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七十一夜目『ミミック』
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これは、私の特別な友人から聞いた話なんですけどね、そうマスターの久保田はグラスを磨きながら口を開く。芳しい珈琲と紅茶の香りのする店内には客足は奇妙なほど途絶えている。白磁のポットが見守る中で、その言葉を耳にしたのは自分ただ一人だった。
※※※
黒木佑は最近になって自分の周りの変化に気がついた。以前は大概自分の周りには誰かがたかるように集まっていたのに、今の自分は何故かポツンと一人きりのことが増えている。気がつくとクラス替えしたわけでもないのに、まるで壁があるみたいに自分だけがポツンと一人になっているのだ。
元々佑は人気者で何時も人垣の中心になるタイプだった。気が付けば誰かが周りを囲んでワイワイしているのが当然だったから、この変化が何故起きているのかが分からない。蟻がたかるみたいに集まって来るのが普通だった筈の佑に、一人になるこの理由は理解できないことだった。自分から他のクラスメイトに歩み寄れば、また違ったかもしれないが佑にはそれも出来なかい。何故ならその必要性が分からないからだ。
俺は源川先輩みたいな人気者の筈なんだ。
一つ年上の源川仁聖は何時でも人垣の中心で、誰かと楽しげに話している姿しか知らない。男でも女でも源川と話すためにワザワザ集まっていく。自分もそういうタイプの人間な筈で、源川が卒業したらポスト源川は自分だろうと薄々思っていた。
それがどうして、今こうしてポツンと一人きりで座っているのだろうか。
何かが狂い始めたのは秋頃、須藤香苗に告白した辺りからのような気がする。須藤香苗は以前はギャルっぽい頭の悪そうな女子でたいしてタイプじゃなかったが、最近急に大人びて綺麗になったと有名だ。以前は質の悪い男と夜遊びをしていたとか噂になっていたが、今はそんなこともないようで健康的で溌剌としている。しかも髪を切ってショートカットになった途端、まるで脱皮したみたいに綺麗になったのだ。急に背が伸びたわけではないのだろうが、スラリと延びた手足は細くてスタイルの良さが目につくようになった。一緒にいるのが背の小さい宮井とお嬢様な白の君・志賀だから、余計に彼女は目立つ。時折物思いに耽るような様子も、意外性が強くて気になったら目が離せなかった。だから文化祭直前に告白して付き合ってくれと言ったのに、彼女の反応はかなり悪かったのだ。
「私の何処がいいの?」
「……飾らない感じのとこが、いいなって思って。」
その言葉に須藤は目を細めて佑を頭から爪先まで眺めると、ごめん、私今好きな人いるんだよねとアッサリと断ってきた。え?とポカーンとしている佑に、彼女は颯爽とそれじゃねと立ち去って行ったのだ。
正直なところ、実はこの告白が断られると思っていなかった。初めての告白に彼女は頬を染めて喜んでと答えるのだと想像していて、それから後の楽しみ・デートやその後のキスやら何やらを妄想していたくらい。佑は須藤に断られるということを、全く考えていなかったのだ。そこから、何かがズレ始めた気がする。
須藤や宮井達が妙に仲良くしている香坂って女顔の男がいて、そいつが気に入らなくなったのはその辺りからだ。足が悪いとかって杖をつかないと歩けない癖に、学年でも人気の志賀と宮井と須藤と親密な上に他にも何人か女子がファンクラブを作っているとか。文化祭前に女子からの告白をすっぽかしたりしたって聞いたのに何でファンクラブだよって思ったら、後日呼び出しに行かなくてごめん、足が悪いから行く余裕がなくてだとかなんとかって謝ったとかって言う。いや、そんなの言い訳だろと思うが、女子にしてみたらその連れないところと素直な謝罪がいいとか訳がわからないことを言っている。そんな女誑しの癖に何でかテストでは、転校してきて二度満点をとっているらしい。進学校で国立大受験者も多い上に進学率も高い都立第三のテストで、二度も満点なんておかしいと誰も思わないのだろうか。絶対にカンニングしてると思うのに、鈴木なんてその話をしたら
「でも、トッシーのクラスだし、カンニングなんて無理じゃないかな。」
とか言う始末。
確かに生徒指導の教師・土志田悌順は有名なカンニングソナーだけど、人間なんだから自分のクラスに甘くしている可能性があると思わないのだろうか。
そんな奴をのうのうと暮らさせる気なんかない、ただしてやる。
それは云わば正義感ってやつだった。だけど、香坂という人間は何をしても平然としていて、佑がやったことに反応もしない。しかも、こっちを無能扱いする始末。
最終的に足の悪い香坂を人を集めて囲んだりしたのはやりすぎだったとは思うが、足が悪い筈の香坂は優等生の真見塚孝迄巻き込んで反撃したのだ。
おかしいだろ?足が悪くて車で送迎されてる奴が、杖で自分より二周りも体格のいい男を叩きのめすなんて。
しかも、同じような体格の真見塚まで、まるでボールみたいに囲んだ奴を投げるとは思わなかった。八人もいたのにあっという間に死屍累々で床に転がされ、しかもその後は佑にとっては更に最悪だ。他の七人がこんなことをするつもりではなかったし、こんなことに巻き込んだのは佑だと口裏を揃えた。
全部佑が悪いとなった事に両親が抗議しようとしたら、鈴木貴寛まで佑を裏切って佑が香坂に嫌がらせをしただのと言いがかりをつけにきたのだ。結局足の悪いハンディキャップのある生徒に多人数で囲んだことも悪いと認めさせられ、しかも嫌がらせもしていたのならと香坂の暴力は不問にされてしまった。
その後の騒動のせいで香坂を何とかとっちめようにも、佑は方法を失ってしまったのだ。
そこから、今までの自分の歯車が大きく狂ってしまった。家でも両親は、今までみたいに佑の言葉を信じない。なにしろ他の生徒の親の前で怪我をさせられたと声高に叫んだ母親は、相手が足が悪くて杖をついていると言われ絶句してしまったのだ。その杖で叩きのめされたのに、そんな凶器とも言えない母親の不甲斐なさに呆れてしまう。そう帰って告げてから、あからさまに母親の態度が変わったのだ。そうして変化は家だけでなく、ジワジワと学校でも大きくなって、佑は今ではポツンと一人きりになっている。
今まで蟻が砂糖にたかるみたいに集まっていたくせに。
そんな風に感じるのは、この状態が不当だと思うからだ。何しろ当の香坂は何事も無かったかのように過ごして、こっちの方が謝罪する始末。しかも、鈴木なんかはあの時香坂の肩を持ったから、少し須藤達と会話ができるようになった様子なのが腹立たしい。
ムカつく
なんで自分だけがこんな不当な状況に追い込まれているのだろう。そう考え込みながら俯いて歩き、この状況を変えるための方法を模索し続ける。
自分の希望した姿に戻るには何をしたらいいのか。
自分は元の人気者の王様みたいな存在になるべきだ。でも、それをするには方法がわからない。そんな事を延々と考えていたからか、突然人にぶつかってしまったのだ。しかもこっちは完全に俯いて歩いていたものだから、バランスを崩して尻餅をついてしまった。苛立っているのに、そんな不様な姿にした相手に思わず罵声に近い声をあげる。
「何だよ!何処見て…。」
「ごめんなさい、大丈夫?」
ぶつかったのは黒髪の綺麗な年上の女性。悪態をつこうとした言葉が出てこなくなるくらい、涼やかなハスキーな声をしたその人は髪を耳にかけながら佑の手をとった。そうして柔らかい声で手で佑の手を包み込み、怪我してない?と柔らかい声で問いかける。
「ごめんなさい、怪我してない?」
「あ、いや、あの、大丈夫。」
「ほんと?本当に怪我してない?ごめんなさい。」
申し訳なさそうに謝る彼女は佑より少しだけ背が高いが、華奢で繊細そうな指をしている。佑の事を心配そうに声をかけた彼女は、それを切っ掛けに佑の手を引くとコーヒーショップで話をしたのだった。
※※※
そこから黒木佑は教室で一人きりでも気にならなくなった。何しろ、彼女との付き合いが始まったからだ。偶然の出会いから恋に落ちるなんて、自分に相応しいドラマチックな展開。それに彼女と話している方が楽しいし、彼女は綺麗で優しくて素敵な人だ。学校をサボっても怒るわけでもなく、佑を何よりも優先して付き合って時間を過ごしてくれる。それが嬉しくない筈がない。
「和希さん。」
「佑君、おはよう。」
学校をサボって彼女と待ち合わせ、そこから一緒に話したりして過ごす。過ごし方はその時によって違うが、一緒にいられるだけで楽しいし、佑が今まで知らなかったことを彼女は次々と教えてくれる。それには次第に恋人らしいな事も含まれていて、
「もう少し佑君が色々な事を知ってから、ね?」
そう言って彼女は、少しずつ佑に色々な事を教えてくれる。ビルの隙間の暗闇で抱き合い唇を重ねるのに、ドキドキしない筈がない。公園のベンチで並んで座って、人目を憚りながら唇を重ねるのが嬉しいのは当然だ。
やがて彼女は佑の希望を聞いて、物陰でそっと手でしてくれたりし始めた。彼女は躊躇いながらも、素晴らしく気持ちのいいことを少しずつ少しずつしてくれるようになった。
「こんな…こと、初めてだから、上手く出来なかったらごめんなさい……。」
躊躇いがちにそんなことを頬を染めて呟く彼女が、とても愛しいに決まっている。彼女は戸惑いはするけど拒否はしないから、次第に行為は淫らになっていったのは佑の欲望か勝ったからだ。
「ね、ねぇ、口でしてみてよ。」
「え、口………、いいよ。」
屈みこんだ彼女が綺麗な唇を自分の欲望に押しあてて、ぎこちなく飲み込んでいく姿は最高だった。直ぐ様口に欲望を解き放っても、彼女は嫌がりもせずにそれをまるで蜜を飲むように飲み込んでくれたのだ。それに佑がズブズブと溺れるのに、そう時間はかからなかった。何しろ今の佑には彼女との時間だけが、唯一の生き甲斐に変わりつつあるのだから。
学校に行っても何も得られないし、彼女との時間の方が昔の自分のようで安心する。いつまでも口と手だけじゃなく、もう暫くしたら彼女と一つになれる日が来るのも近い。そんなことを考えると彼女に咥えさせるのは更に頻回になって、長々と物陰で咥え込ませるのは当然のようになってしまった。
「咥えて。」
「うん、いいよ……佑君。」
彼女は戸惑いもなく足の間に屈み、佑のモノを取り出すとパクリと口の中に咥えこんだ。こんなに長々と男のモノを咥えこむのを覚えてしまったら、彼女は自分以外に誰も目に入らないにちがいない。ジュプジュプと音をたてて佑のモノを舐め続ける彼女の頭を押さえると、突然着信音が響く。
『佑?!あんた何処にいるの?!』
電話口で怒鳴る母の声に、佑は街の物陰というあり得ない場所で欲望の塊を彼女に咥えてもらってニヤニヤしながら電話に出ている。彼女は電話の最中にこんな淫らな事をすると、恥ずかしくて興奮するというから佑は気にするでもない。濡れた口の中に奥深く飲み込まれる感触は心地よくて腰が蕩けてしまいそうで、佑は電話の向こうでは今のこの姿を想像もしてないだろうと考える。
「なにー?だれー?」
『馬鹿なこといってるんじゃないの!あんた!学校サボって何処にいるの?!』
「んーと、あ、天国ー?あー、すげぇ……。」
心地いい快楽にヘラヘラと笑いながら、彼女の口に大量に欲望を放ち、再び立ち上がるまでねぶられ続けていた。勝手に続く母の説教に適当に答えていると不意に彼女がクルリと背を向けたのに気がつく。あれ?なんで背中?そう考えた瞬間彼女は腰を折ると、スカートの下で何かをしている。え?あれ?もしかして、もしかする?ええ?いいの?こんな場所で初体験?すげぇエロい!彼女はスカートで下で見えないが、モゾモゾと佑の欲望を握ると挿入口へと導く。ヌプンと音をたてて欲望が飲み込まれたのに、歓喜の呻き声が溢れる。
『佑!あんた今なにやってんの?!』
「あー、すげぇ!これ!おおぅ!いいっ!おおっ!」
『佑?!』
自分を助けもしない母親の激しい困惑の声を聞きながら、初めての他人の体内の熱さを直に怒張で感じとる。しかも、佑は動かないのに彼女が激しく腰を前後させてくれるから、まるで出し入れしているみたいに怒張がうねる肉で絡み付かれ締め付けられ快感に直ぐ様上り詰めていく。
『佑?!なにやってんのあんた?!佑!』
「あー、うっせぇ、気持ちいいんだから、黙ってろよ。ああ!出るっ!出ちゃう!」
コンドームもなしに勢いよく吹き出した精を彼女の体内に注ぎ込み、ヒクヒクと腰を震わせる。
「……佑、たくさん、出したね……気持ちよかった?」
「うん、すごくよか………。」
その言葉は途中で途切れて、電話の向こうの叫ぶような母親の声が響いている。遠退く意識で笑う声を佑は聞いていた。
擬態って知ってる?佑。
擬態?
※※※
擬態ですか?
そうです。と久保田は笑う。擬態には標識的擬態と攻撃擬態とがあるんですよ、と久保田が笑う。標識的擬態は姿を真似て逃げるためのものだが、攻撃擬態は文字通り攻撃して捕食するための擬態なのだという。
その女の人は擬態をしているたってことですか?
人間が擬態って言うには一体なにが必要なのか、全く想像もできない。何しろ自分には擬態といって頭に浮かぶのは、木の葉に化けた昆虫とかしかうかばない。
昔の映画に人間に擬態する昆虫が襲ってくるホラー映画があったな。
唐突にカウンターの奥で掠れた声で盲目の常連客が呟いたのに、自分はいつの間に来たんだと驚いてしまう。同時に粗の言葉を聞いて、綺麗な女性に擬態する昆虫を思い浮かべてしまっていた。
※※※
黒木佑は最近になって自分の周りの変化に気がついた。以前は大概自分の周りには誰かがたかるように集まっていたのに、今の自分は何故かポツンと一人きりのことが増えている。気がつくとクラス替えしたわけでもないのに、まるで壁があるみたいに自分だけがポツンと一人になっているのだ。
元々佑は人気者で何時も人垣の中心になるタイプだった。気が付けば誰かが周りを囲んでワイワイしているのが当然だったから、この変化が何故起きているのかが分からない。蟻がたかるみたいに集まって来るのが普通だった筈の佑に、一人になるこの理由は理解できないことだった。自分から他のクラスメイトに歩み寄れば、また違ったかもしれないが佑にはそれも出来なかい。何故ならその必要性が分からないからだ。
俺は源川先輩みたいな人気者の筈なんだ。
一つ年上の源川仁聖は何時でも人垣の中心で、誰かと楽しげに話している姿しか知らない。男でも女でも源川と話すためにワザワザ集まっていく。自分もそういうタイプの人間な筈で、源川が卒業したらポスト源川は自分だろうと薄々思っていた。
それがどうして、今こうしてポツンと一人きりで座っているのだろうか。
何かが狂い始めたのは秋頃、須藤香苗に告白した辺りからのような気がする。須藤香苗は以前はギャルっぽい頭の悪そうな女子でたいしてタイプじゃなかったが、最近急に大人びて綺麗になったと有名だ。以前は質の悪い男と夜遊びをしていたとか噂になっていたが、今はそんなこともないようで健康的で溌剌としている。しかも髪を切ってショートカットになった途端、まるで脱皮したみたいに綺麗になったのだ。急に背が伸びたわけではないのだろうが、スラリと延びた手足は細くてスタイルの良さが目につくようになった。一緒にいるのが背の小さい宮井とお嬢様な白の君・志賀だから、余計に彼女は目立つ。時折物思いに耽るような様子も、意外性が強くて気になったら目が離せなかった。だから文化祭直前に告白して付き合ってくれと言ったのに、彼女の反応はかなり悪かったのだ。
「私の何処がいいの?」
「……飾らない感じのとこが、いいなって思って。」
その言葉に須藤は目を細めて佑を頭から爪先まで眺めると、ごめん、私今好きな人いるんだよねとアッサリと断ってきた。え?とポカーンとしている佑に、彼女は颯爽とそれじゃねと立ち去って行ったのだ。
正直なところ、実はこの告白が断られると思っていなかった。初めての告白に彼女は頬を染めて喜んでと答えるのだと想像していて、それから後の楽しみ・デートやその後のキスやら何やらを妄想していたくらい。佑は須藤に断られるということを、全く考えていなかったのだ。そこから、何かがズレ始めた気がする。
須藤や宮井達が妙に仲良くしている香坂って女顔の男がいて、そいつが気に入らなくなったのはその辺りからだ。足が悪いとかって杖をつかないと歩けない癖に、学年でも人気の志賀と宮井と須藤と親密な上に他にも何人か女子がファンクラブを作っているとか。文化祭前に女子からの告白をすっぽかしたりしたって聞いたのに何でファンクラブだよって思ったら、後日呼び出しに行かなくてごめん、足が悪いから行く余裕がなくてだとかなんとかって謝ったとかって言う。いや、そんなの言い訳だろと思うが、女子にしてみたらその連れないところと素直な謝罪がいいとか訳がわからないことを言っている。そんな女誑しの癖に何でかテストでは、転校してきて二度満点をとっているらしい。進学校で国立大受験者も多い上に進学率も高い都立第三のテストで、二度も満点なんておかしいと誰も思わないのだろうか。絶対にカンニングしてると思うのに、鈴木なんてその話をしたら
「でも、トッシーのクラスだし、カンニングなんて無理じゃないかな。」
とか言う始末。
確かに生徒指導の教師・土志田悌順は有名なカンニングソナーだけど、人間なんだから自分のクラスに甘くしている可能性があると思わないのだろうか。
そんな奴をのうのうと暮らさせる気なんかない、ただしてやる。
それは云わば正義感ってやつだった。だけど、香坂という人間は何をしても平然としていて、佑がやったことに反応もしない。しかも、こっちを無能扱いする始末。
最終的に足の悪い香坂を人を集めて囲んだりしたのはやりすぎだったとは思うが、足が悪い筈の香坂は優等生の真見塚孝迄巻き込んで反撃したのだ。
おかしいだろ?足が悪くて車で送迎されてる奴が、杖で自分より二周りも体格のいい男を叩きのめすなんて。
しかも、同じような体格の真見塚まで、まるでボールみたいに囲んだ奴を投げるとは思わなかった。八人もいたのにあっという間に死屍累々で床に転がされ、しかもその後は佑にとっては更に最悪だ。他の七人がこんなことをするつもりではなかったし、こんなことに巻き込んだのは佑だと口裏を揃えた。
全部佑が悪いとなった事に両親が抗議しようとしたら、鈴木貴寛まで佑を裏切って佑が香坂に嫌がらせをしただのと言いがかりをつけにきたのだ。結局足の悪いハンディキャップのある生徒に多人数で囲んだことも悪いと認めさせられ、しかも嫌がらせもしていたのならと香坂の暴力は不問にされてしまった。
その後の騒動のせいで香坂を何とかとっちめようにも、佑は方法を失ってしまったのだ。
そこから、今までの自分の歯車が大きく狂ってしまった。家でも両親は、今までみたいに佑の言葉を信じない。なにしろ他の生徒の親の前で怪我をさせられたと声高に叫んだ母親は、相手が足が悪くて杖をついていると言われ絶句してしまったのだ。その杖で叩きのめされたのに、そんな凶器とも言えない母親の不甲斐なさに呆れてしまう。そう帰って告げてから、あからさまに母親の態度が変わったのだ。そうして変化は家だけでなく、ジワジワと学校でも大きくなって、佑は今ではポツンと一人きりになっている。
今まで蟻が砂糖にたかるみたいに集まっていたくせに。
そんな風に感じるのは、この状態が不当だと思うからだ。何しろ当の香坂は何事も無かったかのように過ごして、こっちの方が謝罪する始末。しかも、鈴木なんかはあの時香坂の肩を持ったから、少し須藤達と会話ができるようになった様子なのが腹立たしい。
ムカつく
なんで自分だけがこんな不当な状況に追い込まれているのだろう。そう考え込みながら俯いて歩き、この状況を変えるための方法を模索し続ける。
自分の希望した姿に戻るには何をしたらいいのか。
自分は元の人気者の王様みたいな存在になるべきだ。でも、それをするには方法がわからない。そんな事を延々と考えていたからか、突然人にぶつかってしまったのだ。しかもこっちは完全に俯いて歩いていたものだから、バランスを崩して尻餅をついてしまった。苛立っているのに、そんな不様な姿にした相手に思わず罵声に近い声をあげる。
「何だよ!何処見て…。」
「ごめんなさい、大丈夫?」
ぶつかったのは黒髪の綺麗な年上の女性。悪態をつこうとした言葉が出てこなくなるくらい、涼やかなハスキーな声をしたその人は髪を耳にかけながら佑の手をとった。そうして柔らかい声で手で佑の手を包み込み、怪我してない?と柔らかい声で問いかける。
「ごめんなさい、怪我してない?」
「あ、いや、あの、大丈夫。」
「ほんと?本当に怪我してない?ごめんなさい。」
申し訳なさそうに謝る彼女は佑より少しだけ背が高いが、華奢で繊細そうな指をしている。佑の事を心配そうに声をかけた彼女は、それを切っ掛けに佑の手を引くとコーヒーショップで話をしたのだった。
※※※
そこから黒木佑は教室で一人きりでも気にならなくなった。何しろ、彼女との付き合いが始まったからだ。偶然の出会いから恋に落ちるなんて、自分に相応しいドラマチックな展開。それに彼女と話している方が楽しいし、彼女は綺麗で優しくて素敵な人だ。学校をサボっても怒るわけでもなく、佑を何よりも優先して付き合って時間を過ごしてくれる。それが嬉しくない筈がない。
「和希さん。」
「佑君、おはよう。」
学校をサボって彼女と待ち合わせ、そこから一緒に話したりして過ごす。過ごし方はその時によって違うが、一緒にいられるだけで楽しいし、佑が今まで知らなかったことを彼女は次々と教えてくれる。それには次第に恋人らしいな事も含まれていて、
「もう少し佑君が色々な事を知ってから、ね?」
そう言って彼女は、少しずつ佑に色々な事を教えてくれる。ビルの隙間の暗闇で抱き合い唇を重ねるのに、ドキドキしない筈がない。公園のベンチで並んで座って、人目を憚りながら唇を重ねるのが嬉しいのは当然だ。
やがて彼女は佑の希望を聞いて、物陰でそっと手でしてくれたりし始めた。彼女は躊躇いながらも、素晴らしく気持ちのいいことを少しずつ少しずつしてくれるようになった。
「こんな…こと、初めてだから、上手く出来なかったらごめんなさい……。」
躊躇いがちにそんなことを頬を染めて呟く彼女が、とても愛しいに決まっている。彼女は戸惑いはするけど拒否はしないから、次第に行為は淫らになっていったのは佑の欲望か勝ったからだ。
「ね、ねぇ、口でしてみてよ。」
「え、口………、いいよ。」
屈みこんだ彼女が綺麗な唇を自分の欲望に押しあてて、ぎこちなく飲み込んでいく姿は最高だった。直ぐ様口に欲望を解き放っても、彼女は嫌がりもせずにそれをまるで蜜を飲むように飲み込んでくれたのだ。それに佑がズブズブと溺れるのに、そう時間はかからなかった。何しろ今の佑には彼女との時間だけが、唯一の生き甲斐に変わりつつあるのだから。
学校に行っても何も得られないし、彼女との時間の方が昔の自分のようで安心する。いつまでも口と手だけじゃなく、もう暫くしたら彼女と一つになれる日が来るのも近い。そんなことを考えると彼女に咥えさせるのは更に頻回になって、長々と物陰で咥え込ませるのは当然のようになってしまった。
「咥えて。」
「うん、いいよ……佑君。」
彼女は戸惑いもなく足の間に屈み、佑のモノを取り出すとパクリと口の中に咥えこんだ。こんなに長々と男のモノを咥えこむのを覚えてしまったら、彼女は自分以外に誰も目に入らないにちがいない。ジュプジュプと音をたてて佑のモノを舐め続ける彼女の頭を押さえると、突然着信音が響く。
『佑?!あんた何処にいるの?!』
電話口で怒鳴る母の声に、佑は街の物陰というあり得ない場所で欲望の塊を彼女に咥えてもらってニヤニヤしながら電話に出ている。彼女は電話の最中にこんな淫らな事をすると、恥ずかしくて興奮するというから佑は気にするでもない。濡れた口の中に奥深く飲み込まれる感触は心地よくて腰が蕩けてしまいそうで、佑は電話の向こうでは今のこの姿を想像もしてないだろうと考える。
「なにー?だれー?」
『馬鹿なこといってるんじゃないの!あんた!学校サボって何処にいるの?!』
「んーと、あ、天国ー?あー、すげぇ……。」
心地いい快楽にヘラヘラと笑いながら、彼女の口に大量に欲望を放ち、再び立ち上がるまでねぶられ続けていた。勝手に続く母の説教に適当に答えていると不意に彼女がクルリと背を向けたのに気がつく。あれ?なんで背中?そう考えた瞬間彼女は腰を折ると、スカートの下で何かをしている。え?あれ?もしかして、もしかする?ええ?いいの?こんな場所で初体験?すげぇエロい!彼女はスカートで下で見えないが、モゾモゾと佑の欲望を握ると挿入口へと導く。ヌプンと音をたてて欲望が飲み込まれたのに、歓喜の呻き声が溢れる。
『佑!あんた今なにやってんの?!』
「あー、すげぇ!これ!おおぅ!いいっ!おおっ!」
『佑?!』
自分を助けもしない母親の激しい困惑の声を聞きながら、初めての他人の体内の熱さを直に怒張で感じとる。しかも、佑は動かないのに彼女が激しく腰を前後させてくれるから、まるで出し入れしているみたいに怒張がうねる肉で絡み付かれ締め付けられ快感に直ぐ様上り詰めていく。
『佑?!なにやってんのあんた?!佑!』
「あー、うっせぇ、気持ちいいんだから、黙ってろよ。ああ!出るっ!出ちゃう!」
コンドームもなしに勢いよく吹き出した精を彼女の体内に注ぎ込み、ヒクヒクと腰を震わせる。
「……佑、たくさん、出したね……気持ちよかった?」
「うん、すごくよか………。」
その言葉は途中で途切れて、電話の向こうの叫ぶような母親の声が響いている。遠退く意識で笑う声を佑は聞いていた。
擬態って知ってる?佑。
擬態?
※※※
擬態ですか?
そうです。と久保田は笑う。擬態には標識的擬態と攻撃擬態とがあるんですよ、と久保田が笑う。標識的擬態は姿を真似て逃げるためのものだが、攻撃擬態は文字通り攻撃して捕食するための擬態なのだという。
その女の人は擬態をしているたってことですか?
人間が擬態って言うには一体なにが必要なのか、全く想像もできない。何しろ自分には擬態といって頭に浮かぶのは、木の葉に化けた昆虫とかしかうかばない。
昔の映画に人間に擬態する昆虫が襲ってくるホラー映画があったな。
唐突にカウンターの奥で掠れた声で盲目の常連客が呟いたのに、自分はいつの間に来たんだと驚いてしまう。同時に粗の言葉を聞いて、綺麗な女性に擬態する昆虫を思い浮かべてしまっていた。
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