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第三章『王子様、現る!?』
第54話 騎士と踊り子のコンビネーション
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閑散としていた防衛部隊の駐屯地は、怒号と殺気で満ち溢れていた。
武器を持たない後方支援の兵士が後退し、代わりに獲物を担いだ前衛部隊がヒミカ達には目もくれず、我先にと駆け抜けていった。
兵士たちの武装は様々で、ユーマと同じセントエルディア騎士団のものから、街の自警団、冒険者、盗賊と見紛うような傭兵くずれまで、様々な人たちが集結して戦線が成り立っているのが分かる。
「うそ、あんなに魔物がたくさん……っ!」
前方、地平線の彼方から黒い波が押し寄せていた。
目視で確認できるだけでもゴブリンやオークといった獣戦士から、骸骨兵やボーンマンモスのようなアンデッド、さらにはヤタガラスやワイバーンといった飛竜種まで確認できる。
ヒミカ達がいる駐屯地からわずか一キロ程の距離で、波と波が激しくぶつかり合っていた。
『いけぇ! 斬りかかれぇっ!』
『盾兵が持ちこたえている間が勝負だ! 砲撃兵、撃ぇーーーーっ!』
『こいつら……背中にコウモリみたいなのがひっついてて、凶暴になってやがるっ……?』
『くっ……抑えきれない! 遊撃部隊の帰還はまだか!』
「この魔物達、大半がヴィーヴィルに操られてます!」
とても楽観視できる状況ではなかった。
雪崩のように襲い来る魔物はただでさえ凶暴なのに、魔王の権能【繁殖】をヴィーヴィルによって付与されているため、さらに気性が荒ぶっている。
もっとも、戦線の兵士達は大半が屈強な男のため、苗床にされる心配はなさそうだが……。
『このアンデッド……ッ!? なぜか俺の鎧を脱がそうとしてきやがる……ッ! 生前は女だったのか? やめろ、パンツは勘弁してくれ!』
「ちっとも安心できないわね……」
次第に、数匹の魔物が隙を突き、兵士の脇をすり抜けて最前線を突破していく。
『しまった……クソ!』
兵士が追いかけようとするもすぐさま他の魔物が襲い掛かり、手が離せないようだ。
「ヒミカさん、こちらに魔物が向かってきます。後ろでは後方支援部隊が砲撃の準備と防衛柵の修復に追われていて、狙われたら致命的です。僕たちはまず前線を突破してきた魔物だけを狙いましょう!」
「分かった! いつものアレ、特訓の成果を見せるチャンスね!」
「任せてください!」
意気込む二人に、頭が二股に別れたツインコブラが襲い掛かった。
ユーマを捉えると、二つの顎が割れんばかりに開かれる。
「もう、怖いなんて言ってられません!」
カウンター気味に、裏拳の要領でガツンと盾をお見舞い。
「キシャアアアアッ!」
「ぎゃあああっ! もう一つの頭がぁ!」
「【誘惑の濡れ瞳】!」
ぴたり、と蛇の動きが止まる。
くるり、と今度はヒミカの方を向いて、欄々と毒牙を光らせた。
けれどヒミカは動じない。
「ありがとうございます、ヒミカさん」
今度こそ冷静にコブラの脳天を叩いてノックアウト。
「ええ、この調子ね」
【盾騎士】のユーマが敵を引きつけ、【踊り子】の勇者ヒミカが魅了で相手の動きを封じる。最後はユーマがトドメを刺す。
何度も実践を重ねてきたコンビネーション。
A級パーティにも劣らない実力は、息ぴったりな二人であるからこそだ。
「前方、さらにベアウルフとゴブリンヘッドの群れ! アンデッドも混さっています!」
「問題ないわ! しっかり引きつけておいてね────【魅惑の舞】!」
戦場に咲く一輪の花。
廻るヒミカを中心に魔力を纏ったオーラが展開。
結界のごとく広がっていく魔力波に、魔物は近づいたものから動きを止めてしまう。
「いい子達ね。最後の一匹になったら、私と結婚してもいいわよ?」
「ヒミカさん!?」
冗談を本気にするユーマを余所に、魔物たちは地面に輪を描くようにして互いの背中を追いかけ始めた。
「ドッグファイトですね……。僕が手を下すまでもなさそうです」
乱戦も低級魔物であればこの通り。
ヒミカ達は確実に成長している。
「さぁ次よ! どんな魔物だって魅了してみせるわ!」
ズシン!
挑発に応えるように、一際大きな足音が地面を揺らした。
突然空が暗くなったかのように影が落ちる。
「じ、ジャイアントオーク……!」
武器を持たない後方支援の兵士が後退し、代わりに獲物を担いだ前衛部隊がヒミカ達には目もくれず、我先にと駆け抜けていった。
兵士たちの武装は様々で、ユーマと同じセントエルディア騎士団のものから、街の自警団、冒険者、盗賊と見紛うような傭兵くずれまで、様々な人たちが集結して戦線が成り立っているのが分かる。
「うそ、あんなに魔物がたくさん……っ!」
前方、地平線の彼方から黒い波が押し寄せていた。
目視で確認できるだけでもゴブリンやオークといった獣戦士から、骸骨兵やボーンマンモスのようなアンデッド、さらにはヤタガラスやワイバーンといった飛竜種まで確認できる。
ヒミカ達がいる駐屯地からわずか一キロ程の距離で、波と波が激しくぶつかり合っていた。
『いけぇ! 斬りかかれぇっ!』
『盾兵が持ちこたえている間が勝負だ! 砲撃兵、撃ぇーーーーっ!』
『こいつら……背中にコウモリみたいなのがひっついてて、凶暴になってやがるっ……?』
『くっ……抑えきれない! 遊撃部隊の帰還はまだか!』
「この魔物達、大半がヴィーヴィルに操られてます!」
とても楽観視できる状況ではなかった。
雪崩のように襲い来る魔物はただでさえ凶暴なのに、魔王の権能【繁殖】をヴィーヴィルによって付与されているため、さらに気性が荒ぶっている。
もっとも、戦線の兵士達は大半が屈強な男のため、苗床にされる心配はなさそうだが……。
『このアンデッド……ッ!? なぜか俺の鎧を脱がそうとしてきやがる……ッ! 生前は女だったのか? やめろ、パンツは勘弁してくれ!』
「ちっとも安心できないわね……」
次第に、数匹の魔物が隙を突き、兵士の脇をすり抜けて最前線を突破していく。
『しまった……クソ!』
兵士が追いかけようとするもすぐさま他の魔物が襲い掛かり、手が離せないようだ。
「ヒミカさん、こちらに魔物が向かってきます。後ろでは後方支援部隊が砲撃の準備と防衛柵の修復に追われていて、狙われたら致命的です。僕たちはまず前線を突破してきた魔物だけを狙いましょう!」
「分かった! いつものアレ、特訓の成果を見せるチャンスね!」
「任せてください!」
意気込む二人に、頭が二股に別れたツインコブラが襲い掛かった。
ユーマを捉えると、二つの顎が割れんばかりに開かれる。
「もう、怖いなんて言ってられません!」
カウンター気味に、裏拳の要領でガツンと盾をお見舞い。
「キシャアアアアッ!」
「ぎゃあああっ! もう一つの頭がぁ!」
「【誘惑の濡れ瞳】!」
ぴたり、と蛇の動きが止まる。
くるり、と今度はヒミカの方を向いて、欄々と毒牙を光らせた。
けれどヒミカは動じない。
「ありがとうございます、ヒミカさん」
今度こそ冷静にコブラの脳天を叩いてノックアウト。
「ええ、この調子ね」
【盾騎士】のユーマが敵を引きつけ、【踊り子】の勇者ヒミカが魅了で相手の動きを封じる。最後はユーマがトドメを刺す。
何度も実践を重ねてきたコンビネーション。
A級パーティにも劣らない実力は、息ぴったりな二人であるからこそだ。
「前方、さらにベアウルフとゴブリンヘッドの群れ! アンデッドも混さっています!」
「問題ないわ! しっかり引きつけておいてね────【魅惑の舞】!」
戦場に咲く一輪の花。
廻るヒミカを中心に魔力を纏ったオーラが展開。
結界のごとく広がっていく魔力波に、魔物は近づいたものから動きを止めてしまう。
「いい子達ね。最後の一匹になったら、私と結婚してもいいわよ?」
「ヒミカさん!?」
冗談を本気にするユーマを余所に、魔物たちは地面に輪を描くようにして互いの背中を追いかけ始めた。
「ドッグファイトですね……。僕が手を下すまでもなさそうです」
乱戦も低級魔物であればこの通り。
ヒミカ達は確実に成長している。
「さぁ次よ! どんな魔物だって魅了してみせるわ!」
ズシン!
挑発に応えるように、一際大きな足音が地面を揺らした。
突然空が暗くなったかのように影が落ちる。
「じ、ジャイアントオーク……!」
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