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13.初夜
しおりを挟む結婚式が終わり、ふたりきりになった夜。手作りベッドの周りには花びらが散りばめられ、なぜか天井に「祝♡ご成婚」の垂れ幕。
カイルは少し呆れながらも嬉しそうに呟く。
「……村の連中、はしゃぎすぎだ」
ラクスも同意するように頷いた。
「まあ……祝われすぎるのも悪くないけどな」
カイルが珍しく早急に抱き寄せ、ラクスの腰に手を回し、優しく囁く。
「やっと、ふたりきりだな」
「ああ」
「……キス、していいか?」
挑発するよな笑みを浮かべ、答えるラクス。
「聞くかなくても分かるだろ…?」
ゆっくりと距離を詰め、カイルがラクスの髪に指を絡める。
「愛してる、ラクス」
「俺もだ。キス……しろ」
優しく、何度も啄みキスをする。
カイルはラクスの頬を優しく親指の腹で撫で、ウエディングドレスへと手をかけた。その時、ベッドの下から「ギィ……」と木がきしむ音が鳴った。
ラクスが一瞬ぴくりと反応し、恐る恐る下を覗き込む。
「……まさか、誰かいるんじゃ」
「さすがにそれは――」
ぴょこんと飛び出たうさ耳。
「い、いや、覗くつもりは無かったんだよ?!……準備してたら思ったよりも早く君たちが来ちゃって、出るに出られなかったというか……ごめん!!!」
脱兎のごとく逃げ出すルーク、念の為ベッドの下や部屋の隙間をくまなくチェックし、誰もいないことを確認する。
どっと疲れが増したラクスは、ベッドへと大の字になって寝転んだ。
「はぁ……なんだかな~」
ドクドクとなる心臓は未だにうるさいまま、誤魔化すようにため息をついた。
「これで、本当の本当に、ふたりきり……だな」
カイルは、熱い眼差しでラクスを見下ろした。
手際よく服を脱がし、首元にキスを送る。
ラクスは擽ったさに声を上げる。
「……ふっ、ちょ、くすぐったいっ…!」
サラサラの黒髪が素肌を撫でる感触に、たまらず笑いがもれた。
「あ、あのさ、俺が下なの?」
キョトンと首を傾げるカイル。
「嫌なら無理強いはしない」
ラクスは顔を真っ赤にしてカイルに抱きつく。
「…嫌じゃない」
カイルがゆっくりと、首筋にキスを落としていく。
ラクスの吐息が、甘く震え、肌と肌が重なるたびに、照れと戸惑いが溶ける。
「んっ、カイルがいてくれて良かった。こんな俺だけどよろしくな」
「今更だ、いつから一緒だと思ってる。最初から最後まで俺だけ見てろ」
「ふっはは!……幸せだな」
恥ずかしくて、くすぐったくて、でも心は穏やかだった。
「明日も、明後日も……何十年も先も、ずっとお前といる」
カイルはラクスの額にキスを落とし、そっと目を閉じる。
新しい未来は、今、ここから始まった。
【完】
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