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11「眩い眼差し」
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扉を開けると、そこには───
「…あれ?」
教室内にはまだ誰もいなかった。どうやら俺が一番乗りだったようだ。
「無駄に緊張して損した…」
ま、まあ、いきなりエンカウントするよりマシだと考えれば良いか。
そう思考を切り替えて、改めて教室を見渡す。
室内は大学などによく見られる長机が雛壇型に設置されていて、後ろへいくほど高くなっていた。
どこに座っても良いようなので、一番後ろの窓際の席を選ばせて貰った。前世の学生時代では終ぞ座れなかった席だからな。憧れてたんだよな。
なんて、小さく感動している間にぞくぞくとクラスメイト達がやってきていた。
…今更だけど、俺ここに座って良かったのかな?
一番後ろの窓際の席と言えば、(俺調べで)人気ナンバーワンの場所だ。そんな席に俺なんかが座っていても良いのだろうか?
…よし、誰か代わって欲しいという人がいたら譲ってあげよう。ちょっとだけだったけど、座れて満足できたしな。
そう思って、俺は待った。待って待って、待ち続けて。
そうして、20分が経過した。
…………誰も言って来ない。というより、俺、未だに誰とも「おはよう」どころか目も合わせてなくない? ていうか、もう直ぐ先生が来る時間なのに俺の周りの席だれも座ってないんだけど? もしかして避けられ……あれ、なんだか目から汗が…
「うわ、まじかよ…」
その時だった。教室内がざわりとしたのは。
不思議に思って顔を上げると、クラスメイトたち全員が一点を見ていた。
俺も倣うように視線を動かすと、その先にいたのは──紫麻くんだった。
「紫麻と同じクラスとか、まじでツイてないな…」
「最悪だ…」
誰がどう聞いても歓迎されていないのは明らかな空気の中、紫麻くんは気にした素振りもなく歩いていく。
一段、二段、三段…どんどん通路の階段を上っていく紫麻くん。
……ん? 何か、段々近付いてきてる? というか、こっちに来てる?
いやいや、そんなまさかね。いくらここがBLゲームの世界だからってそんな簡単に攻略対象と関わる訳がな──って、あれ?
「………」
「…何だよ」
「いや…その、何でそこに座ったのかなって…」
そう、そこ──俺の隣の席に。
「あ? どこに座ろうがおれの勝手だろうが」
「いやまぁそうなんだけど…」
ギロリと睨まれ、「ひっ」と出そうになった声を何とか喉の奥に押し込み、今世で培ったポーカーフェイスを駆使して曖昧に笑って誤魔化す。
そんな俺の態度をどう受け取ったのか分からないけれど、紫麻くんは「チッ」と舌打ちをすると俺から顔を背けた。
ええー、何でいま舌打ちしたの?それに何でそんなに嫌そうにしてるのに隣の席に?嫌なら他の席座れば良いじゃんっ。ほら、他にもいっぱい空いて………ないな。俺の周りだけ綺麗に空いてるわ。
…なるほど。不本意だけどここに座るしかないな、これは。嫌がってごめんと心の中で謝っておこう。
なんて思っていると、担任の先生が来た。
先生は水属性魔法に関する授業を担当する事を自己紹介で告げると、出席確認を取った。
その後、なんやかんやと今後の予定を聞き、そして俺たちは今、なんやかんやあって先生に連れられて校舎を案内されている。
え? 勿論俺は未だに誰とも話せてませんが何か?
だって!何故かみんな俺の事を避けるんだもの!
「…おい」
話しかけてもモジモジして「あ、いや…その…」しか言わないし!
何!?何なの!?俺なんかした!?
「おい、石留」
「何──って、紫麻…くん?」
まさかの相手に目を瞬く。
けれど直ぐに見覚えのある場面だと気付く。そうだ。これ、紫麻くんとの最初のイベントだ。
「………お前、あの事、言い触らしてねぇのかよ」
あの事?
「えっと、何の事?」
「…っ、だから、あの時見ただろうが」
「あの時?」
ちょっと待って。このイベントってこんなだったっけ?もっと不良っぽい絡まれ方をするイベントだったような気がするんだけど。
それにあの事とかあの時とか、抽象的過ぎて本気で紫麻くんが何の事を言っているのか分からない。
そもそも紫麻くんと話したのだって歓迎パーティーの時が初めて………って、ん?そういえば、あの時
「…もしかして、ハンカチの事?」
恐る恐る聞いてみると、紫麻くんから「…それ以外にねぇだろうが」と返事が返ってきた。どうやら当たりだったらしい。
でも、あの事と紫麻くんが思い詰めたような表情で話しかけてきたのとどう関係するのだろう?
「…何で言い触らさなかった」
「え?」
何でって…
「言い触らすような事なのか?」
そう答えると、紫麻くんの紫色の目が驚いたように大きく見開かれる。
え、何でそんな驚くの?なんか変な事言ったかな?
「何でそう思ったのかよく分からないけど、俺はあのハンカチ可愛くて良いと思ったぞ?」
「………そうかよ」
そう短く答えたっきり紫麻くんは何かを考え込むように黙ってしまった。
…えーっと、もう話は終わりって事で良いのかな?
「あー、そろそろ行かないか?皆に追い付かないと」
「一人で行け。おれはサボる」
わあ、さすが不良。サボるのなんてお手の物って感じなんですね。
「そっか。じゃあ、またな」
手を軽く挙げて歩き出す。だいぶ離されちゃったな。早く皆の所に行かないと。
…それにしても、何でイベントの内容が変わったんだろう?
んー…分からん。まあ、いいか。変化があったという事は、ストーリーが良い感じに変わったのかもしれないしな。
この時、そんな事を考えていた俺は早く追い付かなければと思う一心で急いでいた。
だから、去っていく俺の背中を紫麻くんがどんな眼差しで見ていたのかなんて、知らなかったんだ。
「…あれ?」
教室内にはまだ誰もいなかった。どうやら俺が一番乗りだったようだ。
「無駄に緊張して損した…」
ま、まあ、いきなりエンカウントするよりマシだと考えれば良いか。
そう思考を切り替えて、改めて教室を見渡す。
室内は大学などによく見られる長机が雛壇型に設置されていて、後ろへいくほど高くなっていた。
どこに座っても良いようなので、一番後ろの窓際の席を選ばせて貰った。前世の学生時代では終ぞ座れなかった席だからな。憧れてたんだよな。
なんて、小さく感動している間にぞくぞくとクラスメイト達がやってきていた。
…今更だけど、俺ここに座って良かったのかな?
一番後ろの窓際の席と言えば、(俺調べで)人気ナンバーワンの場所だ。そんな席に俺なんかが座っていても良いのだろうか?
…よし、誰か代わって欲しいという人がいたら譲ってあげよう。ちょっとだけだったけど、座れて満足できたしな。
そう思って、俺は待った。待って待って、待ち続けて。
そうして、20分が経過した。
…………誰も言って来ない。というより、俺、未だに誰とも「おはよう」どころか目も合わせてなくない? ていうか、もう直ぐ先生が来る時間なのに俺の周りの席だれも座ってないんだけど? もしかして避けられ……あれ、なんだか目から汗が…
「うわ、まじかよ…」
その時だった。教室内がざわりとしたのは。
不思議に思って顔を上げると、クラスメイトたち全員が一点を見ていた。
俺も倣うように視線を動かすと、その先にいたのは──紫麻くんだった。
「紫麻と同じクラスとか、まじでツイてないな…」
「最悪だ…」
誰がどう聞いても歓迎されていないのは明らかな空気の中、紫麻くんは気にした素振りもなく歩いていく。
一段、二段、三段…どんどん通路の階段を上っていく紫麻くん。
……ん? 何か、段々近付いてきてる? というか、こっちに来てる?
いやいや、そんなまさかね。いくらここがBLゲームの世界だからってそんな簡単に攻略対象と関わる訳がな──って、あれ?
「………」
「…何だよ」
「いや…その、何でそこに座ったのかなって…」
そう、そこ──俺の隣の席に。
「あ? どこに座ろうがおれの勝手だろうが」
「いやまぁそうなんだけど…」
ギロリと睨まれ、「ひっ」と出そうになった声を何とか喉の奥に押し込み、今世で培ったポーカーフェイスを駆使して曖昧に笑って誤魔化す。
そんな俺の態度をどう受け取ったのか分からないけれど、紫麻くんは「チッ」と舌打ちをすると俺から顔を背けた。
ええー、何でいま舌打ちしたの?それに何でそんなに嫌そうにしてるのに隣の席に?嫌なら他の席座れば良いじゃんっ。ほら、他にもいっぱい空いて………ないな。俺の周りだけ綺麗に空いてるわ。
…なるほど。不本意だけどここに座るしかないな、これは。嫌がってごめんと心の中で謝っておこう。
なんて思っていると、担任の先生が来た。
先生は水属性魔法に関する授業を担当する事を自己紹介で告げると、出席確認を取った。
その後、なんやかんやと今後の予定を聞き、そして俺たちは今、なんやかんやあって先生に連れられて校舎を案内されている。
え? 勿論俺は未だに誰とも話せてませんが何か?
だって!何故かみんな俺の事を避けるんだもの!
「…おい」
話しかけてもモジモジして「あ、いや…その…」しか言わないし!
何!?何なの!?俺なんかした!?
「おい、石留」
「何──って、紫麻…くん?」
まさかの相手に目を瞬く。
けれど直ぐに見覚えのある場面だと気付く。そうだ。これ、紫麻くんとの最初のイベントだ。
「………お前、あの事、言い触らしてねぇのかよ」
あの事?
「えっと、何の事?」
「…っ、だから、あの時見ただろうが」
「あの時?」
ちょっと待って。このイベントってこんなだったっけ?もっと不良っぽい絡まれ方をするイベントだったような気がするんだけど。
それにあの事とかあの時とか、抽象的過ぎて本気で紫麻くんが何の事を言っているのか分からない。
そもそも紫麻くんと話したのだって歓迎パーティーの時が初めて………って、ん?そういえば、あの時
「…もしかして、ハンカチの事?」
恐る恐る聞いてみると、紫麻くんから「…それ以外にねぇだろうが」と返事が返ってきた。どうやら当たりだったらしい。
でも、あの事と紫麻くんが思い詰めたような表情で話しかけてきたのとどう関係するのだろう?
「…何で言い触らさなかった」
「え?」
何でって…
「言い触らすような事なのか?」
そう答えると、紫麻くんの紫色の目が驚いたように大きく見開かれる。
え、何でそんな驚くの?なんか変な事言ったかな?
「何でそう思ったのかよく分からないけど、俺はあのハンカチ可愛くて良いと思ったぞ?」
「………そうかよ」
そう短く答えたっきり紫麻くんは何かを考え込むように黙ってしまった。
…えーっと、もう話は終わりって事で良いのかな?
「あー、そろそろ行かないか?皆に追い付かないと」
「一人で行け。おれはサボる」
わあ、さすが不良。サボるのなんてお手の物って感じなんですね。
「そっか。じゃあ、またな」
手を軽く挙げて歩き出す。だいぶ離されちゃったな。早く皆の所に行かないと。
…それにしても、何でイベントの内容が変わったんだろう?
んー…分からん。まあ、いいか。変化があったという事は、ストーリーが良い感じに変わったのかもしれないしな。
この時、そんな事を考えていた俺は早く追い付かなければと思う一心で急いでいた。
だから、去っていく俺の背中を紫麻くんがどんな眼差しで見ていたのかなんて、知らなかったんだ。
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