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42.決勝戦は嫉妬の香り(前編)

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 決勝戦当日、花子はなこはお祖母ばあ様から、和紙で丁寧に包まれた手紙を受け取った。


「お祖母ばあ様、これは?」

「会場に行くまでの乗り物の中で読みなさい。」

 それだけ言うと、お祖母ばあ様は実母はは実父ブランが乗っている乗り物に乗り込んでしまった。


 花子はなこも手紙を手に、乗り物へと乗り込む。

 すぐに乗り物は試合会場へと向かい始めた。


 ごくりと唾を飲み込み、意を決して手紙を開く。

 そこには、たった数行の短い文が記されていた。


 **1. 対戦相手を殺すなかれ。**
(それは分かってる。昨日の第一戦から、相手を殺さないように魔力を抑えて戦ってきたし。  
 それに、“不殺”は勝ち進む条件にも書かれてたしね)


 **2. 油断するな。**
(もちろん。どんな相手にも真剣に向き合ってる)

 心の中でブツブツと返答していると、手紙が突然、青白い炎を上げて燃え上がり――

 最後のひとかけらが燃え尽きた瞬間、花子はなこの心に、  
 お祖母ばあ様の声が響いた。


 **3. 全力で相手を潰しなさい。**


(えっ、それって第一条に反してない!?)

(どういうこと!?)


 全力を出せば、相手を殺してしまうかもしれない。  
 でも、手を抜けば、決勝戦では勝てないかもしれない。


(どういう意味なの……?)


 答えが出ないまま、乗り物は試合会場に到着。

 そのまま控え室でパートナーと合流し、  
 花子はなこは決勝戦の会場――海岸近くの広い砂地に立っていた。

 今日の相手は、この国の**第一皇子**。

(信じられない……)

 見れば見るほど、八百万やおよろず神社の蔵にあった  
 お祖父じい様の若い頃の肖像画に、そっくりだった。


(うそ……似てるどころじゃない。そっくり……)

(まさか、この人……実母ははの異母弟!?)

(ってことは、叔父!?)

(あー……なんか、やだなぁ……)


 そんなことを考えているうちに、試合開始の合図が鳴り響いた。

 第一皇子のパートナーが剣を抜き、魔力を纏わせて振り抜く。

 その一撃から生まれた風が、海岸の砂を巻き上げ、  
 轟音とともに花子はなこたちに襲いかかる。


 花子はなこは落ち着いて「盾」の漢字を思い描き、魔力を流す。

 青銅色の盾が出現し、砂嵐を防いだ――が。


 ドーン!

 盾が真っ二つに割れ、続いて竜の形をした水の塊が襲いかかってくる。


「氷壁(ヒョウヘキ)!」

 花子はなこは氷の壁を展開し、竜の突進を防いだ。


 その先には、和紙を右手に構え、左手で印を切る第一皇子の姿。


(お前、第一皇子なのに陰陽師かよ!?)


 ツッコミを入れる間もなく、次々と海水の竜が襲いかかってくる。

 花子はなこはそれらを凍らせながら、ふと思った。


(もしかして……お祖母ばあ様の“全力で潰せ”って、  
 この状況を想定してたの?)


 でも、全力を出せば危ない。

(……でも、このままじゃ押し負ける)

 後ろはもう、場外ライン。

(負けるくらいなら……やってみよう!)

 花子はなこは海水に向かって、  
「竜」の漢字に、「リュウ」のカタカナ、そして「りゅう」のひらがなを重ねて思い描き、  
 そのすべてに魔力を流し込んだ。

 巨大な水の竜が唸りを上げて放たれる。


 慌てた第一皇子は、花子はなこと同じように盾を展開したが――

 その威力は段違いだった。

 盾は破壊されこそしなかったが、じりじりと場外へと押しやられていく。


(よし、もう少しで場外……!)

 その時、フレッドが放った剣の風圧が、  
 水の竜の胴体を一閃――!


(おいおい、剣の風圧で薙ぎ払うって……どんだけ人外なのよ!?)

(このパートナーさん、本当に人間!?)

 そんな思考がよぎる中、第一皇子が移動しながらカマイタチを放ってきた。

 花子はなこの反応は一瞬遅れたが、  
 フレッドが剣の風圧でそれを打ち消した。

「ほう。お主のパートナーも、なかなかやるな。」

 第一皇子が呑気に言ったその時――

 別方向から、拳が飛んできた。

 花子はなこは氷の壁を展開し、その拳ごと凍結。

 ピキ……ピキピキピキ……ピッキーン!

 第一皇子のパートナーが、氷の彫像と化した。

 全員がその光景に気を取られた瞬間――

 第一皇子が動いた。

 だが、それを予見していたフレッドの方が速かった。

 フレッドの拳が、第一皇子の鳩尾にクリーンヒット!

 **決勝戦は、花子はなことフレッドの勝利で幕を閉じた。**

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