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ディニス編
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だが、傷だらけで帰ってきたウェスを見て、その考えが甘かったことを知る。
ーー
彼が勇者達に戦いを挑みに行ったその日、他の魔族達は会議室に集まってその結果を待っていた。
そこに突如、レヴォンと血まみれのウェスが現れたのだ。
レヴォンはウェスをボロ雑巾のように床に投げ出した。すると、すぐにその床に血溜まりが広がる。
私はその様子に絶句した。
ウェスの体はボロボロで何より目立つのが顔を切り裂いた傷だった。あまりにも痛ましいその様子に、すぐにでも駆け寄りたい衝動に駆られる。実際、他の魔族たちがいなければそうしていただろう。
そして何故こんなになるまで放っておいたのだとレヴォンを睨みつける。
「少なくとも、私は任務を果たしましたよ」
私の視線を受け流し、彼は意味ありげにそう言った。
すると、床から小さな呻き声が上がる。
そちらに目を向けると、瀕死にも見えるウェスがよろよろと上体を起こしたところだった。
頼むからもうじっとしていてほしい。
私はそう願いながらその光景から目を背けるように目を閉じた。
「やはり荷が重かったようですね」
「まあ、顔に傷なんて…さらに醜くなって、見るに耐えませんわ」
ウェスに視線を移した魔族達が次々に口を開く。
戦ったのがお前達でもこうなっていただろうに、自分より弱い者に行かせた挙句嘲笑うとは…
だが、誰より不甲斐ないのはウェス1人守れない自分自身だ。
「それでレヴォン様。彼は何か成果を上げましたか?」
魔族の1人の質問に、私は恐れていた選択をせざる得なくなった。
「いや、ウェスでは誰も倒せなかった」
私を静かに見つめながらレヴォンはそう言った。
そして周りが笑いに包まれる中、私は…ウェスをそばに置き続けることを諦めた。
「はぁ、ウェス。お前には伯爵位は重すぎた。爵位は剥奪する」
なるべく冷たく聞こえるように、これで皆の関心がウェスから無くなるようにそう言った。
本当は分かっていた。ここにウェスの居場所はない。最初から市井へ降してやればこんな大怪我をすることもなかったのだ。
それを、ウェスを手元に置いておきたいと言う私の我儘で傷つけてしまった。
「ま、待ってください!もう一度チャンスを…」
「くどいぞ。お前には無理だと言っている」
「そんな…せめて…あと一度だけでもっ…!」
レヴォンの制止を聞かず私に取り縋ろうとするウェスに胸が苦しくなる。
「おい!ディニス様のお召し物が汚れるだろ!これだから知能も低い低級悪魔は…」
そう言って魔族がウェスを蹴り飛ばした。私はそれ以上彼が危害を加えられないよう慌てて制止する。
「で、ディニス様…」
傷が広がったウェスの羽を見て早く彼を下がらせなければと焦りが生じる。
そして私は…
「その醜い顔を私に晒すな。さっさと下がれ」
最後の希望とばかりに私を見上げたウェスにもあまりに酷い台詞を口にした。ここまで言わなければウェスが諦めないと思ったからだ。
いい子だからどうか分かってほしい。爵位などに拘らなくていいから、早く傷の手当てに行ってほしい。
そう願いながらウェスを見つめる。
「あ…申し訳、ございません…」
するとウェスは何を思ったのか羽で顔を隠すように覆った。
(あ…私が醜いと言ったからか…)
その答えに辿り着き胸が痛んだ。
ウェスを醜いと思ったことなど一度もない。どんなに他の魔族が嫌悪していようとも、私に似せようと成長した人型の部分も元の悪魔の部分も全てが愛おしく見えた。
彼自身も自分の容姿を気にしていたはずだ。それにもかかわらず私自身が傷つけてしまった。
私は自分の不器用さに呆れ、思わずため息をついた。
「ウェスを下がらせろ」
そして一刻も早くこの場を下がらせるため、魔族達に命じて彼を連れ出させた。
ーー
彼が勇者達に戦いを挑みに行ったその日、他の魔族達は会議室に集まってその結果を待っていた。
そこに突如、レヴォンと血まみれのウェスが現れたのだ。
レヴォンはウェスをボロ雑巾のように床に投げ出した。すると、すぐにその床に血溜まりが広がる。
私はその様子に絶句した。
ウェスの体はボロボロで何より目立つのが顔を切り裂いた傷だった。あまりにも痛ましいその様子に、すぐにでも駆け寄りたい衝動に駆られる。実際、他の魔族たちがいなければそうしていただろう。
そして何故こんなになるまで放っておいたのだとレヴォンを睨みつける。
「少なくとも、私は任務を果たしましたよ」
私の視線を受け流し、彼は意味ありげにそう言った。
すると、床から小さな呻き声が上がる。
そちらに目を向けると、瀕死にも見えるウェスがよろよろと上体を起こしたところだった。
頼むからもうじっとしていてほしい。
私はそう願いながらその光景から目を背けるように目を閉じた。
「やはり荷が重かったようですね」
「まあ、顔に傷なんて…さらに醜くなって、見るに耐えませんわ」
ウェスに視線を移した魔族達が次々に口を開く。
戦ったのがお前達でもこうなっていただろうに、自分より弱い者に行かせた挙句嘲笑うとは…
だが、誰より不甲斐ないのはウェス1人守れない自分自身だ。
「それでレヴォン様。彼は何か成果を上げましたか?」
魔族の1人の質問に、私は恐れていた選択をせざる得なくなった。
「いや、ウェスでは誰も倒せなかった」
私を静かに見つめながらレヴォンはそう言った。
そして周りが笑いに包まれる中、私は…ウェスをそばに置き続けることを諦めた。
「はぁ、ウェス。お前には伯爵位は重すぎた。爵位は剥奪する」
なるべく冷たく聞こえるように、これで皆の関心がウェスから無くなるようにそう言った。
本当は分かっていた。ここにウェスの居場所はない。最初から市井へ降してやればこんな大怪我をすることもなかったのだ。
それを、ウェスを手元に置いておきたいと言う私の我儘で傷つけてしまった。
「ま、待ってください!もう一度チャンスを…」
「くどいぞ。お前には無理だと言っている」
「そんな…せめて…あと一度だけでもっ…!」
レヴォンの制止を聞かず私に取り縋ろうとするウェスに胸が苦しくなる。
「おい!ディニス様のお召し物が汚れるだろ!これだから知能も低い低級悪魔は…」
そう言って魔族がウェスを蹴り飛ばした。私はそれ以上彼が危害を加えられないよう慌てて制止する。
「で、ディニス様…」
傷が広がったウェスの羽を見て早く彼を下がらせなければと焦りが生じる。
そして私は…
「その醜い顔を私に晒すな。さっさと下がれ」
最後の希望とばかりに私を見上げたウェスにもあまりに酷い台詞を口にした。ここまで言わなければウェスが諦めないと思ったからだ。
いい子だからどうか分かってほしい。爵位などに拘らなくていいから、早く傷の手当てに行ってほしい。
そう願いながらウェスを見つめる。
「あ…申し訳、ございません…」
するとウェスは何を思ったのか羽で顔を隠すように覆った。
(あ…私が醜いと言ったからか…)
その答えに辿り着き胸が痛んだ。
ウェスを醜いと思ったことなど一度もない。どんなに他の魔族が嫌悪していようとも、私に似せようと成長した人型の部分も元の悪魔の部分も全てが愛おしく見えた。
彼自身も自分の容姿を気にしていたはずだ。それにもかかわらず私自身が傷つけてしまった。
私は自分の不器用さに呆れ、思わずため息をついた。
「ウェスを下がらせろ」
そして一刻も早くこの場を下がらせるため、魔族達に命じて彼を連れ出させた。
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