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13「放課後の本性」
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「おーい、大丈夫か?」
「な、何とか…」
こんにちは、皆さん。昼休みに広い庭園を友広と一緒にぶらぶらしていた石留椿です。
え?そんな所でいま何をしているのかって?
モフモフでフワフワな沢山の動物に押し倒され、全身纏わりつかれています。
状況が分からないって?安心してくれ。俺もまだどうしてこんな状況になっているのか、分かっていない。
「おーい!そこの人、大丈夫ですかー!?」
身動きが取れず、困っていたその時、遠くからどこかで聞いた覚えのある声がした。
見れば、これまた沢山のリードを着けた犬を引き連れながら、こちらに走ってくる青髪青眼の男子生徒がいて。
「すみません、急に走り出したから止められなくて……って、あれ?君は…」
男子生徒(ネクタイの色からして二年生だと分かった)が俺の顔を見るなり、驚いたような顔をする。
けれど、直ぐに人の良さそうな笑みを浮かべて口を開いた。
「久しぶりだね。覚えてるかな?入学式の時にコサージュ渡したんだけど…」
「あ、はい。覚えてます。浪川先輩、ですよね」
「そうだよ。覚えてくれてて嬉しいよ」
「いえ…。あの、この動物たちは…」
「あ、そうだったね。この仔たちはうちの部活で預かってる先生方のペットの仔たちでね。今は散歩の時間だったんだけど、何か気になったのか一斉に走り始めちゃって。それで追いかけてきたら…」
動物に纏わりつかれていた俺がいた、と。
「部活って、先輩は何部なんですか?」
纏わりついていた動物を一匹一匹回収しながら、友広がそんな質問をすると
「うちの部活、は…」
答えかけて、何故か浪川先輩の動きが停止した。どうしたのだろうか?
友広を驚いたようにじっと見たまま動かない浪川先輩に、俺と友広はお互いに顔を見合わせて首を傾げた。
「あのー、先輩?」
堪えかねた友広が話しかけると、先輩は漸くはっとして「あ、ごめんね。何でもないから気にしないで」と言った。
「それで、えっと…ああ、うちの部活についてだったね。うちは『飼育部』って言ってね。主に先生方のペットを朝預かって、夕方返すっていう活動をしてる部活だよ」
へぇ、そんな部活があるのか。
「あ、そうだ。今日から部活動見学が始まるでしょう?良かったら今日の放課後、二人で見においでよ」
「え」
「あ、もしかして、もう他に見に行く部活決まってた?」
「あ、いや…それはまだ決めてないですけど…」
「それなら是非見においでよ。こんなに動物たちも懐いてるし、来てくれたら動物たちもきっと喜ぶよ」
促され、視線を下に向けると、キラキラとした眼差しで訴えてくるかのような円らな目たちが向けられていて。
無類の猫好きだけど動物もそこそこ好きな俺にとって、白旗を上げるのにそう時間はかからなかった。
「ありがとう!じゃあ、また放課後二人で来てね」
部活見学者を確保出来て余程嬉しかったのか、浪川先輩は上機嫌な足取りで去っていったのだった。
*****
放課後、やってきた部室棟の一角。
段々と近くなっていく『飼育部』の部室に、隣りにいる友広に気付かれないようにゴクリと唾を飲み込む。
え?どうしてそんなに緊張しているのかって?
それを説明するにはまず、時を浪川先輩が去ったばかりの昼休みに戻すところから始めなければならない。
浪川先輩が上機嫌で去ったあの後、俺は友広にそれとなく浪川先輩の事を聞いてみた。
浪川先輩には悪いが、ゲームでの先輩がどんなキャラだったのかあまり覚えていない。なので、何か思い出すきっかけになればと思っての質問だったのだが…この時の俺はその行動を後悔する事になるなんて思ってもみなかった。
『浪川先輩を知ってるかって?勿論知ってるよ。何てったって「アニマルプリンス」の異名で有名な人だからな』
『アニマルプリンス?』
『何でも、どんな動物も瞬く間に手懐けてしまう事から付いたらしいぜ』
『へ、へぇ』
『それに、めちゃくちゃ優しいらしくてさ。「プリンス」っ呼ばれてるのも納得だよな』
にこやかに教えてくれる友広の話に相槌を打ちながら、俺は内心で冷や汗が止まらずにいた。
そう、友広のおかげでゲームでの浪川先輩がどんなキャラだったのかをはっきりと思い出してしまったのである。
え?それが何がそんなに問題なのかって?
思い出せたのなら対策が立てやすくて良いんじゃないの?
…と、普通ならそう思うだろう。
しかーし!これはそんな単純な話ではないのだ!
確かに、浪川先輩はとても優しそうで、どんな動物も瞬時に懐いてしまう程の王子様顔負けの王子様系キャラだ。
ここまでは良い。では何が問題なのか?
それは…
「…い、おい、椿!」
「っ、な、何だ?」
「どうしたんだよ?急にぼうっとして。どこか具合でも悪いのか?」
「い、いや、大丈夫だ。少し考え事をしていただけだから」
「そうか?ならいいけど。じゃあ、入るぞ?」
「あ、ああ」
いつの間にか着いていた『飼育部』の扉を友広が三回ノックする。
すると、ややあって扉が開き、中から一人の男子生徒──浪川先輩が俺たちを出迎えた。
「いらっしゃい。待ってたよ。さ、入って入って」
「失礼します」と友広と共に室内に入るや否や、沢山の鳴き声が急に耳に入ってきて。
外からは聞こえていなかった鳴き声を友広も不思議に思ったのか、友広が浪川先輩に聞くと「この部屋には防音魔法がかけてあるんだよ」と返ってきた。魔法って便利だなぁと改めて実感したのは言う迄もない。
「さて、改めて、見学に来てくれてありがとう。えっと、石留くんと…」
「あ、オレは安田友広って言います」
「安田くんだね。僕は浪川匠。宜しくね」
すっと差し出された手を「こちらこそ」と言って握り返す友広に、浪川先輩はにこやかに笑い返す。
その笑みは、どこからどう見ても、やっぱり人の良さそうな笑みにしか見えなくて。
『プリンス』なんて呼ばれるのも無理はないと、そう思った。
俺も、前世の記憶を思い出していなければ、普通に『優しい良い人』だと思っていただろう。
…人は見た目に寄らない、って言うもんなぁ
「? 石留くん?どうかした?」
「あ、いえ。何でも…」
「そう?」
だって、目の前にいる人の良さげな笑みを浮かべている人が実は『ヤンデレ』だなんて。
一体誰が想像できただろうか。
「な、何とか…」
こんにちは、皆さん。昼休みに広い庭園を友広と一緒にぶらぶらしていた石留椿です。
え?そんな所でいま何をしているのかって?
モフモフでフワフワな沢山の動物に押し倒され、全身纏わりつかれています。
状況が分からないって?安心してくれ。俺もまだどうしてこんな状況になっているのか、分かっていない。
「おーい!そこの人、大丈夫ですかー!?」
身動きが取れず、困っていたその時、遠くからどこかで聞いた覚えのある声がした。
見れば、これまた沢山のリードを着けた犬を引き連れながら、こちらに走ってくる青髪青眼の男子生徒がいて。
「すみません、急に走り出したから止められなくて……って、あれ?君は…」
男子生徒(ネクタイの色からして二年生だと分かった)が俺の顔を見るなり、驚いたような顔をする。
けれど、直ぐに人の良さそうな笑みを浮かべて口を開いた。
「久しぶりだね。覚えてるかな?入学式の時にコサージュ渡したんだけど…」
「あ、はい。覚えてます。浪川先輩、ですよね」
「そうだよ。覚えてくれてて嬉しいよ」
「いえ…。あの、この動物たちは…」
「あ、そうだったね。この仔たちはうちの部活で預かってる先生方のペットの仔たちでね。今は散歩の時間だったんだけど、何か気になったのか一斉に走り始めちゃって。それで追いかけてきたら…」
動物に纏わりつかれていた俺がいた、と。
「部活って、先輩は何部なんですか?」
纏わりついていた動物を一匹一匹回収しながら、友広がそんな質問をすると
「うちの部活、は…」
答えかけて、何故か浪川先輩の動きが停止した。どうしたのだろうか?
友広を驚いたようにじっと見たまま動かない浪川先輩に、俺と友広はお互いに顔を見合わせて首を傾げた。
「あのー、先輩?」
堪えかねた友広が話しかけると、先輩は漸くはっとして「あ、ごめんね。何でもないから気にしないで」と言った。
「それで、えっと…ああ、うちの部活についてだったね。うちは『飼育部』って言ってね。主に先生方のペットを朝預かって、夕方返すっていう活動をしてる部活だよ」
へぇ、そんな部活があるのか。
「あ、そうだ。今日から部活動見学が始まるでしょう?良かったら今日の放課後、二人で見においでよ」
「え」
「あ、もしかして、もう他に見に行く部活決まってた?」
「あ、いや…それはまだ決めてないですけど…」
「それなら是非見においでよ。こんなに動物たちも懐いてるし、来てくれたら動物たちもきっと喜ぶよ」
促され、視線を下に向けると、キラキラとした眼差しで訴えてくるかのような円らな目たちが向けられていて。
無類の猫好きだけど動物もそこそこ好きな俺にとって、白旗を上げるのにそう時間はかからなかった。
「ありがとう!じゃあ、また放課後二人で来てね」
部活見学者を確保出来て余程嬉しかったのか、浪川先輩は上機嫌な足取りで去っていったのだった。
*****
放課後、やってきた部室棟の一角。
段々と近くなっていく『飼育部』の部室に、隣りにいる友広に気付かれないようにゴクリと唾を飲み込む。
え?どうしてそんなに緊張しているのかって?
それを説明するにはまず、時を浪川先輩が去ったばかりの昼休みに戻すところから始めなければならない。
浪川先輩が上機嫌で去ったあの後、俺は友広にそれとなく浪川先輩の事を聞いてみた。
浪川先輩には悪いが、ゲームでの先輩がどんなキャラだったのかあまり覚えていない。なので、何か思い出すきっかけになればと思っての質問だったのだが…この時の俺はその行動を後悔する事になるなんて思ってもみなかった。
『浪川先輩を知ってるかって?勿論知ってるよ。何てったって「アニマルプリンス」の異名で有名な人だからな』
『アニマルプリンス?』
『何でも、どんな動物も瞬く間に手懐けてしまう事から付いたらしいぜ』
『へ、へぇ』
『それに、めちゃくちゃ優しいらしくてさ。「プリンス」っ呼ばれてるのも納得だよな』
にこやかに教えてくれる友広の話に相槌を打ちながら、俺は内心で冷や汗が止まらずにいた。
そう、友広のおかげでゲームでの浪川先輩がどんなキャラだったのかをはっきりと思い出してしまったのである。
え?それが何がそんなに問題なのかって?
思い出せたのなら対策が立てやすくて良いんじゃないの?
…と、普通ならそう思うだろう。
しかーし!これはそんな単純な話ではないのだ!
確かに、浪川先輩はとても優しそうで、どんな動物も瞬時に懐いてしまう程の王子様顔負けの王子様系キャラだ。
ここまでは良い。では何が問題なのか?
それは…
「…い、おい、椿!」
「っ、な、何だ?」
「どうしたんだよ?急にぼうっとして。どこか具合でも悪いのか?」
「い、いや、大丈夫だ。少し考え事をしていただけだから」
「そうか?ならいいけど。じゃあ、入るぞ?」
「あ、ああ」
いつの間にか着いていた『飼育部』の扉を友広が三回ノックする。
すると、ややあって扉が開き、中から一人の男子生徒──浪川先輩が俺たちを出迎えた。
「いらっしゃい。待ってたよ。さ、入って入って」
「失礼します」と友広と共に室内に入るや否や、沢山の鳴き声が急に耳に入ってきて。
外からは聞こえていなかった鳴き声を友広も不思議に思ったのか、友広が浪川先輩に聞くと「この部屋には防音魔法がかけてあるんだよ」と返ってきた。魔法って便利だなぁと改めて実感したのは言う迄もない。
「さて、改めて、見学に来てくれてありがとう。えっと、石留くんと…」
「あ、オレは安田友広って言います」
「安田くんだね。僕は浪川匠。宜しくね」
すっと差し出された手を「こちらこそ」と言って握り返す友広に、浪川先輩はにこやかに笑い返す。
その笑みは、どこからどう見ても、やっぱり人の良さそうな笑みにしか見えなくて。
『プリンス』なんて呼ばれるのも無理はないと、そう思った。
俺も、前世の記憶を思い出していなければ、普通に『優しい良い人』だと思っていただろう。
…人は見た目に寄らない、って言うもんなぁ
「? 石留くん?どうかした?」
「あ、いえ。何でも…」
「そう?」
だって、目の前にいる人の良さげな笑みを浮かべている人が実は『ヤンデレ』だなんて。
一体誰が想像できただろうか。
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