拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶

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6「チュートリアル2」

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「うわ…」

すごい。まず抱いた感想はそれだった。

先ほどの巨大ホールと同等の、いやもしかしたらそれ以上かもしれない。そう感じる程広い会場は、まさに『豪華絢爛』という言葉がぴったりで。
中でも、会場中央の天井から吊るされた大きなシャンデリアが一際目を引いた。

「椿?どうかしたのか?ぼうっとして」
「いや、広いなと思って」
「そりゃそうだろ。なんたって天下のセントカーニア学園だぜ?」

確かに。言われてみれば、それもそうか。

セントカーニア学園。ドゥコ・カーニアが学園長を務めるこの学校は、前にも話した通り金持ちの子息ばかりが通う国内屈指の名門難関校だ。
きっと名門と名を打っているからにはさっきの巨大ホール然り、これくらいの規模のパーティー会場を建てる事など普通の事なのだろう。

そんな事を考えていると、キィーンとハウリングの音がすると共に入学式で聞いた覚えのある力強い声が各所に設置されたスピーカーから聞こえてきた。
見れば、会場の最奥でマイクを手に立つあの赤髪の生徒会長がいた。

『一年生諸君。今宵開かれるパーティーは君たちの入学を祝うためのものだ。新たな友と親睦を深め、大いに楽しんでくれ』

そう生徒会長が言い終わるのとほぼ同時に会場の隅に控えていた楽団が美しいメロディーを奏で出す。

…おいおい、まじか

楽団に目を向けてみれば、演奏しているのは世界的に有名な演奏者たちで。彼らがずらりと並んでいるだけでも驚きなのに、その彼らの演奏の指揮をしているマエストロは世界一の指揮者と言われている人物だった。

その事に気が付いたのは俺だけではなかったようで、周囲からも小さな驚きの喚声かんせいが上がっている。

「椿、俺たちも行こうぜ」
「? 行くってどこに」
「どこって、三ツ星レストランの料理だぞ?食べに行かない選択肢はないだろ?」

友広がクイッと親指でとある方向を指し示す。その先には既に我先にと、特に肉料理を争奪し合っている生徒たちがいた。
どうやら、楽団に気を取られている間にパーティーはもう始まっていたらしい。

「あー…俺はもうしばらくしたら行くよ」
「そうか?じゃあオレは行くけど、後で食えなかったって泣くなよー!」
「誰が泣くか!」

思わずそう返すと、友広は可笑しそうに笑いながら肉料理争奪戦の集団の中に入っていった。

…さて

まだチュートリアルは終わりではない。確か、二番目に会うのは黄髪黄眼の同級生だったはず。だが…

「…誰がそうなんだ?」

キョロキョロと周りを見回してみても、黄髪黄眼の一年生というだけでは誰がそうなのか見分けがつかない。

「何か飲み物でも取りに行くか…」

まあ、会わないならそれはそれでも良いかと思い、ドリンクコーナーに向けて踵を返した時だった。

「あ、あのっ」
「今お時間よろしいでしょうかっ」

誰かに呼び止められ、振り返るとそこには数人の男子生徒がいた。その表情はつい先刻、自分に勇気を出して話しかけてきたあの男子生徒と似ていて。

「ああ、大丈夫だ」

そう答えると、男子生徒たちのこちらを窺っているような顔色が一変してぱぁっと明るくなると同時に、目にも止まらぬ速さで詰め寄られた。

「主席合格おめでとうございます!」
「二位の方と僅差だったって聞きましたよ!」
「すごいですね!」

その距離の詰め具合にタジタジになったが、折角話しかけてきてくれたのにこのまま仏頂面で接する訳にはいかないなと思い、

「いや、まあその…ありがとう」

長らく使っていなかった表情筋を総動員させて何とか口角を上げてみせると

「ぐはっ、椿様の笑顔!」
「なんという破壊力…!」
「もう死んでもいい…」

意味不明な事を言いながら何故か次々とその場に倒れていった。…いや、なんで?

「あーあ、今のは椿が悪いぞ」

突然の出来事にどうするべきかオロオロとしていると、漸く肉料理の争奪戦から帰ってきた友広にそんな事を言われ、ますます混乱する。え?俺が悪いの?

「なーに訳分からんみたいな顔してんだよ」

みたいも何も。実際訳が分からないんだからそんな顔になってもしょうがないだろう。

「はぁ…まあいいか。…言わない方が面白そうだしな」
「え?」
「別に。そんな事より喉渇いたな。なんか飲みに行こうぜ」
「え、ちょ、」

ぐいぐいと背中を押され、彼らはこのままにしておいて良いのかどうか戸惑う。なんか具合が悪そうだが…

「いいのいいの。寧ろお前はいない方がいい。これ以上追い打ちかけてやるな」

よく分からないが…友広がそう言うならそうなのか?

「そーそー。ほら、行こうぜ」
「あ、ああ」

後ろ髪を引かれながらその場を後にしようと歩き出した時、誰かと肩がぶつかってしまった。

「あ、悪い」
「……チッ」

し、舌打ちされたっ

内心傷付かなかったと言えば嘘になるが…そんなに痛かったのだろうか?

そう思い、大丈夫か?と言いかけて、俺は気が付いた。その相手が黄髪黄眼である事に。

「…いい気にならないでよね」
「え?」

男にしては高い声で突然そんな事を言われたかと思えば、キッと鋭い目で睨まれ、

「次はぼくが一番取るんだからっ。首洗って待ってろ!」

そんな捨て台詞を吐いて、黄髪黄眼の彼は去っていった。

「…何だ今の」

ていうか誰だ?あっちは俺の事知ってるみたいだったけど…

その疑問は一部始終を見ていた友広によってすぐに解消された。

「うわ、そういやあいつも受かってたっけな」
「知ってるのか?」
浅黄あさぎ里津りつ。オレと同じ中学出身だよ。ほら、入試で二位だったろ?」

だったろ?と言われても…

「…覚えてないな」
「あー…まあ、お前に主席取られたのがよっぽど腹立たしかったんだろ。なんせあいつは何でも一番じゃないと気が済まない奴だったからな」
「へぇ…」

それにしても、声もそうだけど男にしては可愛い見た目だったなぁ。一瞬、女の子かと思った。
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