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七十八夜目『目には目を歯には歯を』
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これは、私の特別な友人から聞いた話なんですけどね、そうマスターの久保田はグラスを磨きながら口を開く。芳しい珈琲と紅茶の香りのする店内には客足は奇妙なほど途絶えている。白磁のポットが見守る中で、その言葉を耳にしたのは自分ただ一人だった。
※※※
また、どうしてかこの街に戻ってきて、一人で暮らし始めていた。勿論そのまま実家で暮らすことも考えなかった訳ではないけれど、両親に日常の様々な干渉をされて生活するのはどうにも堪えられず嫌だったのだ。同時に出ていくと話したら自分が発見された時には泣いて喜んだ筈の母親が、何故か喜んで送り出したのには首を傾げる。
この街に戻ってきて矢根尾俊一が先ずしたのは、アルバイトを探すことだった。二ヶ月も失踪していた内に、前のバイト先は当然解雇になっていて新しい場所を探そうにも四十過ぎの自分では塾では当に年齢的にも雇い入れる先がない。日雇いのバイトは性にあわないが、だからと言って失業保険を申請してもたいして前のバイト先で勤めていないので期待は薄い。家電は最小限、物も最小限にして住んでいるが、それでも疲労困憊していくのが分かる。一体なんでこんなことになってしまったのかと考えもするが、それを考えるのも億劫だった。
そんな中で久々に顔をあわせた友人の茂木と貞友は、相変わらず呑気で何も考えもせずに暮らしているように見えて内心苛立ちすら感じる。
楽しげに呑気に暮らせるのも今のうちなんだぞ。
若いうちしかそんな暮らしは出来ないと頭の中で考えた瞬間、自分が三十代の若さに嫉妬していることに気がつく。四十三歳の自分にはない若さと自由。それに気がついた瞬間にゾッとするのが分かって、矢根尾は自分の顔を鏡で見つめた。
近道をしている内に、随分と老けたんじゃないか?最近は殆ど使わないのに。肌の張りもないし……これって……まさかシミ?
マジマジと自分を見つめ愕然とする。いつの間にか気がつかない内に酷く老けている、そう気がつかされてしまった。若さってどうしたら戻る?俺はこんな老けていい男じゃない、歳を重ねてもイケメンのまま渋さだけを重ねていく筈だ。そう心の中で叫びながら、若々しい中年の特徴を必死に考え出す。そうして考え付いたのは、矢根尾らしいと言えば矢根尾らしい。
性欲だよ!そういうのが二ヶ月どころじゃなく俺には不足してる!若い女とやらないで、枯れてる!
何処かの誰かに聞かせたら馬鹿じゃないかと言われそうな結論に、矢根尾は必死に縋りついた。しかし、そうなると相手を探さないとならないのだが、ここに来て不意に自分には今出会いがないことに気がつく。日雇いのバイトは肉体労働が多く、女性が目に入ることは殆どない。前のように塾などで、講師や事務で女性スタッフがいるわけでもないのだ。そうなると矢根尾に出来るのは一つだけだった。
ネットでその相手を引っ掛けたのは運命だ。
久々のオープンチャットには人気がなく、以前と同じハンドルネームで入室してもROMと呼ばれる覗きの人数も増えない。そこに入室したのはピンクの文字でハルと名乗る女だった。
《初めまして、ハルといいます。》
《はじめまして、ハル。俺はフィ。》
《フィってどんな意味ですか?》
《フィクションのフィかな。》
《なるほど、ネットの中ってフィクションみたいなものですもんね。》
そんな風に穏やかな会話をする相手の丁寧な口調は好みだ。初めての女でも小文字や顔文字を多用するような女は、矢根尾の好みではない。まあまあ早いタイピングで、それでも慣れない場所では敬語を使うような女がいい。大体にしてハンドルネームに意味なんて求めるのは女くらいだと、矢根尾は思う。フィの理由は実際にはフィニるなんて造語を打ち損ねたのをチャットで笑われて、何となく使っているだけだ。その理由を知っている人間は当にこのSMチャットからは足を洗って、何処かで普通に暮らしているに違いない。
《始めてお話ししたのに、何だか安心しますね。》
《そうかな、ソフトSって言われるけどね。》
《良かった、ちょっと怖かったけど貴方なら。》
そんな感じの控えめの会話から、ハルは少しずつSMに興味があると匂わせてくる。とはいえあまり詳しくはないのが言葉の端々に分かるから、もしかしたら耳年増なだけの若い女かもしれない。
《縛られたりしながら、気持ちいいことされたいの?》
《縛られるの痛くないですか?》
《痛気持ちいいかな。》
《そうなんですか…他にもSMってどんなことを言うんですか?》
《詳しく教えてあげてもいいから、オープンじゃなくて個室でチャットしない?ハル。》
《あ、個室って言うのもあるんですか?いいですよ。》
ハルは聞けばまだ二十三歳なのだと言う。上京して就職して一年足らず。まだあまり男性経験はないが今までの彼氏には物足りなさを感じている様子で、何が不足しているのかを探していると言うところ。その中で言葉責めやら露出とかいう知識をネットで知って興味が出てきたのだという。しかも住んでいるのは聞けば聞くほど、ここら近辺の気配だ。
《何処にすんでるの?》
《えーと、こういうのって話してもいいんですか?マンションに独り暮らしなんですよね。》
《大丈夫、俺しか読まないから。地名が怖いなら、別に言わなくてもいいし、俺はずっと同じ街に住んでるんだ。近くに総合病院とかあるし、便利なんだよね。》
《あーそうなんですね、私の家の近くにも大きな病院ありますよ。やっぱり利便性ですよね。》
そんな風に世間話をしながら、次第にハルの住みかを特定していく。沿線の話や遊びにいく場所の話、近くの学校や最寄り駅の話。やがて決定的に駅の名前を打ち込んだのにしめたとほくそ笑む。最初の予想通り彼女はこの沿線沿いに住んでいるだけでなく、自分と同じ駅を最寄り駅に使っているのだ。
《その駅知ってるよ、案外傍に住んでるんだね、ハル。》
《そうなんですか?同じ沿線ですか?》
あえて自分の住みかの方は濁して、共通に出来そうな場所の話を持ちかけ話すと、次第に相手は気を許したみたいにそこ知ってますと答え出した。
《近くだね?時間があったら会わない?》
《会ったらガッカリするかも……。》
《そんなの会ってみないとわからないよ、ハル。》
案外ハルは好奇心が旺盛なのが感じ取れるのは、会おうといって会ったあとの心配をする辺りだ。大概会いたくなければ仕事がとか言い出すのに、会ったらガッカリするかもは自分の興味はあるが顔も知らない人間に会うのに不安があるからだろう。それでも好奇心の方が勝てば、話には乗ってくる筈だ。
《君が会いたいと思ってくれるなら、時間をつくるよ?》
《会ったら何してほしいですか?》
ほら、好奇心に負けた。何をしてくれるかではなく何をしてほしいか、思った通りマゾヒストらしい思考の発言に矢根尾はニヤリと笑う。
《決まってる、気持ちよくしてあげるよ。》
《気持ちいいこと?》
《あんまりエッチの経験ないんだよね?》
そうして会う算段をつけたは、矢根尾がハルと会話を始めてほんの一時間もしない間のことだった。
※※※
「はじめまして、五十嵐はるです。」
約束の場所に現れたのは、ハイネックの春物セーターにフンワリしたマフラーと品のいいスプリングコート、アシンメトリーのスカートにヒールの高いロングブーツを履いている可愛らしい女性だった。
頬にかかる髪の毛は猫っ毛なのかフンワリしていて、少し緊張しているのか俯き気味の長い睫毛が瞬く。緊張に頬を染めていて、プックリした唇は肉感的で春の新色らしいパールピンクで艶々している。
可愛いじゃん。
躊躇いがちに頭を下げる初々しい感じが、まだ完全に都会に慣れてない感を伺わせた。身長はヒールも含めるとやや高めだが、自分が百八十あるから特に問題はない。
「はるちゃんか、可愛いなぁ。」
腰は細いが胸は大きそうだし腰回りの肉付きもよさそうで、中々のスタイルで縄で括れさせたら映えそうだ。これはいいのを引いた。しかも、相手は好奇心が強くて、SMに興味はあるがまだ未経験。絶好の条件だ。優しい、しかも色気のある声に聞こえるように気を付けながら矢根尾は口を開く。
「食事でもいく?」
「あ。はい。」
素直に頷いた五十嵐はるに、内心ガッツポーズを決めたのは言うまでもなかった。しかも、思った通り五十嵐はるは絶好の条件を持った、素材だったのだ。
個室居酒屋でわざと隣り合って座っても困惑すらしないし、太股に置かれた細い指を握ってもいやがらない。それどころか隣り合って座った自分の股間を撫でさせると、戸惑いながらも大人しく撫で回すのだ。興味があるから大人しく従うはるに、耳元で言葉責めを始めてやる。
「緊張してる?こんなとこで触って恥ずかしくないの?」
「あ、あのっ……。」
頬を染めているのに好奇心に負けたはるは、オズオズとした動きで更に矢根尾の股間を揉みながら撫で回し始めた。固いですねと呟く彼女はもしかしたら男の経験がないかもしれない。そんな風にすら感じる辿々しさで、はるは居酒屋の中で訳も分からず怒張を握るのだ。
「ああ、イヤらしい子だね、そんな風に揉むなんて。」
そっと柔らかな胸を揉んでやると身悶え、興奮したのか強く怒張を揉みしだいてくる。これはいける、そう踏んで矢根尾は立ち上がると見事に怒張した逸物を彼女の可愛い唇の前に曝した。ところがやはり初めて男のモノを見たのか、彼女は驚いたように目を丸くして怒張を見つめ凍りついた。
大きすぎて驚いたか……
初なはるは驚いた様子で顔を両手で覆い、視線を反らした。初々しい反応に思わず興奮を隠せず、矢根尾は更にはるの顔の前に怒張を突き出す。
「ほら、ちゃんと真っ直ぐ見てごらん、はる。」
「あの、こんな風なの……、初めて……なんです…。」
弱々しくそういうはるが恥ずかしげに耳を赤くしているのに、顔を覆った手を引き剥がそうと細い手首を掴む。すると、はるは少し驚いた風に手を外して逸物を信じられないという風に見つめた。矢根尾はその視線に昔の事を思い出して、満ち足りた気分になる。以前も同じような顔をして矢根尾の逸物を見つめた性奴隷がいたのだ。
「ほら、はるがこれから気持ちよくしてもらえるおチンポ様だよ?」
流石に初めてで咥えろというのは酷かもしれない。怯えた様子ではるはオズオズと怒張に手を伸ばしてきた。
「なんだ、触りたかったのか?はる。」
ガチガチになっている怒張を緊張しながら扱き出したはるは上目遣いに矢根尾の顔を見つめ、反応を確かめながらニチャニチャと音を立てる。
雄々しく仁王立ちしている矢根尾と、座って俺にかしづくはる。素直な性奴隷に、矢根尾は更に先を促す。
「はる、先を舐めてごらん。」
その言葉にやはりはるは戸惑った様子で、矢根尾を見上げてくる。やはり初めてでフェラチオは怖くて無理かと、矢根尾は経験の高さを示すように優しく認めてやった。
「慣れたら咥えて沢山飲むんだぞ?今日は許してやるから、手で扱け。」
許してやるとはるは熱心に怒張を扱き立て始め、快感が競り上がってくるのを久々に感じる。ウットリしているように見える瞳ではるは必死にニチャニチャグチャグチョと音をたてて怒張を激しく刺激してきて、はるの手に久々の絶頂はすぐ訪れた。射精して固さを失った肉棒からはるの手を離そうとすると、彼女は自分の手でいかせたものを見たいと上目遣いに懇願して見せる。
「あの……もう少し見たい……です。見せて…ください。」
ヤワヤワと握ったり擦ったりしながら上目遣いにお強請りして、しまおうとする矢根尾を遮る。好奇心の強さにはるは射精した肉茎を観察したがっているのに、仕方がないなと許しを与える笑みを浮かべてやる。すると、彼女は徐に矢根尾の先端を手で掴み、反対の手をお椀のようにして亀頭をいきなり激しく擦りたて始めた。
「うわっ!あわわっ!ま、まてっまって!!」
「ここ、擦るの気持ちいいことですよね?」
容赦なく亀頭を自分が吐き出した精液を塗り込むように、激しく擦りたてる刺激。いったばかりで敏感になっている先端を、彼女は無知の容赦のなさでジュコジュコと激しく休みなく擦りたててくる。しかも、それが微妙に矢根尾の快感のポイントに嵌まったようで、突然腰の奥がジィンと痺れるような快感が電気のように走った。
なんだこれ?!
亀頭の刺激の強さに電流がズンズンと腰に快感になって響いて、失禁してしまいそうに気持ちいい。矢根尾は思わずがに股になりながらはるの手にあわせて、腰を前後にガクガクと痙攣させ始めていた。
「おおっおひぃい!!い、ぐぅ!おおおっ!」
一瞬個室居酒屋だということも忘れて、思わず絶頂に獣染みた声で矢根尾は吠えた。あまりにも大きな声だったからお客様?と扉の向こうから声をかけられ慌てて口を塞いだのだが、興奮しているのかはるは亀頭を擦るのを止めようとしない。
「何でもありません。」
穏やかな声で答えるはるに、店員は訝しげな気配を残しながら立ち去る。そこで終わるのかと思いきやはるは、更にゴシュゴシュと先端だけを擦りたててくるのだ。ビリビリとズンズンと響く快楽、精液を出したばかりの亀頭を刺激されるのがこんなに気持ちいいなんて。ガクガクする腰を自覚しながら、矢根尾は産まれて初めての奇妙な絶頂に達した。
「う、ううっうううっ!」
はるはそれでもまだ満足しない様子で、店員がまた来ますよと囁きながらもう一度赤くなった亀頭を撫で回しだす。ああ、なんてことだ、さっきも凄く気持ちがよかったけど、これは更に気持ちいいじゃないか。はるのしなやかな指に丹念に亀頭を包み込まれて、回すように手で作られたお椀が先端を愛撫する。口を手で塞いでいないと思わず吠えてしまいそうで、必死に口元を押さえながら、矢根尾はなんと腰を抜かす程の絶頂にへたり込みながら失禁してしまった。それに驚いてしまったように可愛い性奴隷は、今日は帰りますと慌てて脱兎のごとくその場を立ち去ったのだ。
※※※
新しい性奴隷の五十嵐はるの存在のお陰で、矢根尾は少しずつ以前の若さを取り戻し始めていた。あれで懲りたかと一瞬不安になったが、呼び出すとはるは大人しく姿をみせ言われた通り矢根尾の怒張を一心に愛撫する。三度目には外での調教を試みようとしたのだが、残念ながらまだ少し早すぎたようだ。戸惑ってしまったはるはそれでもトイレの個室で矢根尾のモノに奉仕した。
そうして、ついにはるの方から自宅に来ませんかと誘いをかけられたのだ。
※※※
また、どうしてかこの街に戻ってきて、一人で暮らし始めていた。勿論そのまま実家で暮らすことも考えなかった訳ではないけれど、両親に日常の様々な干渉をされて生活するのはどうにも堪えられず嫌だったのだ。同時に出ていくと話したら自分が発見された時には泣いて喜んだ筈の母親が、何故か喜んで送り出したのには首を傾げる。
この街に戻ってきて矢根尾俊一が先ずしたのは、アルバイトを探すことだった。二ヶ月も失踪していた内に、前のバイト先は当然解雇になっていて新しい場所を探そうにも四十過ぎの自分では塾では当に年齢的にも雇い入れる先がない。日雇いのバイトは性にあわないが、だからと言って失業保険を申請してもたいして前のバイト先で勤めていないので期待は薄い。家電は最小限、物も最小限にして住んでいるが、それでも疲労困憊していくのが分かる。一体なんでこんなことになってしまったのかと考えもするが、それを考えるのも億劫だった。
そんな中で久々に顔をあわせた友人の茂木と貞友は、相変わらず呑気で何も考えもせずに暮らしているように見えて内心苛立ちすら感じる。
楽しげに呑気に暮らせるのも今のうちなんだぞ。
若いうちしかそんな暮らしは出来ないと頭の中で考えた瞬間、自分が三十代の若さに嫉妬していることに気がつく。四十三歳の自分にはない若さと自由。それに気がついた瞬間にゾッとするのが分かって、矢根尾は自分の顔を鏡で見つめた。
近道をしている内に、随分と老けたんじゃないか?最近は殆ど使わないのに。肌の張りもないし……これって……まさかシミ?
マジマジと自分を見つめ愕然とする。いつの間にか気がつかない内に酷く老けている、そう気がつかされてしまった。若さってどうしたら戻る?俺はこんな老けていい男じゃない、歳を重ねてもイケメンのまま渋さだけを重ねていく筈だ。そう心の中で叫びながら、若々しい中年の特徴を必死に考え出す。そうして考え付いたのは、矢根尾らしいと言えば矢根尾らしい。
性欲だよ!そういうのが二ヶ月どころじゃなく俺には不足してる!若い女とやらないで、枯れてる!
何処かの誰かに聞かせたら馬鹿じゃないかと言われそうな結論に、矢根尾は必死に縋りついた。しかし、そうなると相手を探さないとならないのだが、ここに来て不意に自分には今出会いがないことに気がつく。日雇いのバイトは肉体労働が多く、女性が目に入ることは殆どない。前のように塾などで、講師や事務で女性スタッフがいるわけでもないのだ。そうなると矢根尾に出来るのは一つだけだった。
ネットでその相手を引っ掛けたのは運命だ。
久々のオープンチャットには人気がなく、以前と同じハンドルネームで入室してもROMと呼ばれる覗きの人数も増えない。そこに入室したのはピンクの文字でハルと名乗る女だった。
《初めまして、ハルといいます。》
《はじめまして、ハル。俺はフィ。》
《フィってどんな意味ですか?》
《フィクションのフィかな。》
《なるほど、ネットの中ってフィクションみたいなものですもんね。》
そんな風に穏やかな会話をする相手の丁寧な口調は好みだ。初めての女でも小文字や顔文字を多用するような女は、矢根尾の好みではない。まあまあ早いタイピングで、それでも慣れない場所では敬語を使うような女がいい。大体にしてハンドルネームに意味なんて求めるのは女くらいだと、矢根尾は思う。フィの理由は実際にはフィニるなんて造語を打ち損ねたのをチャットで笑われて、何となく使っているだけだ。その理由を知っている人間は当にこのSMチャットからは足を洗って、何処かで普通に暮らしているに違いない。
《始めてお話ししたのに、何だか安心しますね。》
《そうかな、ソフトSって言われるけどね。》
《良かった、ちょっと怖かったけど貴方なら。》
そんな感じの控えめの会話から、ハルは少しずつSMに興味があると匂わせてくる。とはいえあまり詳しくはないのが言葉の端々に分かるから、もしかしたら耳年増なだけの若い女かもしれない。
《縛られたりしながら、気持ちいいことされたいの?》
《縛られるの痛くないですか?》
《痛気持ちいいかな。》
《そうなんですか…他にもSMってどんなことを言うんですか?》
《詳しく教えてあげてもいいから、オープンじゃなくて個室でチャットしない?ハル。》
《あ、個室って言うのもあるんですか?いいですよ。》
ハルは聞けばまだ二十三歳なのだと言う。上京して就職して一年足らず。まだあまり男性経験はないが今までの彼氏には物足りなさを感じている様子で、何が不足しているのかを探していると言うところ。その中で言葉責めやら露出とかいう知識をネットで知って興味が出てきたのだという。しかも住んでいるのは聞けば聞くほど、ここら近辺の気配だ。
《何処にすんでるの?》
《えーと、こういうのって話してもいいんですか?マンションに独り暮らしなんですよね。》
《大丈夫、俺しか読まないから。地名が怖いなら、別に言わなくてもいいし、俺はずっと同じ街に住んでるんだ。近くに総合病院とかあるし、便利なんだよね。》
《あーそうなんですね、私の家の近くにも大きな病院ありますよ。やっぱり利便性ですよね。》
そんな風に世間話をしながら、次第にハルの住みかを特定していく。沿線の話や遊びにいく場所の話、近くの学校や最寄り駅の話。やがて決定的に駅の名前を打ち込んだのにしめたとほくそ笑む。最初の予想通り彼女はこの沿線沿いに住んでいるだけでなく、自分と同じ駅を最寄り駅に使っているのだ。
《その駅知ってるよ、案外傍に住んでるんだね、ハル。》
《そうなんですか?同じ沿線ですか?》
あえて自分の住みかの方は濁して、共通に出来そうな場所の話を持ちかけ話すと、次第に相手は気を許したみたいにそこ知ってますと答え出した。
《近くだね?時間があったら会わない?》
《会ったらガッカリするかも……。》
《そんなの会ってみないとわからないよ、ハル。》
案外ハルは好奇心が旺盛なのが感じ取れるのは、会おうといって会ったあとの心配をする辺りだ。大概会いたくなければ仕事がとか言い出すのに、会ったらガッカリするかもは自分の興味はあるが顔も知らない人間に会うのに不安があるからだろう。それでも好奇心の方が勝てば、話には乗ってくる筈だ。
《君が会いたいと思ってくれるなら、時間をつくるよ?》
《会ったら何してほしいですか?》
ほら、好奇心に負けた。何をしてくれるかではなく何をしてほしいか、思った通りマゾヒストらしい思考の発言に矢根尾はニヤリと笑う。
《決まってる、気持ちよくしてあげるよ。》
《気持ちいいこと?》
《あんまりエッチの経験ないんだよね?》
そうして会う算段をつけたは、矢根尾がハルと会話を始めてほんの一時間もしない間のことだった。
※※※
「はじめまして、五十嵐はるです。」
約束の場所に現れたのは、ハイネックの春物セーターにフンワリしたマフラーと品のいいスプリングコート、アシンメトリーのスカートにヒールの高いロングブーツを履いている可愛らしい女性だった。
頬にかかる髪の毛は猫っ毛なのかフンワリしていて、少し緊張しているのか俯き気味の長い睫毛が瞬く。緊張に頬を染めていて、プックリした唇は肉感的で春の新色らしいパールピンクで艶々している。
可愛いじゃん。
躊躇いがちに頭を下げる初々しい感じが、まだ完全に都会に慣れてない感を伺わせた。身長はヒールも含めるとやや高めだが、自分が百八十あるから特に問題はない。
「はるちゃんか、可愛いなぁ。」
腰は細いが胸は大きそうだし腰回りの肉付きもよさそうで、中々のスタイルで縄で括れさせたら映えそうだ。これはいいのを引いた。しかも、相手は好奇心が強くて、SMに興味はあるがまだ未経験。絶好の条件だ。優しい、しかも色気のある声に聞こえるように気を付けながら矢根尾は口を開く。
「食事でもいく?」
「あ。はい。」
素直に頷いた五十嵐はるに、内心ガッツポーズを決めたのは言うまでもなかった。しかも、思った通り五十嵐はるは絶好の条件を持った、素材だったのだ。
個室居酒屋でわざと隣り合って座っても困惑すらしないし、太股に置かれた細い指を握ってもいやがらない。それどころか隣り合って座った自分の股間を撫でさせると、戸惑いながらも大人しく撫で回すのだ。興味があるから大人しく従うはるに、耳元で言葉責めを始めてやる。
「緊張してる?こんなとこで触って恥ずかしくないの?」
「あ、あのっ……。」
頬を染めているのに好奇心に負けたはるは、オズオズとした動きで更に矢根尾の股間を揉みながら撫で回し始めた。固いですねと呟く彼女はもしかしたら男の経験がないかもしれない。そんな風にすら感じる辿々しさで、はるは居酒屋の中で訳も分からず怒張を握るのだ。
「ああ、イヤらしい子だね、そんな風に揉むなんて。」
そっと柔らかな胸を揉んでやると身悶え、興奮したのか強く怒張を揉みしだいてくる。これはいける、そう踏んで矢根尾は立ち上がると見事に怒張した逸物を彼女の可愛い唇の前に曝した。ところがやはり初めて男のモノを見たのか、彼女は驚いたように目を丸くして怒張を見つめ凍りついた。
大きすぎて驚いたか……
初なはるは驚いた様子で顔を両手で覆い、視線を反らした。初々しい反応に思わず興奮を隠せず、矢根尾は更にはるの顔の前に怒張を突き出す。
「ほら、ちゃんと真っ直ぐ見てごらん、はる。」
「あの、こんな風なの……、初めて……なんです…。」
弱々しくそういうはるが恥ずかしげに耳を赤くしているのに、顔を覆った手を引き剥がそうと細い手首を掴む。すると、はるは少し驚いた風に手を外して逸物を信じられないという風に見つめた。矢根尾はその視線に昔の事を思い出して、満ち足りた気分になる。以前も同じような顔をして矢根尾の逸物を見つめた性奴隷がいたのだ。
「ほら、はるがこれから気持ちよくしてもらえるおチンポ様だよ?」
流石に初めてで咥えろというのは酷かもしれない。怯えた様子ではるはオズオズと怒張に手を伸ばしてきた。
「なんだ、触りたかったのか?はる。」
ガチガチになっている怒張を緊張しながら扱き出したはるは上目遣いに矢根尾の顔を見つめ、反応を確かめながらニチャニチャと音を立てる。
雄々しく仁王立ちしている矢根尾と、座って俺にかしづくはる。素直な性奴隷に、矢根尾は更に先を促す。
「はる、先を舐めてごらん。」
その言葉にやはりはるは戸惑った様子で、矢根尾を見上げてくる。やはり初めてでフェラチオは怖くて無理かと、矢根尾は経験の高さを示すように優しく認めてやった。
「慣れたら咥えて沢山飲むんだぞ?今日は許してやるから、手で扱け。」
許してやるとはるは熱心に怒張を扱き立て始め、快感が競り上がってくるのを久々に感じる。ウットリしているように見える瞳ではるは必死にニチャニチャグチャグチョと音をたてて怒張を激しく刺激してきて、はるの手に久々の絶頂はすぐ訪れた。射精して固さを失った肉棒からはるの手を離そうとすると、彼女は自分の手でいかせたものを見たいと上目遣いに懇願して見せる。
「あの……もう少し見たい……です。見せて…ください。」
ヤワヤワと握ったり擦ったりしながら上目遣いにお強請りして、しまおうとする矢根尾を遮る。好奇心の強さにはるは射精した肉茎を観察したがっているのに、仕方がないなと許しを与える笑みを浮かべてやる。すると、彼女は徐に矢根尾の先端を手で掴み、反対の手をお椀のようにして亀頭をいきなり激しく擦りたて始めた。
「うわっ!あわわっ!ま、まてっまって!!」
「ここ、擦るの気持ちいいことですよね?」
容赦なく亀頭を自分が吐き出した精液を塗り込むように、激しく擦りたてる刺激。いったばかりで敏感になっている先端を、彼女は無知の容赦のなさでジュコジュコと激しく休みなく擦りたててくる。しかも、それが微妙に矢根尾の快感のポイントに嵌まったようで、突然腰の奥がジィンと痺れるような快感が電気のように走った。
なんだこれ?!
亀頭の刺激の強さに電流がズンズンと腰に快感になって響いて、失禁してしまいそうに気持ちいい。矢根尾は思わずがに股になりながらはるの手にあわせて、腰を前後にガクガクと痙攣させ始めていた。
「おおっおひぃい!!い、ぐぅ!おおおっ!」
一瞬個室居酒屋だということも忘れて、思わず絶頂に獣染みた声で矢根尾は吠えた。あまりにも大きな声だったからお客様?と扉の向こうから声をかけられ慌てて口を塞いだのだが、興奮しているのかはるは亀頭を擦るのを止めようとしない。
「何でもありません。」
穏やかな声で答えるはるに、店員は訝しげな気配を残しながら立ち去る。そこで終わるのかと思いきやはるは、更にゴシュゴシュと先端だけを擦りたててくるのだ。ビリビリとズンズンと響く快楽、精液を出したばかりの亀頭を刺激されるのがこんなに気持ちいいなんて。ガクガクする腰を自覚しながら、矢根尾は産まれて初めての奇妙な絶頂に達した。
「う、ううっうううっ!」
はるはそれでもまだ満足しない様子で、店員がまた来ますよと囁きながらもう一度赤くなった亀頭を撫で回しだす。ああ、なんてことだ、さっきも凄く気持ちがよかったけど、これは更に気持ちいいじゃないか。はるのしなやかな指に丹念に亀頭を包み込まれて、回すように手で作られたお椀が先端を愛撫する。口を手で塞いでいないと思わず吠えてしまいそうで、必死に口元を押さえながら、矢根尾はなんと腰を抜かす程の絶頂にへたり込みながら失禁してしまった。それに驚いてしまったように可愛い性奴隷は、今日は帰りますと慌てて脱兎のごとくその場を立ち去ったのだ。
※※※
新しい性奴隷の五十嵐はるの存在のお陰で、矢根尾は少しずつ以前の若さを取り戻し始めていた。あれで懲りたかと一瞬不安になったが、呼び出すとはるは大人しく姿をみせ言われた通り矢根尾の怒張を一心に愛撫する。三度目には外での調教を試みようとしたのだが、残念ながらまだ少し早すぎたようだ。戸惑ってしまったはるはそれでもトイレの個室で矢根尾のモノに奉仕した。
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でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
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