拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件

碧月 晶

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24「第一のカップリング4」

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キ、キスだーーーーー!!!

うわー!ちょ、待って!誰かがキスしてる所なんてドラマ以外で(前世も含めて)初めて見るんだけど!!

「ん、んん…!」

わああー!燈堂とうどう先輩のし、舌がめっちゃ絡んでる…!お、大人なキスってやつだ…!!

さ、流石BがLする世界だ。ごくりと謎に息を飲んで、今更ながらの感想を抱きながら目の前で繰り広げられている濃厚なキスシーンをドキドキしながら指の隙間から見てしまう。な、長くないですか?

「と、燈堂…?」

漸く長いキスが終わり、はぁ…と吐息を漏らしながら、とろんとした眼で燈堂先輩を見つめる野分のわき先輩。

「…っ、お前、その顔は反則だろう…」
「? 何、が──!?」

瞬間、俺の視界から二人が消えた。

「いきなり何だ!」
「………忘れられたと思ったのに」
「は?」

かと思ったが、違った。どうやら、燈堂先輩が野分先輩をベッドに押し倒したようだ。道理でこの位置からは見えなくなった訳だ。

「な、何の事だ?」
「………」
「っ、な、何だ。その顔は…」
「…なあ、野分。お前、恋人がいた事はあるか?」
「………は?」
「どうなんだ?」
「…何故そんな事を答えなければならない」
「いいから、答えろ」
「っ、近い!離れろ!」
「お前が答えればな」
「~~~分かった、答えるからそれ以上顔を近付けるな!」

野分先輩の必死な声が響き渡り、暫くの沈黙が下りる。

「…恋人がいた事など一度もない」

小さく、蚊の鳴くような声だった。

「…そうか。それは良かった」
「っ、ば、馬鹿にしているのか!悪かったな!どうせ私は貴様と違って、恋人の一人もいた事がない勉強しか取り柄がないつまらない──」

その時、野分先輩の言葉が途切れた。代わりに続けて聞こえてきたのは「んん!んー!」というくぐもった声。

けれど、その声がしていたのは最初のうちだけで。段々と「ん…っ」といった艶めいた声がするようになった。

そして、その声が漸くしなくなったのは、それから約一分が経過した頃だった。

「…やっぱり可愛いな」

ぼそりと独り言ちるように零される燈堂先輩の声。

「貴様…二度もこんな事をして、どういうつもりだ…」

上がった息を整えるようにゆっくりとそう問いかけた野分先輩に、燈堂先輩は暫く黙っていたが、やがて口を開いてこう言った。

「お前を抱きたい」と。


*****


「───はぁ…」

広大な中庭の芝生に腰掛け、何度目かの溜め息を吐き出す。

空には抜けるような青空が広がっているのに、見上げている俺の気分は正反対。

「…はぁ」

我ながら、溜め息しか吐いてなくて鬱陶しい自覚はある。あるが、どうして溜め息ばかり吐いているのか。今から言う理由を聞けば、きっとご納得頂ける事だろう。

昨日、俺は燈堂先輩と野分先輩を(あわよくば)くっつけてしまおう作戦を決行すべく、手始めに何とか保健室に二人きりにさせた。
勿論、ここで二人の間にある誤解を解いて、仲直りして、ついでに(あわよくば)くっついてくれると良いなという思惑でだ。

途中までは結構良い感じに計画通りに進んでいたと思う。

だが、燈堂先輩が野分先輩を押し倒した所らへんから、その……何というかですね、R指定が入りそうな雰囲気になってきた空気に耐えられなくなったといいますか…(目を逸らす)。

………ええ、そうですよ!今にも情事が始まりそうな雰囲気に耐えられなくなって脱兎の如く逃げ出しましたが何か!?

お察しの通り、俺は前世でも今世でも童貞ですが何か!?

「…って、違う違う。そうじゃなくて」

思わず、思い出し動揺で脳内で言い訳してしまったが、いま重要なのはそこじゃない。

では、どこなのかって?それは、俺が逃げ出した後の事だ。

あの場から逃げ出したあの後、俺は寮に帰り、思い出しては赤面するを繰り返しながら「まあ、あの雰囲気なら明日にはカップリングが成立しているだろう」と思い、思い出し赤面と格闘しながら何とか就寝した。

そして、土日を挟み、翌週の月曜日である今日、(気になり過ぎて)若干寝不足気味ではあったが、気分は遠足前の子どものように「どうなったかな?」と期待に胸を膨らませて登校したのだが…

「………何で更に仲悪くなってるんだよ」

目にしたのは、これまでよりも更に険悪な雰囲気で言い合いというか喧嘩をしている燈堂先輩と野分先輩の姿だった。

うん…まあ、見た瞬間、頭の中が『?』で一杯になったよね。本当に、マジで、意味分からんのですけど。あの時のあの上手くいきそうだった雰囲気は一体いずこへ?

「はぁーー…失敗かぁ」

再度、深い深い溜め息を吐き出し、背中から芝生に倒れ込んで空を仰ぎ見る。

「何がダメだったんだろ…」

青空を眺めながら「うーむ」と考え込む。やはり、俺が脱兎の如く逃げた後に『何か』原因となる出来事が起こったと考えるのが妥当だろう。

「…逃げなかったら良かったのかな」

いや、もし仮に羞恥に耐えて最後まであの場に留まれていたとしても、所詮は窓から覗き見しているだけのモブ的な立場に過ぎなかった俺に、その起こった『何か』に対して出来た事は無かっただろう。

「…はああー、頑張ったのになぁ」

一生懸命考えて、あれやこれや根回しして、やっっっとあそこまでこぎ着けたのに。まさか失敗するとは。うーん、手強い。

「やっぱり、そう簡単には上手くいかないか…」

やはり、物語の修正力というか強制力みたいなものでも存在しているのだろうか。

「…あー、良い天気だなー」

落ち込んでいるからか、空の青さが何だかとても心にみる。

「…くぁ」

ああ、凄く眠たくなってきた。この二日、思い出し赤面と格闘していたからあんまり寝れなかったんだよなぁ。

暖かい日差しとそよそよと頬を撫でる心地いい風がどんどんと眠気を助長させていく。昼休みってあと何分だっけ…?

そんな事を考える。でも、瞼はもう閉じていて。

あ、ヤバい。これは本格的に寝───


『───試験一位、おめでとう!』
『………』
『あれ?嬉しくないの?』
『…何で君が喜ぶんだ』
『何でって…嬉しいから?』
『…意味が分からない』
『ええ!?』
『何でそんなに驚くんだ』
『だって、キミが頑張って勉強してたのを知ってるもん。だから、キミの努力が報われたんだなって嬉しかったんだよ』
『………相変わらず、君は変だな』
『え、そう?』
『ああ。…全く、君のような●●は初めてだ───』


「───…」

はっと目が覚める。あれ、俺…

「寝ちゃってたのか…」

何か、夢を見ていたような気がする。

あまりハッキリとは覚えていないけれど、とても温かくて、どこか懐かしい。そんな夢だったように思う。

「…あ、そうだ」

いま何時だろうか?

ぼんやりとしながら腕時計を見てみれば、時計の針はあと十分で昼休みが終わる時間を指していた。どうやら、十五分ほど寝てしまっていたようだ。

「…さて、どうするかなぁ」

これからの事を考えようと思っていたのに、寝てしまって結局何も考えられていない。

「うーん…」

どうしたものか………あ、そういえば。前世で、こんな風に失敗して落ち込んで、部屋に暫く閉じこもっていた時があったっけ。

あの時は確か…そうだ、いつまでもうじうじと部屋に閉じ籠っていた俺を見かねて姉ちゃんがドアの鍵を壊して入ってきて。こう言ったんだ。

『一回の失敗ごときでくじけるなら最初からやるな!鬱陶しい!』って。

慰めるでも、励ますでもなくて。落ち込んでる人間にそんな事言うなんて、なんて冷たい姉なんだって思って喧嘩になったけど、言い争ってる内に胸の内に燻っていた想いとか感情とかを吐き出せたおかげで俺は前を向く事が出来たんだ。

…いま思えば、あれは姉ちゃんなりの慰め方だったんだなぁ。

「…よしっ」

むくりと起き上がり、気合いを入れるように頬をペシペシと叩く。そうだ。落ち込んでいる暇なんかないぞ、俺。

姉ちゃんの言う通り、一回失敗したくらい何だって言うんだ。

『何か』が起こったのなら、その正体を突き止めて、また何か…こう、良い感じの雰囲気に持っていけば良いだけの話だ。

それに成功しなければ、俺の第二の学園生活がBなL展開になってしまう。それだけは絶対に阻止しなければ!


よおーし、頑張るぞー! えい、えい、おー!
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