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北城市記録会 1年編
第27.5走 再衝突②
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「は、誰なの君?部外者がグチグチとさ、才能も無いのに僕らの間に入るなんて……」
虎島は初対面の唯に対して、信じられないような暴言を口にしていた。
「え……!?」
これにはさすがの唯も言葉に詰まる。
だがそんな虎島に対して、結城の方が先に口を開いた。
「なんか俺が終わったと思ってる所申し訳ないけど、勝つよ、俺は」
結城は堂々と、なおかつ自分に言い聞かすように言い切っていたのだ。
「ッ…………!」
そして話を遮られた虎島は、口を開けたまま固まる。
そして唯に向けていた視線を、ユックリと結城へ戻し始めていた。
その目は少し血走っており、先ほどまでの演技めいた顔では無くなっているように見える。
「勝つって言ったか?僕に?お前が?」
初めて虎島が"君"ではなく"お前"という強い言葉を使った事により、虎島がイライラし始めている事は明白だった。
だが結城は引く事なく、淡々と続ける。
「勝つよ。仲間をこれだけバカにされた上で、俺を信じてくれてる奴がいるんだ。だから勝つだろ、絶対に」
この強気な返答の根源は、正直結城自身にもハッキリとは分からない。
だが気付けば口からこぼれていたのだ。
「正直陸上に戻ってから、目標が無くて悩んでたんだよ。でも、お前に勝つって目標が今まさに出来た。だけど勘違いすんなよ。3年後に勝つなんて甘い事は言わない。少なくとも2年の内にまた俺が兵庫のチャンピオンになる。そんで3年の時にはお前の手が届かない所までいってやるよ」
結城は力強く、そして再び自分にも言い聞かせるように言い放っていた。
「ああ、そうか……。そうか……」
すると虎島は気が抜けたように目と口を大きく開きながら、少し放心状態に変わっていた。
おそらくキタ高メンバーの絶望や怒りに震える顔を見にきた虎島にとって、この”宣戦布告”は予想外のダメージだったようだ。
「よう言った早馬ぁあ!!俺もこいつを抜いたる!2年と言わず1年でなあ!!」
すると翔も、結城に続いて叫び出す。
先ほどまで握っていた拳も、今は開いているようだ。
だが結城に続いたのは翔だけでは無い。
なんとそれは、唯と同じ寮部屋である木本由佳もだったのだ。
「あのさぁ……男同士で勝手にライバル視するのはどうでもいいんだけど。ただウチのマネージャーに才能無いとか、泣かせたとか、それは話が別だから。アンタマジでクズだね」
そう言って由佳は震える唯の肩にそっと手を置き、虎島を鋭い眼光でニラみつけていた。
さすがにこれがトドメとなったのか、虎島は生気の無くなった顔で呟く。
「君たちはさぁ……あのさぁ……。いや、もういいや、飽きた」
虎島はそう言い残すと、階段をユックリと降りていき、結城達とは違う出口からスタンドを後にするのだった。
————————
+
「…………いやいやいや!?!?ちょっと待って何だよ今の!?心臓止まるかと思ったんだけど!?!?」
とうとう康太は、その場にヒザをついて座り込んでしまった。
突然始まった虎島とのバトルに、かなり驚いていたようだ。
「ごめん。何かムキになっちゃった」
そんな康太に対して、結城は笑いながら答えた。
「いや、むしろスッキリしたわ!ホンマよう言ったで早馬!!」
そう言って翔は結城の肩を強く叩いた。
どうやら虎島に意見をハッキリと言った結城を見直したようだ。
そのスッキリとした笑顔は、レース後から一言も話していなかった人物とは思えない。
「でも俺、虎島に普通にヤバい事言ってたよな。なんか今になって後悔してきた。これで来年勝てなかったらメッチャ恥ずかしいやつじゃん!どうしてくれんだよ内田ぁ!!」
すると結城は時間差で顔を赤くし始めた。
どうやら先ほどの発言が、時間を置いてジワジワと恥ずかしくなって来たようだ。
「えぇ!?私のせい!?」
「お前が虎島に煽り入れるからだろ!」
「だって、あの人ヒドいことしか言わないんですもん!嫌いですあの人!」
唯は涙を流しながら、しかし笑いながら言っていた。
すると自然とそこにいた1年達もみんな笑顔に変わっていく。
「でも内田さん立派だったよ。あそこでハッキリ言ってくれなかったら、みんな言われっぱなしだったかもしれないし。よく頑張ったね」
虎島に最後のボディーブローを入れた由佳も、珍しく笑みを浮かべながら唯の頭を強くなでていた。
そしてようやく事情を飲み込んだ一縷も、結城の肩をポンと叩きながら口を開く。
「いやでも早馬の言う通りだよ。絶対に勝とうな!そもそも事情を知らずに虎島に話しかけた俺も悪かったし、これからはちゃんと隠し事なしで協力して行こう」
それに対し結城も、西日で照らされているトラックを見ながら呟いた。
「そうだな……。俺今まで陸上やってて、チームで戦うなんてほとんど感じた事無かった。でも、なんかこのメンバーなら少し分かる気がしたよ」
恥ずかしそうな苦笑いを交えながらも、結城は今の思いを口にしていた。
「ま、その為にも早馬の復活は必須だな!」
「プレッシャーかけんなよマジで!…………まぁ、頑張るわ」
西日で真っ赤に染まったスタンドの景色を、結城達はずっと忘れないだろう。
————————
虎島は初対面の唯に対して、信じられないような暴言を口にしていた。
「え……!?」
これにはさすがの唯も言葉に詰まる。
だがそんな虎島に対して、結城の方が先に口を開いた。
「なんか俺が終わったと思ってる所申し訳ないけど、勝つよ、俺は」
結城は堂々と、なおかつ自分に言い聞かすように言い切っていたのだ。
「ッ…………!」
そして話を遮られた虎島は、口を開けたまま固まる。
そして唯に向けていた視線を、ユックリと結城へ戻し始めていた。
その目は少し血走っており、先ほどまでの演技めいた顔では無くなっているように見える。
「勝つって言ったか?僕に?お前が?」
初めて虎島が"君"ではなく"お前"という強い言葉を使った事により、虎島がイライラし始めている事は明白だった。
だが結城は引く事なく、淡々と続ける。
「勝つよ。仲間をこれだけバカにされた上で、俺を信じてくれてる奴がいるんだ。だから勝つだろ、絶対に」
この強気な返答の根源は、正直結城自身にもハッキリとは分からない。
だが気付けば口からこぼれていたのだ。
「正直陸上に戻ってから、目標が無くて悩んでたんだよ。でも、お前に勝つって目標が今まさに出来た。だけど勘違いすんなよ。3年後に勝つなんて甘い事は言わない。少なくとも2年の内にまた俺が兵庫のチャンピオンになる。そんで3年の時にはお前の手が届かない所までいってやるよ」
結城は力強く、そして再び自分にも言い聞かせるように言い放っていた。
「ああ、そうか……。そうか……」
すると虎島は気が抜けたように目と口を大きく開きながら、少し放心状態に変わっていた。
おそらくキタ高メンバーの絶望や怒りに震える顔を見にきた虎島にとって、この”宣戦布告”は予想外のダメージだったようだ。
「よう言った早馬ぁあ!!俺もこいつを抜いたる!2年と言わず1年でなあ!!」
すると翔も、結城に続いて叫び出す。
先ほどまで握っていた拳も、今は開いているようだ。
だが結城に続いたのは翔だけでは無い。
なんとそれは、唯と同じ寮部屋である木本由佳もだったのだ。
「あのさぁ……男同士で勝手にライバル視するのはどうでもいいんだけど。ただウチのマネージャーに才能無いとか、泣かせたとか、それは話が別だから。アンタマジでクズだね」
そう言って由佳は震える唯の肩にそっと手を置き、虎島を鋭い眼光でニラみつけていた。
さすがにこれがトドメとなったのか、虎島は生気の無くなった顔で呟く。
「君たちはさぁ……あのさぁ……。いや、もういいや、飽きた」
虎島はそう言い残すと、階段をユックリと降りていき、結城達とは違う出口からスタンドを後にするのだった。
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「…………いやいやいや!?!?ちょっと待って何だよ今の!?心臓止まるかと思ったんだけど!?!?」
とうとう康太は、その場にヒザをついて座り込んでしまった。
突然始まった虎島とのバトルに、かなり驚いていたようだ。
「ごめん。何かムキになっちゃった」
そんな康太に対して、結城は笑いながら答えた。
「いや、むしろスッキリしたわ!ホンマよう言ったで早馬!!」
そう言って翔は結城の肩を強く叩いた。
どうやら虎島に意見をハッキリと言った結城を見直したようだ。
そのスッキリとした笑顔は、レース後から一言も話していなかった人物とは思えない。
「でも俺、虎島に普通にヤバい事言ってたよな。なんか今になって後悔してきた。これで来年勝てなかったらメッチャ恥ずかしいやつじゃん!どうしてくれんだよ内田ぁ!!」
すると結城は時間差で顔を赤くし始めた。
どうやら先ほどの発言が、時間を置いてジワジワと恥ずかしくなって来たようだ。
「えぇ!?私のせい!?」
「お前が虎島に煽り入れるからだろ!」
「だって、あの人ヒドいことしか言わないんですもん!嫌いですあの人!」
唯は涙を流しながら、しかし笑いながら言っていた。
すると自然とそこにいた1年達もみんな笑顔に変わっていく。
「でも内田さん立派だったよ。あそこでハッキリ言ってくれなかったら、みんな言われっぱなしだったかもしれないし。よく頑張ったね」
虎島に最後のボディーブローを入れた由佳も、珍しく笑みを浮かべながら唯の頭を強くなでていた。
そしてようやく事情を飲み込んだ一縷も、結城の肩をポンと叩きながら口を開く。
「いやでも早馬の言う通りだよ。絶対に勝とうな!そもそも事情を知らずに虎島に話しかけた俺も悪かったし、これからはちゃんと隠し事なしで協力して行こう」
それに対し結城も、西日で照らされているトラックを見ながら呟いた。
「そうだな……。俺今まで陸上やってて、チームで戦うなんてほとんど感じた事無かった。でも、なんかこのメンバーなら少し分かる気がしたよ」
恥ずかしそうな苦笑いを交えながらも、結城は今の思いを口にしていた。
「ま、その為にも早馬の復活は必須だな!」
「プレッシャーかけんなよマジで!…………まぁ、頑張るわ」
西日で真っ赤に染まったスタンドの景色を、結城達はずっと忘れないだろう。
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