふったちは自分を飼っていた家で生まれた子供を次々に取り殺したという。同じく安家村では、魚がふったちとなった話もある。昔ある家の娘のもとに、毎晩のように男が通って来ていた。しかし、あまりに美男子なので周りの人々は怪しみ、化物ではないかと疑った。人々は娘に小豆を煮た湯で男の足を洗うように言い、娘がそのようにしたところ急に男は気分が悪くなって帰ってしまった。翌朝に娘が海辺へ行くと、大きな鱈が死んでおり、あの男は鱈のふったちだったといわれたという。
※※※
父の故郷のふったちは一体何者なのだろうか。何故子供を連れ拐い、早苗と両親を連れ去ってしまったのだろう。しかも、自分は二ヶ月の記憶喪失になっていて、それも関係がないとは思えない。叔母は良二に両親と同じく、土地に足を踏み入れるなと告げた。本来なら直ぐ様駆けつけて両親を探さなければならないのに、叔母は声を潜めてけして戻ってくるなと念を押したのだ。
『気持ちはわがっけど、良ちゃんもふったちさせでかれだらなんじょもせぇねぇ何がわがったら連絡すすきゃぁよ。』
自分もふったちに拐われてはいけないと叔母は告げ、良二は電話口で頭を抱えて屈みこんだ。母も同じように日本に戻ってくるなと良二に告げたのに、自分は日本まで戻ってきてしまっている。しかも、両親が消えたのは二ヶ月も前だなんて、良二はその間何処で何をしていたのか。叔母は心配して良二にそう告げるが、本当に行かないことが正しいのか分からない。良二は困惑しながら誰にも告げることなく、父の故郷に足を向けていた。二十年近く訪れた事のない父の故郷で、目深にキャップを被り眼鏡をかけた良二が誰か気がつく人間はいない。然り気無く町を訪れた旅人のふりをして、町の外れの旅館に宿をとると何気ないふりで町の中を歩く。
「おめはん、どごさ何しに来たの?」
「何となくバスで旅してて、音の語呂がいいから降りてみたんですけど。」
「ははぁものずぎだなす、こっただなんもねぇまぢさ。まだ市日だば人っこではるけどやぁ。」
年寄りの言葉が分からないふりをすると、年寄りはほにほにと呟きながら辺りを眺める。良二はもの好きで気紛れな旅人だと考えて、まだ市が立つ日なら人がいるのにと言っているのだ。
「あにさん、日っこ暮れだら、宿がら出はるなよ?」
「え?日が暮れたら出ちゃダメですか?」
その言葉に年寄りは良二が判読できないと思って、低く早い訛りの強い言葉で呟いた。
「あのばぁわらはんどやがねるふったちだすきゃ、親もこっこどうもあらがだせでった。ほがさんのあにさんだば、せでがねぇどおもうどもやぁ。あらぁほいどたがれだすきゃ良二でなぐども、あにさんだばわんつかいづぐでもかもうなずぅせでぐせえってもおがしくねぇんだ。ほにほにおっかねぇ。」
良二は意味が分からないふりをして、困惑しながら話をそらすように笑顔で年寄りに礼を告げる。年寄りも良二が言っている事の内容が分かっていないと思っているのか笑顔で、良二に手をふり夜は外に出るなと念を押した。まるで、肝試しをしたがっている人間に、怖いから表に出るなと言うような口振りで念を押す。それを肌で感じとりながら年寄りから足早に離れ、良二は今聞いた言葉を頭の中で判読していく。
あの婆は子供達に嫉妬をするふったちだから、親も子供も粗方連れ去った。他の若い男なら連れていかないと思うけども。あれは欲張りな奴だから鈴徳良二でなくとも、若い男なら少し違和感があっても構わないから連れていこうと考えてもおかしくない。本当に本当に恐ろしい。
その言葉が判読できた良二は背筋が凍っていくのを感じながら、そのまま迷わず町を出るバスに飛び乗った。その日は宿に泊まるつもりでいたが、あの言葉を聞いた瞬間このままではいけないと本能的に感じ取ったのだ。鈴徳家に起きたことを容認し、更に年寄りが考えている事に気がつくと恐ろしいと叫びたいのは良二の方だった。そのまま良二は町を離れ出来る限りの速度で、その土地から必死に遠ざかっていく。
※※※
って言う話です。
鈴徳良二がそう言うのに、自分は少し不思議に感じて首を傾げた。何故良二が逃げ出したのか、良二と分かっていないなら一泊位は可能ではないのかと問いかける。カウンター越しの良二はまさかと言いたげに、自分の事を見つめて口を開く。
冗談でしょ?若い男が消えるのが分かってて、あえて町に引き留めてるんですよ?
そう言われてハッとする自分の顔に、良二は苦笑いを浮かべる。ふったちが家族の粗方を山へ拐い、残りの一人の良二も連れていこうと狙っているのを町の年寄り達は知っていた。しかも、ふったちが欲張りで若い男なら他の者でもいいと考えるかもしれないと分かっている。ところが良二の叔母は少し前の電話で、良二も既にふったちに拐われたと考えていた。
つまりはその集落の年寄り達は、人を拐うふったちの正体が何か知っている。しかも、それが人を拐い続けているのを黙認していることになるのだ。
生け贄に進んでなる気はないんですよ、さすがに。
そう告げた良二の微笑みに、自分は不安が膨らむのを感じた。確かに鈴徳良二は消えてはいないが、他の消えた妹や両親はどうなったのだろう。それが、顔に出たのか良二は苦笑いを浮かべて、カウンターから自分の顔を眺める。
ふったちに変わってるか、さむとのばぁになるか、どっちにしても嫌ですよね。
思わずその言葉に頷いた自分に、彼はおかしそうに笑った。
※※※
二ヶ月間の記憶喪失の間、自分がどのように生活してどのように暮らしていたかはどうやっても分からなかった。マンションの手続きも転居の手続きも完璧で、誰がやったかと問いかければ良二がしていた事だけは確かなのだ。自分でも呆れ果てる記憶喪失だが、悪い事はしていないのは内心安堵する。一応病院にもかかってみたが、別段体には異常もなく無くなった臓器もなければ異常もなく健康体だと診断された。二ヶ月暮らしていたアパートメントも職場の人間も、こちらから連絡をとろうとしても無駄で連絡が取れない。やっとのことで連絡が取れたアパートメントの大家は、良二が自分から日本に帰るのでと話したのだと言う。
こりゃ、どうにもならない。
二ヶ月も綺麗サッパリ抜け落ちた記憶に加えて、誰もが良二自身が手続きをしたと言う。そうなると何をどうしてこうなったかに関しては答えにならない。もう一度アメリカに渡る事も一度は考えたが、何故かそれを実行に移す気持ちになれない自分がいて良二は溜め息をついた。そんな自分自身が奇妙な状況の中にいる最中、ふと二ヶ月も音沙汰無しにしていて両親がどうしているのか、妹の捜索がどうなっているのかと気がついた。自分が記憶喪失だったとしても、二ヶ月と言う期間が過ぎてしまったのは事実だ。その間事態がどう変わったのか慌てて電話を掛けたが、両親は何時まで経っても留守番電話のままで良二は首を傾げた。携帯電話にかけても一向に通じないのに、良二は戸惑いながら親戚に電話をかける。
『良ちゃん?良ちゃんだが?』
所謂本家筋と呼ばれる祖母のいた家に嫁としている叔母が、戸惑いながら電話口で良二に話しかけてきた。懐かしい方言の口調に良二は、祖母の葬儀に出られなかったことを謝る。
『ほっただごど、なんもたいすたごどでねぇがよ!あんた、どごさ行ってらの?!なんぼ電話したって繋がんねぇがら。』
叔母の声が泣き声に変わるのに、良二は目を丸くした。相手が良二に連絡をとろうとしていたことが、妹の早苗に関わる事の可能性にかわって頭を掠める。最悪の事を想像したが泣き声が告げたのは、予想外の言葉だった。
『にいさんもねえさんも、ゆんだぢのちょっとぎまにプラッとではったままもどらねぇのよ。』
両親の事は叔母はにいさんとねえさんと呼んでいた。つまり、良二の両親が夕立の一寸した間にフラッと出ていって戻らないと叔母は言うのだ。恐らく妹の早苗を探すために、両親は実家に戻っていたに違いない。
「何処に行くって言わなかったの?親父達。」
『何もせぇねぇでではったのす。雨で道どぁうるがさってだがら、山さ入ったのばわがっでらどもやぁ。山んながばぁあどっごつかねぇがら。』
何処にいくとも言わずに準備もせずに山に入っていく両親の姿を想像して、良二は背筋が冷えていくのを感じた。行方不明になった両親の事を連絡しようと電話をしたが、何度かけても良二と連絡がとれなかったのだと言う。
『はぁ二月も山ばり探してらど、にいさんもねえさんもふったちさ山させでかれで、良ちゃんもせでがれだんだべって。』
またもやふったちだ。土地の古来からの妖怪の一つが、佐々野冬子を連れ去り鈴徳早苗を連れ去り、今度は両親まで連れ去ってしまった。
※※※
ふったちとは経立と書く。ふったちは、東北の一部地方に存在すると言われる妖怪の一種だ。生物学的な常識の範囲をはるかに越える年齢を重ねた猿や鶏といった動物が変化したものとされる。
民俗学者・柳田國男の著書『遠野物語』の中にも、岩手県上閉伊郡栗橋村(現在の釜石市)での猿のふったちについての記述がみられる。猿のふったちは体毛を松脂と砂で鎧のように固めているために銃弾も通じず、人間の女性を好んで人里から盗み去るとされた。この伝承のある地方では『猿のふったちが来る』という言い回しが子供を脅すために用いられたという。
また國學院大學説話研究会の調査による岩手県の説話では、下閉伊郡安家村(現在の岩泉町)で昔、雌の鶏がふったちとなったとされている。自分の卵を人間たちに食べられることを怨んで、鶏のふったちは自分を飼っていた家で生まれた子供を次々に取り殺したという。同じく安家村では、魚がふったちとなった話もある。昔ある家の娘のもとに、毎晩のように男が通って来ていた。しかし、あまりに美男子なので周りの人々は怪しみ、化物ではないかと疑った。人々は娘に小豆を煮た湯で男の足を洗うように言い、娘がそのようにしたところ急に男は気分が悪くなって帰ってしまった。翌朝に娘が海辺へ行くと、大きな鱈が死んでおり、あの男は鱈のふったちだったといわれたという。
※※※
父の故郷のふったちは一体何者なのだろうか。何故子供を連れ拐い、早苗と両親を連れ去ってしまったのだろう。しかも、自分は二ヶ月の記憶喪失になっていて、それも関係がないとは思えない。叔母は良二に両親と同じく、土地に足を踏み入れるなと告げた。本来なら直ぐ様駆けつけて両親を探さなければならないのに、叔母は声を潜めてけして戻ってくるなと念を押したのだ。
『気持ちはわがっけど、良ちゃんもふったちさせでかれだらなんじょもせぇねぇ何がわがったら連絡すすきゃぁよ。』
自分もふったちに拐われてはいけないと叔母は告げ、良二は電話口で頭を抱えて屈みこんだ。母も同じように日本に戻ってくるなと良二に告げたのに、自分は日本まで戻ってきてしまっている。しかも、両親が消えたのは二ヶ月も前だなんて、良二はその間何処で何をしていたのか。叔母は心配して良二にそう告げるが、本当に行かないことが正しいのか分からない。良二は困惑しながら誰にも告げることなく、父の故郷に足を向けていた。二十年近く訪れた事のない父の故郷で、目深にキャップを被り眼鏡をかけた良二が誰か気がつく人間はいない。然り気無く町を訪れた旅人のふりをして、町の外れの旅館に宿をとると何気ないふりで町の中を歩く。
「おめはん、どごさ何しに来たの?」
「何となくバスで旅してて、音の語呂がいいから降りてみたんですけど。」
「ははぁものずぎだなす、こっただなんもねぇまぢさ。まだ市日だば人っこではるけどやぁ。」
年寄りの言葉が分からないふりをすると、年寄りはほにほにと呟きながら辺りを眺める。良二はもの好きで気紛れな旅人だと考えて、まだ市が立つ日なら人がいるのにと言っているのだ。
「あにさん、日っこ暮れだら、宿がら出はるなよ?」
「え?日が暮れたら出ちゃダメですか?」
その言葉に年寄りは良二が判読できないと思って、低く早い訛りの強い言葉で呟いた。
「あのばぁわらはんどやがねるふったちだすきゃ、親もこっこどうもあらがだせでった。ほがさんのあにさんだば、せでがねぇどおもうどもやぁ。あらぁほいどたがれだすきゃ良二でなぐども、あにさんだばわんつかいづぐでもかもうなずぅせでぐせえってもおがしくねぇんだ。ほにほにおっかねぇ。」
良二は意味が分からないふりをして、困惑しながら話をそらすように笑顔で年寄りに礼を告げる。年寄りも良二が言っている事の内容が分かっていないと思っているのか笑顔で、良二に手をふり夜は外に出るなと念を押した。まるで、肝試しをしたがっている人間に、怖いから表に出るなと言うような口振りで念を押す。それを肌で感じとりながら年寄りから足早に離れ、良二は今聞いた言葉を頭の中で判読していく。
あの婆は子供達に嫉妬をするふったちだから、親も子供も粗方連れ去った。他の若い男なら連れていかないと思うけども。あれは欲張りな奴だから鈴徳良二でなくとも、若い男なら少し違和感があっても構わないから連れていこうと考えてもおかしくない。本当に本当に恐ろしい。
その言葉が判読できた良二は背筋が凍っていくのを感じながら、そのまま迷わず町を出るバスに飛び乗った。その日は宿に泊まるつもりでいたが、あの言葉を聞いた瞬間このままではいけないと本能的に感じ取ったのだ。鈴徳家に起きたことを容認し、更に年寄りが考えている事に気がつくと恐ろしいと叫びたいのは良二の方だった。そのまま良二は町を離れ出来る限りの速度で、その土地から必死に遠ざかっていく。
※※※
って言う話です。
鈴徳良二がそう言うのに、自分は少し不思議に感じて首を傾げた。何故良二が逃げ出したのか、良二と分かっていないなら一泊位は可能ではないのかと問いかける。カウンター越しの良二はまさかと言いたげに、自分の事を見つめて口を開く。
冗談でしょ?若い男が消えるのが分かってて、あえて町に引き留めてるんですよ?
そう言われてハッとする自分の顔に、良二は苦笑いを浮かべる。ふったちが家族の粗方を山へ拐い、残りの一人の良二も連れていこうと狙っているのを町の年寄り達は知っていた。しかも、ふったちが欲張りで若い男なら他の者でもいいと考えるかもしれないと分かっている。ところが良二の叔母は少し前の電話で、良二も既にふったちに拐われたと考えていた。
つまりはその集落の年寄り達は、人を拐うふったちの正体が何か知っている。しかも、それが人を拐い続けているのを黙認していることになるのだ。
生け贄に進んでなる気はないんですよ、さすがに。
そう告げた良二の微笑みに、自分は不安が膨らむのを感じた。確かに鈴徳良二は消えてはいないが、他の消えた妹や両親はどうなったのだろう。それが、顔に出たのか良二は苦笑いを浮かべて、カウンターから自分の顔を眺める。
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