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43.決勝戦は嫉妬の香り(後編)
しおりを挟む聖は、窮地に陥っていた。
(まずい……いや、不味いを通り越して……死ぬ)
大海から「会場には絶対に来るな!」と強く言われていたにもかかわらず、
孫可愛さに負けて、決勝戦を唯一観られる一般席に来てしまった。
そして今、目の前の大画面いっぱいに映し出された第一皇子の顔を見て――固まった。
(……自分の若い頃に、瓜二つじゃないか)
バレていると大海に何度も言われていたが、
まさかここまで似ているとは思っていなかった。
一般席からは、強化ガラスで仕切られた特別室の様子は見えない。
だが、この顔を見れば、あの二人――大海と信子の心境は想像に難くない。
(……気づかれる前に退散しなければ)
そっと席を立ち、通路へ向かおうとしたその瞬間――
通路で、大王に仕える元部下に捕まった。
「お久しぶりです。」
四方を囲まれ、強行突破もできず、
そのまま特別室へと“ご案内”されることに。
歩くうちに、足元の床が固い石からフカフカの絨毯に変わり、
目の前には、豪華な扉が現れた。
(……地獄の扉だ)
全身に冷や汗をかきながらも、抵抗むなしく、
聖は特別室の中へと放り込まれた。
「聖!」
煌びやかな衣装に身を包んだ女性――第一皇子の生母が、目を輝かせて彼を見つめる。
「……」
その反対側に座っていた妻――大海は、
一瞬だけ鬼の形相を見せた後、すぐに無表情に戻った。
「聖、こちらに……」
第一皇子の生母が嬉しそうに隣の席を勧める。
聖は、大海の無表情を見て、
真っ青を通り越し、今にも倒れそうになった。
「なんでいるの?」
実娘である信子の冷静な声が、現実に引き戻してくれる。
そして、その隣に座っていたブランが、
状況を察してサッと席を立ち、自分の席を聖に譲った。
それを見た大海は、何かを言いかけて――口を閉じた。
その瞬間、会場に大歓声が響き渡った。
「第二ブロック優勝は、ルービックとミートのペア!」
観客席が祝福の嵐に包まれる中――
「さすが、花子ちゃんね」
大海は満足げに呟き、席を立った。
「なんてこと……!」
隣の第一皇子の生母は、手にしていた扇を握りしめ、
ワナワナと震えていた。
大海は、怒りで声も出せない彼女を残し、
廊下へと出た。
すぐに、娘夫婦と夫の聖も後を追う。
大海はブランに、
「花子を本社――八百万神社に連れてきなさい」とだけ告げ、
そのまま聖を連れて乗り物に乗り込んだ。
乗り物が動き出しても、大海は一言も発さなかった。
聖は、隣に座る妻をチラチラと気にしながらも、
結局、何も言えずに座っていた。
異様な沈黙が続く中、乗り物は本社――八百万神社の階段前に到着。
大海は無言で降り、聖もそれに続いた。
二人は無言のまま階段を登り、本殿前へ。
ついに沈黙に耐えきれなくなった聖が、口を開いた。
「あの第一皇子の件は……大王に言われて、仕方なく……」
「私がそのことを知ったのは、第一皇子を産んだ生母から、直接会って告げられたからです。」
絶句する聖に、さらに追い打ちがかかる。
「さらに最近、第一皇子は“神力”を操る力を持っているとして、
この八百万神社の“神主”の資格があると、皇家から何度も訴状が届いています。」
「な……な……」
「ですので、大巫女として、こう返答しました。
“神力を使える者が神主になれるのであれば、
私の血筋より優秀であることを、証明していただきましょう”と。」
聖は、目を見開いて固まった。
あの時、当時の大王とは密約を交わしていた。
「第一皇女が無事に懐妊すれば、八百万神社には手を出さない」と――
だが、その約束は反故にされていた。
あまりの事態に憤る聖をその場に残し、
大海は無言のまま、本殿へと姿を消した。
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