都市街下奇譚

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九十二夜目『な』

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これは、私の特別な友人から聞いた話なんですけどね、そうマスターの久保田はグラスを磨きながら口を開く。芳しい珈琲と紅茶の香りのする店内には客足は奇妙なほど途絶えている。白磁のポットが見守る中で、その言葉を耳にしたのは自分ただ一人だった。



※※※



名前って言うものは、その人間の運命を勝手に決めるものだと思う。

自分の名前の由来なんて普通の生活をしている人には何も気にするものではなくて、気がついたらその名前だったというのが普通だ。ところが自分がそうではなかったのは、産まれる前から自分の名前は決められていて、もし自分が別な性別でもその名前になったのだと聞かされて育ったからだった。男女関係なくつけられる名前かって?当初自分の名前は、『新宮直行』という。自分が男だからたいした違和感はないけれど、もし女で『直行』ではあんまりだと思わないか?当初?いや、そこら実はこれから話す物語を聞いて貰えれば分かる。
この新宮という苗字は読み方も特別で、新宮と書いて『あらみや』と読む。
新宮家というやつは昔はどうやら神社か何かの家系だったらしくて同じ漢字の家系は、基本的には近畿圏に多いそうだ。でも自分の家系は読み方からしても少しそれらの新宮とはハズレていて、北国の家系だった。しかも閉鎖的な地区に自分の血族は固まるように暮らしていて、その中で本家筋と呼ばれる家の第一子が何故か『直行』になる。つまり本家の一番目の子供が同じ名前になる訳だが、それじゃジジイとかババアの『直行』と、親の『直行』と子供の『直行』が一緒になるのかなんて思うだろう?ところがその名前の子供は、必ず次の『直行』が産まれる前に死ぬといわれていた。

これがどれだけ嫌なことか分かるか?

この名前をつけられたら長生きできないと決められているんだ。自分だって自分が『直行』だと気がついた時には、周囲からは短命で放っておいても死ぬと思われて育てられているのを知っているなんて、どれだけ無慈悲で残酷な事だと思った。しかも誰もそれをおかしいと思わない環境で暮らしていくしかない子供に、どれだけ周囲が冷たいか想像できるか?
気がついた時には自分には既に弟と妹がいたが、弟と妹には新しい衣服や暖かな食事が与えられるけれど、自分には風呂なんかは兎も角満足に衣服も食事も与えられなかった。お陰で自分はいつも痩せこけて身体は大きくならないし、いつも空腹な状態で俯いて過ごすしか知らない。そんな人生を死ぬと分かって生きていくのがどんなに苦痛なものか、想像も出来ないだろう。だから自分はそれに密かに逆らおうとして、次第に良くある不良ってやつになり出していた。

「直行!いい加減にしてちょうだい!」

何度そう母親に怒鳴られようが、どうせ向こうだって自分を心配してるのではなく近隣への外聞を気にしているだけなのは分かっているからこっちも気にもしない。喧嘩や器物損壊なんてのは可愛いもんで、次第にカツアゲしたり、何だりと手のつけようがなくなっていくが、大概は『新宮の直行だから、仕方がない』なんて事で終わる。そうなんだ、自分の親戚だけでなく近隣の家の人間も、自分がこの名前をつけられた死ぬ人間だと認識していたのだとその時気がついたのだ。
それでも、自分は中々死ななかった。
大概は中学三年くらい迄には死ぬらしいけど、自分はその年になっても病気ひとつしない。おまけに地味に格闘技に近い柔道の亜種みたいなものを身につけて、なおのこと周囲の手のつけられない人間になりつつある。

「なおー。」
「あぁ?なんだよ。」
「高校卒業生したら何すんの?なお。」
「あ?あと一年あんだろー?」

周辺じゃ馬鹿で有名な高校に進学して集落から少し離れることが出来て、やっとの事で自分の事を知らない人間を見つけて自分はとつるむようになった。それでも子供の頃から放置されていたせいなのか体は貧相なままで、鏡を見るたびに忌々しくなるのを心の中に押し込める。

「俺さー、喫茶店みたいのやりたいんだよねー。」
「意味わかんねぇ。お前が?」
「なお一緒にやんない?」

冗談だろと相手の話に笑うのは、どこかで自分もこの名前のせいで自分は早く死ぬのだと信じてしまっていたからかもしれない。それでもそれをしらない友人は将来の夢を楽しげに語ってきて、内心では酷く羨ましくあるのだ。

「今度さー、遠乗りしようぜー。」
「何?バイク買ったのかよ!?」
「バイト頑張ったんだよー。」

そんな普通の会話をしてくれる友人が自分にも出来て、更に自分がおかれている現実の奇妙な事に気がついてしまった。自分はこんなにも放置されて育った筈なのに、自分はある一定のラインで家から離れたことがないのだ。何しろ自分は親からもこんな風に放置されていたから、実は一度も旅行に連れていってもらったことがない。うちに家族旅行がない訳じゃないが家族全員が一緒に家を空けることがなかったからそれも仕方がないと思うのだが、自分は小学校でも中学校でも修学旅行に出たことがないのに高校の友人は呆気にとられたのだ。

「おかしくね?それ。」
「そうなのか?」

子供の頃から周囲からそんな扱いで生きてきたから、その異常さに何も気がつかないまま。友人が教えてくれなかったら、それにも気がつけないままで生きていたに違いない。だからと言って今更それを親や親戚に問いかけても無駄なのは、言われなくたって自分にも分かっているのだ。

「まぁいいよ、遠乗りってどこ行くんだよ?」
「えー、目的地なんて決まってねぇし。」
「ヤバい、何かカッコいいって思っちゃったじゃんかよ?!」

そんなことを笑いながら肩を叩き話したのは、ほんの数日前だった。



※※※



痛い。

何が起こったのか、自分でも良く分からなかった。だけど二人乗りのバイクの運転手だった友人の体も目の前に倒れていて、遥か先にはテールランプの割れたバイクが倒れている。夜ではあったが雨も降っていなかった筈の路面が奇妙に濡れた感触がしていて、自分はユックリと頭を動かして走ってきた筈の道に視線を向けた。

なんだ、あれ?

そこには縄のようなものを持った何かがいて、まるで縄跳びでもしているかのようにその縄を振り回している。しかも何かは一人……途数えていいの分からないが、縄を持つ二人だけでなく自分達の被っていたヘルメットを持って驚いているのかなんなのか遠目にビョンビョンと跳ね回っていた。

「ちくしょ…………。」

あいつらが持っている縄が引っかかったのだと気がついて、友人に向かって自分は何とか腕で地面を這いよる。悪戯なのか偶然なのかは分からないが、あの縄が悪さをしたのだ。それに気がつけば自分の足がとんでもない方向を向いていて、どう考えても足の骨が折れているのだが友人が生きているのかどうかを確認しないと。自分はただニケツの後ろから振り落とされただけだろうが、運転していた友人はあの縄に直に引っかけられてしまったに違いない。自分より怪我も酷いかもと必死に何とか這いよろうとしたが、それは叶わないうちに車のヘッドライトが友人の身体を照らしたのにも気がついていた。
そこで車が止まり友人と自分は九死に一生を得ました、となればこの話はヤンキーの自己満足的な武勇伝で終わったのだろうけれど、現実は自分には全く優しくなくて路面に倒れていた友人は見るも無惨に自分の前でトラックの巨大な車輪に無惨に目の前で踏み潰されてしまっていた。しかも踏まれなかったらなんて後悔する必要もなかったのは、転倒した時に既に友人は即死していて踏まれても痛くもなんともない状況だったと言うおまけ付き。既に自分が這いよろうとした時には友人はあの縄のせいで首が飛ばされていて、あの奇妙な奴らが持っていたヘルメットの中にはちゃんと頭が入っていたのだと言う。そして、更に奇妙なことに友人の死亡事故は、単独事故として報道されたのだった。

病院でもなく自宅の薄い布団に寝かされ、家族が見るテレビの音でそれを知った時の自分の恐怖。

自分は一緒に事故に遭っていて、それなのに病院に運ばれることもなく、気がついたら自宅に運ばれてここで放置されている。しかも、あの時は起き上がれないほどの痛みだったのに、目が覚めて数時間もしたら自分は普通通りに身体を起こしていた。

おかしくないか?

あの時路面を這いずった自分の足が奇妙な方向に折れ曲がっていたのを見た気がしたし、路面が自分の血に濡れていたのも覚えているのに。今の自分は対して大きな傷跡もなければ、どこの関節もおかしな変形すらない。服を脱いで確認してみても、切り傷一つない自分の身体。

あの血はあいつの?いや、そんな…………

アスファルトを這いずった時の感覚は確りと記憶に残っていて自分でも訳が分からなかったけれど、恐る恐る家族達のいる部屋に近寄った自分の耳に入ったのは更に恐ろしい会話だった。

「あいつ、頑丈過ぎないか?親父。」

あいつが自分を指しているのは聞かなくて分かったのは、その声が父親のものでこの家で父親が親父と呼ぶのは自分の祖父だけだと知っていたからだ。そして同時に知ったのはここにいる家族の誰しもが自分が早く死ぬのを望んでいて、それがバイク事故では達成できなかったのを全員が残念がっていると言うことなのだった。

「まさか弾くなんて思わなかったな。また同じ機会があればいいが…………。」

弾く。つまりは友人と自分の襲われたあのバイク事故が、意図して縄で罠にかけられていたのに気がついてしまう。しかもあの事故の事をこんな風に知っていると言うことは、あの闇の中で奇妙な姿に見えた奴らが実は自分の血縁者だったのかと自分は凍りつき愕然としてしまう。

どうにか…………しないと…………

不意に自分はそう強く思って、音を立てないようにそっと自分の寝ていた布団に戻る。自分の家系に伝わるこの名前のせいで早死にするのではなくて、家族が名前をつけた人間をこうして罠にはめて殺しているのだと知ってしまった。もしかしたら旅行にでないのは、自分が逃げないように監視するためかもしれない。そう気がついて自分は密かに、それからどうにかして逃げ出す事を考え始めたのだった。
それから何ヵ月かの内に、自分は何度も死にかけるような事故にあっていた。時には頭上から物が落ちてきて頭に当たったこともあるし、背後から車に跳ねられたこともあるし、歩道橋の階段から突き落とされもしたし、同じような不良との喧嘩の最中に鉄パイプで殴られ頭が割れたこともある。流石にその全てが数ヵ月の内に起こると、誰しも自分の事を恐ろしいものでも見るように遠巻きに眺めるようになっていたし話しかけることもなくなるものだ。しかも死にかけるときには大概誰か関係のない奴が巻き込まれもして、巻き込まれた奴は無惨に死ぬのに自分は生き残る。
終いには、『新宮直行』は死神だなんて噂まで立つ有り様だ。

好きで死にかけてんじゃねぇ…………

何度か家から逃げ出そうとしたのだが、その度に何か事故にあって気がつくと自分の部屋の薄い布団の上にいて落胆する。そして壁越しの家族の見るニュースで自分と一緒にいた筈の誰かの死亡ニュースを聞くはめになるのに、心底自分はうんざりしてしまう。
そんなある時だ、祖父母と両親が遠縁の誰某が亡くなったとヒソヒソと話しているのを聞いたのだった。何故かそれを聞いた瞬間チャンスだと本能的に思っていて、自分は祖父母達が家を空けるのを今か今かと待ち構える。これを逃したら二度とここから出られないと何故か思っていたし、事実両親も祖父母もその遠縁の葬儀に出ると弟や妹まで連れていき、家に残されたのは自分だけだったのだ。今まで一度もそんなことがなかったのに何故その時だけ自分を見張る人間を残さなかったのかは全く分からないけれど、お陰で自分はあの家から逃げ出すことが出来たのだった。
遠く離れて、今まで見たことのないネオンサインの溢れる街まで逃げ出してきて、今度は誰も自分を事故に見せかけて連れ戻すこともない。それは奇妙なことだと思うだろう、普通の子供なら親は躍起になって探すに違いないのだが、何しろ自分は死ぬための子供だ。それに実際は自分はまだ田舎の高校生に過ぎなくて、バイトもしたことのない上に一度も金を稼いだことのないただの子供だったのだ。恐らくは生活することも出来ずに、直ぐ戻るに違いないとたかをくくっていたんじゃないかと思う。結局このところ逃げてきたは良くてもヤッパリ自分は生活を立てることも出来なくて、空腹に路地裏に座り込むまでにはそう時間がかかる筈もなかったのだから。

「おぅ、お前、何やってんだ?」

そんな風に夜の帳の中で自分に突然声をかけてきたのは一見自分の父親くらいに見える年頃だけど、バリッとしたスーツ姿の男。その男は何故か路地裏にヘタリ込んでいた自分を見つけて、歩み寄ると唐突に屈みこむ。何をやってるとそっちから声をかけたわりには、まるで感情の感じさせない瞳に冷え冷えとした顔つきで自分を見下ろす男は、周りに同じように威圧感のあるスーツ姿を従えていて。何処をどう見たってマトモな仕事をしている人間じゃないのは分かるけれど、こんな風に自分に声をかけた人間も初めてで自分は思わず口を開く。

「おれ…………。」

質問に自分が何か言う前にグウウゥッと派手に腹が鳴ったのに、男は僅かにだが眉を動かしたかと思うと背後の部下らしき男を振り返りおいと声をかける。

「こいつに何か食わせてやれ。代金は全部俺につけろ。」
「えー、兄貴また拾うんすか?」

文句いってんじゃねぇの一喝で部下らしき男がハイハイと適当返事をするけれど、男は自分を何故か自分のテリトリーに連れ帰ると何も聞かずに衣食住を与えてくれたのだった。

「お前、なんて名前だ?」
「……直行。」
「……何、直行?」

産まれてから今までで一番旨い飯を掻き込みながら、自分は目の前で問いかけられた言葉に一瞬戸惑う。塊のような大きな一口を飲み込みながら、素直に苗字を口に出来なかったのは『新宮家』の『直行』であると口にしたら、何故かまた家に連れ戻されてしまうのではないかと思ったのだ。何しろこの名前は産まれてから、ずっと自分を地獄に縛り付けてきた名前だったのだし、それから逃げたくてここにやって来たのでもある。

「…………宮…………。」
「宮直行か。分かった。」
「兄貴の名前は?」

他の奴らが兄貴としか呼ばないから相手の名前をまだ自分は知らなかったので、そう問いかけるとなんでもうお前まで兄貴なんだよと初めて目の前の男が微かに笑う。そうして、その日から『新宮直行』は死んで、自分は新宮ではなく『宮直行』に成り代わったのだった。



※※※



ここまでの話では、ただの田舎の格式ある旧家から逃げ出した、不良息子の自叙伝的物語にしか聞こえないのは分かっている。でも自分な話にはちょっとだけ裏と言うかその後のおまけの話があったりもするので、それを最後に話すからここは少し我慢してほしい。
宮直行はそのままずっと兄貴の部下の一人になって、この街で暮らしていた。けれど、流石に色々あって本当の事を、全て兄貴と仲間だけには後々に話したんだ。その結果、ちょっと表には話せない方法ではあるが、自分は本当に『宮直行』という戸籍を今では持つことになった。つまりは『新宮直行』は行方不明のまま七年が過ぎたことになり、恐らく実家では死亡したことになっている筈だ。別にそれを自分はどうこうは思わないし、元より自分が新宮に戻るつもりもない。
それでも実は密かに自分は一度だけ実家を訪れたことがある。恐らく逃げ出した直後に自分を行方不明とあいつらがしていれば、死亡した扱いになってから六年ほど経つ頃。つまりは自分が新宮から逃げ出して、十三年程が経った辺りの事だった。

見つかったらどうする気だって?

何となくだけど見つからないと、その時は既に確信していたんだ。何しろあいつらは自分の事なんて死ぬための子供としか見ていなかったから顔すら覚えてないだろうなんて思ってたし、実は恐らくと思うことも自分にはあったから。その頃兄貴は元の仕事はとっくに引退していたけれど、自分にとっても仲間にとっても兄貴は兄貴で、あいつらよりずっと自分の身内に変わっていた。だからこそけじめをつけるのにも、あいつらが今どうしているか知りたかったのだとも言える。
仲間の一人の浅木って奴と何気ないふりで旅行者みたいに田舎道をブラブラと歩いて、年はとっていたが両親とすれ違ったんだが相手は自分には気がつきもしなかった。それが全ての答えで、あいつらが殺したかった子供はもう存在しないのだと良く分かったんだが、実家だった家を他人のように眺めていたらそこにはヤッパリいたんだ。

弱々しい骨張った身体をした、幼い頃の自分そっくりの子供が。

言われなくても分かるのは仕方がないことで、五・六歳くらいのあの子供が次の直行なのだと自分は凍りついてしまっていた。そう『新宮直行』が死ねば次の『直行』が産まれる。自分が可能性として思っていたのは、まさにこれだった。
自分は暫くその昔の自分そっくりの新しい『直行』を眺めていたのだけれど、やがて浅木と連れだってこの街に戻ってきたのだ。

助けなかったのかって?
助けようとしたら、昔友達がそうだったように自分が巻き込まれて殺される可能性があるのに?

奇妙な程昔の自分そっくりの子供を見て、悪いが手は出さなかった。何より実はその子供を物陰から盗み見ている、恐らくは自分の弟の成長した姿を見つけてしまったのだ。あんなものを見て手を出す気持ちになんかなれる筈がないだろう?あれはきっと自分の時にも同じように起きていたことなんだ、つまりは自分の時には父親が同じように子供の自分の命を狙って盗み見ていたのだ。
自分だって自分で逃げ出してこうして生きているんだから、あの子供だって自分で決意すれば同じことは可能な筈だ。綺麗事は言わない。もしかしたら自分には助けられるかもしれないけれど、自分の身が危うくなるようなことには手を出すなと兄貴からも言われているし、自分がいつまで九死に一生なんて綱渡りみたいな事を繰り返せるかも分からない。
それに今は自分が叶えたい夢だってあるのだし、実家を見に行ったのは自分がここでは死んでいるのだと確認するためなのだ。



※※※



カランと背後で扉の開く音が響き久保田の話が中断して、久保田は扉に視線を向けている。そこには華奢というよりも痩せぎすという表現の似合うヒョロリとした青年が、季節にあわないキャスケットを深々と被って賑やかに笑いながら「こんちわー。」と呑気な口調で声をかけてきた。久保田の知り合いなのだろう、呑気そうな空気感を全身から漂わせながらスツールにスルンと腰かけた青年は、カフェオレお願いしますと長閑な口調で久保田に話しかける。

久保田さん、この間さーうちの奴らがさぁ

気慣れた口調で話ながら何気なく周囲にあまり客がいないのを見てとった青年は、ずっと帽子被ってると蒸れて暑いんだよねと苦笑いしながら深く被っていたキャスケットをとった。その下の頭はかなりの短髪でしかも縦横無尽に縫い傷が痕を作っていて、思わず目を丸くした自分に青年は気がついたように、ごめんなさい、これ怪我した痕なんでと呑気に笑い言う。数ヵ月前にちょっとした事故に巻き込まれて大きな手術したりしたんですと平然と言うが、何も問題なく話したり出来ているのは奇跡的なんじゃないかと思える程の傷痕なのだ。自分の視線にそう思っているのを見透かしたのか、青年は

だいぶ髪の毛延びたけど、ヤッパリ目立ちますかね。浅木にも言われてるんだよね、どう?目立つ?兄……久保田さん

微笑みながら以前よりは目立たないよと返した久保田に、青年はでも一生帽子生活かな?禿げそうで参ったねーなどと呑気な口調で言いながら久保田から差し出されたカフェオレを受けとる。話題はそこから健康法の話しなんて、妙な世間話に変わっていくのだが

九死に一生も八回もありゃ十分だよね、次はきっと死ぬよ、幾らなんでも。

何気なくそんなことを呟きカフェオレを啜る彼に思わず名前を問いかけそうになっていた自分はその言葉を必死に飲み込んでいた。
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