転生してもオタクはなおりません。

しゃもん

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96.混迷

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 白の宮殿の奥深く、陽の光が射し込む大書庫の一角で、
 花子は夢中になって本をめくっていた。

(……この本、初版本!? しかも、未整理の魔術理論書まで……!)

 ページをめくる手が止まらない。
 その横で、フレッドは静かに紅茶を淹れ、花子の集中を邪魔しないように気を配っていた。

 一方その頃――

 ルービック家の私室では、ブランがマリアを筆頭に、
 ブラウン、セバス、そしてムツキとキサラギに取り囲まれていた。

「……で、ブラン。あのアマイという娘、一体何者なの?」

 マリアの声は静かだったが、扇子の先がブランの額を突きそうな勢いだった。

「え、ええと……その……」

 ブランは冷や汗をかきながら、視線を泳がせた。

「覚えが……ない、というか……まったく、記憶に……」

「はああああああああああああああああああああああ!?」

 マリアの扇子がバシンと音を立てて閉じられる。

 そのとき、セバスが一歩前に出て、手にしていた封筒を差し出した。

「マリア様。先ほど、信頼筋より届いた報告書です。
 アマイ嬢の出自について、詳細が判明いたしました」

 マリアは封筒を受け取り、無言で中身に目を通す。

 その瞳が、徐々に鋭さを増していく。

「……なるほど。そういうことだったのね」

 彼女は報告書を閉じ、静かに宣言した。

「このルービック家が、彼女を受け入れることは――**決してないわ**」

「……わかっています」

 ブランが、苦い顔でうなずいた。

「ブラウン。あなたの意見は? アマイを、どう扱うべきだと思う?」

 マリアの問いに、ブラウンは腕を組んで考え込む。

「……まがりなりにも、異母妹というなら。
 ここは、父上ブランの意見を聞くのが筋でしょう」

 全員の視線が、再びブランに集まる。

 ブランは、しばし沈黙したのち、静かに口を開いた。

「僕は――」
 ブランがようやく口を開こうとした、その瞬間。

「失礼いたします」
 静かに扉が開き、アインが居間に現れた。

「……アイン?」

「先ほど、信子様のご実家より、使いの者が参りました。
 こちらを、ブラン様にお渡しするようにとのことです」

 そう言って差し出されたのは、一枚の和紙。
 上質な手すきの紙に、見覚えのある筆跡が浮かんでいる。

 ブランは無言でそれを受け取り、そっと広げた。

 そこには、簡潔で、しかし鋭く突き刺さる言葉が並んでいた。


 **「あなたには呆れました。
 実家に帰らせていただきます。――信子」**

「…………」
 ブランは、和紙を握りしめたまま、完全に硬直した。
 目を見開いたまま、まるで魂が抜けたかのように動かない。

 その場に、妙な沈黙が流れる。

 そこへ――

異母兄ブラウンさん。ありがとう。とても面白かった――」
 花子が、分厚い魔術書を抱えて、勢いよく居間へと入ってきた。

「……って、なにこの空気。え、なに? なんかあった?
 ていうか、実父ブランさん……どうしたの? 石像になってるけど」
 花子の視線の先には、和紙を握りしめたまま微動だにしないブラン。

 その様子を、マリアは扇子を軽く打ち鳴らしながら、呆れたように見つめていた。
「……まったく、情けないわね。
 娘に先を越されて、妻には見限られて……」

 セバスはといえば、眉ひとつ動かさず、
「当然の報いです」とでも言いたげな、実に冷ややかな目でブランを見ていた。

 花子はなこはしばらく父親を見つめたあと、ぽつりと呟いた。
「……あれ、もしかして“実家に帰らせていただきます”ってやつ?」

 誰も答えなかったが、ブランの肩がピクリと震えた。

「……あーあ。なるほど。」
 花子はなこはそう言うと、セバスに勧められ、みんなが座っているソファの前に腰を下ろした。

「…………」
 ブランは、和紙を握りしめたまま、完全に硬直した。

 その顔は、まるで魂が抜けたかのように青ざめている。
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