アケミツヨウの幸福な生涯【本編完結】

リラックス@ピロー

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33.月だけが見ていた

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躊躇いなく指が性器に絡められ、びくりと足先が跳ねる。不自然に足に力が入り、攣りそうな程親指を反らせる。
今の自分は受容体がバグを起こしているのか、室内の空気が揺れるだけで皮膚が泡立つほどに感覚が鋭敏だった。そんな状態で容赦なく、おそらく身体の中で一番繊細な器官に触れられたのだ。
それだけでもう悲鳴を上げるに足る快感だった。

「ひ、ッ、・・・っ!」
「可愛いですね、ほら歯を食いしばらないで。顎を痛めます」

緩やかな手付きで性器の全体を揉まれ、堪えられないとばかりに無意識に歯を食いしばっていた。
それを諌めるようにヴィクターの指が口を張り開くと、人差し指と中指、二本の指で舌の中央付近をくすぐった。

「ひぅ、ッん、ぐ」

ヴィクターの指を噛まないよう、顎に力が入りかける度はっと口を開く。歯を食いしばれない所為で、耳を塞ぎたくなるような嬌声が絶え間なくこぼれ落ちる。
ただでさえ敏感な口内が、舌以上に動きの自由度が高い指で蹂躙される。
柔らかな肉の感触とは異なる、節くれだった指の感触が容赦なく理性を奪い去っていく。

上の前歯にほど近い上顎のおうとつを指でなぞられる瞬間が殊更弱かった。
指の腹でそこに触れられると、指紋の一つ一つさえ感じられるほどだ。
口内に与えられる刺激の所為で必要以上に唾液が溢れる。口の端から唾液が垂れるのを感じ、無様な顔を晒していることに耐え難いほどの恥じらいが生まれた。
口を解放してほしくて指に軽く歯を立てれば、ふっとヴィクターに笑いかけられる。

口内の刺激に意識が向いている所為で一番弱い場所への主導権を握られていることも頭から抜けていた。

「ぃ、ッ!」

性器の先端を指先で円を描くように触れらた瞬間、不随意に足が跳ねヴィクターの腰にぶつかった。
さらには甘噛みで済ませるつもりだった口元も無意識のうちに力を込めていたのか、口内に居座ったままの指へ歯を立てていた。
ヴィクターの眉根が痛みを堪えるように僅かに寄せられすぐに自分の行動を後悔する。
申し訳ない気持ちが胸に浮かび恐る恐る口元から力を抜く。

けれど次の瞬間、ヴィクターの口元が獰猛に笑んだことでその気持ちもどこかへ飛んだ。

「どこもかしこも敏感で本当に可愛い人ですね」
「ひ、っんん」

第二関節の辺りに歯形を残した二本の指が舌の表裏を挟んでくる。僅かに外へ引き延ばされ、思わずぐっと喉が鳴った。

兜を外した時はいつも穏やかに笑っていた顔が今は普段と比べようもなく楽しげに笑っている。
瞳孔が開き切った目で視線をこちらへ向ける姿は清廉潔白な騎士からは程遠い。
理性のネジを全て外したかのような振る舞いはもはや暴挙にも近い。

下半身へ伸ばされている手はいまだゆるゆると先端ばかりを弄っている。
自分では考えたこともない触り方で、まして儀式の時でさえこんな風には触られなかった。性器全体に指を絡められていた時よりもダイレクトな快感が脳を殴りつける。気持ちいいと感じているはずなのに、いつまでも熱が解放されず苦しい。

聞くに耐えない水音が上からも下からも引っ切りなしに立てられていた。
逃げたい。そう思った瞬間にはすでに行動へ移していた。力の入らない身体をなんとか動かし、ヴィクターの手から逃げるようにうつ伏せに体勢を変える。
膝を立てて縮こまるように伏せた状態で、ヴィクターから距離を取るように前へ進む。
我が物顔で居座っていた指から久しく解放された口は痺れて力が入らず、舌を引っ込めた瞬間口の端からこぼれ落ちた唾液がシーツに一筋線を残した。

「・・・ッ!ぃ、」

数歩も膝が進まないうちに肩を抑えられベッドへ沈み込まされる。
腰だけを高く上げた状態を理解するより早くヴィクターは足の間に膝を割り込ませると肩幅程度に開かせた。

うつ伏せになった程度で逃げられると思った数秒前の自分を殴りたい衝動に駆られる。
肩からずり落ちたジャケットやシャツが絡む所為で腕は上がらず肩を抑えられた状態だと自由が尚更効かない。そのうえ一糸纏わない下半身を無防備にヴィクターの眼前へ差し出している今の状況は、確実に悪化してると言えるだろう。

剥き出しの肩にヴィクターの歯が立てられる。小さな痛みを感じ自由にできる範囲でなんとか首を回し背後を伺うと目をギラギラ輝かせるヴィクターと視線が絡んだ。

「ヨウ様の肌は柔いので歯形が簡単に付きますね」
「は、っ」

肩を抑えていた手で歯形がついたであろう箇所をそっとなぞられる。意図してか知らずか、歯形をなぞる指は先程噛み跡を残した指と同じだった。意図せず残すことになった歯形は所有印に他ならない。

「ッ!あ、っぁあ!」

無防備に割られた膝の間に知らず伸ばされた手が急所を掴む。逃げようとした罰だとばかりに再び先端ばかりを先程より激しく弄ばれた。

「やめ、ッ!・・・ッ、ぃ」

逃しきれない快感に押しつぶされそうだった。
両手でシーツにしがみつき額をベッドへ埋める。容赦のない手管を諌めるため、比較的自由の効く足でヴィクターの身体を蹴る。
けれど力が入らない所為で大した効果は無かった。
止まらない暴挙に抵抗するため開かれた膝を閉じようとするが、それも間に割り入られた膝により叶わない。
ガクガクと膝が笑い腰を上げていることさえ辛くなってくると、それを察したヴィクターは抑えていた肩から手を外し腕を腹に回した。

ほっと身体から力を抜いたことも束の間、腕を固定された為に余計逃げられなくなったことに一呼吸置いてから気付く。
足の先が空を切る。背中に密着した体温がひどく熱かった。互いの温度が循環し、一層熱を持つ。

「ーーーッ、ふ、ッ!!」

執拗に弄られた先端から、びしゃりと水にも似た液体が迸る。精液とは異なるみずみずしいそれに、漏らしたのかと顔に熱が集まった。
けれど無臭のそれに対し聞き齧った程度の知識がふと頭の端を掠めた。

「ッ、あっ、おれ・・・」

潮を吹いた瞬間の濁流に飲まれるかのような快感に脳を痺れさせながら、尿道に残る僅かな残滓を吐き出させようとヴィクターの指が与えてくる新たな刺激に息を詰める。
ぴゅ、と小さく一雫を吐き出してようやく下半身が解放された。

錘を全身に纏っているかのような疲労感に、べしゃりとベッドへ沈み込む。手の甲で目元を覆い、早鐘を打つ心臓をなんとか宥める。
全身が性感帯に変えられたかのように、ヴィクターに触れられる場所は上も下も全てが気持ちよかった。

「はっ、ッふ、」

快感の余韻が中々引かず、今はもう触れられていないと言うのにじんじんとした感覚が残り熱が一向に冷めてくれない。
けれどこのまま触れずにいてくれればいつかは落ち着くだろう。ヴィクターの動きが止まり、もしかして既に満足したのでは、そんな希望的観測がチラリと頭に浮かぶ。

熱気と湿度を増した静かな室内で、カタリとサイドテーブルの引き出しを開ける音が聞こえる。

「・・・それ、」
「はい、保湿剤です。乾いた指ではあなたを傷つけてしまうので」

手のひらサイズの器の蓋を開け軟膏を指先に絡めると、ヴィクターは俺の身体を仰向けにさせた。
ついでとばかりに引っ掛かっていたジャケットとシャツを腕から引き抜くと、そのままベッドの下へ放り投げる。

抵抗する気力も残されていない俺は思うがままにされていたが、ヴィクターが俺の片足を肩にかけさせたことでようやくその意図に気付いた。

十分にとろみを帯びた指が足の間に伸ばされる。

全身から力が抜けていたことが功を奏したのか、思いの外抵抗もなく指の侵入を許した。
違和感はあれど痛みはない。ただ暴力的な快感から解放され、荒い呼吸を整える為の小休止にも感じた。

繊細な粘膜に触れる指は真剣で、極めて慎重に動かされている。傷つけないよう細心の注意を払っているのか、ヴィクターの目は比較的落ち着きを取り戻しているように映った。
頭の中が掻き乱され一片の理性も残されないような先程までの快感と違い、多少の異物感を堪えるだけで良い今の時間は天国にさえ思える。

隠す物がなく全てを晒している状態に羞恥を感じるが、けれど落ち着いてヴィクターの姿が眺められる点はとても好ましかった。

「ん、」
「痛かったですか?」
「いや、平気。痛くないよ・・・」

いつの間に陽が落ちていたのか、窓から覗く景色は暗い。灯の灯されていない室内もまた同様に薄暗く、けれど既に目が慣れているおかげでヴィクターの姿は問題なく見えた。

そっと腕を伸ばしヴィクターの頬に触れる。
いつもは少しカサつく肌が、今は汗にしっとりと濡れていた。こめかみに伝う汗を何気なく指先で拭えば、ヴィクターは耐えるように目を細めた。

再び剣呑な光が目に宿りかけたことを察しさっと指を引けば、ヴィクターの目はすぐに落ち着きを取り戻した。
俺の行動一つで簡単に理性を揺り動かされるのだと、感慨にも似た驚きが胸の内に広がる。

探るように二本目の指が差し込まれ、僅かに増した圧迫感に眉を顰める。目ざとくその反応に気付いたヴィクターが指の動きをぴたりと止めた。

「・・・は、痛くないから、動かして」
「いえ、少し慣れるまでこのままにしましょう」
「いいから」

チラリとヴィクターの下半身に視線を向ければ、隠しようもない程下半身が兆している様子が伺える。
まともに思考する頭が戻ってきたおかげで、落ち着きを取り戻したように見えたヴィクターがその実、俺を傷つけないよう本能を律してくれているのだと理解できた。

痛みはないのだから、もっと強引でも構わない。
我慢を強いるくらいなら、早く中に入ってヴィクターにも気持ちよくなって欲しかった。

「指が三本入れば、足りる?」
「ヨ、」
「・・・早くそれを入れてほしい」

ヴィクターの肌着の胸倉を両手で掴み強引に引き寄せる。かぷりと鼻先に甘噛みすれば、ヴィクターの目が大きく見開かれた。
跡さえ残らない力加減だ。痛みも何も感じないだろう。けれどこんな簡単な行動でさえ、ヴィクターの理性を揺さぶるだけの意味はあったらしい。
緩やかに動きを増した後、やや強引に三本目の指が突き入れられた。
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