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第十八話
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ようやく、ベレンガリオは金髪の少女が修道院のお菓子を買い占めて行った令嬢の一人なのだ、と気づきます。腕から下げたカゴに他の紙袋もいくつかあり、そのうちの一つをベレンガリオへ譲るつもりなのでしょう。
思わず手が伸びそうになりましたが、ベレンガリオは最後の理性で踏みとどまり、やはり最後に残ったプライドが施しを短く拒絶します。
「これは君が買ったものだろう」
「ですが、たくさん買いましたので……他にお求めの方がいらしたことに気付かず失礼をいたしました。それに、こんなにたくさんあっても、今日中に食べ切ることはできません。美味しいうちに食べたほうがお菓子も喜ぶでしょうから」
——お菓子も喜ぶ? 奇妙なことを言う。
ベレンガリオは、金髪の少女がお菓子を譲るために考えたいじらしい理由に、ふと愉快になりました。
まるでお菓子が生き物であるかのように、美味しく食べられることを望んで喜んでいると想像すると、何とも童話の登場人物のようです。生き生きと我先に食べられようと飛び上がるストゥルッフォリ、それはきっと、奇妙でありながら、愉快なことなのです。
目の前の令嬢は、随分と想像力豊かな少女です。ですが、それは気遣いも相当に含んでおり、初対面のベレンガリオへ慈悲の心を見せるあたり、優しい性分なのでしょう。
その金髪の少女は、呆気に取られたベレンガリオの手へ紙袋をそっと押しつけます。まだ温かい紙袋の中には、ベレンガリオが求めつづけた『とても甘いお菓子』が入っているに違いありません。
手にしてしまった以上、もう抵抗はできませんでした。ベレンガリオは躊躇なく受け取り、感謝の意を伝えます。本当は、胸中の暗澹たる絶望感を払ってくれた金髪の少女に、最大限の謝辞と盛大な返礼をしたいところですが、たかが菓子にと蔑まれはしないかと考え直しました。
ただ、やはりお礼の品を渡したい、そう思ってベレンガリオは背筋を伸ばし、誠心誠意かつ簡潔に礼儀を尽くして尋ねます。
「分かった、気遣い感謝する。今度、この菓子の礼を届けるから、君の名前と住所を教えてくれ」
「いえ、そんな」
「申し遅れた。私はグレーゼ侯爵家のベレンガリオという。今は王立士官学校に通っている」
そこまで言って、やっとベレンガリオはあることに気付きました。
紙袋に気を取られてしまいましたが、金髪の少女は、とても可憐な顔立ちです。ぱっちりと開いた瞳は大きく、長いまつ毛も薄紅の唇も化粧はされていません。白い肌も同じく白粉は叩かれておらず、きめ細やかな肌は熟練の職人が練ったパン生地のごとく滑らかでもちもちです。無意識のうちに指先を伸ばしてつつきたくなる衝動を抑えなければならないくらい、少女の頬に触れたいと思うと同時に、その感情は——ベレンガリオがどうしようもなく少女に惹かれている、確たる証拠となってしまったのです。
さらに、ベレンガリオは自身の想像力を甘く見ていました。
(……ウェディングドレスは胸元や肩を開けないタイプがいいな。レースで肌を包まないと他の男に攫われてしまうかもしれない。いや、待てよ。今、何を想像した? 確かにここで彼女を帰してしまえば二度と会えないかもしれないが、だからと言ってああくそハチミツとシナモンの香りが昇ってきた、食べたい……昔、屋敷の厨房で見たシェフのパン生地は素晴らしいもちもち具合だったが、この少女の頬はそれを思い出すな。触りた……いやいや待て待てベレンガリオ、正気に戻れ。初対面の男がご令嬢の肌に触れるなどあってはならない、しかしだが結婚を前提にすればあるいは)
ここまでのベレンガリオの思考時間は、おそらく現実の時間で二、三秒ほどでしょうか。
それはちょうど、金髪の少女が悩んだ末に自身の名前と住む場所を教えることに決める、その決意までの時間と同じでした。
「分かりました。では、私はサンベルジュ伯爵邸に逗留しております、ジョヴァンナと申します」
やっと現実に戻ったベレンガリオは、金髪の少女が『ジョヴァンナ』という名前であること、それと聞き覚えのある家名を聞いて、関連する情報が頭の中の引き出しから溢れ出し、その情報を一瞬で処理しきりました。
「サンベルジュ伯爵邸? ああ、今の侍従長の家か。君はそこの令嬢じゃないのか?」
すると、金髪の巻き毛の先をもじもじと指に絡めながら、『ジョヴァンナ』は恥ずかしそうに出身地を明かします。
「私は……その、ダーナテスカからまいりました。何分、田舎なもので、父の友人であるサンベルジュ伯爵閣下のお屋敷に下宿して、マナーやダンスなどを学んでおります」
——なるほど!
ベレンガリオの脳内で、しきりにファンファーレが鳴りました。うるさいくらいに鳴り響いています。
種々細々一瞬で熟慮した末に、ベレンガリオは決断します。
今この瞬間が、一世一代の大勝負の場であると確信したのです。
『ジョヴァンナ』の手を取り、初めてその名を呼びかけながら——ベレンガリオは動き出します。
「ジョヴァンナ」
「はい?」
それは流れるように見事な動作でした。その光景を見ていた修道女も、驚きのあまり開いた口が塞がらないほどに、です。
ベレンガリオは石畳に片膝を突き、『ジョヴァンナ』——一目惚れして心に決めた女性を見上げ、人生で初めてその言葉を口にします。
「結婚しよう」
あまりにも早く、あまりにも突然の出会いとプロポーズに、当のジョヴァンナはどうにも反応できずしばらく固まっていました。
それでも別に、紙袋を大事に胸前に抱えるベレンガリオはよかったのです。
ジョヴァンナの手を握る今、導き出される返答がどうであれ、たったそれだけでもベレンガリオは幸せなのですから。
☆
その話を聞いたフランシアは、おそらくその光景を目撃した修道女と同じ表情で、何度もベレンガリオの顔と壁紙の模様を視線が行き来した挙句、ようやく言葉を紡ぎました。
「ど、どうしてそうなったの……?」
「……分からない。分からないが、私は、ジョヴァンナに一目惚れしたんだ。ただそれだけだ」
フランシアの表情が物語ります。いやいやさすがにそれだけじゃあないだろう、雰囲気も何もなく経緯がひどすぎる、と。
しかし、この話には、まだ続きがありました。
「そのとき、ジョヴァンナは逃げていったんだが……あとで父に相談して、彼女を正式に舞踏会へ招待してもらった。それさえもまさか断られるとは思ってもみなかったが、逆にその理由を尋ねるためにサンベルジュ伯爵邸を訪れる機会を得たんだ」
思わず手が伸びそうになりましたが、ベレンガリオは最後の理性で踏みとどまり、やはり最後に残ったプライドが施しを短く拒絶します。
「これは君が買ったものだろう」
「ですが、たくさん買いましたので……他にお求めの方がいらしたことに気付かず失礼をいたしました。それに、こんなにたくさんあっても、今日中に食べ切ることはできません。美味しいうちに食べたほうがお菓子も喜ぶでしょうから」
——お菓子も喜ぶ? 奇妙なことを言う。
ベレンガリオは、金髪の少女がお菓子を譲るために考えたいじらしい理由に、ふと愉快になりました。
まるでお菓子が生き物であるかのように、美味しく食べられることを望んで喜んでいると想像すると、何とも童話の登場人物のようです。生き生きと我先に食べられようと飛び上がるストゥルッフォリ、それはきっと、奇妙でありながら、愉快なことなのです。
目の前の令嬢は、随分と想像力豊かな少女です。ですが、それは気遣いも相当に含んでおり、初対面のベレンガリオへ慈悲の心を見せるあたり、優しい性分なのでしょう。
その金髪の少女は、呆気に取られたベレンガリオの手へ紙袋をそっと押しつけます。まだ温かい紙袋の中には、ベレンガリオが求めつづけた『とても甘いお菓子』が入っているに違いありません。
手にしてしまった以上、もう抵抗はできませんでした。ベレンガリオは躊躇なく受け取り、感謝の意を伝えます。本当は、胸中の暗澹たる絶望感を払ってくれた金髪の少女に、最大限の謝辞と盛大な返礼をしたいところですが、たかが菓子にと蔑まれはしないかと考え直しました。
ただ、やはりお礼の品を渡したい、そう思ってベレンガリオは背筋を伸ばし、誠心誠意かつ簡潔に礼儀を尽くして尋ねます。
「分かった、気遣い感謝する。今度、この菓子の礼を届けるから、君の名前と住所を教えてくれ」
「いえ、そんな」
「申し遅れた。私はグレーゼ侯爵家のベレンガリオという。今は王立士官学校に通っている」
そこまで言って、やっとベレンガリオはあることに気付きました。
紙袋に気を取られてしまいましたが、金髪の少女は、とても可憐な顔立ちです。ぱっちりと開いた瞳は大きく、長いまつ毛も薄紅の唇も化粧はされていません。白い肌も同じく白粉は叩かれておらず、きめ細やかな肌は熟練の職人が練ったパン生地のごとく滑らかでもちもちです。無意識のうちに指先を伸ばしてつつきたくなる衝動を抑えなければならないくらい、少女の頬に触れたいと思うと同時に、その感情は——ベレンガリオがどうしようもなく少女に惹かれている、確たる証拠となってしまったのです。
さらに、ベレンガリオは自身の想像力を甘く見ていました。
(……ウェディングドレスは胸元や肩を開けないタイプがいいな。レースで肌を包まないと他の男に攫われてしまうかもしれない。いや、待てよ。今、何を想像した? 確かにここで彼女を帰してしまえば二度と会えないかもしれないが、だからと言ってああくそハチミツとシナモンの香りが昇ってきた、食べたい……昔、屋敷の厨房で見たシェフのパン生地は素晴らしいもちもち具合だったが、この少女の頬はそれを思い出すな。触りた……いやいや待て待てベレンガリオ、正気に戻れ。初対面の男がご令嬢の肌に触れるなどあってはならない、しかしだが結婚を前提にすればあるいは)
ここまでのベレンガリオの思考時間は、おそらく現実の時間で二、三秒ほどでしょうか。
それはちょうど、金髪の少女が悩んだ末に自身の名前と住む場所を教えることに決める、その決意までの時間と同じでした。
「分かりました。では、私はサンベルジュ伯爵邸に逗留しております、ジョヴァンナと申します」
やっと現実に戻ったベレンガリオは、金髪の少女が『ジョヴァンナ』という名前であること、それと聞き覚えのある家名を聞いて、関連する情報が頭の中の引き出しから溢れ出し、その情報を一瞬で処理しきりました。
「サンベルジュ伯爵邸? ああ、今の侍従長の家か。君はそこの令嬢じゃないのか?」
すると、金髪の巻き毛の先をもじもじと指に絡めながら、『ジョヴァンナ』は恥ずかしそうに出身地を明かします。
「私は……その、ダーナテスカからまいりました。何分、田舎なもので、父の友人であるサンベルジュ伯爵閣下のお屋敷に下宿して、マナーやダンスなどを学んでおります」
——なるほど!
ベレンガリオの脳内で、しきりにファンファーレが鳴りました。うるさいくらいに鳴り響いています。
種々細々一瞬で熟慮した末に、ベレンガリオは決断します。
今この瞬間が、一世一代の大勝負の場であると確信したのです。
『ジョヴァンナ』の手を取り、初めてその名を呼びかけながら——ベレンガリオは動き出します。
「ジョヴァンナ」
「はい?」
それは流れるように見事な動作でした。その光景を見ていた修道女も、驚きのあまり開いた口が塞がらないほどに、です。
ベレンガリオは石畳に片膝を突き、『ジョヴァンナ』——一目惚れして心に決めた女性を見上げ、人生で初めてその言葉を口にします。
「結婚しよう」
あまりにも早く、あまりにも突然の出会いとプロポーズに、当のジョヴァンナはどうにも反応できずしばらく固まっていました。
それでも別に、紙袋を大事に胸前に抱えるベレンガリオはよかったのです。
ジョヴァンナの手を握る今、導き出される返答がどうであれ、たったそれだけでもベレンガリオは幸せなのですから。
☆
その話を聞いたフランシアは、おそらくその光景を目撃した修道女と同じ表情で、何度もベレンガリオの顔と壁紙の模様を視線が行き来した挙句、ようやく言葉を紡ぎました。
「ど、どうしてそうなったの……?」
「……分からない。分からないが、私は、ジョヴァンナに一目惚れしたんだ。ただそれだけだ」
フランシアの表情が物語ります。いやいやさすがにそれだけじゃあないだろう、雰囲気も何もなく経緯がひどすぎる、と。
しかし、この話には、まだ続きがありました。
「そのとき、ジョヴァンナは逃げていったんだが……あとで父に相談して、彼女を正式に舞踏会へ招待してもらった。それさえもまさか断られるとは思ってもみなかったが、逆にその理由を尋ねるためにサンベルジュ伯爵邸を訪れる機会を得たんだ」
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