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幽霊の囁く城 part5
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妾とシュミットが一階の暗闇に入って行った後、シェン君とサイファは二階の右手の廊下に差し掛かっていた。
サイファが火の魔法を使って壁の燭台に残っていた蝋燭に明かりを灯したため、二人が通った場所から明るくなっていく。
「シェン王子、なぜこの城に御三方はそれほど入りたかったのか、もう訊ねてもよろしいですか?」
この城に半ば強引に侵入したことから、サイファはバーミリオンたち三人が最初からこれを計画していたと推察できた。
しかし、三人の目的がまったくわからない。
シェン君は振り返らず答えた。
「これはとても大切なことなんだ。ミリィにとって」
廊下を歩く二人の足跡が、積もった埃の上に続いていく。
「バーミリオン殿下のためなのですね。ですが、ここに何があるのです?」
辺りを見渡すサイファは静まり返った廊下に不穏な空気を感じ取っていた。
一番おかしいのは、あれだけ外から見えていたはずの窓がこの廊下には一つもないことだ。
そのせいで夜よりも濃い闇が廊下の奥に巣食っている。
前を行くシェン君も気づいていないわけではなかった。
それでもしっかりとした足取りで進んで行く。
「サイファ、おれはミリィの呪いを解くために協力すると約束したんだ」
「呪い・・・・・・」
サイファもバーミリオンの呪いについては多少知っていた。
皇帝の九番目の子どもは呪われるーーー。
アラガンでも有名な話だ。
それがあの炎色の髪をしたシェン王子と同じ年のバーミリオン殿下であることを知ったとき、気の毒に思ったものだ。
「手立てがあるのですか?」
サイファは三人の目的はわかったが、本当に呪いが解けるのかは疑問に感じた。
子どもたち三人が知り得たことなど、すでに帝国の魔術師や呪術師なら試したことがあるはずだ。
しかし、それについて何か言うつもりはなかった。
シェン王子たちのやりたいようにさせるだけだ。
基本的にサイファは、自分を目付け役というより後片付けをするための従者と考えていた。
アラガンでは大人は子どもの自立性を重んじている。
ただし、子どもにも責任が発生する。
アラガンでは七歳以上なら子どもにも死刑が適用される。
個人の責任はとても重いものなのだ。
しかも王族となるとそれはさらに大きくなる。
なので、シェン王子がそれなりの覚悟を持って動いていると、サイファは認識していた。
「呪いを解く手立ては、この場所で見つかるかもしれない」
シェン君がはっきりと答えたので、サイファは頷いた。
「この事を、あの二人の騎士は知っているのですか?」
「いや、言ってないはずだ」
「話せば彼らも協力してくれるのでは?」
少し逡巡して、シェン君が首を振る。
「そうは思えないな。危ないことをお姫様にさせる騎士なんていないだろ」
「確かに。わたしでも反対します」
それを聞いたシェン君は、ハハッと笑った。
「でもおまえは反対してないぞ」
「それはそうです。わたしはあなたの従者であって、か弱い姫君のお付きではありませんから。この廃墟となった城に何かがいたとしても、シェン王子とわたしなら対処できるでしょう」
サイファの言葉に含まれた意味に気づいて、シェン君が振り向いた。
「頼むから龍の力は使わないでくれよ。自分の国でも大騒ぎになるのに、他国じゃ親父に大目玉喰らうからな」
「わかってますよ。むしろシェン王子が無茶した時のストッパーがわたしだと自負していますから」
二人して苦笑いを浮かべたとき、廊下の奥から扉が開く、ギイィィという音が聞こえてきた。
今まで何十年も溜まっていた重い空気が、奥から吹いてきた冷たい風にゆっくりと動き出す。
頬を刺すような冷気が廊下の向こうから漂ってきた。
何かがいる、もしくはあるのを二人は感じ取った。
サイファが火の魔法を使って壁の燭台に残っていた蝋燭に明かりを灯したため、二人が通った場所から明るくなっていく。
「シェン王子、なぜこの城に御三方はそれほど入りたかったのか、もう訊ねてもよろしいですか?」
この城に半ば強引に侵入したことから、サイファはバーミリオンたち三人が最初からこれを計画していたと推察できた。
しかし、三人の目的がまったくわからない。
シェン君は振り返らず答えた。
「これはとても大切なことなんだ。ミリィにとって」
廊下を歩く二人の足跡が、積もった埃の上に続いていく。
「バーミリオン殿下のためなのですね。ですが、ここに何があるのです?」
辺りを見渡すサイファは静まり返った廊下に不穏な空気を感じ取っていた。
一番おかしいのは、あれだけ外から見えていたはずの窓がこの廊下には一つもないことだ。
そのせいで夜よりも濃い闇が廊下の奥に巣食っている。
前を行くシェン君も気づいていないわけではなかった。
それでもしっかりとした足取りで進んで行く。
「サイファ、おれはミリィの呪いを解くために協力すると約束したんだ」
「呪い・・・・・・」
サイファもバーミリオンの呪いについては多少知っていた。
皇帝の九番目の子どもは呪われるーーー。
アラガンでも有名な話だ。
それがあの炎色の髪をしたシェン王子と同じ年のバーミリオン殿下であることを知ったとき、気の毒に思ったものだ。
「手立てがあるのですか?」
サイファは三人の目的はわかったが、本当に呪いが解けるのかは疑問に感じた。
子どもたち三人が知り得たことなど、すでに帝国の魔術師や呪術師なら試したことがあるはずだ。
しかし、それについて何か言うつもりはなかった。
シェン王子たちのやりたいようにさせるだけだ。
基本的にサイファは、自分を目付け役というより後片付けをするための従者と考えていた。
アラガンでは大人は子どもの自立性を重んじている。
ただし、子どもにも責任が発生する。
アラガンでは七歳以上なら子どもにも死刑が適用される。
個人の責任はとても重いものなのだ。
しかも王族となるとそれはさらに大きくなる。
なので、シェン王子がそれなりの覚悟を持って動いていると、サイファは認識していた。
「呪いを解く手立ては、この場所で見つかるかもしれない」
シェン君がはっきりと答えたので、サイファは頷いた。
「この事を、あの二人の騎士は知っているのですか?」
「いや、言ってないはずだ」
「話せば彼らも協力してくれるのでは?」
少し逡巡して、シェン君が首を振る。
「そうは思えないな。危ないことをお姫様にさせる騎士なんていないだろ」
「確かに。わたしでも反対します」
それを聞いたシェン君は、ハハッと笑った。
「でもおまえは反対してないぞ」
「それはそうです。わたしはあなたの従者であって、か弱い姫君のお付きではありませんから。この廃墟となった城に何かがいたとしても、シェン王子とわたしなら対処できるでしょう」
サイファの言葉に含まれた意味に気づいて、シェン君が振り向いた。
「頼むから龍の力は使わないでくれよ。自分の国でも大騒ぎになるのに、他国じゃ親父に大目玉喰らうからな」
「わかってますよ。むしろシェン王子が無茶した時のストッパーがわたしだと自負していますから」
二人して苦笑いを浮かべたとき、廊下の奥から扉が開く、ギイィィという音が聞こえてきた。
今まで何十年も溜まっていた重い空気が、奥から吹いてきた冷たい風にゆっくりと動き出す。
頬を刺すような冷気が廊下の向こうから漂ってきた。
何かがいる、もしくはあるのを二人は感じ取った。
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